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「すでに起こったことは、明らかに可能なことがらである」
在台日本語教師の東アジア時事論評あるいはカサンドラの眼差し

人類に断続平衡進化の時代が間もなく訪れる?!2:イギリスの英断は21世紀の進路を示している

2016年07月21日 | 20110311東北関東大震災と政治
(写真:高感度地震觀測網による、この1ヶ月間の震源の分布図。)
1.今後の地震について
 今回の九州での地震は、やはり日本列島での大規模な連続的震災が避けられないことを予告しているかのように見える。
 今回の地震が起こって初めて気が付いたが、今まで予測されていたように日本列島の大地震は海溝側(トラフ地震)ばかりではなく、日本列島の大きな断層帯(中央構造線、糸魚川静岡構造線等)でも起こる可能性があり、その周期は今までほとんど注目されてこなかった。少なくとも今回の地震は、熊本城や多数の神社や寺院などの古建築が崩壞したことからみても、数百年単位で起こるような非常に周期の長い地震と言え、今までの研究対象には入っていなかったと考えられる。その点では、311大地震と同類の地震であり、20世紀後半の地震研究では太刀打ちできない現象と見たほうがよいであろう。
 ページで利用させていただいたように、Hi-net地震観測システムによるこの1ヵ月間の地震分布を見ると、2種類の大きく異なった現象が見られることに注目した方がよい。一つは、震源の浅い今回のようなタイプの地震が西日本から関東まで中央構造線沿いに分布しており、今後、すぐにとは言い切れないが、大きな地震が、今まで予想されていたように、東から西へと言う順番ではなく、構造線に沿って、ランダムに発生する可能性を示唆している。
 もう一つは、数は多くないが比較的規模が大きく、震源が深い地震が太平洋の海溝沿いに分布しており、予想された関東から南海までのトラフ型地震の前兆とも見られる。
 さらに注意すべきは、地震域が沖縄列島沿いに南に広がっており、しかも同時に震源域の深い大きな規模の地震が多数発生していることで、琉球列島沿いで今後、大規模な地殻変動が発生する可能性を示唆している。
 前回も、与太話として日本の地理的な近未来予想を書いたが、大きな地震の活動期に入ったことは否定できない。
 人類に断続平衡進化の時代が間もなく訪れる?!1:いよいよ「新しい中世」が現実に
 その意味でも、20世紀後半の安定した日本の国土は、人間の時間のスケールではもう二度と戻ってはこない(数百年単位ならば、安定期がまた来ることも間違いはないが)。 

 木村政昭先生の予想は、以下のようになっており、今後、太平洋の海溝沿いで台湾も含め、大規模な地震が発生する可能性を指摘している。
 近年予想される大地震と富士山噴火予想図(固定表示)
 木村先生は、九州と関東沖での現象に注目しているが、今回の九州での地震の構造線沿いへの広がりを考えると、今まで注目されていなかった四国中国地方から近畿地方でも今後、かなり規模の大きな内陸型の地震が発生する可能性は考えておく必要がありそうである。

 前回紹介した「ハイスクール・フリート」では、メタンハイドレートの採掘で日本の国土が沈降した結果、海洋国家に変身したことになっていたが、沈降はしなくても、複数の大地震と大噴火は今後、必ず日本にやってくることは避けられない。陸上だけに生活空間を限定していると、少子高齢化社会による人口減少と国土維持の困難化=ナチス中国およびその同盟国の朝鮮人、ロシア人等の軍事侵攻、民族浄化戦の発生可能性の増大の状況下では、今までのような安全な都市空間、安定した地方空間を維持することは非常に難しくなる。少数の人口が広い地域に分散して居住していると、非戦闘員の男性の殺戮と女性への強姦を専門としたナチス中国や朝鮮、ロシアのゲリラ戦民族浄化戦専門部隊との戦闘は日本側にとっては著しく不利で、制海制空権をコントロールしていれば安全管理のしやすい海上都市や海岸地域に人口を集中させ、陸上部分はドローンやロボットを中心にした治安部隊で防衛するほうがはるかに有利である。
 海上都市は、すべて人工的な構造物のため、安全管理を実施するには理想的な環境で、地震や津波で壊滅的打撃を受ける海岸地域の建築物に比べて、耐震性にも非常に優れている。
 MIT: 津波の被害を受けない新しい海上型原子力発電所のコンセプトモデルを発表:海上構造物は強風を計算に入れておけば、波浪や津波のような海水面の変動は安全にコントロールできる。海上原発は、人的管理や海外戦力の武力攻撃への対策がなされていれば陸上原発より日本の場合は安全かもしれない。
 独立国家を目指す海上都市:すでに海上都市を実現する動きは海外では始まっている。

 21世紀は地球温暖化による大規模な自然環境変動の世紀でもある。現在、海岸部の低地に広がっている地球上の多数の近代都市は、今後の急速な海面上昇、大規模な気候変動、動植物や病原菌の大変動等には、もともとそうした環境が想定されていなかったために対応しきれない。人口環境をコントロールできる海上都市は、そうした地球温暖化に対しても現段階ではもっとも有効な対策になるだろう。地上にドーム都市を作るよりも低コストで、しかも地震や津波の影響を受けない環境を作れるのは海上都市だけである。
 「Green Float」地震と未来の海上都市設計|竹内真幸|

 私たち人間は習慣に縛られていないと生きていけない生物のため、こうした奇抜な構想をみると、「○○はどうなる?」「××が危険ではないか」などという妄想にさいなまれて、先へ進めない人が大半である。それは生物としての人間としては、当然の反応であるが、そうした懸念は、予言や予感とは似て非なるもので、変化への不安が引き起こしたただの「杞憂」である。予言や予感はすでにあるものの未来を何らかの因果関係の網目の中で偶然的に理解する能力で、杞憂は未だないものを憶測することで生まれる妄想である。

