技術構造分析講座ブログ

東工大の科学史・技術史・科学技術社会論・科学方法論研究室のブログです。公式情報、研究の詳細はホームページをご参照下さい。

クロンシュタットにて

2005-05-31 06:45:42 | Weblog
 先週、サンクトペテルブルグに出張しました。留守中にモスクワの大停電があり、その被害に遭わずにすまなかったのは幸いでした。
 サンクトペテルブルグでは、知り合いに連れられて車で市の正面のフィンランド湾海上40キロに浮かぶクロンシュタット島を見学しました。軍港のために10年ほど前までは外国人は立ち入り禁止でした。現在は出入り自由で、しかも島までのダムができて(もともとはダムで湾をふさいでサンクトペテルブルグを洪水から守ろうという計画でしたが、予算不足でダム建設は半分でストップしています)、車で直接に行くことができます(市の中心から約1時間)。
 知人の話では、フィンランド湾は平均水深が2メートルしかなく、最近の大きな艦船は特別に掘削した水路しか通れないので、クロンシュタットの軍港として価値は歴史的(象徴的)なものだそうです。確かに小さな船しか停まっていませんでした。しかし、ちょうど百年前の5月27日に日本海海戦で戦った(こちらでもニュースでやっていました)ロジェストヴェンスキーが率いるバルチック艦隊(正式には第二太平洋小艦隊)は、まさにこのクロンシュタットから出航したのです。

セルゲイエフ・パサードにて

2005-05-21 19:47:20 | Weblog
先週の日曜日に知り合いの車に乗って、モスクワの北70キロほどのところにあるロシア正教の本山の一つセルゲイエフ・パサード(ソ連時代にはザゴルスクといいました)に行ってきました。多くの教会や聖堂の集まる大修道院(聖セルゲイ三位一体修道院)で有名な場所です。久しぶりに晴れて気持ちの良い日でした。
普通の観光客にはそれしか見えませんが、じつはザゴルスクの郊外には大きな軍需工場と研究所があり、閉鎖地区があったそうです。知り合いもそこに勤めていたので、ここに住んでいます。閉鎖都市もいまは開放され、工場や研究所もほとんど動いていないそうです。知人もいまは軍務を離れて、モスクワのIT企業に勤めています。ですから、週末だけ家族のもとに帰ってきます。

第7回読書会のお知らせ(くりはら)

2005-05-19 20:39:03 | Weblog
東大と東工大の科学史を研究する院生の有志で,読書会を行っています(2005年1月28日,3月2日,3月8日,3月24日,4月6日,5月4日のweblogを参照).第7回読書会を次の日時と会場で行います.

日時: 5月25日(水) 17:00 開始
会場: 東工大 大岡山西9号館4F407号室(ゼミ室)

テキストは,
「ヒトラーとスターリンの下での自然の転換」(Paul Josephson and Thomas Zeller, "The Transformation of Nature Under Hitler and Stalin," Mark Walker ed., Science and Ideology: A Comparative History, Routledge, 2002, 124-155.)
です.

本書の序章で,この第6章について次のように述べています.
・環境の転換において,科学と工学が果たした役割をドイツとソ連で比較.
・国家社会主義とソ連は,強制,逮捕,処刑を使って経済,社会,文化システムを再構築し,自らを強い世界パワーにするために,閉鎖的な政治システムを利用した.
・両国における科学者と技術者は,政治的イデオロギー的仕事に関わった.ナチの場合は“volkish nature”の概念を精緻化するため.ソ連の場合は“プロレタリアnature”の概念を精緻化するため.

関心のある方はぜひご参加ください.参加を希望される方は,山崎研のくりはらまで連絡をください.

5月のモクスワ

2005-05-12 05:41:35 | Weblog
こちらの連休が終わり、みな仕事に復帰しました。5月1日がメーデー(今年はロシア正教会の復活祭と重なりました)で9日が戦勝記念日でその間には仕事日もありますが、みなは連休気分です(毎年法律で間の休みが設定されます)。同時のこの連休が、こちらの春の訪れとなります。今年は異常気象でなかなか温度が上がりませんが、それでも周りの木々は緑になり、すっかり気分が明るくなりました。住環境も整い、モスクワ生活にもすっかり慣れました。
5月10日のアパートの窓からの風景です。4月初めにはまだ雪が残っていました。

第6回読書会のお知らせ(くりはら)

2005-05-04 09:20:05 | Weblog
東大と東工大の科学史を研究する院生の有志で,読書会を行っています(2005年1月28日,3月2日,3月8日,3月24日,4月6日のweblogを参照).第6回読書会を次の日時と会場で行います.

日時: 5月11日(水) 17:00 開始
会場: 東大駒場 14号館3階大学院生室

テキストは,
Mark Walker ed., Science and Ideology: A Comparative History, Routledge, 2002(ISBN:0415279992)
の第7章,
Burghard Ciesla and Helmuth Trischler, "Legitimation through Use: Rocket and Aeronautic Research in the Third Reich and the USA," 156-185.
です.

本書の序章は,この第7章について次のように述べています.
・第三帝国から戦後の米国までのロケットと航空の研究.再武装とWWII期に国家社会主義国家のために働いた後,これらの科学者と技術者たちは米国で研究を続けた.
・ドイツの“専門家たち”は,具体的な科学と技術の知識だけでなく,航空やロケットのような複雑な分野を研究する組織をもたらした.巨大科学は科学組織のモデルとして第三帝国から米国へ移転した.
・ドイツと米国の政治的社会的システムの相違にもかかわらず,これらの専門家たちは,軍事関連の研究結果と技術的イノベーションによって,自身を正統化(legitimate)した.

4章以降は,章立てにこだわらず適当な順番でやっていくことになりました.第7章の担当は,わたくしくりはらです.私は,ドイツのロケットや航空研究なぞほとんど知りません.果たして準備できるのだろうか...

関心のある方はぜひご参加ください.参加を希望される方は,山崎研のくりはらまで連絡をください.