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普天間の辺野古への移設を許すな!①

2011-12-27 23:13:53 | 平和

最新記事は: 普天間の辺野古への移設を許すな!②
http://blog.goo.ne.jp/teyata/d/20130301

12月27日 琉球新報
辺野古移設を推進 菅官房長官と小野寺防衛相      

安倍新内閣発足を受けた初閣議後の記者会見で、菅義偉官房長官と小野寺五典防衛相は27日未明、米軍普天間飛行場返還・移設問題で名護市辺野古移設を推進する姿勢を明確にした。
 
安倍晋三首相が21日に「名護市辺野古へ移設する方向で、地元の理解を得るため努力する」と述べたことに関し、菅氏は「総理の言われた通り、できる限り県民に理解してもらう方向で進めたい」と述べ、内閣の考えとして辺野古移設を進める方針を明確にした。
 
一方、普天間代替基地建設に向けた辺野古沖の埋め立て承認申請を行うかについて、菅氏は「できるだけ地元の皆さんの理解を得られる努力をしながら、考えていきたい」と述べ、県や名護市、県民の理解を得ることに努めつつ、申請時期を模索する姿勢を示した。小野寺五典新防衛相は普天間飛行場の辺野古移設について、「普天間の固定化は絶対にあってはならない。抑止力を維持し、沖縄の皆さんが早期の負担軽減が実感できるよう努力し、丁寧に説明する」と述べた。埋め立て申請については「時期は決まっていない」とした。

12月26日 沖縄タイムス
自然保護協会、アセス報告書「問題多い」
       
日本自然保護協会など11団体は25日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた環境影響評価(アセスメント)評価書の補正のための有識者研究会が出した最終報告書について、「科学的・論理的に問題ある部分が多い」と指摘する意見書を防衛省に提出した。

同日、衆議院議員会館で会見した同協会理学博士(海洋環境学)の安部真理子さんらは、埋め立て土砂の調達先に具体的な明記がないことや、サンゴ類の台風接近時の影響の詳細が別添で示されていない点などを指摘。サンゴや海草の種類を考慮せず被度の確保のみの視点に偏っており、科学性に欠けるとした。

同研究会が最終報告を出した11日の翌週の18日に沖縄防衛局が補正評価書を県に提出した点についても「同時進行で行われたものとみられ、独立した機関としては機能していない」と提出の経緯にも疑問を呈した。沖縄防衛局が出した補正評価書にも同様の問題点があるとみており、あらためて意見を出すことを検討している。

12月22日 琉球新報
普天間移設 安倍氏「辺野古に」、仲井真知事「県外変えない」

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自民党の安倍晋三総裁は21日、山口県庁で記者会見し、米軍普天間飛行場移設問題に関し「名護市辺野古に移設する方向で地元の理解を得るため努力したい」と述べ、日米合意に沿った県内移設実現を目指す考えを示した。自民党は衆院選公約で移設先を明記せず、県内の同党候補は全員が「県外移設」を主張して小選挙区か比例代表で当選。衆院選直後の「県内」表明は、反発を招きそうだ。
 
安倍氏は会見で、かつての安倍政権でも辺野古移設を推進した経緯を説明。「民主党政権の迷走で、沖縄の皆さんの気持ちが裏切られた」と強調した。同時に「沖縄の負担軽減と抑止力の維持という中で、各地域にも(負担を)お願いし米軍再編を進めていく」と述べ、基地負担の分かち合いを訴えた。
 
普天間飛行場に関して自民党は衆院選向けの政策集で「固定化に対する沖縄の懸念を払拭(ふっしょく)し、新たな負担を被る関係自治体に特別な配慮・施策を講じる」としたものの、具体的な移設先には触れなかった。石破茂幹事長はこれに関連して20日、仲井真弘多県知事との会談で「党県連や県とよく相談して進めたい」と地元の意向を踏まえて対応する方針を強調した。
 
安倍総裁の発言について仲井真知事は「(県外移設を主張する)自民党県連とも違うのに、県連と調整もしないでどうやって地元の理解を得るのか」と疑問を呈し、「私は、辺野古は事実上不可能だから県外移設を求めるという主張は変えない。私は県民党だから」と述べ、県外移設要求の姿勢は変えないと明言した。
 
自民党県連の照屋守之幹事長は「まだ政権に就かない段階で、そのような発言をするのは理解ができない」「沖縄の実情が分かっていないのではないか」と述べ、安倍総裁の発言に強い不快感を示した。照屋幹事長は衆院選の結果に触れ「(県内では)自民候補全員が、普天間の県外移設の実現を県民に約束して、当選することができた。辺野古移設に反対し、県外移設を求めるのは沖縄の民意だ」と指摘。「総裁は沖縄の実情がよく分からないのではないか。県連は、県外移設実現のため、県選出・出身国会議員と連携を取り、党本部に説明、協議をして再検討してもらう」と話した。

12月22日 沖縄タイムス
県関係議員、困惑や反発 安倍氏発言
       
自民党の安倍晋三総裁の発言に、県関係の自民党国会議員からは「党内論議もしていないのに」と困惑や懸念の声が上がった。他党の議員は一斉に反発するとともに、県関係の自民議員の対応を注視するとした。

国場幸之助衆院議員(自民)は「新たに沖縄から選出された自民の4氏と意見交換もしていない段階であり、理解できない。沖縄側との合意形成が遠のくばかりだ」と懸念した。

照屋寛徳衆院議員(社民)は「驚きはない。化けの皮がはがれたかという感じだ」と一蹴。「自民は政権公約で移設先をあいまいにしたが、辺野古で間違いない。強引に進めても県民の激しい反撃に遭う」と警告した。

比嘉奈津美衆院議員(自民)は「私は県外移設を掲げて選挙戦を勝ち抜いたし、党本部に県外を訴えていく気持ちは変わらない。党内で議論して方針を定めてほしい」と要望した。

西銘恒三郎衆院議員(自民)は「党内での話し合いもしておらず、総裁が発言した状況もよく分からないのでコメントは差し控えたい」と述べるにとどめた。

赤嶺政賢衆院議員(共産)は「辺野古新基地建設はダメだという沖縄の総意を何ら斟酌(しんしゃく)せず、既定路線のように押しつけるのは、米国におもねる最低の外交だ」と批判した。

宮崎政久衆院議員(自民)は「総裁の発言を直接聞いていないが、自分は県外移設を公約に掲げて負託を受けた。相手が誰であろうが県民の意思を伝えて実現する」と決意を示した。

玉城デニー衆院議員(未来)は「県選出の自民議員の対応に県民が注目するだろう。県外を訴えた政治信条を貫けるかどうか。党本部とねじれている課題をあらためて露呈した」と述べた。

島尻安伊子参院議員(自民)は「まだ党内議論はしていない。県選出の自民議員は県外移設を訴えており、沖縄の立場を党内で主張する」と自民の衆院4氏と連携する考えを強調した。

山内徳信参院議員(社民)は「沖縄で当選した自民議員が県外と言っている中、辺野古移設を進めるのは沖縄差別。体を張って阻止する」と怒りを示した。

糸数慶子参院議員(無所属)は「安倍氏はまだ首相になってもおらず、とんでもない」と憤る。「来年の訪米で辺野古移設を約束してくるつもりなんだろう」と先行きを案じた。

12月22日 沖縄タイムス
普天間、辺野古に 安倍氏が表明

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自民党の安倍晋三総裁は21日、山口県庁で記者会見し、米軍普天間飛行場の移設問題に関し「名護市辺野古に移設する方向で地元の理解を得るため努力したい」と述べ、日米合意に沿った県内移設実現を目指す考えを示した。衆院選挙期間中に辺野古移設への具体的な発言はなく、言及したのは選挙後初めて。これに対して県は、辺野古移設へ向けた埋め立て承認申請の可能性が現実味を帯びてきたことに、警戒心を強めている。自民党は衆院選公約で普天間飛行場の移設先を明記せず、県内の同党候補は4人全員が県外・国外移設を訴えて当選した。衆院選直後の「県内」表明に、地元の反発は必至だ。

安倍氏は、かつての自身の政権でも辺野古移設を推進した経緯を説明。「民主党政権の迷走で、沖縄の皆さんの気持ちが裏切られた」と強調した。その上で「まだ政権に戻ってないので詳細なことは分からないが、基本的に辺野古に移設していくという方向で地元の理解を得るために努力していきたい」と述べた。

県の又吉進知事公室長は「従来の基本姿勢を述べただけで驚くに当たらない」と冷静に受け止めた。ただ、次期首相が確実の同氏があらためて辺野古を強調したことで、早期の埋め立て申請の可能性が現実味を帯びてきたことには「(仮に)そんな乱暴なことをしたら、県民の反発を招き移設計画自体が終わるだろう」と強く反発。「知事の県外移設方針に変わりはない。安倍氏も首相としての手腕と度量を県民のために発揮してほしい」と県外移設に取り組むよう求めた。

普天間飛行場に関して、自民党は衆院選向けの政策集で「固定化に対する沖縄の懸念を払拭(ふっしょく)し、新たな負担を被る関係自治体に特別な配慮・施策を講じる」としたものの、具体的な移設先には触れなかった。

石破茂幹事長はこれに関連して20日、仲井真弘多知事との会談で「党県連や県とよく相談して進めたい」と地元の意向を踏まえて対応する方針を強調。仲井真知事は21日の会見で「滑走路が既にある飛行場を見つけて、そこへ持って行くことが当然」と述べていた。

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12月22日の沖縄タイムス

12月22日 沖縄タイムス
名護、憤りと落胆 市民投票15年の日に

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自民党の安倍晋三総裁が「辺野古移設」の方針を示した21日は、くしくも普天間飛行場の代替施設建設の是非を問う名護市民投票から15年の節目だった。「反対」の投票結果は政治的に覆され、市民の対立を生んだ。移設に反対する市長の存在、県外移設を求める県民世論の高まりをよそに、次期首相から再び発せられた「辺野古」。当時、市民投票に関わった人の中には憤りや落胆、苦悩が交錯する。

