M氏は今日は帰らねばならない。
色々と問題はあるとは言え、彼女のいるM氏。
これもまた切ないが、よく彼もつきあってくれると思う。
流石に前夜はきちんと眠らなければお互い身体が持たないので、ぐっすりと眠った。
それでも『いつになく』(←太字(笑))、(旅先だと私は大抵そうなのだが)目覚ましをセットした時間よりも早く目が覚めた。
一人旅は元来嫌いではない。
でも、今、一人の京都はなんだかあまりに切ない気もする。
早朝からM氏をキスで起こし、分かっているのに「帰らないで」とM氏に駄々をこねてみたりする。
分かっているの。
でも、
帰らないで。
一人にしないで。
できないと分かっているからこそ、言ってみる位いいでしょう?
朝食も食べないまま、M氏を京都駅まで見送りに行く。
せっかくの時間なんだからいいよ、と言う彼。
でも、別にそんなに見たいものがあるわけではないのよ。
手持ち無沙汰だし、予定もないし、気力もそんなにないし。
見送りしてから、考える(笑)。
晴天。
M氏が改札の奥に消えてから。
さぁ、どうしたものかな。
方向音痴の私には(笑)、京都一人旅は大変なんだよ。
昨日と同じお店で朝食はイヤだと思い、(昨日は犯罪的に粉っぽいホットケーキを食べた。不味くも、懐かしい味。(爆))別の店でシナモン蜂蜜トーストなるものを頼む。2枚切り(?)くらいの分厚いトースト。耳だけ残して正方形に切り込みを入れてある。・・・あるが、どう考えても食べにくいでしょぅ?なんか想像もできんようなものがでて来るな、京都め(爆)。
朝食を取りながら、さてどうしたものかと考える。M氏の置き土産の地図が唯一のガイド(笑)。高校の修学旅行で来た時に仁和寺が気にいっていたので、再度行ってみようかなという気になる。京都はそんなに地下鉄が発達していないし、バスはあるけれど旅行者には煩雑で分かり辛い。まぁ、一人なら当然やるけれど。昨日は京都通のM氏におんぶにだっこだったので自分では何もやっていない(笑)。
バスに揺られて仁和寺へ。長っ。(笑)
バスだと能率悪いでしょ~?でも、格安に行こうと思ったらそれくらいしか方法ないしねぇ・・・。全く。
昼前に(バスに揺られて一時間弱か?)仁和寺に到着。
人はいるけれど、そこまで混んでいない。仁和寺の渡り廊下が好きなんだ。落ち着ける。温かい陽射し。廊下に座って庭を眺める。景勝地として名の知られていない方の庭の方が私は落ち着く。(写真がその一部)陽射しに木の葉が輝いて、ほっとする。滑らかな苔。
幾人もの観光客が通り過ぎ、修学旅行生がどやどやと廊下を渡っていくが、私は座ってじっと庭を眺める。この間。これが一人旅の良さ。誰にも気兼ねせず、気の済むまで。そこに立ち止り、時に通り過ぎる。
廊下に一人座る、浅野忠信のような青年がいた。胡坐をかいて、渡り廊下に真ん中に一人座り、微笑んでいた。あぁ、私の撮りたい写真というのはこういう風景なのに。とても穏やかな、満ち足りた微笑。お坊様の微笑みはかくあらまほし、と思うような。写真に残せたらよかったのだけど。人物だと、気兼ねしていつもシャッターチャンスを逃してしまう。
ゆっくりと仁和寺を巡り、写真の庭が見える廊下で再び座って時を過ごした。やはり仁和寺にきてよかったかもしれない。部屋の一つで抹茶を供していた。入り口まで一度戻って券を購入する。今回はまだ一度も京都で抹茶をいただいていない。お菓子に魅力はあまりなかったけれど、やっぱり一回ぐらいは。朱毛せんが鮮やか。しかし席には誰も入っていない。呼び鈴用の鐘が用意されていたが、少し気恥ずかしくて(笑)、直接声をかける。
茶菓子は仁和寺の麩煎餅。でもこれは割りにくくて食べづらいよ(笑)。和三盆の干菓子にしてくれたら良かったのに(笑)。久しぶりの抹茶。とても上手く点ててあった。抹茶自体は、まぁ、こういう席だしそんなに高級なものでもないだろう。でもとても上手に点ててあったので美味しくいただけた。ニ~三亭主と言葉を交わして、退席する。(と言っても陰点てだけどね(笑))とても美味しく頂戴致しました。ご馳走様。なんだかすっかりこれで嬉しくなってしまった。お茶を少しでも習っていてよかったと改めて思う。一人でもこういう時、物怖じせず楽しめるから。
T先生、ありがとうございます。先生のおかげで、今もこうしてお茶をいただくことができます。こんなにサボっていても。基本って身体に染み込んでいるんですね?身体がちゃんと覚えているんですよ、先生。そちらからご覧になっていますか?
