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「すでに起こったことは、明らかに可能なことがらである」
在台日本語教師の東アジア時事論評あるいはカサンドラの眼差し

原子炉再開を目論む東電:このままでは最悪の事態に

2011年03月28日 | Stop the 民主党(ファシスト)

 東京電力は、また事態を悪化させようとしているようです。東電はとうとう、原子炉本体が嚴重な破壊を受けている可能性(赤字)を認めました。しかし、答弁は支離滅裂です。

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東電、核燃料の圧力容器損傷に言及「健全性は維持」 2011年3月28日15時0分 朝日新聞
 東日本大震災で被害を受けた福島第一原発1~3号機について、東京電力は28日未明の会見で、核燃料を入れた鋼鉄製の圧力容器が損傷して容器の外と通じた状態になっている可能性を認めた。東電は「穴が開いているイメージ」と説明。燃料を冷却するために注がれた水に放射性物質が溶け込み、外部に漏れ続けているとみられる。

 1~3号機は津波で非常用の電源が失われ、圧力容器内の水を循環させて冷やすシステムを動かせなくなった。このため圧力容器につながる配管にポンプを接続し、水を注入する作業が続いている。核燃料を水没させ、発電停止後も出続ける崩壊熱を直接、冷やすのが狙いだ。
 しかし1~3号機いずれでも、圧力容器の水位計の数値は思うように上がっていない。東電は28日未明の会見で、注水しても圧力容器が満杯にならない原因を、「(圧力容器の)下の方に穴が開いているイメージだ」と認めた。穴が開いた理由は「わからない」という。

 圧力容器は燃料ペレット、燃料被覆管、格納容器、原子炉建屋と合わせた5重の放射能閉じ込め機能の中で、最も重要な位置づけだ。福島第一原発の圧力容器は厚さ16センチの鋼鉄でできており、底部には、計測装置などを外部から差し込む貫通部などがある。その周辺から漏れている可能性が考えられる。
 東電は、水面から露出した核燃料が過熱して損傷した可能性を認めている。専門家によると、核燃料を束ねた燃料棒が損傷して崩れ、圧力容器下部に落下してかたまりになると、表面積が小さくなって効率よく水で冷やせなくなる。極めて高温になった燃料が圧力容器の壁を溶かして穴を開けた可能性もある。


 東電は一方で、内部の圧力が大気圧より高く保てているため「(圧力容器は)完全に壊れているわけではない」とも説明。「チェルノブイリのように破裂して(燃料が)外に出ている状態ではない」とし、容器の「健全性」は保たれている、という見解は変えていない。

 この状態で注水を続けた場合、放射能を高濃度に含む水の外部流出が長引く可能性があるが、東電は、核燃料を冷やすには注水しかないとの立場だ。汚染水を外部に流すのではなく、本来の循環による冷却システムを再起動させる作業も進んでいるが、電源の確保などで難航している。一方、原子力安全委員会(班目春樹委員長)は28日午前、臨時会を開き、2号機のタービン建屋地下1階にたまっている通常の10万倍の濃度の放射能を含む水について、一時溶融した燃料と接触した格納容器内の水が、何らかの経路で直接流入したと推定されると発表した。
 ただ、屋外では極端に高い量の放射線は計測されていないとし、今後も水の漏出が続くとしても、炉心に注水し、蒸気を放出して冷却するという現在の冷却方法は継続可能と結論づけた。
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 東電は、茶色部分のように、とうとう燃料が溶融して、圧力容器の下部や周辺の冷却設備を損壊している可能性を認めました。つまり、今のままいくら水を入れても、冷却効果は限られ、事態はなんら解決しないということです。
 損傷は、薄茶部分のように、容器の上部ではなく下部に集中していると考えられます。ある点で平衡している水位より上の部分では水上気圧が上がっているということであり、その注水水位より上部は気密性が残っていると考えられます。しかし、容器の本体下部は深刻なダメージを受けており、すでに氣密性を失っています。

 紫部分のように、損傷した容器にいくら注水しても、壊れたところから放射能物質を大量に含んだ汚染水が流れ出てくるだけで、それ以上には進展しないということになります。汚染水を増やせば増やすほど、今度は周囲の環境が放射線で汚染されていくことになります。