 奇抜な構想ではあるが、21世紀の日本の未来像としては一番、合理性があり、また新しい可能性を開く構想だと思われる。大地震、大津波、大噴火や集中豪雨、巨大台風に固定した陸上施設で対応することは完全には不可能で、また、すべての国土に対策済みの都市、住宅、施設を作ることはコスト的にはまったく不可能である。しかし、非常に限定された空間をコントロールすればよい海上都市、浮上都市ならば、その時点でできる対策はすべて採ることが出来、また、今後、予想されるナチス中国、朝鮮人、ロシア人の民族浄化戦など非正規軍事侵攻への備えも十分にできる。
 予言というと胡散臭いもの、いかがわしいもの、得体の知れないもの、疑似科学的なものに思えるが、学術用語では、すでに理由は説明できないが、現象としては記述されている。ご存知の方も多いと思うが、シンクロニシティーやセレンディピティーである。

 【シンクロニシティの理解を深めるために・・・1】 

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心理オフィスステラさん
 シンクロニシティは、人生の目標や夢を実現するために訪れてきます。
ここでは、人との出会いにおけるシンクロニシティをメインとして書いています。
シンクロニシティについて
シンクロニシティの重要性について 人との出会い
出会いのシンクロニシティはなぜ起るのか
人生の目的
シンクロニシティを引き起こすために
啓示と導き
ユング シンクロニシティとカウンセリング
シンクロニシティ 本のご案内

シンクロニシティについて
「シンクロ」している。
今では一般的に誰でもが、この言葉を使うようになってきました。
そもそもシンクロとは英語、synchronizeに由来する語であり、タイミングを合わせる、同時に起るという意味があります。
おそらく、自分を取り巻く環境において何かが偶然の一致のように起った際に、「シンクロ」という言葉を使われるのでしょう。
そしてシンクロに関連する言葉で一番に思い浮かぶのが、水泳競技、シンクロナイズドスイミングではないでしょうか。
このシンクロナイズドスイミングはもともとウォーターバレエと呼ばれており、1934年にシンクロナイズドスイミングと名づけられたそうです。
さて、本題に入りましょう。