1997年12月21日、海上ヘリ基地建設の是非を問う市民投票は「反対」が過半数を占めた。しかし、当時の比嘉鉄也市長は投票結果に反して建設容認を表明し、辞任した。名護市辺野古、豊原、久志で移設反対の住民でつくる「命を守る会」代表の西川征夫さん(68)は「この15年、地元は移設の是非をめぐりぎくしゃくし、国策に振り回されてきた」と話す。

当時、ヘリ基地反対協議会の代表だった宮城康博さん(53)は、「県外」を公約に掲げて当選した県選出議員に「住民に約束したことを覆すことはやめて」とくぎを刺す。ヘリポートいらない市民の会」を立ち上げた輿石正さん(66)は「今回の発言は、日米同盟維持のメッセージ、次の名護市長選への挑戦状」と受け止める。だが「15年かけてノーと言える市長が出てきた。孤立させないよう支えたい」と決意を固める。

条件付きで移設を容認する辺野古区代替施設安全協議会の許田正武代表理事は、賛否で揺れ続けてきた土地で「国は理解を得た上で進めてほしい」と思い続けてきた。民主党政権での混乱で容認のハードルは高くなったとし、「首相は沖縄に何度も足を運んで誠意を見せ、説得し、納得させる必要がある」と訴えた。

よく見えてきた! 普天間の代替どころか、辺野古の施設は日米両軍が使用。

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12月21日の沖縄タイムス

仲井真知事、埋め立て申請「地元理解で判断」と。 埋め立て許可を出すためにも名護市長選挙では反対派に勝たねばと言っているに等しい。

12月21日 沖縄タイムス
知事、埋め立て申請「地元理解で判断」
       
仲井真弘多知事は21日午前の定例記者会見で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた埋め立て承認申請について「公有水面埋め立て法の要件を満たしているかで判断する」とし、要件の中には「(移設の是非をめぐる)地元の理解は当然入っている」との認識を示した。

「地元の理解」の意味については「第一に名護市民の考えだろう」とした上で、「(県外・国外移設を求めた)2年前の県民大会に全市町村が集まったので、県全体の意向が『地元の理解』を総括している」とも述べた。

2014年1月にも予定される名護市長選の結果を埋め立て承認申請の判断材料にするか―との問いに対し「今のところ視野に入れていない」と言及。「防衛省がいつ申請を出すのか、出さないのか分からない」と述べた。

12月21日 沖縄タイムス
辺野古埋め立て申請、防衛省が業務委託
       
防衛省が、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う公有水面埋め立て承認申請に必要な設計などの資料作成業務を約1400万円で民間業者に委託していたことが20日、分かった。委託期間は今年9月4日~来年3月29日まで。業者側は資料をまだ同省へ提出しておらず、申請に向けた準備は整っていないが、同省は環境影響評価(アセスメント)の評価書を補正していた早い段階から申請を見据えていたことになる。

防衛省筋は「(委託期限の)3月より前に資料が作成される場合もある」としている。武田博史沖縄防衛局長は20日の定例記者会見で申請時期に関し「相応の作業を要するものがある。年内提出は物理的に難しい」と述べた。一方、武田氏は辺野古移設に伴うアセスにかかった総額が63億600万円に上ることを明らかにした。

2006年度から始まったアセスは辺野古周辺での現況調査に約33億円、08年度に追加調査で約20億円を費やしたが、移設先見直しに着手した民主党政権誕生後はアセス手続きが一時中断され10、11両年度は支出ゼロだった。そのほか07年度約6億6千万円、09年度約1億3千万円、12年度約1億6千万円武田氏は県への埋め立て申請方法について、補正後のアセス評価書と同様、必要書類を担当部署へ手渡す考えを示した。補正評価書は21日にもホームページに掲載するとした。

12月21日 琉球新報
辺野古埋め立て、年内申請は困難 

沖縄防衛局の武田博史局長は20日の定例記者懇談会で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた、県への埋め立て承認申請について「新政権の判断の下、対応を行っていく」との方針を示した。年内の提出については「物理的に困難」と述べた。移設に向けた環境影響評価(アセスメント)で、本年度までにかかった費用は約63億600万円と説明した。
 
公有水面埋立法に基づく埋め立て承認申請について、武田局長は、準備を進めているが設計概要や図書の作成などに関する作業が残っているとし「終了のめどは現時点で決まっていない」とした。同アセスの補正評価書の公告・縦覧は嘉手納町の防衛局や同局那覇防衛事務所などで来週始まる見込み。また、21日にも同局のホームページに掲載される。
 
示されたアセスの費用は作業開始の2006年度から本年度までの環境影響評価業務や環境現況調査、資料作成業務などの費用としている。ただ、同アセス関連事業は86億円超に上るとの指摘もあり、防衛局が、同アセスに関連するとみなさない事業を除いている可能性もある。同アセス関連事業をめぐっては今年1月、受注企業へ防衛省OBが相次いで再就職していたことが判明するなど、天下りの問題が表面化した。入札で「プロポーザル方式」や随意契約を採り、落札率は高止まりしている。

12月20日 沖縄タイムス
社説:[アセス補正書提出]これでは制度が揺らぐ
       
これがまともなアセスといえるだろうか。問題だらけ不備だらけのアセスが堂々とまかり通り、それに基づいて埋め立て申請が行われるなら、日本の環境影響評価(アセスメント)制度に前例のない汚点を残すことになるだろう。

沖縄防衛局は18日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向け、昨年、県に提出した環境アセス評価書を手直しした補正文書を県に提出した。2007年8月から始まったアセス手続きは、補正評価書の公告・縦覧(1カ月)を経て終了することになる。

手続き上の焦点は、国がいつ、どのような形で、辺野古沖の公有水面埋め立てを申請するかという点に移るが、評価書の補正によって問題点がすべてクリアされたわけではない。補正評価書によると、オスプレイを含む航空機騒音の予測値が全15地点で補正前の数値を上回った。「ウミガメの上陸に適さない」としていたキャンプ・シュワブ地区の海岸は「毎年上陸、産卵が見られる」と修正している。「影響が小さい」「影響がほとんどない」などと指摘していたあの評価書は一体、何だったのか。

埋め立て申請をうんぬんする前に新政権がやるべきことは、アセスの全過程をもう一度検証し、問題点を洗い直すこと。米国家環境政策法に基づいて実施される米国でのアセスと今回の国内法に基づくアセスとを比較検討し、「二重基準」の実態を明らかにすること、である。

アセス手続きは、方法書-準備書-評価書の手順を踏むが、今回、沖縄防衛局は、アセスの最終段階である評価書の中に初めて、オスプレイ配備の事実を盛り込んだ。オスプレイの基地を造るというのに、オスプレイの配備を「秘匿」していたわけだ。北部訓練場での訓練排気が動植物に与える影響についても評価書では、まったく予測していなかった。飛行場の訓練計画や飛行ルートについても「米軍の運用につき把握できない」との理由で、記述されていなかった。アセス評価書に対し、仲井真弘多知事が提出した疑問点は579件に及ぶ。知事意見を検討するため防衛省が設置した有識者検討会も「抽象的表現が多い」として見直しを求める最終報告書を防衛省に提出した。知事意見や検討会の最終報告書をもとに評価書を補正したのが今回提出した文書である。

補正評価書は、代替施設建設に伴うジュゴンの絶滅リスクを依然として低く見積もっている。低周波音についても調査していない。補正後も依然として問題点は多い。大規模な米軍施設建設を目的とした辺野古アセスは、一般公共事業のアセスと違って、軍事的要請が優先される上に、基地の機密性の壁に阻まれ、アセス制度の基礎となる情報公開も不十分だった。オスプレイ配備を「秘匿」して住民を欺くようなアセスが果たしてアセスといえるのか。 

12月20日 琉球新報
社説:辺野古補正評価書 政治的正当性欠いている      
 
行政機関とは思えない姑息(こそく)さが際立つ。国民に不信任を突き付けられたばかりの政権による行為の正当性に重大な疑念が浮かぶ。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向け、沖縄防衛局が突如、補正した環境影響評価書を県に提出した。衆院選の2日後、電話で突然連絡し、5分後に約20人の防衛局職員が県の担当課に押し寄せて評価書を置いていった。今後は、仲井真弘多知事に対する公有水面の埋め立て申請の提出に焦点は移る。沖縄の民意は県内移設拒否で一層強固になっており、翻意させることは困難だ。
 
仲井真知事は政権交代が不可避だった衆院選をにらみ、自民党を主軸とする政権に交代した後も県外移設要求を転換させることはないと再三言い切ってきた。提出が既成事実化され、移設をごり押しする根拠とすることは許されない。自公連立政権が辺野古移設を推進すれば、沖縄の民意と正面衝突する局面が来るだろう。仲井真知事は「どうして民主党政権が今の段階で送ってくるのか」と疑念を呈したが、提出の問題性を端的に突いている。
 
衆院選の自民党大勝を受けた安倍新政権は26日に発足する。自民党の政権公約は、県外移設を求める沖縄の候補者に配慮し、辺野古移設に一切言及していなかった。沖縄で当選した自民4氏の意向も踏まえ、新政権の軸足を定める協議は尽くされていない。政権交代を待たず、民主党政権が駆け込みで補正評価書を提出することは、法的に許容されても、政治的正当性が著しく欠けている。
 
森本敏防衛相と気脈を通じ、自民党内に現政権下で厄介な手続きを済ませてほしいという深謀があるなら、民意無視という点において民主党政権と地続きになる。補正評価書は、地元の反発を呼んだ「(移設に際し)環境保全上、特段の支障はない」との文言を削除し、「最大限の環境保全措置を講じる」との表記に改めた。
 
仲井真知事が「環境保全は不可能」と指摘したことを踏まえ、環境保全に支障はないと高をくくることができなくなったことの表れだ。だが、環境を守る実効性は総じて担保されておらず、新基地建設にお墨付きを与える“出来レース”に変わりはない。沖縄社会に背を向けた補正評価書は、政治、環境保全の両面で信頼に足るものではない。