 対策は、以下の図解から考えると、以下のようにするしかもう方法はないでしょう。
 燃料棒とペレット、たまり水の場所

1)原子炉建屋とターピン建屋の壁の水密性をチェックして、水漏れしないように密封する。また、鉛板などで周囲を防護する。
2)発電機とポンプ類をターピン建屋の外側に新たに設置する。
3)冷卻水と温排水等のパイプに外側のポンプ類を繋いで、循環させる。
4)タービン建屋と原子炉建屋内の容器自体を半分水没させる。
5)廃水を容器の外で循環させて、冷卻する。

あるいは、
3)ターピン建屋を密封したあと、建屋の漏水ヵ所全体を加圧して、格納容器からの漏水を止める。
4)格納容器の漏水個所をコンクリート等で補修し、冷卻水と温排水等のパイプに外側のポンプ類を繋いで、循環させる。
5)廃水を容器の外で循環させて、冷卻する。


 核分裂がこれ以上すすまないように、ホウ酸を大量に入れて反応を抑え、また水以外の冷卻材を入れていけば、容器を半分水没させた状態での維持は可能ではないでしょうか。破損している炉を以前と同じ状態に回復する手段は現在の放射線防護技術では不可能です。「通常の10万倍の濃度の放射能」は、非常に曖昧な書き方ですが、読売の記事では「1000ミリ・シーベルトを超える高い放射線量の水」とあり、致死量をはるかに超えていると考えられます。

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短期間被ばくの致死線量
人間は地球上のどこに住んでいても常に放射線を浴びています。世界で平均すると、人体は年間およそ2.4ミリシーベルト(2.4mSv:1シーベルトの1000分の1×2.4)の自然放射線に常にさらされています。放射線を短期間に全身被ばくした場合の致死線量は、5%致死線量(被ばくした人の20人に1人が死に至る線量)が2シーベルト(2000ミリシーベルト)、50%致死線量が4シーベルト、100%致死線量が7シーベルトと言われ、200ミリシーベルト以下の被ばくでは、急性の臨床的症状(急性放射線症)は認められないとされています。
ここで言う「短期」とは約1時間ほどと考えてください。普通に生活していて1年間に吸収する放射線量の1000倍の量を1時間で吸収すると、20人に1人が亡くなる程度の危険性ということです。1シーベルトだと吐き気を感じる、2~5シーベルトで頭髪が抜ける、3シーベルトを超えると30日以内に50%の人が亡くなる、とも言われます。
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 1000ミリ・シーベルトは恐らく、致死量すれすれに見せるために過小に発表された数値で、実際には2~5シーベルト=2000ミリシーベルトから5000ミリシーベルトという致死量の放射線を出していると見たほうがいいでしょう。格納容器が破損している以上、内部のウラニウムとその後の溶融でできた放射性物質が注入した水と一緒に外に出ている状態だからです。
 こうした環境で作業を続ける作業員のみなさんがいくら努力しても、こうした数値ではもう限界を超えています。しかも、その汚染水は建屋に貯まり続けています。東電の今の対策は、格納容噐内の核物質を、水で外に出す作業をしているのとなんら変わりません。チェルノブイリの場合は、黒鉛と反応して発火し爆発して、広い範囲に放射性物質が拡散しましたが、福島原発では、東電の間違った対策で、冷卻水に大量の放射性物質が溶け込み、それが外へ流れ出ている状態です。致死量の放射線物質を含む汚染水をいったいどうやって処理するのでしょうか?
 東電幹部は、社員や作業員の命がいくら危険にさらされても、なんら躊躇うことなく、福島原子炉の再利用を進めようとしているのでしょう。だから、廃炉にする対策より、冷卻水の循環系統を復旧させる対策に固執しているとしか考えられません。
 東電が今、一生懸命製造している高濃度の放射線汚染水は、海に流せば太平洋の広範囲を長期間汚染することになり、日本の漁業はもちろん太平洋全域の漁業に壊滅的ダメージを与えます。陸上に置けば、土壌を汚染し、東北、関東地方の農産物や水源を長期間放射性物質で汚染し続けます。「死の水」を作り続ける東電の「野望」を阻止するのは今しかありません。IAEAの管理下に福島原発を置いて、廃炉対策を実施する、これ以外に道はありません。