シンクロニシティ。
Synchronicity。
この言葉は、心理学(精神世界)の用語です。
シンクロニシティ、この言葉は、心理学者、カール・グスタフ・ユングが1935年、ロンドンのタヴィストック・クリニックの講義中はじめて用いたと言われています。
シンクロニシティとは、意味ある偶然、同時性、共時性のことです。
すなわち、偶然にも自分の想っていることが何かを通して現実になったり、自分の想っていることが過去の出会い(出合い)を起因として現実化する現象です。
⇒過去における、この出会い(出合い)も、過去の偶然と捉えます。
ポピュラーな体験談としては、友人のことを想い電話をしようとしていた瞬間、偶然にもその友人から電話がかかってくる。
自分の友人への想いが、電話を通して現実化しています。
さて、実は私は心理学者ユングについては詳しくありません。
シンクロニシティについては、フランク・ジョセフ著 シンクロニシティ KKベストセラーズ刊において、その実体を理解しました。
でもなぜ、心理カウンセラーである私が、シンクロニシティについて書いているのか。
それは私が2002年、14年間勤務をした会社を退職。
その後心理カウンセラーを目指し歩むにおいて、数々のシンクロニシティを体験しているからです。
私はシンクロニシティの研究者ではありません。
体験者です。
多くの人は自分の果たす目標や夢に向かって歩むにおいて、その現実化のために数々のシンクロニシティを経験されているのではないでしょうか。
いや、シンクロニシティが起ることなく、目標や夢の実現は難しいと思います。
シンクロニシティの重要性について 人との出会い
私はシンクロニシティを人生の目標や夢の実現のためには不可欠なものであると考えています。
なかでも、人との出会いによるシンクロニシティは大変重要です。
それは、人生の目標や夢の実現を、自分1人で成し遂げることが出来ないからです。
私たちは人間社会で生きています。
人間社会において、人生の目標や夢を実現させるためには、人とのかかわりが欠かせないのではないでしょうか。
そして、このかかわりとは、まさに人との出会いであり、この出会いとは、学びの出会い(師との出会い)、チャンスをもたらしてくれる方との出会い、一緒に進む仲間との出会い等様々です。
そして、人との出会いにおいて考えるべきことは、なぜ今、この人と出会っているのか。
その意味を考えることです。
シンクロニシティとは意味ある偶然なのです。
その意味は出会った瞬間(まさに自分が必要としている人とタイミングよく出会った)に分かる時もあれば、時間が経過して、過去を振り返ってはじめて納得出来る場合もあります。
実際のところ、人との出会いにおけるシンクロニシティは、時が経過しないとその意味について、分からない方が多いのではないでしょうか。
(出会ってすぐにチャンスをもたらしてくれたり、深く親しくなることは稀だからです)。
したがって、人との出会いにおける偶然の意味を認識するためには、「この人」と何か感じたのであれば、その人としばらくお付き合いをする必要が生じてきます。
(信頼関係を築く)。
そして時が進み、「今の、このために」、この人と出会ったのだということが、その時がくれば、その意味は分かるでしょう。
大切なことは直感で、「この人」と感じることが出来るかどうかです。
これは感覚です。
さて、いかにその感覚を磨けばいいのか?。
残念ながら、私には分かりません。
でも、私は自分の感覚を頼りにして、人を選んでいるように思います。
いずれにせよ、シンクロニシティはタイミングの良さと意味が重要であり、意味については後日にならないと分からないことが多々あるということです。
また、人との出会い以外にも、情報、物、出来事との出合いが、人生を開くきっかけとなることもあります。
出会いのシンクロニシティはなぜ起るのか
人との出会いにおけるシンクロニシティに限定して書きたいと思います。
さて、「シンクロしている」と一般にも使われるように、人との偶然の出会いは特別なものではなく、シンクロニシティを感じる出会いは、誰でもが経験しているのではないでしょうか。
簡単な例を書くと、パーティー好きな人がパーティーを企画して、集まった人たちと仲良くなり、またパーティーを開く仲間となる。
「ぼくたちシンクロしているね」と、なるのです。
類は友を呼びます。
同じ感性、同じ目標、同じ波長を持った人たちが、偶然に出会う、集まることは不思議ではありません。
シンクロニシティが起る要因の1つに、同じ波長、派動の者はひかれ合う、という事実があります。
シンクロニシティは偶然の一致でもありますから、同じ波長の者同士が磁力に吸引されるように、偶然の一致かのようにくっつくのです。
そして何を成すか、その想い、その理想の現実化に対する難易度が低ければ低い程、そのことに対する偶然の出会いは起りやすいでしょう。
(例えば逆例ですが、ある難易度の高い理想を掲げるのであれば、その難易度の高い志しを掲げる人は少数であり、その事実において、少数の者同士が偶然に出会う確率は低くなるのです)。
シンクロニシティに、目標や夢に対する難易度や次元の高低は関係ありません。
想い続けたことが、人を介して現実となるのです。
さて、私がここで書きたいことは、人生の目標や夢を叶えるためのシンクロニシティです。
人生の目標や夢を実現させるためのシンクロニシティなのです。
これは、生まれてきた目的を実現するためと、言葉を変えてもいいでしょう。
人生の目的とは
シンクロニシティは起った出来事等を後から振り返って、あの時の出会いや出来事が、今の人生の目標や夢の実現のために、チャンスをもたらしてくれたのだ等実感することが多く、過去を振り返れば、その偶然は偶然ではなく、必然的に起っているように感じることが多々あります。
さてそれでは、人生の目標、夢とは、そもそも何でしょうか?
もちろん、目標、夢は個人で自由に設定出来ます。
では、自由に設定したことに対して、必ずシンクロニシティは起るのでしょうか?
私は何か違うような気がします。
例えば個人商店は飲食店をはじめ多々ありますが、繁盛する店もあれば、潰れる店もあります。
一体この違いは何でしょうか?
皆、店を構える時はそれなりの想いが強かったと思うのですが。
(もちろん計画の甘さや、開業後の態度等現実的な問題が伴うこともありますが)。
叶う夢と、叶わない夢。
何がこの差を分けるのでしょうか?
私は人とは生まれ持って、人生の方向性が決まっていると感じています。
その方向性とは、癒しの道に入る、人道的に世界に貢献する道に入る、大金を動かす道、愛と奉仕に生きる、何かを深く探求する等様々です。
何を体験して、何を成し遂げたいのか、大まかことは、あらかじめ決まっているように感じるのです。
(あらかじめそのことを決めて生まれてくる)。
私は心理カウンセラーです。
2002年に会社を退職しました。
会社在職時はシンクロニシティという言葉は知りませんでした。
しかし退職後心理カウンセラーを目指して歩むにつれ、体験する偶然のチャンスについて調べるうちに、シンクロニシティという言葉に出合ったのです。
でも、もし私が会社にずっと勤めていたら、また、心理カウンセラーではなく、他の専門職(退職時、社会保険労務士を考えたことがあります)を目指していたら、今、私はシンクロニシティについて書いているでしょうか?。
また、シンクロニシティを経験しているでしょうか?
そもそも、私の人生に実りがあったでしょうか?
私は人を癒す道に入るために生まれ、心理カウンセラーという職種を選んだのだと思っています。
したがって、そもそもの生まれてきた人生の目的を果たすべき道に入り、そのことを人生の目標、夢として歩み出したので、多々のシンクロニシティのチャンスを得たのだと思っているのです。
では、一体どのようにすれば、生まれながらの人生の方向性、目的が分かるのでしょうか?
1)昔(子供時含む)から好きなこと 興味あること やってみたいことを思い出す
  私は青年時より心理学に興味があり、好きでした。
  若い頃から興味がある、好きなこと、興味あること、やってみたいことは、その道に進むために
  生まれてきた可能性が高いと思います。
2)感動体験 人生の根幹を揺るがすような体験、または人との出会い
3)とにかく好きなこと 熱中出来ること
  34歳より本格的に心理学を勉強 熱中しました。
4)それが出来るのではないかと 根拠のない自信がある
  カウンセラー養成校の模擬実習において、カウンセラー役を行った時、カウンセリングは展開
  出来ると、根拠のない自信を感じました。
5)人生を振り返る 人生体験・学習体験より学んだことは何か
  親子関係をはじめ様々な生き辛さを経験、克服してきました。
6)自分がその道を歩むにつれ 今後を決定づける重要な人と出会っているか
  心理カウンセラーを目指すにおいて、何名かの先生より様々なチャンスを頂いています。
7)占術の活用
  占術によっては、運命、運勢が占えます。
  占星術 数秘術等は参考になると思います。
以上、私の経験から、自分の生まれてきた目的を知るためには、どうすればいいのかを箇条書きしました。
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 自分の夢が実現できた時の、偶然的な樣々な人やものや情報との出会いは、「幸運」「つき」と呼ばれているであろう。また、偶然的な何らかの人やものや情報との、何らかのきっかけによる直感で思い浮かんだことは、もしそれが悪いことであれば、「予言」「予感」「予兆」と表象される。今回の与太話を書いたきっかけも、偶然、たった一度だけネット広告で「ハイスクール・フリート」の広告を見かけて、なぜか調べてみようと思い、ネットでアニメを見て、全然ストーリーのメインではないが、「海上都市」という概念に思い当たって、調べてみるとすでに2011年の東日本大震災のあとから、アイディアが出始めていたことが分かった、というような偶然の連続で生まれたもので、何か目的を持ってしていたものではない。しかし、日本の未来像として究めて合理的で、ありえる選択肢だと思われる。
 大事なことは、どの方向に進むのかを自分で明確にしていくことである。お金持ちになる、理想を追求する、幸福な家庭を持つ、奉仕の人生を過ごす、名誉・権力・金を手に入れる、芸の道を究める、人に喜ばれるものを作る、真理を追究する、仲間を大事にする、業界でトップになる、美を追求する・・・個人の場合はこんな目標になるだろうが、こうした目標にあう出来事、人、ものとの出会いが自然に起こってくる。社会や国家にも当然、そうした目標があり、日本共同体の場合は今、それをどうするのかが問われている。