12月20日 沖縄タイムス
「一から出直せ」辺野古アセス補正に批判続々

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航空機騒音 補正前後の比較

米軍普天間飛行場の移設に向け、沖縄防衛局が突然、県などに提出した環境影響評価(アセスメント)の補正評価書。一夜明けた19日になって、新たな環境保全策など内容の一部を説明した。専門家は「移設ありきでは保全はない」と断じ、「一から出直しを」と求めた。

「移植先の環境かく乱」サンゴ

評価書は、代替施設建設工事でサンゴの生息域約7ヘクタールが埋められるとしていた。今回、過去の白化現象まではサンゴが生息していた海域を、回復の可能性がある海域(生息ポテンシャル域)として新たに計算し、約30ヘクタールが消失するとした。

埋められるサンゴの対策としては、初めて移植を挙げた。日本自然保護協会の理学博士(海洋環境学)、安部真理子さんは「移植先の魚類や貝類の事情も考えず、迷惑な話。環境がかく乱される可能性が大きい。サンゴしか目に入っていないのではないか」と疑問を投げ掛ける。

代替施設の護岸に凸凹を付けてサンゴを着生しやすくする、海水の汚濁防止幕を追加するなどの対策についても、「やらないよりまし、という程度のお粗末なもので保全措置とは呼べない。直接埋められないサンゴにも影響が出るだろう」と懸念した。

藻場造成「技術まだ」海草類

辺野古沖には、県内最大規模の海草藻場が広がるが、埋め立てで消失する面積は海草で約78ヘクタール。評価書が示した保全策は、知事意見で「不確実性の程度が大きい」と指摘されていた。補正では、環境保全策について、海草類が覆っている面積が少ない場所や、穏やかな海域へ移植し、藻場を造成するなど、できる限り実施するとしている。移植では、泡瀬干潟の埋め立て事業に伴う実績を参考にすることも挙げた。

泡瀬干潟を守る連絡会の小橋川共男共同代表は「移植した新たな場所で根を伸ばし、拡大することはなかった」と泡瀬の例を指摘。「海草の移植技術は確立されておらず、移植は成功しない」と強調また、生育状況の事後モニタリングの結果を保全策に反映するとしているが、「単に心証をよくしようとしているだけのごまかしだ」と批判した。

辺野古漁港W値71・3騒音

オスプレイを含めた航空機騒音は、場周経路(飛行ルート)から外れる飛行のばらつきや、ホバリング(空中停止)やエンジン調整音も新たに反映させて再予測した結果、全15測定地点で補正前のW値(うるささ指数)を上回った。最も高いのは辺野古漁港の71・3で補正前より2・1上昇。国は環境基準で住居専用地域は70以下と定めているが、防衛局は「漁港に集落はなく、問題はない」とした。ほかの14地点は70以下だった。

ホバリングは1日当たりの回数0・85回、継続時間は300秒で計算。米側がデータを提供しない分は自衛隊機で換算。エンジン調整音は普天間飛行場での実測値を用い、継続時間は約60秒と設定した。一方、離陸を伴わないエンジンテスト音は、普天間で頻繁に確認されているが、補正で反映しなかった。防衛省によると、W値の算出法を定めた同省の通達では考慮しなくてもよいと解釈されるという。

毎年上陸「矛盾だ」ウミガメ

辺野古崎周辺では、ウミガメの上陸、産卵、ふ化が確認されている。にもかかわらず評価書は「上陸には好適ではない」と判断。知事意見は異議を唱えたが、今回も結論は変わらなかった。ただ、2009~11年度の調査で、毎年上陸や産卵を確認したことは記述した。調査内容はすでに報道で明らかになっており、評価書の段階で盛り込まなかった防衛局の対応に批判が集まっていた。
 
世界自然保護基金(WWF)ジャパン南西諸島担当の権田雅之さんは「『上陸に好適ではない』と言いながら毎年確認され、矛盾した内容」と指摘する。代わりの産卵場所として砂浜を整備することも初めて表明された。防衛局は「具体的にはこれから」と説明する。権田さんは「急ぎすぎで、有効かどうか非常に不安。いま一度立ち戻って、慎重に工事計画や規模、内容を検討すべきだ」と求めた。

工事音で絶滅危惧ジュゴン

ジュゴンについては、知事意見に応え、統計学的に絶滅の可能性を探った。100年後の確率を算出し、代替施設建設の有無で「有意差はない」と結論付けた。ただ、計算の基になったのは、えさになる海草藻場の面積だけ。ジュゴンネットワーク沖縄の細川太郎事務局次長は「ジュゴンは漁業の圧力や人間の活動が多い所にはすめないからこそ、生息地が限られている。えさ場があるから大丈夫というのは不誠実であり、机上の議論だ」と批判した。

鳴き声を探知して工事船との衝突を避ける「ジュゴン監視・警戒システム」の導入も示されたが、細川さんは「人間中心の発想」と退ける。「確かなことは、ジュゴンが名護市東海岸を利用していて、工事の音などで追い出されれば絶滅する危険があることだ」と訴えた。

12月20日 琉球新報
辺野古移設アセス 県、補正書受理      
 
県は19日、沖縄防衛局が提出していた、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた環境影響評価(アセスメント)を補正した評価書を受理した。18日の提出を受けて形式審査を終えた。防衛局は同日、補正評価書について担当者らが報道陣に説明した。評価書の総合評価にあった「事業実施に際し、環境保全上、特段の支障は生じない」との表現を削除、579件に上る知事意見を勘案した上で「事業者の実行可能な範囲で最大限の環境保全措置を講じる」としているが、実効性は不透明だ。公告・縦覧は場所を調整中だと説明、県知事への埋め立て承認申請の時期については言及しなかった。
 
全ての知事意見に事業者の対応方法が述べられたが、飛行場運用では米軍に裁量が委ねられ、騒音などの住民負担軽減への保全措置ははっきりしない。埋め立て土砂用に「沖縄、九州、瀬戸内から調達する」とした、砕石場で生じる岩ずり約1640万立方メートルについては具体的な採取地や土量などを明確にしなかった。運搬方法について担当者は「全て海域から輸送する」と説明した。
 
補正の概要からは、防衛省の2009年度~11年度の環境現況調査により、埋め立て区域とその周辺で絶滅危惧種のウミガメの上陸・産卵が毎年確認されたことが明らかになった。また、絶滅危惧種ジュゴンの野生絶滅のリスクに対する事業実施による影響はほとんどないと結論付けた。環境保全措置としては、「砂浜消失の代償として、他の砂浜におけるウミガメ類の上陸・産卵に適した環境整備」「海草藻場消失の代償として、移植や生育基盤の環境改善」「工事用船舶との衝突防止のためのジュゴン監視・警戒システムの構築」「消失するサンゴの移植」などを盛り込んだ。航空機騒音は、新たに辺野古漁港でうるささ指数(W値)が71・3に達し、環境基準を超えた。W値は全15地点で評価書を上回った。
 
米軍機の飛行経路については代替基地から別の基地への施設間移動についても予測試算したが、米軍から正確な飛行経路を聞いた上での試算ではないことを明らかにした。航空機の運航に伴い発生する低周波音については、オスプレイやCH53大型輸送ヘリに加え、AH1攻撃ヘリとUH1汎用(はんよう)ヘリの飛行予測を行い、両機種ともに予測地点で基準値(閾値(いきち))を上回ることが明らかになった。

12月20日 沖縄タイムス
辺野古アセス補正「環境支障なし」削除、県は補正評価書を受理
       
沖縄防衛局は19日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の補正後の評価書について記者団に説明した。事業実施の総合評価で「環境保全上、特段の支障はない」とした補正前の文言を削除し、「環境保全への配慮は適正」という表現に変えた。代替施設建設が環境に影響を与えることを事実上認めた。有識者研究会(中村由行座長)の提言を踏まえた対応。県は19日、補正評価書を形式審査し、内容に不備がなかったとして18日付で受理した。

騒音に対する評価では、離陸を伴わない地上での「エンジンテスト」の音は予測に反映していないことが判明した。普天間飛行場では長時間鳴り響くのが再三確認されているが、防衛局は騒音値を出す計算式にエンジンテストは含まれないとした。再予測の結果、全15測定地点で補正前のW値(うるささ指数)を上回った。基地間移動の騒音ではオスプレイの飛行を反映。1日当たり21・24回、高度千フィートで飛行する設定で67・3デシベルになると初めて盛り込んだ。

代替施設建設中や完成後の一定期間、環境への影響を把握するため、県の指針に基づく「事後調査」は補正前の44項目から60項目に増加。事業者が自主的に行う「環境監視調査」は五つ増えて12項目とし、監視体制を強化する。

環境保全策は新たに、(1)ジュゴンの鳴き声を探知する監視・警戒システムを構築(2)消失するサンゴの移植(3)ウミガメの上陸・産卵用に代わりの砂浜を整備-などを追加した。低周波音の影響は明確な環境基準がなく、個人差や建物の状態による違い、科学的に未知な側面があると引き続き評価は示さず、「予測の不確実性を考慮し、法令に基づく事後調査を実施する」と付け加えた。防衛局は「厳しい知事意見を踏まえ、できる限り解析や保全策を追加した」と述べた。

12月19日 琉球新報
政権交代前に強行、補正評価書提出、防衛相、発言一変
 
沖縄防衛局が18日、米軍普天間飛行場の県内移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の補正書を、県の虚を突く形で提出した。森本敏防衛相は同日午前中の記者会見で「まだ(補正の)作業中で見通しはつかない」と述べ、県への提出は先との見通しを示していた。“不意打ち”を食らわす提出に加え、衆院選で惨敗し、国民から不信任を突き付けられた民主党政権の駆け込み提出に「どさくさに紛れた提出だ」と、県民から怒りの声が上がる。普天間飛行場への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの強行配備に続き、突然の評価書劇に県と政府との溝は広がる一方だ。