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2号機付近の地下、水から高濃度放射線観測読売新聞 3月28日(月)18時0分配信

 東京電力は28日、福島第一原子力発電所1~3号機のタービン建屋近くにあるそれぞれの立て坑が、水で満たされていたと発表した。
 立て坑は配管や電線が敷設された地下の作業用トンネル「トレンチ」とつながっており、東電は、トレンチにたまった水は計1万3000トン以上になるとみている。2号機の水表面では、1時間あたり1000ミリ・シーベルトを超える強い放射線が検出された。
 2号機タービン建屋の地下1階には高い放射能を帯びた水がたまっていることが確認されており、その水がトレンチに漏れ出した可能性がある。1~3号機の放水口近くの海水からは高濃度の放射性物質が検出されているが、立て坑からあふれ出た水が海に流れ込んだかどうかは不明だ。
 立て坑は、放射能レベルが高い放射線管理区域の外にあり、通常は水に浸されることはない。
 高い放射能を帯びた水が確認された2号機の立て坑は、タービン建屋から海側に向かって地中を横に延びたトレンチの端にある。高さ約4メートル、幅約3メートル、全長約76メートルで、配管などの点検や修理の際に人が立ち入って作業できる。 .
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 さらに、高濃度放射性物質汚染水は、建物の外に大量に流れ出していることが、今日のニュースで報道されました。東電はこれも隠蔽していたということでしょう。周囲の海水や土壌の環境汚染が相当進んでいる事態はもう避けられなくなりました。

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放射線量高く、収容できない遺体…10キロ圏内読売新聞 3月28日(月)19時45分配信

 警察庁は28日、福島県警が、東京電力福島第一原子力発電所の半径10キロ圏内で27日に発見した遺体について、遺体表面の放射線量が高く収容ができなかったことを明らかにした。
 今後の対応を検討している。
 同庁によると、10キロ圏内の大熊町に遺体があるとの情報があり、同県警が27日朝、防護服を着用した機動隊員ら15人を出動させた。その結果、原発から約5キロ離れた屋外で1遺体を発見したが、遺体表面の放射線量が、全身の除染が必要となる基準を超えていた。このため、「搬送する警察官や、遺体安置所の医師らが被曝(ひばく)する危険性が高い」(警察庁幹部)として近くの建物に安置するにとどめた。
 同県警は同原発の事故後、半径20キロ圏内での遺体の捜索を中断している。ただ、10~20キロ圏内では防護服を着用した上、避難をしていない住民の説得やパトロールを行っている。 .
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 福島県大熊町は、福島原発のある町で、ニュースの死亡者は震災の被災者なのか、あるいは、その後の放射線物質飛散による被害者かは分かりません。しかし、かなりの範囲に人体に危険を与えるレベルの放射線物質の飛散が広がっていることが窺えます。

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チェルノブイリ1~2割の試算も
 【読売新聞社】
(読売新聞)放射性物質放出、チェルノブイリ1~2割の試算
(読売新聞) 2011年03月28日 14時42分
 ウィーンの気象地球力学中央研究所は、東日本巨大地震被災直後の3日間(12~14日)に、福島第一原子力発電所から大気中に放出された放射性ヨウ素は、チェルノブイリ原発事故の10日間で放出された量の約2割に相当するという試算結果を公表した。
 核実験全面禁止条約機構(CTBTO、本部=ウィーン)が、群馬県高崎市など世界各地に置いた監視拠点24か所で検知した放射性物質データをもとに分析した。
 一方、フランス放射線防護原子力安全研究所は、日本国内の観測データをもとに、12~22日に同原発から放出されたヨウ素やセシウムなどの量は、チェルノブイリ事故の放出量の1割との暫定値を公表している。同研究所の声明によると、試算は米原子力規制委員会や欧州の技術安全ネットワーク、フィンランドの原子力当局とも議論をしたうえで行われた。
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 水素爆発の影響だけで、チェルノブイリの10%から20%だとすると、今、東電が原発再開という最悪の選択のために行っている高濃度放射線物質汚染水製造による放射性物質の地球環境への放出はそれ以上になることは間違いありません。1000ミリ・シーベルトを超える強い放射線で汚染されているトレンチの水だけですでに13000トンです。
 
