みちのくの放浪子

九州人の東北紀行

春一番

2017年02月16日 | 俳句日記

 毎度のおはこびで誠に有難うございます。今日はいいお天気でしたね。

九州では春一番が吹いたとかで、気温も四月並みだったそうです。九州の皆さんどうでしたか?

 秋の訪れは台風一過、それこそ緞帳(どんちょう)が落ちるようにやってくることがありますが、

特に、ここ北国では九月の上旬頃にそんなことが多いんです。

ところが、春はというとそうもいきません。

 

 まあ今からですね。三寒四温てんですか、それにつれて衣をとっかえひっかえ、四枚が三枚に、

三枚が二枚になり、一枚になりってんで、二か月ぐらいかけてから春よ春、ああこりゃこりゃ!

てなことになるって訳でして、きょうあたりはマフラーなんぞ無しで出かけた方も多かったんじゃ

ないでしょうかね。

 

 お江戸も今日は、富士は晴れたり日本晴れってなわけで、往来を行く人も明るい表情が多い。

天気の良い日に表情が暗いってぇお人は、癪(しゃく)を病んでいる人か、借金を負っているか、

なかでもいけねぇのが、巾着っ切りって奴ですね。おや!巾着っ切りをご存じない!?

 

 今時そんな商売は流行らねぇから仕方がありやせんが、ようはスリてす。上中下とありまして、

ドンとぶつかって、人様の懐から財布を盗んじゃうのは、あれが上級の「スリ師」。

 昔の人は巾着(きんちゃく)袋に銭を入れて腰にぶら下げてましたから、そいつの紐をすれ違い

ざまに切って盗るってんで付いた呼び名が「巾着切」なんですね。こいつは中級。

 

 一番下級なのが「置き引き」ってえ奴で、人様が物をちょいと置いた隙に持ってっちゃう奴で、

スリに弟子入りしたはなは、ここから始まるらしいんですがね、なんにしたってゲスな商売です。

 なんで八行も使ってそんな話をするのかってぇ申しますと、この手の犯罪が増えているから、

注意しろって、お上からのお達しなんですよ。

 

 枕が少し長くなりましてあいすみませんね。では、

「おい、熊公!」

「なんでぃ八」

「きょうもご隠居のところへ行ってみねえか」

「ああいいけどよ。ご迷惑じゃぁねえか?」

 

「こう天気がいいとよ、長屋のカカア達が家中ひっくり返して、やれ洗濯だの天日干しだの

日の有るうちはピーチクパーチクつるんで楽しんでやがる。お蔭でこちとらの居所が無ぇと

くらぁ」

 

 娯楽の無い時代のことでございます。とくに長屋住まいの奥様方の場合は、家事が

すなわち趣味と実益をかねた娯楽のようなものでしてね。いえ楽しみに変えてしまう

知恵をお持ちなんですね、きっと。

 それにはとうぜん相方が必要でして、隣近所がそれに該当するってわけなんですよ。

ガキども、アッ!いや、お子様たちもその間はキィーキィー・キャーキャー猿みてぇに

遊びまわっていまして、そこで自然と社会性が育つことになります。よく出来てますね。

 

 てなわけで、二人はご隠居の所へとやってまいりました。

「ご隠居、おいでですかい?へぇ、お庭に。さいですか、じゃぁそちらに回ってよろしいんで」

 

「おや、おいでなさい。日の有るうちから珍しいね。ああそういうことか。それはそうだ邪魔

しないほうが賢明だ。私かい、いやいいんだよ、ただの手慰みだ。ゆっくりしておいで」

 

 こうして寒さがゆるんだ春の夕暮れ、ご隠居が日溜りで盆栽の手入れをしてますところに

二人が背戸をあけて入ってきました。しばしのよもやま話に花が咲きます。

 

「なんなら植木屋の松公を今度呼んできやしょうか」

「いや、いいよいいよ。わざわざ松さんのような本職の手を煩らわせるようなことではない」

「ご遠慮なさらなくとも、一向にかまやしませんぜ。あいつと熊とあっしは、鼻たれん時から

遊び友達でさぁ。お互いに蓮の花か、桜の花か知らねえが一緒だと言ってますんでぇ」

「いいねぇ、八つぁんや熊さんにはそんなお友達が居て」

 

    < 一蓮の 花に托すか 春の夕 >  放浪子

 

二月十六日(木)  晴れ 手袋いらず

          川へ、釣り人が出ていた

          遠赤外線の大気に包まれた心地

          調剤薬局、NTT、ベニマルをまわる

          子供たちの元気がひとしお          

 

 

 

 

 


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