5分前に連絡
午後3時30分すぎ、沖縄防衛局の職員約20人が、約7千ページに上る補正された評価書24部を段ボールごと、県庁に運び込んだ。県に提出を伝える電話があったのはわずか5分前だった。「混乱を避けるためだ」防衛省幹部はこう説明する。昨年末に評価書を県に提出した際、県庁入り口に陣取った移設反対派の住民らの阻止行動で、提出を阻まれた混乱を挙げた。
 
防衛省は有識者が知事意見を踏まえて補正すべき点を提言した11日の最終報告提出を受け、先週末までに補正された評価書の印刷を終え、提出準備を整え、時期をうかがっていた。政府関係者は「今週、提出するとは聞いていた。だが、今日出すことを初めから、決めていたのではなく


沖縄八重山「教科書採択問題」アーカイブ 2011 11/9-12/17

2011-12-18 17:29:37 | インポート

12月17日 琉球新報
文科省、県に回答送付 八重山教科書「地区協基づく教科書を」
        
八重山地区の教科書採択問題について文部科学省は16日、竹富町教育委員会が同省に対し、八重山採択地区協議会の答申に従わない場合に教科書が有償となる理由などについて説明を求めた文書への回答を県教育委員会にメールで送付した。県教委は同文書を竹富町に送付した。
 
文科省教科書課は回答の内容について「これまで何度も国会答弁などで示したことと同様だ」と説明。「無償措置を受けるためには無償措置法の手続きにのっとらなければならない。竹富町は9月15日の文科省の指導通り、無償措置法に基づいて行われた八重山採択地区協議会の結果に基づいて同一の教科書を採択しなければならない」と述べた。
 
一方、竹富町教委と県教委が有効としている9月8日の全員協議については「当事者である石垣市教委と与那国町教委が無効としている」とし、あらためて「整っていない」との見方を示した。

12月10日 沖縄タイムス
八重山教科書:竹富教委、東京書籍堅持
       
八重山地区の中学公民教科書問題で、地区協議会が答申した育鵬社版の採択の有無について、文部科学省から対応方針の報告を求められている竹富町教育委員会(竹盛洋一教育委員長)は9日、臨時会を開き、あらためて東京書籍版の採択と、教科書の無償給付を求めて報告することを全会一致で確認した。文科省への報告では、同教委だけに有償化を促す国の対応を不服とする根拠を示す一方、文科省に対しても有償化の明確な根拠を問うている。週明けにも県教委を通して通達する。

臨時会では慶田盛安三教育長が委員に対し「採択権は教育委員会にある。竹富に瑕疵(かし)はない」と強調。町の来年度予算に教科書の購入費用を計上しないことなどを説明した。閉会後、竹盛委員長は「町教委としてあらためて意思統一した。協議会の答申には法的拘束力がないという判断について、今後、県教委と意見のすり合わせを図りたい」と話した。慶田盛教育長は「国が教科書無償措置法にこだわるならば、3市町すべて有償にすべきではないか」と疑問を呈した。

12月10日 琉球新報
東京書籍版の無償要求 竹富教委「有償説明を」

竹富町教育委員会は9日、臨時委員会を開き、東京書籍版公民教科書の採択を変えず、無償給与を求める方針を決めた。12日にも県教育委員会を通じて文部科学省に文書で伝える。文科省が八重山採択地区で竹富町だけ有償と決めた根拠について詳細な説明も求める。
 
育鵬社版なら無償給与の対象で、東京書籍版なら町費で購入することができるとの見解を示し、今月末までに使用教科書を決めるよう竹富町に求めていた文科省の事務連絡への回答。竹富町教委は育鵬社版を選定した教科用図書八重山採択地区協議会の答申に法的拘束力はなく、東京書籍版を採択したことに法的瑕疵(かし)はないというこれまでの考えを説明。育鵬社版を採択した石垣市や与那国町と同様、無償給与の対象とするよう求める。
 
慶田盛安三竹富町教育長は「法的な瑕疵があれば対応するつもりだが、文科省は何が過ちかも示さず無償を外すと言っている。9月8日の全員協議が無効である理由や、竹富町だけ無償対象外とできる根拠を詳しく説明してもらいたい」と話した。

12月9日 沖縄タイムス
学ばせたい公民 「東京書籍」ほぼ半数

八重山教科書問題に関連し、沖縄大学(加藤彰彦学長)が10月に実施した来年度使用の中学校社会科教科書展示来館者アンケートで、回答者54人のうち半数近くの26人が、竹富町が採択した「東京書籍」を「沖縄の子どもたちに学ばせたい公民教科書」(複数回答)として選んだ。展示された7出版社の教科書で最も多く、「帝国書院」13人、「教育出版」12人と続き、石垣市と与那国町が採択した「育鵬社」は11人だった。

同大は10月3日から11月5日まで、文部科学省の検定を通った7社の教科書を図書館で展示。八重山地区で採択をめぐり問題となっている中、多くの人に教科書を手にとって見てほしいと実施した。学ばせたい教科書はそのほか「清水書院」6人、最も少ないのは「自由社」「日本文教出版」の各5人だった。

東京書籍を選んだ理由(自由記述)は「沖縄戦の犠牲者数、集団自決のこともちゃんと書かれていた」「地球市民としての理念がいい。政治、経済、司法など社会人として必要な事柄が多い」「憲法に立脚したもの」「入試に必要な知識が豊富」などだった。育鵬社では「日の丸、君が代について詳しく知ることが必要」「日本国民として国を愛し、国の未来に責任を持てる子どもたちを育てられる」などの意見もあった。

一連の教科書問題について「調査員の意見尊重を」「現場の声、民意をくみ取って決めるべきだ」「制度や仕組みを変えるのは悪くないが、変え方に問題がある」「採択は教科の専門家と教師に任せるべきだ」などがあったほか「新聞が騒ぎすぎ」との指摘もあった。回答者の内訳は20代が20人と最も多く、30、40代各6人、50代7人、60代9人、70歳以上3人など。「所属」は一般24人、沖大や沖縄国際大の学生17人、教職員5人などだった。

12月8日 八重山毎日
文科省に直訴 教科書問題で住民団体 3万人余の署名提出

竹富町の子どもに真理を教える教科書採択を求める会(仲村貞子会長)と子どもと教科書を考える八重山地区住民の会は7日、文科省を訪ね、郡民大会の決議に基づく要請を行った。東京書籍で無償を求める訴えに賛同した町民1916人、「東京書籍」を採択した9月8日の全員協議の有効性を認める3万870人の署名もそれぞれ提出した。成井崇文部政務次官は「大臣に伝える」と述べるにとどまった。

一行は仲村会長ら7人。文科省の鈴木宏幸初等中等教育局教科書課長補佐との面談は1時間30分余にわたったが、9月8日の全員協議をめぐる認識はすれ違ったままだった。成井政務次官とのやりとりは30分で終わった。この後、支援者や県選出国会議員らと意見交換した。竹富町から参加した石原純一竹子連会長は「子どもたちも教科書が決まらないから不安に陥っている。早めの解決策を」と話した。住民の会と保護者らが集めた3万870人の署名の内、郡内から約7000人が集まったという。

12月8日 沖縄タイムス
八重山教科書:石垣・竹富住民が3万人署名
       
八重山地区の中学公民教科書採択問題で、石垣市と竹富町の住民代表7人は7日、文部科学省の城井崇政務官を訪ね、東京書籍版が地区内同一教科書として採択されたことを確認し、無償給付するよう求めた。石垣市の3万870人分、竹富町の1916人分の署名も提出した。

要請したのは、子どもと教科書を考える八重山地区住民の会、子どものための教科書を考える保護者の会、竹富町の子どもに真理を教える教科書採択を求める町民の会などの代表。要請では、八重山採択地区協議会が調査員の評価が低い育鵬社を選定したことに、教職員、地域住民の不信感と怒りがあると反発。9月8日の3市町の全教育委員による協議で採択された東京書籍版を無償給付するように求めた。

竹富町は教科書無償給付の対象にならないとした中川正春文科相の答弁に「義務教育の無償を定めた憲法26条に違反している」などと批判した。城井政務官は「要請の趣旨を大臣や副大臣に伝える」と答えたという。

要請後、参院議員会館で開かれた集会で、同町民の会世話人代表の仲村貞子さんは「寝ても覚めても教科書の問題が心配。平等にしてほしい」と訴えた。竹富町子ども育成連絡協議会の石原純一会長は「子どもたちも不安を持っている。手を取り合って立ち向かっていきたい」と呼び掛けた。住民らは民主党の高井美穂副幹事長や文科省教科書課の担当者らに同様の要請行動を行った。

12月8日 琉球新報
「東京書籍、無償給与を」 住民、文科省に3万超の署名

八重山教科書採択問題で八重山地区の住民代表が7日、文部科学省の城井崇政務官に対し、東京書籍を採択した竹富町教育委員会の決定を認めて無償で教科書を給与するよう要請し、3万2786人分の署名を手渡した。城井政務官は「大臣、副大臣に伝える」と述べるにとどめた。瑞慶覧長敏衆院議員が同行した。
 
要請に先立ち、住民代表と文科省初等中等教育局教科書課の担当者が面談。この席で文科省側は、竹富町に教科書採択の判断を迫り、その結果報告を求める県教育委員会宛ての12月2日付文書について、地方教育行政の組織および運営に関する法律(地教行法)第48条の「指導」に当たると明言。県と竹富町に指導内容の履行を促す考えを示した。文科省は2日の琉球新報の取材に対して「指導に当たらない」と説明していた。
 
そのほか民主党の高井美穂要請本部副本部長にも要請。高井氏は要請団が指摘する問題点に関心を示していたという。参議院議員会館で報告集会も開かれた。住民らが提出した署名は「子どものための教科書を考える保護者の会」が集めた3万870人分と「竹富町の子どもに真理を教える教科書採択を求める町民の会」が集めた1916人分。

12月3日 沖縄タイムス
石垣・与那国が需要冊数を頭越し報告
       
八重山地区の中学公民教科書採択問題で、石垣市の玉津博克、与那国町の崎原用能両教育長が、文部科学省に対して直接、育鵬社版公民教科書の需要冊数を「情報提供」として文書報告していたことが2日、分かった。本来、文科省への冊数報告を担う県教育委員会は東京書籍版を採択した竹富町を含め、3市町に同一教科書の冊数報告を求めているが、両教育長の文書発出は県教委の頭越しに行われた形だ。