 新しい居住空間を構築する、今後50年は続く大震災、大噴火期を私たち日本の共同体が生き延びるには、この点は不可欠な条件になる。今の都市空間は、地球温暖化による大規模気候変動から言ってもまもなく維持できなくなる。新しい町は新しい人と社会を生み出す、これが逼塞した日本共同体を再生させる。ローマ帝国の遺民が沼地に逃れ、ヴェネチアをやがて構築したように、オランダ人が住めない国土を干拓して国土を生み出したように、私たちも新しい日本の国土を生み出すことで、新しい世紀への展望が開けるにちがいない。

2.崩壊する20世紀社会の秩序
 2016年は、アメリカ、中国という大国の指導者の存在自体が国を崩壊させる原因になるばかりではなく、実際に樣々な解体が現実に広がっている。
1)イギリスのEU離脱
 おそらく当のイギリス人自体も本当になってしまうとは思っていなかっただろう。反対党が政府を攻撃する材料に使っていた話題が、国民間に広がって、本当の投票につながり、離脱が決まってしまったという、偶然が偶然を呼んだ、そんな動きだと思われる。だから離脱派は誰も責任をとろうとしなかった。本当は、政府を攻撃する材料にするつもりしかなかったためだろう。

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 「世界はポピュリズムに流され無責任な社会に」英米在住のジャーナリスト、EU離脱とトランプを語る
 世界に衝撃をもたらしたイギリスのEU離脱。このポピュリズム(大衆迎合)的ともいえる熱狂はイギリスにとどまらず、ヨーロッパ各国、そして大統領選を控えるアメリカにまで波及している。中でも、アメリカ共和党の候補指名を確実にしたドナルド・トランプ氏はその象徴といっていい。
現代のポピュリズムの台頭にはどのような背景があるのか。そして熱狂的なうねりの行き着く先は。ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎が、イギリス在住のジャーナリスト小林恭子氏、アメリカ在住のジャーナリスト津山恵子氏に聞いた。
■何を言ってもいい世の中になった?
竹下 今回のEU離脱についてイギリス国内の反応はどのようなものでしょうか。
小林 個人的には、EU残留でなくて離脱という結果になり、非常に残念です。なぜこういう結果になったのか。離脱派のキャンペーンは、アメリカのドナルド・トランプ氏のように、「イギリスの主権を取り戻せ」「EUの官僚たちに任せてはいけない」などと、イギリス国民の多くの人の心にグッとくる、感情に訴えるわかりやすいキーワードを使っていました。
残留派はキャメロン首相をトップに、「離脱したらイギリス経済に大きな影響を及ぼす」「IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力機構)からも世界経済に悪影響を及ぼすと警告されている」などと理詰めでキャンペーンを展開したのですが、全く国民の耳に届かなかったのです。残留派がEU離脱のデメリットを、根拠ある数字で示しても、離脱派は「あれはエスタブリッシュメント(既存の支配勢力)の人が出した数字だから正しくないし、偏っている」と批判し、封じ込めていくんですね。
アメリカも同じだと思うのですが、イギリスでも政治家や大企業といったエスタブリッシュメントへのアンチの気持ちが非常に強いのです。それがEU離脱という事態まで招くほど強かったのかと、非常に驚きました。
竹下 国民投票の直前、イギリス統計局は2015年に移民が33万3000人純増したという数字を発表しました。こうした移民問題も影響しているのでしょうか?
小林 移民問題の影響は非常に大きいと思います。ただし、反移民感情といっても、日本でイメージするような自分とは異なる肌や目の色を持つ人、異なる宗教を信じる人への差別感情があるわけではありません。人種差別的な意味ではなく、移民の人数が増えること自体が問題なのです。EUは人・モノ・サービスの移動自由という原則がありますので、移民の移動も無制限になっていることへの大きな懸念があります。
竹下 一方アメリカでは、どんな受け止め方をされているのでしょうか?
津山 アメリカでもやはり驚きのほうが大きいですね。最大の同盟国の国民が国民投票で選んでしまったということで、私の周囲でも本当に呆然としていました。
竹下 ドナルド・トランプ氏の台頭と結びつける言論はアメリカ国内で出ているのでしょうか?
津山 トランプ氏も、小林さんがおっしゃるようなアンチエスタブリッシュメントを声高に訴えているのですが、実は攻撃できる根拠もないし、責任をもって発言しているわけじゃないんですね。だから、どんな暴言を吐いても、そして何を批判されても構わないという姿勢なのです。
トランプ氏が毎日のようにアメリカ国内のテレビ画面に出てしまうと、「何を言ってもいいっていう世の中になってきたんじゃないか?」と思い始めるようになる。それがすごく怖いなと思っています。
■ トランプが親しまれ、クリントンが敬遠される理由
竹下 数字的な検証や理論立てて説明することなど「知性」への嫌悪感や、「理屈はもういい。私たちの感情が大事なんだ」という無責任な雰囲気は以前からイギリスで感じられましたか? そして、今回のEU離脱によって一気にそれが可視化されたのでしょうか?
小林 世界経済や政治の秩序なんて無視してもいい、というような動きはあるような気がします。現実や事実を基にして議論するのではなく、自分たちの感情にまかせて行動しているのです。政治家が自分たちの悩みを聞いてくれないという強い不満が根っこにあるわけですけれども。
竹下 アメリカではどうでしょう? アメリカのハフポストをはじめとしたメディアもトランプ氏の発言を検証して、ここが間違っている、全くの事実誤認だなどと指摘しているのですが、そういうメディアの態度自体が嫌われ、トランプ氏の率直な物言いの方が好まれるように感じます。
津山 トランプ氏が支持されている理由として、日本ではよく知られていない要因が2つあります。1つは、トランプ氏の支持層である、大都市に住んでいない年配の白人有権者たちに大手メディアの報道が浸透していないことです。彼らはまず新聞をとっていない。そして夕方のニュース番組もちゃんと見ていない。でもトランプ氏は、「ジ・アプレンティス」というリアリティショーのホスト役を11シーズンもやっていたから馴染みがあるし、ちょっと変わった面白いおじさんだよねっていう好感を持たれているんです。