 そして、忘れてはならないのは、こうした最悪とも言える状況を引き起こした責任は、まず菅直人と民主党政権にあります。

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 あの日、総理「少し勉強したい」と原発視察読売新聞 3月28日(月)16時51分配信
 政府の原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長は28日の参院予算委員会で、東日本巨大地震発生の翌12日に菅首相が東京電力福島第一原子力発電所を視察したことについて、「首相が『原子力について少し勉強したい』ということで私が同行した」と明らかにした。
 首相は12日朝、ヘリコプターで同発電所を訪れ、約50分滞在して東電職員らから状況の説明を受けた。
 この視察で東電の初動対応が遅れたとの指摘が出ている。班目氏は「現地で首相が行ったことで何か混乱があったとは承知していない」と述べたが、「勉強目的の視察」に改めて批判が出る可能性もある。 .
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 最初の12日の水素爆発で一号炉が壊滅状態になり、東北と関東の広範囲に死の灰を振らせた原因を作ったのは、明らかにこの菅直人の視察です。弁から水素を逃がす作業が送れたと指摘されています。

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福島原発で爆発 後手に回った首相 発生2時間たち発表 現地視察も裏目 産経新聞 3月13日(日)7時57分配信
 菅直人首相は12日夜の記者会見で、福島第1原発について「一人の住民も健康被害にならないよう全力で取り組む」と強調した。広範な被災地での救援・救難活動を含め「未曽有の国難を乗り越える。命懸けで取り組む」と述べた。ただ、原発で爆発が起きたことで、政府の危機管理能力が問われることになった。「最悪の事態を想定」(枝野幸男官房長官)してきたはずなのに、退避指示の範囲を徐々に広げた。

 爆発の事実を発表したのも発生から2時間以上たってからで、官邸の混乱ぶりがうかがえた。
 しかも首相が12日朝現地を訪れ、1時間近く視察したことは現場の作業を遅らせる一因になったとの指摘もあり、責任を問われかねない。
 12日夜の会見で、首相は爆発という言葉を直接使わず、「新たな事態」と形容するにとどまった。首相は12日午後の与野党党首会談では原発に関し「危機的な状況にはならない」と強調していた。会談中に官邸側は「会談後、首相と官房長官の会見を行う」と発表した。爆発が起きたのは会談の最中だった。
 会談終了から1時間半以上たって単独で会見した枝野氏は、首相が会見をいったんキャンセルした理由について「首相は、メディアを通じてメッセージを伝えるのは大変重要だと思っていたが、それ以上にこの事象(爆発)にしっかりと対応することが重要だとなった」と釈明した。
 12日朝、首相は原発視察に先立ち、記者団に「現地で責任者ときっちりと話をして、状況を把握したい。必要な判断は場合によっては現地で行うかもしれない」と意気込みを語った。
 政府関係者によると視察は首相が突然言いだした。枝野氏も12日未明の会見で「陣頭指揮を執らねばならないという強い思いが首相にあった」と説明した。
 しかし、現場はすでに放射性物質の一部放出をしなければならない事態に陥っていた。そこに首相がヘリコプターから降り立ったため、現場担当者も首相の対応に追われた。
 枝野氏は視察が対応の遅れにつながったとの指摘について「対応に万全を期すために必要なことだったのではないか」と反論した。
 退避指示を3キロから始まり10キロ、20キロと徐々に広げたのも一貫性を欠いたうえ、すぐに公表しなかった。
 枝野氏は「間違いのない情報を伝えないといけないから」と強弁した。
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  危機管理の難しさは、一瞬の判断ミスが次の悪の連鎖を産み、成功していた局面にも大ダメージを与えるということです。戦争と同じでしょう。今、東電幹部がやっている原子炉対策は、日本軍のミッドウエー海戦(現場には米軍空母はいない)や、ガダルカナルの戦い(米軍上陸部隊は小規模にすぎない、本格的反攻作戦ではない)のような、間違った先入観で動いて、壊滅的ダメージを受けた時の、日本軍首脳部の動きにとてもよく似ています。
 愚劣な主君と心中する武士は、後世においてもずっと嘲りを受け続けています。身の処し方を考えるとすれば、今、ではないでしょうか。



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