両教育長は1日付で中川正春文科相宛てに冊数を石垣市が551冊、与那国町が21冊と報告。いずれも教育委員会を経ていないが、玉津氏は従来、「市教委の採択業務は終わっている」との見解を示しており、今回の冊数報告も教育長に委任された事務の一環と捉えているようだ。玉津教育長は文書で「県教委は法的に何ら根拠のない9月8日の会議(3市町の全教育委員による協議)を有効と主張している」とし、「(市教委は)規約に基づいた8月23日の協議の結果に従い育鵬社を採択している旨を報告しているが、文科省に届いているかどうか懸念されることから情報提供する」としている。同文書には「一部の政治的運動から多大なご迷惑をおかけしていることに対し、心辛い思いをいたしております」との一文もある。

八重山教科書:竹富、予算計上しない方針
       
八重山地区の中学公民教科書採択問題をめぐり、文部科学省から「無償給付の対象外」とされ、町負担の教科書購入を促されている竹富町は2日までに、「教科書は無償給付されるもの」として、来年度予算に教科書の購入費用を計上しない方針を決めた。同町教委は東京書籍版の採択を堅持する構えだ。

慶田盛安三教育長は「大事なのは教科書の内容。『はいそうですか』と採択できるわけがない」と反発。川満栄長町長も「町教委の決定を尊重する」としている。一方、文科省は同日、県教委を通じて同町教委に対し、地区協議会の答申(育鵬社版)を採択するかどうかの対応方針を12月末までに同省に報告するよう求めた。中川正春文科相は同日の閣議後会見で、「(答申と違う採択なら)竹富が責任を持って独自の教科書を子どもたちに支給してくださいとお願いしている」と述べ、有償購入を促した。県の大城浩県教育長は同日の県議会代表質問で、「法的拘束力のない答申採択を(竹富町に)求めることは難しい」と述べ、文科省の対応に疑問を呈した。

12月3日 琉球新報
八重山教科書 文科省、県教委に文書 竹富町の判断求める      

来年度から八重山地区の中学校で使用する公民教科書が一本化できていない問題で文部科学省は2日、12月末までに竹富町は使用する教科書を決定し、その結果を報告するよう求める文書を県教育委員会に出した。
 
文書は採択地区内での採択教科書の不統一を解消するため、教科用図書八重山採択地区協議会が選定した育鵬社版の公民教科書ではなく、東京書籍版を採択した竹富町教委だけに判断を求める内容だ。文科省は文書で竹富町教委が育鵬社版を採択した場合は無償となるが、東京書籍版を採択する場合は、教科書無償措置法の趣旨を全うするためにも「竹富町が購入し生徒に無償給与してもらうしかほかない」との見解を示している。文書内容について文科省教科書課は「指導には当たらない」と説明している。

12月2日 琉球新報
教科書採択、竹富町に決断要求 文科省森副大臣      

八重山地区の中学生が来年度から使用する公民教科書が一本化できない状態が続いている問題で文部科学省は1日、竹富町教育委員会に対し、12月末までに、どの教科書を採択するのかを決定し、文科省に報告するよう求める方針を決めた。事実上、無償給与の対象外となる東京書籍版を採択するか無償給与対象の育鵬社版を採択するか、竹富町に決断を迫る内容だ。同日、森裕子副大臣が定例会見で明らかにした。文科省は一両日中に県教育委員会に同方針を記した文書を送る。
 
森副大臣は竹富町教委が12月末までに育鵬社版を採択した場合は教科書の無償給与の対象になると述べる一方、同月末までに竹富町教委が東京書籍採択方針を変更しない場合は無償給与はできないとの従来方針を強調した。石垣市と与那国町の2教委は国による無償給与の対象になるとした。
 
12月末を期限とする法的根拠は示さず、「年を越してこの問題が決着しないという事態はできるだけ避けたい」(同副大臣)と述べるにとどめた。12月末を過ぎても、竹富町教委が報告をしなかった場合や期限後に育鵬社版採択に変更した場合の対応について、森副大臣は「期限までに報告できなかった場合のことについて現時点では発言すべきではない」と言及を避けた。地方教育行政法に基づく、国による県教委への是正措置の可能性について森副大臣は「本日はその点については答えない」と述べた。

竹富町 教科書費計上せず 来年度予算で方針      

来年度から八重山地区の中学校で使用する公民教科書が一本化できていない問題で、東京書籍版を採択している竹富町は1日までに、来年度予算に教科書の購入費用を計上しない方針を固めた。教師用の指導書は東京書籍版を購入する予定。森裕子文部科学副大臣は1日の記者会見で、一本化できない場合、竹富町に教科書を無償給与しない方針をあらためて強調したが、同町は教科書購入費用を家庭に負担させず、国に東京書籍版の無償給与を求める考えだ。
 
文部科学省は育鵬社版を選定した教科用図書八重山採択地区協議会の答申に添って採択した石垣市、与那国町は無償とする一方、竹富町は無償措置の対象外という見解を表明。東京書籍版を購入するか育鵬社版の無償給与を受けるかの判断を同町に求める姿勢を見せている。それに対し、県教委は文科省の見解と異なり、教科書を一本化できない状況を打開するため9月8日に開いた八重山の教育委員全員による協議が有効と判断。東京書籍版を採択した全員協議に基づき教科書の必要冊数を報告するよう3市町に求めたが、石垣、与那国が育鵬社版の採択を変えず、一本化できなかった。
 
慶田盛安三竹富町教育長は、「文科省は竹富町だけ有償だと言うが、その理由を説明していない。法的な間違いがあれば対応するが、その機会さえ与えられていない状況だ」と述べ、文科省の対応を批判した。川満栄長竹富町長は「竹富の教育委員は子どもたちのことを考えて東京書籍版を選んだ。教育委員会の考えを尊重したい」と話した。

12月2日 沖縄タイムス
八重山教科書:竹富町に年内報告要請
       
森裕子文部科学副大臣は1日の定例会見で、八重山地区の中学公民教科書採択問題について、地区協議会の採択(育鵬社版)とは異なる採択(東京書籍版)をした竹富町に対し、12月末までに対応方針を同省に報告するよう県教育委員会を通じて求める考えを示した。県教委にも12月末までの需要冊数報告を求める。同省が竹富単独に対し対応方針の報告を求めるのは初めて。

同省教科書課は、竹富のみに対応方針の報告を求める理由について「対応をどうするかを聞くべきなのは(無償措置法に従っていない)竹富だけ。文科省の従来見解と同じこと」としている。森氏は会見で、報告の期限が12月末となった理由について「求めていた11月末までの報告が無く、子どもたちの学習環境に影響を与えないように年内に対応を決めていただきたい」と説明したが、法的根拠などには言及しなかった。

期限までに竹富から報告が無い場合について「連絡するときに申し上げるのは適切ではない。一日も早くご決断を」と求めた。地方教育行政法による国からの是正要求の可能性は「きょうは、その点について答えられない」とした。同省教科書課は「教科書無償措置法に従い採択された石垣市、与那国町は無償措置の対象となり、異なる採択をした竹富が変更しなければ無償措置の対象外となるとの見解を示してきた」と説明した。

12月1日 琉球新報
八重山教科書 文科省、竹富町に決断迫る

八重山地区の中学生が来年度から使用する公民教科書が一本化できない状態が続いている問題で県教育委員会は30日、文部科学省に対し「教科書の採択状況は、同一の教科書となっていない」と文書で報告した。報告について文科省初等中等教育局教科書課は「竹富町の決断待ち」などと述べ、(1)町費で東京書籍版を購入する(2)育鵬社版を採択して無償給与の適用を受ける―のいずれかの対応を早期に決めるよう竹富町に要望した。本紙取材に答えた。教科書課の担当者は「もともと8月末に、同一採択すべきだという期限は過ぎている。竹富町はどのように対応するのか早急に結論を出してほしい」と述べた。
 
県教育委員会は11月29日、東京書籍版を採択した9月8日の全体協議の結論に基づき同一教科書の必要冊数を報告するよう石垣市、与那国町、竹富町の3教委に通知している。文科省は竹富町に限定して、両教科書のいずれを使用するか選択を求めており、県教委との対応の違いが鮮明になっている。3教委の採択教科書の不統一状態が続いていることについて県教委は「子どもたちに迷惑がかからないよう解決策を検討していく」としている。
 
採択教科書が一本化できない状況を打開する手段として、県や市町村教委の怠慢などによって、児童・生徒が教育を受ける権利が妨げられている状況を国が是正することを定めた地方教育行政法49条に基づく対応を求める声が自民党文部科学部会の議論で出ている。そのことについて同教科書課は「是正対象の状況になっているか状況を見ないといけない。現時点では何とも言えない」と、同法に基づく対応について明言を避けた。

12月1日 沖縄タイムス
八重山教科書:2市町育鵬社版報告に批判の声
       
八重山地区の中学公民教科書採択問題で30日、来年度から使う必要冊数について八重山採択地区協議会の答申に基づき、育鵬社版を県教育委員会に報告した石垣市、与那国町に対し、地元住民や識者から「一本化ができていない中で、(報告は)ルール違反」「県は報告を受理すべきではない」などと、批判や懸念の声が上がった。文部科学省が冊数報告の「期限」とした30日。石垣、与那国両教委の「育鵬社版」報告に「子どもと教科書を考える地区住民の会」の大浜敏夫事務局長は「教科書無償措置法では、3市町で教科書がそろわなかった場合、協議による一本化を求めている。ルールを破っているのは両教育長だ」と反発した。