もうひとつは、民主党の候補になるヒラリー・クリントン氏の実の姿がよく知られていないことです。彼女は政治や外交の業績もあるし、数字や現実に基づいた発言は新聞やニュースでも取り上げられる。でも、リアリティショーに出ないですよね。中国の国家主席と面会したと言っても、彼女の肉声もないようなニュース映像が 1分少々くらい流れるだけですから、彼女の肉声も聞こえない、私生活もわからない。完全に雲の上の人なんですね。
さらに、政治家ということでトランプ氏が批判するエスタブリッシュメントの象徴と見られている点も、彼女の人気の悪さにつながっています。
竹下 トランプ氏も日本から見ると大金持ちのエリートのように見えるのですが、それでも一般層に人気なのはどうしてなのでしょうか。
津山 トランプ氏の支持層は、お金持ちに好感を持っているのが特徴的です。それから、共和党の支持基盤として非常に大きく機能してきたエヴァンジェリカン(キリスト教福音派)など、キリスト教徒の中でもお金を儲けることはいいことだと説いている教派と強く結びついています。ですから、大金持ちに対する憧れを実現している人だから、「あれ? この人はいい人じゃないか」と、支持につながっているわけです。
■ ポピュリズムは拡大するのか、歯止めがかかるのか
竹下 EU離脱という結果を受けて今後どうなるかを考えてみたいと思うのですが、まず津山さんに伺いたいのが、アメリカでもポピュリズム的な勢いがさらに伸びるのか。あるいは歯止めがかかるのか、どのようにお考えでしょうか。
津山 アメリカの若者層がイギリス国民投票の結果を見て、「自分たちの声が吸い上げられないような選挙はやってはいけないのではないか」と思い始める可能性はあります。ですから、どの程度の影響かはわかりませんけれども、若い人たちの間で「今度の大統領選挙はちゃんと参加しよう」という機運につながっています。若い人たちだけでなくアメリカ人全体が責任ある大統領を選ぶのか、それとも無責任な大統領を選ぶのか、ということを真剣に考えるきっかけになると思います。
竹下 イギリスをはじめ、ヨーロッパの今後はどのようになっていくでしょうか。
小林 他のヨーロッパ諸国には反EU感情を持つ人が多くいますから、フランス、イタリア、スペイン、オランダなどでEU離脱の国民投票を求める運動はさらに強くなると思います。
イギリスでは次の首相、次の野党党首の話でもちきりですが、現実の生活レベルで最も懸念される変化として、イギリスにいる移民に対するソーシャルメディア上や現実のいじめ、バッシング、攻撃が激化していることがあります。最大の攻撃対象は東欧出身の移民、とりわけポーランドです。
移民の人たちもイギリスにやってきて普通に仕事や生活をしていたところに、まさかこんな事態になるとは思っていなかったでしょう。弱い人をいじめることの楽しみや快感を覚える人たちの攻撃で、移民が厳しい状況に追い込まれないかと懸念しています。
■「無責任なアンチエスタブリッシュメント」が世界を包む
竹下 このポピュリズムの台頭を端的に言い表すと、どのような言葉がふさわしいでしょうか。
津山 「無責任」ですね。これからの将来を担う若者たちに大きなダメージを与えている無責任な人間たちの暴走です。EUの中を自由に行き来できて、就職もできて、能力も高めていける。いろんな友達もできると考えていた若者たちの将来が、6月23日に突然プッツリと絶たれたわけです。そんな無責任な決断を国民投票で可能にしていいのだろうかと思います。
もうひとつは「アンチエスタブリッシュメント」というキーワードもあると思います。政治家や大企業が社会に貢献していくという意味で、民主主義や社会のあり方が変化していくどう対応していくのか、エスタブリッシュメント側が自分たちの立ち位置を見直すきっかけになると思います。
小林 私が思いついたのは、津山さんと共通して「アンチエスタブリッシュメント」、そして「アナーキー」ですね。イギリスのパンクバンド「セックス・ピストルズ」を思わせるような無政府的で、無責任で、アナーキーな感情。エスタブリッシュメントに対する反抗が強まり、「何言われたって嫌なものは嫌なんだよ。あとはどうなったって知らないよ」とばかりEU離脱に向かってしまいました。そういう感情がむき出しになってしまった。
もしも日本のみなさんがそういった感情をお持ちでしたら、それをもう少し質の高い議論に高めて、理性的な判断で自分たちの人生を決めていただけることを強く望みたいです。イギリスの離脱はポピュリズムに流された悪い例として、無責任な社会にならないように願います。
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 ジャーナリストの意見は20世紀的価値観を不動のものとし、現在を「ポピュリズム」として非難している内容でまったく時代遅れで無意味だが、紹介している事実は興味深い。イギリスでは増え続ける移民の問題とそれを労働力等として肯定して利益を享受していた現在の支配階級への大きな反感が前提にあり、アメリカの場合も現在の支配体制(オバマケアなどの民主党的な黒人や下層市民優遇、移民優遇政策)に対する反感が多くの市民に生まれていたことが、変動の原因になっているということである。
 EUは今後、対イスラム教徒戦で慢性的なテロとの闘争に社会全体が巻き込まれる。EUは偽善を理念にした「死刑廃止」「移民優遇」などのバランスを欠いた行き過ぎた「人権政策」から生まれた組織で、イスラム教徒のテロの温床になる政策を成立の基盤にしているので、ISがきっかけになった最近の大規模なテロは、実はEUの理念そのものが生み出した行為である。テロの実行犯をEUは死刑にすらできない。EUの今の法律では、人種差別へのプロテストというテロの正当な理由があったというような偽善的判決が出れば、実行犯は無罪釈放の可能性すらありえる。
 EUは、ユーゴスラビアでのイスラム教徒への民族浄化(男性市民を虐殺し、女性を性奴隷として拉致監禁して集団で強姦する)の実行責任者たちに中途半端な判決しか出せなかった。
 ラシュヴァ渓谷の民族浄化
 フォチャの虐殺
 実行犯は現在ではすでに刑期を終えて、大半が皆、一般社会に紛れ込んでいる。EUの偽善法ではこれらの犯人を死刑にできない。このときの被害者はイスラム教徒だったので、この民族浄化戦の経験がISの戦略になっている可能性も高い。ISの幹部や指揮官に、ユーゴ出身者が多いのは、このとき虐殺を免れたユーゴスラビアのイスラム教徒の少年、青年たちが復讐のためにEUへのテロ作戦に参加し、幹部となって指揮していることを意味している。