仁和寺は御室流という華道の家元でもあるそうだ。初めて知った。何点か生けてあったが、乾燥させた糸瓜の切り口にピンクやら緑やらの色がつけてあって、糸瓜の本体自体は黒く塗ってある。う゛~ん。私はやっぱり自分が習ったせいか、池坊のごく基本形のシンプルな生花が美しいと思ってしまうんだよな。
五重塔やら国宝の金堂やらをのんびりと眺める。写生をしている人達がたくさんいた。五重塔の下の林では、幼稚園生が遠足に来ていて、きゃっきゃっと騒いで走り回る。とても長閑な、見ていて涙が出そうなくらい穏やかで微笑ましい光景だった。
仁和寺を後にして、石庭で有名な竜安寺へ。これも高校の修学旅行以来なので十何年ぶりか。竜安寺って、こんな池とかあったんだ、とか。(笑)なぜだかここは(特に)外国人が多い。竜安寺のつくばいにはちょっとした遊び心がある。禅語の「吾、唯足るを知る」。水の入っているつくばいの中央が正方形で「口」の形として読める。それを漢字の部位に見立て、つくばいの上下左右に、「口」を除いた部位の漢字が記されている。「吾、唯足るを知る。」そう、ありたいものだと改めて思う。その傍らには侘助椿が植えられている。椿は、ノブちゃん縁の花だ。この花の名ゆえに、私たちは出逢った。ふとしたことが、心に響いてくる。この時期だから、仕方がないか。(笑)
その後はひたすらバスに揺られ、途中下車。寺町通りという骨董街をのんびりと下る。(危うく逆方向へいくとこだった(爆))
何を買いたいわけでもない。
何も食べていないのに、お腹も空かない。
M氏と離れてしまえば、食べる理由もない。
トイレに行きたくて(笑)、寺町通りのちょっとトレンディーなカフェで濃厚なチーズケーキを食べる。美味しかったけれど、アイスコーヒーとケーキ持ってくるだけでなぜに15分もかかりますか?イケメン、ウェイターでしたが。全然、心に響かず(爆)。ご丁寧にサービス券に判子まで押してくれたが。いらないし。もう、まず来ないし。(笑)
さすがに疲れて、四条河原町辺りでタクシーへ。今回初めて、何もしゃべらない運転手さん(笑)。最後に相応しい。結局、今回は自分へも何もお土産を買わなかった。友人に、とは思っていたのだがそれも結局そんな気分になれなくて。ごめんね。
やはり私らしいというのか。
夕焼けの中、京都を離れた。
東京に戻ってくると、ほっとした。
数時間前まで、ある種の喧騒に包まれており、周りは関西弁ばかりだったのだと思うとなんとも不思議な気持ちになる。結局、今日京都で食したのは、シナモン・トーストとチーズケーキのみ(笑)。もったいないと言えばもったいない。大好きな湯葉さえ、今回は食べなかったなぁ・・・。
東京駅間近で。
ノブちんと私が過ごした、あのアパートのある場所へ向かう電車があった。
並行して走っていたのだが、やがて静かに私の乗る新幹線から離れていった。
私はその様子をただゆっくりと見送っていた。
4時間後、無事到着。
M氏から電話が来ないので、ちょっと不機嫌(笑)。
拗ねたら、即効真夜中に電話がかかってきた(笑)。
今日の報告をしながら、私はすっかり会津の日本酒で酔っている。
今朝方、生理も始まってしまったし、身体が一層弱っているので酔いも早い。
でも、いいの。
書き切ってしまわないと、終わらないから。
たった二日しか経っていないのに。
全てはもう随分と昔のことのような気がする。
夢から醒めたのか。
それとも、この夢は続くのか。