石垣市立中学校の社会科教諭、上原邦夫さんは「東京書籍を採択した9月8日の全教育委員協議はしっかり成立している。2教育長はその結果を報告すべきだった」とし「まとまっていないというなら再度、話し合うべきだ。自分の意見と違うから、もう協議はしない、というのはおかしい」と冷静な対応を求めた。子どもと教科書全国ネット21(東京)の俵義文事務局長は「一本化できていないので、県教委は受理すべきではない」と指摘し「9月8日の協議が手続き的に正当。文科省がそれを認める以外に解決策はない。官僚の言いなりにならず、大臣自ら決断する時だ」と強調した。東京書籍版を採択した竹富町は「同一教科書ではない」ことを理由に報告を見送った。

八重山教科書:「一本化できず」国に報告
       
県教育委員会は30日、石垣市、竹富町、与那国町で来年度から使用する中学公民教科書について、中川正春文部科学相に「八重山採択地区における採択状況は、同一教科書となっていない」と文書で報告した。同地区では石垣市教委が育鵬社版の必要冊数を約550冊、与那国町も同版を約20冊と県教委に伝えたが、東京書籍版を採択した竹富町は「同一ではない」と報告を見送った。大城浩県教育長は、あくまでも期限内での現状報告とした上で「引き続き同一教科書を求めていく」と述べた。

竹富町教委は、県教委が地区内で同一教科書の冊数報告を求めている点や、9月8日に3市町の全教育委員協議が東京書籍版を採択した後に冊数(約25冊)を報告したことを理由としている。

同省教科書課は、県の報告を受け「期限をすぎたから、協議会と異なる採択をした竹富町が無償対象外だと確定したわけではない」としつつ「同町が(東京書籍版の)採択を堅持し続ければ、無償給与はできない」との見解を示した。中川氏も30日、沖縄タイムスの取材に「今後も一本化して報告する努力を期待している。(同省も)弾力的に対応する」と述べた。同省は10月、県に教科書の需要冊数を11月30日までに報告するよう求めていた。

11月30日 沖縄タイムス
八重山教科書:県教育委員長、無償配布要求
       
八重山地区の中学公民教科書の採択をめぐる問題で、県教育委員会の中野吉三郎教育委員長は29日、文部科学省に対し、石垣、竹富、与那国の3市町にそれぞれの教科書を無償配布する特別措置を求めるコメントを発表した。

中野委員長は「現在の法律の状況では国内のどの採択地区協議会でも同様な問題が起きる可能性がある」と指摘。現行法に「齟齬(そご)」があるとして、文科省が法律を整理するまでの措置として3市町に教科書を無償配布するよう求めた。

八重山教科書:無償給付求め郡民大会
       
八重山地区の中学公民教科書問題で、竹富町の子どもに教科書無償給付を実現させる郡民大会が29日、石垣市内であり、市民や保護者ら約180人が、中川正春文部科学相に教科書の無償給付を、県教育委員会に東京書籍版の文科省報告を求める決議案を採択した。主催は同町の子どもに真理を教える教科書採択を求める町民の会。

町民の会は来月上旬、八重山地区住民の会、保護者有志の会と上京し、東京書籍版の無償給付を求める署名用紙を文科省に提出するなど要請する。決議文では東京書籍版を採択した3市町の全教育委員協議の無効を国に訴えた石垣、与那国2市町の教育長を「職権乱用」と批判。竹富町だけ教科書有償化の方針を示す文科省を「竹富町教委に法的瑕疵(かし)があるような対応」と強く反発した。

大会では3市町の保護者や教師代表ら「(石垣、与那国が採択した)育鵬社版は米軍基地や原発の記述に偏りが強く、過去、現在の沖縄をとらえていない」「譲歩すれば沖縄だけでなく、日本中の子どもたちが誤った道を進むことになる。子どもの未来のために勇気を出す時だ」と訴えた

11月29日 沖縄タイムス
八重山教科書:4教育長 初顔合わせで「決裂」

「再協議はしない」「これでは、話が進まない」―。石垣市、竹富町、与那国町の各教育長が、県の大城浩教育長を交えて初めて顔をそろえた28日の「意見交換会」。2時間近い話し合いは、従来意見の応酬に終始し「物別れ」(大城教育長)に終わった。地区内同一教科書の報告をあらためて求めた県に、石垣、与那国の両教育長は「採択は終わっている」「県は竹富町の指導を」と繰り返した。竹富の教育長は「最初から私が法律違反者になっている」とため息。解決の糸口は依然、見つからないままだ。

「ノーコメント!」。教育長室から出てきた石垣市の玉津博克教育長は、報道陣を振り切るように足早にエレベーターに向かった。ホールで記者団に取り囲まれ、マイクを向けられると「採択はすべて終わっておりますと、何度も申し上げてきた」「再協議はない」と繰り返し「早く終わりたいね。県が竹富を指導し、竹富が決断すれば終わることだ」と切り捨てた。

与那国町の崎原用能教育長は、9月8日の全教育委員協議の有効性について「テーブルについたから有効と言うが、そんなバカな話がどこにあるのか」と声を荒らげ「今月末までに文科省に報告をお願いしますと言って出た。県は引き延ばそうとしていて、アリバイづくりだ。同じ話ばかりで意味がない。今後はもう参加しない」と憤った。育鵬社版を採択した2市町と異なり、唯一、東京書籍版を採択した慶田盛安三竹富町教育長は「(石垣、与那国は)極端と言った方がいい。どんどんかけ離れている」と険しい表情。

八重山教科書:「公民」一本化議論不調

八重山地区の中学公民教科書採択をめぐる問題で、文部科学省が示した今月末の報告期限を前に、大城浩県教育長は28日、県教育庁で石垣市の玉津博克教育長、竹富町の慶田盛安三教育長、与那国町の崎原用能教育長と一本化に向けた意見交換の場を持ったが、議論は平行線に終わった。県は引き続き3市町に同一の教科書採択を求めたが、文科省は30日までに一本化できない場合、竹富町は有償になるとの見解をあらためて示した。

2時間に及ぶ非公式の意見交換会では、大城県教育長が9月8日の全教育委員協議の有効性や県の見解、法律の解釈などを説明。その上で3教育長に現状認識や、一本化に向けた今後の対応、考えについて意見聴取した。竹富町の指導を求めた玉津教育長と崎原教育長に対し、県は「一方の教育委員会だけを指導するのは難しい」と伝え、あらためて3教育長に一本化を求めた。

意見交換会後に会見した大城教育長は「解決の糸口を探りたかったが、物別れに終わった」と述べ「(文科省が設定した)期限に法的根拠はない。一番大事なのは地区内で同一の教科書を決めること」と繰り返した。さらに、文科省が「竹富町は無償対象外」としている方針について、大城教育長は「県内では憲法に違反しているのではないか、などといった意見もある」と述べ、竹富町に対して同方針に基づく指導はしなかったという。一方、文科省教科書課の担当者は「30日まで県からの報告を待つ」とした上で「現状のままなら、大臣の方針にのっとって竹富町は有償となる」と話した。

八重山地区における中学公民教科書採択問題では、石垣市、与那国町が育鵬社版、竹富町が東京書籍版を採択し、分裂状態となっている。中川正春文科相は一本化されない場合、地区協議会の答申ではなく、全教育委員協議に基づく採択をした竹富町は「無償給付対象外」との見解を示していた。

石垣市では保護者が同市教委を提訴、地元紙のアンケートでは6割が育鵬社版に反対していることを挙げ「教育長4人で話したが、話し合いにならない。子どものことを考えて話したかったが、そうならなかった」と眉をひそめ「今後も(八重山の)3教育長で話し合う場をつくらないといけない。話し合いにも参加するが、統一を図るのは厳しい」と懸念した。

3教育長との会談後に会見した大城教育長は「竹富町だけを指導するのは(各教委の)採択権を侵害することになり難しい。竹富町に有償を促す話も一切していない」と強調。県として9月8日の協議の有効性をあらためて指摘した上で、速やかに八重山地区で同一の教科書をまとめるよう、3氏に依頼したと報告した。

11月29日 琉球新報
八重山教科書 県との協議 物別れ 3教育長、一本化困難
      
八重山地区の中学生が来年度から使用する公民教科書が一本化できない状態が続いている問題で、大城浩県教育長と玉津博克石垣市教育長、慶田盛安三竹富町教育長、崎原用能与那国町教育長が28日、県教育庁で意見交換した。大城教育長は3教育長に対し、再協議を含め同一の教科書採択のための方策を講じるよう求めたが、玉津教育長と崎原教育長は受け入れず、話し合いは物別れに終わった。両氏は今後意見交換に応じることはないと明言しており、一本化は極めて困難な情勢だ。
 
文部科学省は県教委に対し、11月末までに使用教科書の冊数を報告するよう求めている。大城教育長は「正式に文書による通知はなく法的根拠はない。まだまだ時間的猶予はある」と述べ、11月末の期限にこだわらず、引き続き一本化に向けての努力を求めていく認識を示した。
 
意見交換では、大城教育長が再協議などの方策を促したが、育鵬社を採択した石垣市の玉津教育長と与那国町の崎原教育長は「文科省の指導通り、県が竹富町に育鵬社を採択するよう指導してほしい」と従来通りの主張を繰り返し、平行線をたどった。一方、再協議を提案する意向を示していた竹富町の慶田盛教育長は「(石垣、与那国の2教育長から)竹富町が答申通り育鵬社を採択しないのが問題だと言われた。今のような雰囲気では、石垣、与那国は応じない」と語った。

11月26日 八重山毎日
28日に4教育長が意見交換 教科書問題  県教委が通知、

3市町教育長出席へ

八重山採択地区で公民分野が同一になっていない教科書問題で県教育委員会(大城浩教育長)は25日までに、大城教育長と3市町教育長で意見交換する方針を決め、3市町教育長の出席を依頼する文書を3市町教委に送付した。意見交換は28日午後3時から県教育委員会教育長室で。玉津博克石垣市教育長、慶田盛安三竹富町教育長、崎原用能与那国町教育長とも同日、出席する意向を示した。教科書問題で4教育長が顔をそろえるのは初めて。