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欧州の入口、西バルカンが危ない
バルカンには欧州最古のイスラム教共同体が存在する。その中でもボスニア・ヘルツェゴビナでは、イスラム教創始者ムハンマドの生き方を模範とし初期イスラム教(サラフ)への回帰を訴えるイスラム原理組織サラフィー主義者がイスラム戦士をリクルードし、シリアやイラクで戦うイスラム過激派組織「イスラム国」(IS)に送っている。オーストリア国際政治研究者のバルカン専門家 Vedran Dzihic氏がオーストリア放送とのインタビューの中で答えている。以下、同氏の情報に基づく。
 バルカン最大のISリクルート先はボスニア、それにセルビア共和国南部サンジャク地域、アルバニア、マケドニアだ。昨年初めまでにボスニアから330人、コソボ出身が150人、アルバニアから90人、セルビア出身70人、そしてマケドニアから12人がサラフィー主義者にリクルートされ、シリア入りしたことが明らかになっている。
 バルカンでのリクルートのやり方は欧州諸国と同様、インターネットが利用されている。ブリュッセル、パリ、ウィーンと同様、若者たちがネット世界で過激派と遭遇し、リクルートされている。それに対し、バルカン諸国の指導者たちは、若い青年たちがネットでイスラム過激派と接触する危険性を過少評価してきた。IS関係者はバルカンの若者たちにソーシャル・ネットワークを通じ、よりよい生活を約束し、勧誘している。バルカンのイスラム教専門家たちは、「イスラム過激派のビデオがソーシャルネットワークで拡大されている」と久しく警告を発してきた。
 それでは、なぜボスニアの青年たちがイスラム過激派のリクルートに応じるのか。Dzihic氏は、「若者の失業率の高さを見れば分かる。バルカンでは平均50%だ。2人に1人が失業状況だ。ボスニアでは63%だ。世界最高の失業率だ。彼らは両親のもとで生活している。生活の急速な改善の見通しはない。雇用市場は縁故主義が席巻し、政府関係者が独占している。一方、青年たちは理想主義、行動欲から、イスラム過激派のリクルートに応じてしまうのだ」という。
 コソボでも同様だ。コソボは欧州でも最も若い国家だ。ほぼ90%の国民が30歳以下だ。ISはコソボの若者たちに「もし一緒に戦うのならば家庭持ちにはハウスを与える」と約束する。コソボは2008年、念願の独立国家となったが、国民経済は停滞し、国民の間で失望が大きい。
 IS闘士にボスニア出身者が多いのは、ボスニアではイスラム教徒が最大宗派であるという事実だけではない。旧ユーゴスラビア戦争で多数のムジャーヒディ―ン戦士(ジハードを遂行する者)が国内に入ってきた。彼らは1979年のアフガニスタンで対ソ連戦争を経験してきたプロの戦闘士だ。ユーゴ戦争ではイスラム教派を支援して戦った。戦争後、サウジアラビアの財政支援を受けてボスニアでイスラム寺院、イスラム文化センターが建設され、そこでサウジの主要宗派ワッハープ派がボスニアのイスラム教徒に影響を与えている。
 ボスニア政府は2015年7月、テロ戦略を構築して、テロ対策に乗り出し、同年10月には欧州評議会のテロ対策関連の付属議定書に署名している。同国はテロ対策で欧州連合(EU)との連携を強化する一方、バルカン地域協力を深め、地域間の協力、情報交換の促進にも積極的に乗り出している。
 なお、パリで開催された第3回西バルカン諸国首脳会議で4日、メルケル独首相は、「英国のEU離脱は西バルカン諸国の加盟問題に悪影響はない」と述べ、欧州統合を目指す西バルカン諸国を安心させている。オーストリアのケルン首相は、「西バルカンの安定発展は欧州にとっても重要だ」と述べる一方、西バルカン諸国がイスラム過激派の影響を受けていることに懸念を表明している。なお、欧州委員会はボスニアをイスラム過激テログループへの支援国ブラックリストに載せている。
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 現在のヨーロッパにおける対イスラム教徒との慢性的闘争状態の起源は、直接には1979年のロシアのアフガニスタン侵攻にある。歴史を辿ってロシア人のイスラム教徒憎悪の元を正せば、13世紀のモンゴル人によるロシア征服での民族浄化体験(男性を皆殺しにして、女性を徹底的に強姦してモンゴル化する)とその後、イスラム教化したモンゴル人国家との慢性的戦争状態があり、ロシア軍の度外れた無秩序、暴力、残虐性は人類史上、最も残虐非道な軍隊だったモンゴル人の残虐さのトラウマから来ていると言えるかも知れない。
 ソビエト連邦による戦争犯罪
 第二次世界大戦の満州や樺太で、日本人の私たちもそれを体験した。
 ソ連軍兵士の強姦、殺戮、暴行、強奪
 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』にも、モンゴル=ロシアの暴力がノモンハン、シベリアでの収容所体験の描写で描かれている。
 過剰な暴力の記憶は次の過剰な暴力につながり、遺伝子のように受け継がれると同時に連鎖拡大して現在に続いている。そして、それは今、イスラム教徒において再現されようとしている。21世紀のヨーロッパは、こうした暴力の衝突の場となることをすでに免れ得ない。イギリスがいち早く、EU的偽善(いかなる暴力でも死刑には値しない)による20世紀社会の、21世紀における自壊からその身を退けたのは、16世紀から世界史を動かしてきた民族の直感とも言えるだろう。非常に懸命な選択で、過剰な暴力には暴力(死刑)で報いるしかないという選択肢を自身に与えたことは、独立した文化を持つ社会として当然のことである。

 21世紀は「新しい中世」と呼ばれるのが相応しく、かつての中世がそうだったように、様々な社会や集団が相互にせめぎ合い、慢性的な暴力(=小規模な地域戦、ゲリラ戦の慢性化)が日常化する社会になると予想される。暴力に対して過剰になり過ぎない暴力で抑制的に対応する必要は社会の存立のために避けられない。2016年におけるイギリスのEU離脱は、そうした21世紀の来るべき世界への極めて現実的な対応である。移民の名を騙る武装民兵による民族浄化戦や残虐なテロ行為には徹底的に武力での制圧や死刑で対抗する、社会の維持には当然過ぎるほど当然な反応である。

2)アメリカの崩壊
 前回、トランプに関する記事を書いてから、21世紀のアメリカの予兆ともいえる事件が次々に起こった。
(1)黒人元兵士による警官襲撃事件
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米警察官の黒人射殺事件は新たな人種問題の火種か
 相次ぐ警察官による黒人射殺事件への抗議デモが行われていた米テキサス州ダラスの繁華街で、7日夜、警察官を標的にした狙撃事件が発生した。少なくとも11人の警察官と1人の民間人が撃たれ、5人の警察官が死亡。人種問題が背景にあるとされる警察の不当な暴力に抗議するデモは、警察官が次々に殺害されるという前代未聞の結末を迎えた。事件を振り返りながら、アメリカで大きな社会問題となっている警察官による過剰な発砲についても考える。(取材・文/ジャーナリスト 仲野博文)
友好的なムードだった抗議デモ
突然の発砲で周囲はパニック状態に
 警察官が黒人を射殺するケースが後を絶たないアメリカ。5日にはルイジアナ州バトンルージュで37歳の男性が2人の警察官にタックルされ、路上に体を押し付けられたまま胸部を銃で撃たれ死亡した。翌日にはミネソタ州ファルコンハイツで、走行中の自動車のライトが壊れていたことを理由に停車を求められた学校職員の黒人男性が、免許証を警察官に手渡そうとした際に突如発砲され死亡した。
 バトンルージュのケースでは、周辺の目撃者や商店主が携帯電話で一部始終を撮影し、それをSNSで公開した。ファルコンハイツのケースでも、同乗していた男性のガールフレンドが、撃たれた男性の様子や警察の対応を携帯電話からライブで動画配信した。これらの映像は瞬く間に多くの人にシェアされ、警察の過剰な暴力の様子が改めて知られることとなった。
 ファルコンハイツの事件まで含めると、今年の1月から少なくとも123人の黒人が警察官によって殺害されている。「激しく抵抗したため、やむを得ない措置であった」という警察側の弁明は、スマホの普及やSNSの登場によって、昔のように簡単に受け入れられなくなってきた。5日と6日に連続して発生した警察官による過剰な発砲は、アメリカ国内でも大きな衝撃をもって報道され、警察による行き過ぎた力の行使に抗議する集会が7日に全米各地で開かれた。ニューヨークやワシントン、シカゴといった町に加えて、ダラスでも同様の集会が行われ、約800人が町の中心部に集まっていた。
 地元メディアの報道では、ダラスの抗議集会には警備目的で約100人の警察官も配置されていたが、集会は穏やかなムードで行われ、警備の警察官と笑いながら写真撮影する参加者の様子もツイッターに投稿されていた。集会が終わる直前、午後9時前に狙撃が始まり、次々と警察官が倒れ、現場は一瞬にしてパニックになったのだという。集会に参加していたクラリサ・パイルスさんが当時の状況を語ってくれた。件について「多くの米国人が感じている怒りと不満、深い悲しみ」を感じているとフェイスブックに書き込んだ。
(以下は、サイトで)
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 今回の事件もネットで警官が黒人を銃撃する様子が中継されたことから憎悪が広がっており、以前のように支配者側が一方的に情報をコントロールすることができなくなり、支配階級側の「偽善」「隠蔽」が通用しなくなったため法的権威が崩壊を始めたと理解できるだろう。同時に、トランプの台頭で差別される側がアメリカの未来に希望をもてなくなり、アメリカの過酷な差別を糊塗してきた共同幻想がその効果を喪失し始めていることも大きな原因と思われる。クリントンもトランプもアメリカを今まで纏めてきた共同幻想を再生するカリスマ性も能力もない。こうした白人対有色人種、白人対移民の対立は、今後ますます拡大激化することは避けられない。
 今までアメリカでは繰り返し、小学校から大学までキャンパスで銃撃による無差別殺戮が繰り返されてきた。なぜ学校なのか?理由は簡単で、学校=努力すればステータスを上げるチャンスがあるという共同幻想強化機関であり、それが何の意味もないことを知った犯人が「偽善」「隠蔽」に対して銃撃による形で復讐をおこなったと見ることができる。これが、今年、一般市街地に拡大し、末端で国家権力を行使している警官に向けられたことは、すでにアメリカの共同幻想が機能不全に陥っていることの証拠である。
 これはモラルや道徳の問題ではない。社会的公平公正をどう守るかという非常に困難で深刻な問題がその背後にある。こうした偽善的共同幻想崩壊現象は今後、日本はもちろん東アジアや中南米等、貧富の差が過酷に広がる世界各国に広がっていくであろう。
(2)共和党の事実上の分裂
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トランプ氏の共和党、崩壊する経済政策の柱