依頼文は24日夜に送付された。意見交換の内容は「八重山採択地区における教科用図書採択に関する意見交換」とだけあるが、同一の教科書にするための方策についても意見を交わすものとみられる。ただ、どちらの教育委にしても採択した教科書を変える可能性は皆無に等しく、意見の一致をみるのは極めて困難。意見交換の結果が注目される。

意見交換について玉津教育長は「意見交換だけ。市教委は採択が終わったことを話すだけ」と話し、新たな協議には「応じない。ありえない」と明言。「文科省の文書に従って、まだ同一の教科書を採択していない教育委員会に採択してほしい。県と竹富がまだ法に沿った判断をしなければならないと思う」と述べ、答申結果の育鵬社で同一教科書とするよう求める考えを示した。崎原教育長も「文科省の指導通りにやってくれと言うだけ。あとは県に対して9月8日の全員協議が有効とする根拠を聞きたい」と話した。
 
一方、慶田盛教育長は一本化について「一本化は難しいと思うが、方策は全教育委員の協議の場しかないのではないか。そうでないと地域もPTAも学校関係者も納得できないないのではないか。それ以外には方法はないと思う」と強調した。

文科省は8月23日の地区協議会の選定・答申と8月31日の役員会の再協議を「協議会の規約に従って出された結果」として有効との見解。一方、県は9月8日の全教育委員協議を有効との認識を示しており、両者の溝は10月31日の協議でも埋まらず、文科省は11月末の需要冊数報告を県に求めている。

11月26日 八重山毎日 社説
県教委は早く着地点を定めよ  時間がない、決断し処理作業を急げ

県教委はアクティブに
 
教科書問題は5カ月にも及ぼうとしているが、一向に収束に向かう気配がない。論点が多岐にわたり談論風発。加えて三者がねじれの位置関係にあるため解決の決め手を欠いている。県教委は文科省の指導に乗らず、石教委、与教委は県教委の助言を受け付けないという本来の指導助言体系が機能していない。あまつさえ政治が介入している。その上、議会、住民運動、訴訟、PTAと三者を取り巻く状況はますます加熱。歩み寄るすき間はない。そんな中、県教委にはもっとアクティブなリードをしてもらいたい。今月末の教科書冊数報告に向けての動きが見えないからだ。

「一本化に向けて合意に努力してほしい」だけでは前に進まない。空念仏にしか聞こえない。残念なことであり、恥ずかしいことだが、「八重山教科書問題」は八重山だけでは解決できない状態になった。法制的にも採択システム上からも文字どおり八重山だけの問題でなくなったことは自明だ。途中、はしごを外されたとはいえ、県教委は文科省の指導を受け解決に努めてきた。その責任は残る。「ぶれない」との評価を受けるが、一方、このままでは県教育行政のトップとしての指導力が問われかねない。住民運動等の動きとは別に自らの立場を考慮すべきだ。

窮すれば通ずるのでは
 
竹富町教委に何らかのペナルティーを科さなければメンツが立たない。これが文科省の本音だろう。よもや教科書有償となって返ってくるとは竹教委としては理不尽この上なしというところだろう。父母に負担させるなどまかりならぬことだ。このまま進展がなく、また、打開策がない場合、その責めは県教委が負わねばならない。つまり、財政措置をするということだ。なぜなら県教委の指導を受けて混乱収拾に努めてきたのは竹教委だからである。加えて、「有償の理不尽さ」も取り除いてやらねばならない。来年以降の無償を、理を尽くして文科省と対峙(たいじ)しなければならない。県教委には、文科省の指導を受けての収拾であったという利がある。それを生かすべきだ。

法制上の不備が長期間の混乱を招いた。では、教科書無償措置法が成立する前の採択はどうであったか。校長が採択していた。そのため、学校によって教科書が異なっていた。現在も、国立や私立学校の教科書採択権者は校長である。何も、教育委員会に教科書採択の絶対権があるわけではない。もっと学校現場を重要視してもいい。効率性を勘案しての現行の制度であるということを知りたい。
 
そこで、混乱を鎮める方策としてこんな特例措置はどうか。(1)三市町教委とも育鵬社、東京書籍を無償購入する。(2)使用教科書は校長に委ねる。(3)他教科書は副読本として使用する。そうすれば、長短を補い合い教材研究も充実したものになるのではないか。法制上の不備を補う公平さもある。その文科省折衝は当然にして県教委に当たってもらう。とにかく時間がないあと数日もすれば12月。3月までの学校の日程を考えれば、次年度への引き継ぎまで時間が残されているわけではない。県教委は早く着地点を定め八重山の教育環境を整えてほしい。学校現場感覚を持って対処すべきだ。

石教委は本年度3学期制に戻した。各学校は、これから学期末、学年末の処理に追われることだろう。高校入試に向けた進路相談もめじろ押しだ。やがて「冬休み」に入り学校は休業。年が明ければ総合テスト、入学願書、調査書、三者面談等で高校入試一色。指導要録記入も加わる。人事異動内示や教職員評価システムによる教育長面接、中体連行事もある。そんな中で、次年度の教育計画作成、引き継ぎの準備をしなければならない。これらのことは毎年の事だが、今年は事情が違う。「教科書問題」という落ち着きのない状況でやらなければならないからだ。教師、保護者、生徒に早く平穏さを取り戻させたい。教科書が定まらなくては、教育課程編成、年間指導計画作成がかなわない。人事異動で他郡に転出する教員も多い。引き継ぎに難渋し滞ることが予想される。このようなことで正常な学校運営ができるだろうか。教育目標や努力事項の設定はどうなるのか。学校内に広がる虚脱感を一掃し、鋭気を取り戻したい。そのために県教委は着地点を定め、地ならし作業を急がねばならない。

11月26日 沖縄タイムス
八重山教科書:3教育長、主張平行線

八重山地区の中学公民教科書の一本化に向け、県教育委員会が週明けに石垣、竹富、与那国3市町の教育長との意見交換の場を設けたことを受け、3教育長は25日、いずれも出席する意向を示した。ただ、非公開の意見交換で一本化への道を模索したい県教委に対し、石垣、与那国の両教育長が協議会答申と異なる採択をした竹富町教委に県の指導を求めるなど主張は平行線をたどっており、一本化は困難な見通しだ。

育鵬社版を採択した石垣市の玉津博克教育長は意見交換について「市の採択は既に終わっている、という現状について報告するだけだ」と強調。「県は(協議会答申に沿った採択を求める)文科省の方針に従い、同一の教科書を採択していない(竹富町)教育委員会を指導してほしい、と求めたい」と述べた。

同じく育鵬社版を採択した与那国町の崎原用能教育長は「なぜ竹富町だけを指導しないのか、県の言い分を聞きたい。意見交換は(文科省が設けた)『11月末までの一本化』という期限を前に、3教育長に話し合いをさせた、という県教委の既成事実づくりではないのか」と指摘した。

一方、東京書籍版を採択した竹富町の慶田盛安三教育長は「とにかく一本化を図りたいが、教科書の内容が全然違う。話し合っても道筋を見いだせるかは分からない」と悩ましい表情。「再び3市町の全教育委員が集まって協議する以外にないと思うが、同じことを繰り返す恐れもある。どんな方法があるのか見当もつかない」と頭を抱えた

11月25日 琉球新報 社説
八重山教科書 選定再協議へ踏み出す時だ
        
学びの主役は子どもたちである。3市町の教育委員会は原点に立ち返り、生徒や保護者、学校現場が納得する教科書選びをやり直してほしい。公民教科書の採択をめぐる八重山地区の混乱のことだ。この問題では、石垣市教委と与那国町教委が教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)の答申に従って育鵬社版を、竹富町教委は独自の判断で東京書籍版を採択している。
 
答申に従わない竹富町について、中川正春文部科学相は「教科書無償給与の対象外」と発言しているが、世論調査で示された民意は逆に育鵬社版選定を疑問視している。繰り返し指摘してきたが、八重山教科書問題は採択協の玉津会長が独断的に教科書の順位付け廃止や調査員選定、協議会の非公開、無記名投票による選定を進めたことが発端だ。
 
文科省は玉津氏主導の不透明、非民主的な選定手続きを不問に付し、育鵬社版を選んだ8月23日の採択協を「規則に従ってなされた」として有効と見ている。しかし、採択協議会は非公開で行われ、その後、委員が教科書を読まず実質審議をしていなかったことが判明した。文科省はずさんな選定を容認するのか。文科省が採択協の運営や審議の在り方に言及しないのは、民主主義、教育に対する生徒の信頼を著しく損ねている。文科省の「事なかれ主義」は犯罪的ですらある。
 
地域住民や教育関係者の間では玉津氏主導の選定手続きに対し、愛国心を強制し周辺諸国の脅威を強調する「『新しい歴史教科書をつくる会』系教科書の採択ありき」との疑念が渦巻いている。世論調査によれば、県民は社会科教科書で「愛国心」「領土問題」よりも「平和教育」「人権・平等」を重視している。悲惨な沖縄戦の教訓、米軍に人権を蹂躙(じゅうりん)されてきた県民の戦後体験からすれば、これは自然な感覚だ。教科書選定でもこうした県民感情は大切にされてしかるべきだ。
 
県教育委員会(中野吉三郎委員長)は3市町教委に同一教科書の採択を働き掛ける方針を再確認した。文科省はこの機会を逃さず県教委と連携し収拾を図ってほしい。非民主的な教科書選びは全国どこであろうと許されない。文科省は自覚してほしい。このままでは民主主義を語る資格を失う、と。

11月24日  琉球新報   
八重山教科書問題「全員協決定認めよ」 育鵬社版の不採択要求

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◆ 沖縄八重山の「教科書採択問題」 竹富町民の声は

2011-12-18 17:19:37 | インポート

 

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八重山中学校公民教科書、八重山教委協会は東京書籍を採択③
http://blog.goo.ne.jp/teyata/d/20140402
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http://blog.goo.ne.jp/teyata/d/20131102
八重山中学校公民教科書、八重山教委協会は東京書籍を採択①
http://blog.goo.ne.jp/teyata/d/20130302