貿易や社会保障を巡る姿勢が脅かす党のアイデンティティー
 米共和党はこの数十年間、小さな政府と税率の引き下げ、そして自由貿易の擁護を経済政策の柱としてきた。
 だがドナルド・トランプ氏はその大半を放棄している。それにより有権者層の一部を取り込む一方で、共和党が長い間維持してきたアイデンティティー(党らしさ)を脅かしている。
 共和党大統領候補の指名を得たトランプ氏は、貿易協定を破棄することや、国外で事業を展開する米国企業の製品に関税を課すことを辞さないと表明している。社会保障の給付金制度は固守すると約束し、歳出抑制を打ち出している党指導部を非難している。移民やインフラ整備の面では、政府の関与を拡大することになる政策を支持している。
 「共和党の経済政策の柱が完全に崩壊し、塵(ちり)と化した」と、保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のジェームズ・ペソコウキス研究員は指摘する。「少なくとも今回の選挙では消えた」
 貿易や移民政策を巡るトランプ氏と党の激しい対立は、長い間くすぶってきた党内の不和を再び表面化させている。過去の選挙戦ではこうした不和に突き動かされた候補者が出てきたこともある。例えば1990年代のパトリック・ブキャナン氏や2008年のマイク・ハッカビー氏だ。ただ、これらの候補者が最終的に負けると、これまでは党内の不和も消えていった。
 最近の世論調査では、共和党の主流派が拒否する政策を、党員の大多数が支持していることが分かった。エモリー大学で政治学を研究するアラン・アブラモウィッツ氏と2人の同僚が今年実施した調査によると、共和党に登録している623人の有権者のうち、3分の2近くが公的債務削減策としての社会保障費やメディケアの給付金の削減に反対している。しかも、過半数が年間所得25万ドル(約2600万円)を超える高所得層を対象にした税率の引き上げを支持している。
 エコノミストのグレン・ハバード氏は「トランプ氏によって明確になったことは、対処すべき有権者の懸念事項がまとまって存在しているということだ」と指摘する。ハバード氏はブッシュ政権下で仕事をした経験があるほか、2012年の大統領選ではミット・ロムニー候補の経済顧問を務めた。
トランプ氏が負ければ党内さらに混乱か
 トランプ氏の選挙運動から政策に関する結論を引き出し過ぎないよう警鐘を鳴らす向きもある。具体的な政策が浅薄で、トランプ氏個人の気質にはるかに焦点が当てられているためだ。リバタリアン系のシンクタンク、ケイトー研究所のアイク・ブラノン氏は「選挙活動中に(トランプ氏が)何を言おうと、実際に統治した時の政策とは何の関係もない」と話す。「選挙活動と統治がつながっているそぶりさえ見せない」
 トランプ氏が予測不可能なことが、共和党の政策論と統治のあり方に影を落としている。共和党の下院院内総務を務めたことのあるエリック・カントー氏(バージニア州)は「トランプ氏が何をしたいのか分からない。彼は多くの問題で両側の立場をとってきた」と話す。
 11月の本選でトランプ氏が勝利すれば、ポール・ライアン下院議長(ウィスコンシン州)といくつかの政策論で対立する可能性がある。ライアン氏は先月、共和党主流派の考えに沿ったアジェンダを並べた。すなわち、規制を減らし、社会福祉国家のあり方を見直すが、国境に壁を造ったり雇用を国外に移転させた企業を罰したりはしないというものだ。トランプ氏が副大統領候補にインディアナ州のマイク・ペンス知事を選んだことで、党内のこの一翼とトランプ氏の結びつきは強化される。
 一方、11月にトランプ氏が負けた場合は、党の将来を巡って今よりはるかに混乱した戦いが始まるとアナリストは予想する。ポピュリスト(大衆迎合主義)色のより濃いトランプ氏の政策案をわれ先にと提唱する候補者が出てくる可能性がある。彼らは、共和党の一般党員は多くが考えているよりもイデオロギー的ではなくなっていることの証しとして、トランプ氏の訴求力を挙げる可能性もある。一方、保守派はすでに、トランプ氏の台頭を例外として一蹴し、より純粋なイデオロギー面の基本理念に戻ることを訴えている。
 ブッシュ前政権で経済問題に取り組んだ経歴を持つトニー・フラット氏は、共和党は最終的に、貿易推進派か貿易反対派のどちらと協調するのか選ばなければならないと話す。
 フラット氏は「少しだけ見解が異なる人に異論を唱えることはできるが、反対の見解を持つ人に対してはできない。一貫性がないうえ、1回の選挙で転換するものでもない」と話す。フラット氏はトランプ氏に反対している。
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 共和党の内部分裂はアメリカの現実主義が時代の変化に対応できなくなっていることの顕れであり、トランプ大統領が誕生してもしなくても、アメリカを支えてきた現実主義が事実上、崩壊することは避けられない。

 いずれにしても20世紀は完全に終焉を迎えた。21世紀はまだ混沌としているが、予兆は顕れている。それは20世紀後半の価値観をすべて否定していくような過酷な世界であり、決して好ましい未来ではない。しかし、私たち人間にとって乗り越えるべき未来である。


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