3月14日の報道ステーション 

「中学の教科書で・・・ 国が竹富町に初の是正要求」 丹念に取材されてておられ、                  問題の経緯と評価を限られた時間の中でよく編集されています。

映像ファイル: http://bit.ly/1daribc  ダウンロードできます。

レイバーネット「教科書選択に介入するな!~文科省の是正要求に抗議する院内集会」
http://www.labornetjp.org/news/2014/0408okinawa

【報告】文科省の竹富町への是正要求に抗議する院内集会
http://blogs.yahoo.co.jp/tocka_jikkoi/65006074.html

竹富町の町民の会から、
抗議声明への賛同のお礼とご報告

「文部科学省による竹富町教育委員会への是正要求に抗議し、撤回を求める声明」への賛同を呼びかけたところ、たった11日間という短い期間でしたが、1068名の賛同をいただきました。どうもありがとうございました。

この抗議声明は賛同くださった皆さまのお名前を添えて、4月8日、参議院議員会館で開催された「竹富町教科書採択方針是正要求抗議集会」で、沖縄県選出の全国会議員の同席をいただき、文科省教科書課の渡邊氏を通して下村博文文科相へ提出しました。同時に、ネット署名サイトを利用した2つの署名も提出し、是正要求撤回を求める声は合計1万筆を超えました。

昨日、竹富町教育委員会は国地方係争処理委員会へ審査の申し立てはせず、八重山採択地区協議会からの離脱を県教委区委員会と協議する方針を発表しました。文科省は教科書無償措置法「改正」で採択単位を市町村にしたにもかかわらず、竹富町へは執拗に介入を続けてくると思われます。これからもご支援をよろしくお願いいたします。

2014年4月12日 
竹富町の子どもたちに真理を教える教科書採択を求める町民の会

Kougi

町民の会の抗議声明 

全文3月20日の記事の部分に掲載

4月8日参議院議員会館で「竹富町教科書採択方針是正要求抗議集会」

動画がYoutube にアップされています。 http://youtu.be/PrZhos_hdoE

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4月9日の琉球新報

                             

 

 

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6月19日の八重山毎日紙面 西表(竹富町)の方より

 

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6月14日の八重山日報

6月8日 八重山毎日
現場意見尊重でアピール 教育・教科書テーマに「集い」大学教員ら教育委員会の役割で講話

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「教育と教科書を考えるみんなの集い」に参加する人たち=7日午後、大川公民館

竹富町が単独採択地区となり、八重山教科書問題が一定の区切りを迎えたことから、あらためて教育と教科書について考えようという集いが7日午後、大川公民館で行われ、「現場の教員が使いたい、使いやすい教科書を採択できるようなルールづくりを」とアピールした。教科書問題にかかわってきた15団体で構成する実行委員会が主催。約100人が集まった。

名古屋大学大学院教授の中嶋哲彦氏は講話で「現場の調査員が決めた教科書を採択するのが教育委員会の仕事。教科書選定は専門家の先生に任せ、教育委員会が責任を負うことが大事だ」と指摘し、八重山採択地区協議会の「協議会の責任と権限で選定する」との方針に疑問を呈した。

教科書問題に関して発言し続けてきた琉球大学准教授の山口剛史氏は「現場教員の調査が尊重される教科書採択のルールを作ることが重要だ」と強調、「住民もルールづくりに多くの意見を」と呼びかけた。

フロアの保護者は「僕は教科書を信用し、どれでもいいと思っていた。育鵬社版を読んでみておかしいと気付いたが、遅かった」と述べ、積極的に教科書を読むよう提起した。一方、山口氏は「そもそも問題は教科書を一本化できなかったこと。大人の責任で教科書をしっかり議論して一本化することができず、民主主義とは何かを実践的にみせることができなかったのは残念」とも話した。

集会では、教育現場の意見を尊重する教科書採択を求めたアピール文を採択。県と3市町の教育委員会に郵送する。

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6月8日の八重山毎日紙面 西表(竹富町)の方より

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6月8日の八重山日報

波照間島でも高嶋琉大名誉教授が講演

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6月8日の八重山毎日紙面 西表(竹富町)の方より

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6月8日の沖縄タイムス

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6月7日の八重山毎日紙面 西表(竹富町)の方より

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6月7日の八重山日報

6月7日 琉球新報
竹富が正式離脱 教科書八重山採択地区

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石垣市教育委員会で開かれた2014年度定期総会

教科用図書八重山採択地区協議会は6日、竹富町教育委員会を単独採択地区とする県教育委員会の決定を受け、協議会の構成委員から竹富町教委を分離することを確認した。石垣市教育委員会で開かれた2014年度定期総会で規約を変更し、竹富町教委が八重山採択地区から正式に離脱した。
 
八重山採択地区協議会は石垣市、竹富町、与那国町の教育長ら8人で構成するが、竹富町側は県教委が5月30日に告示した採択地区の設定に基づき、同協議会に所属しないとして欠席し、委任状を提出した。同協議会は委員改選で石垣市と与那国町から6人を選出したほか、竹富町教委を構成委員から外す規約変更などを実施した。一方、竹富町教委は分離を受け、今月下旬にも単独採択地区協議会の設置を進める方針だ。
 
同一採択地区内の公民教科書が統一されていない八重山教科書問題は採択地区が分離する結果となった。協議会会長で石垣市教委の玉津博克教育長は「八重山は一つだということを念頭に、八重山全域の子どもたちにとって一番いい教科書を選ぼうということを確認した」とし、今後の教科書選定について「協議会の責任と権限をもって実施する」と話した。竹富町教委の慶田盛安三教育長は「(こうなって)良かった」とした上で、協議会設置へ「早く準備を進めたい」と話した。

 

6月5日 琉球新報
「官僚が巧妙に対処」 八重山教科書、高嶋氏が講演

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八重山教科書問題を収束させるため「官僚が巧妙に対処した」と指摘する高嶋伸欣氏(右端)=4日夜、竹富町西表島中野わいわいホール

共同採択地区内で使用する教科書が統一できなかった八重山教科書問題を考える講演会が4日夜、琉球大学名誉教授の高嶋伸欣氏を講師に同町西表島の中野わいわいホールで開かれた。竹富町の「子どもに真理を教える教科書採択を求める町民の会」が主催し、町民ら約25人が参加した。
 
八重山教科書問題をめぐり、採択地区が「市郡」から「市町村」に変更され、来年から適用できるよう無償措置法が改正されたことについて、高嶋氏は問題を収束させるため「官僚が巧妙に対処した」と分析した。その背景に、有志による教科書寄贈で「無償措置法に穴が開いたという汚点を官僚は早く取り除きたい思いがあった」と指摘したほか、「安倍政権の強引な手法に対し官僚の不満が蓄積していた側面もあったのではないか」と強調した。
 
高嶋氏は「安倍政権と官僚を追い込んだ竹富町が果たした役割は大きい。安倍政権の暴走を止める一つの芽を作ったと思う」と竹富町教育委員会の対応を評価した。竹富町教委の単独採択化については、小規模自治体でも退職教員などを加えた調査員構成で調査研究は可能などとして「独自の町単位の調査法を編み出しモデルケースになってほしい」と話した。

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6月5日の八重山日報

 

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6月1日の八重山毎日紙面 西表(竹富町)の方より

町民の会「良識の勝利」と記者会見、6月4日には西表島、5日には波照間島で高嶋琉大名誉教授の講演会開催。

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6月1日の八重山毎日紙面 西表(竹富町)の方より

 

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5月30日の八重山毎日紙面 西表(竹富町)の方より

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5月30日の八重山日報

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未来をつくる子どもにとっての教科書採択が可能となった
竹富町教育委員会の決断を支持する声明

3年余に及ぶ八重山地区の中学校3年生使用の公民教科書採択問題は、去る21日の沖縄県教育委員会(以下県教委)定例会で八重山の採択地区の見直しが決定されて収束を迎えることになりました。

竹富町の子どもに真理を教える教科書採択を求めて、竹富町教育員会(以下竹教委)の教育行政の姿勢を一貫して支持してきた町民もひとまず安堵し、胸をなで下ろしました。

私たち町民の会は、子どもが主人公である学校教育の本質を忘れずに「未来を担う子どもにとって何が最も重要であるか」を行政判断のよりどころとしてきた竹教委のぶれない信念に、敬意を表します。

日本全国だけでなく、海外のメディアもが関心を示し続けた八重山教科書採択問題、すなわち竹富町の教科用図書中学校公民教科書採択は、教科書無償措置法の改正によって竹教委独自で採択ができることになりました。そして、ついには国の一連の圧力は、5月23日、下村文科相の違法確認訴訟断念の発表でひとまず区切りをつけることができました。

しかしながら、ここに至るまでの経緯に思いをはせると、時の政権政党のなりふり構わないすさまじい圧力は、尋常ではありませんでした。

全国の事例でも14市町村が、単独採択をとっているという現状があるにもかかわらず、なぜ文科雀は3年間でわずか100冊('12年22冊、'13年32冊、’14年46冊)の教科書採択をめぐって、この小さな町の教育委員会の教育行政判断に「是正要求」を発出し、何が何でも国権で従わせようとしたのでしょうか。まさにこれは、日本最南端の国境の島での『教育事件』でありました。

その片棒を担ぎ、教科書調査委員の推薦しない教科書採択への道を開くために、規則改悪の策動を終始一貫演じた採択協議会の玉津会長(当時)の責任を不問に付すわけにはいきません。その貴任は、今もって重大です。石垣市議会で不信任という前代未聞の決議がなされたことも、まだ記憶に新しいとおもいます。

さらに許せないことには、21日の県教委決定前に、玉津石垣市教育長がのこのこと自民党本部に出向き、レクチャーを受けて「竹教委の八重山採択地区協議会からの離脱反対」を表明したことです。これまでも、その言動が物議をかもし続けてきたことから、教科書問題に一切コメントをしなくなったはずなのに、竹教委の決定に異を唱えたこと自体言語道断です。

一連の竹富町の公民教科書採択をめぐる『教科書事件』の3年余の混乱を引き起こした元凶を私たちは決して忘れてはなりません。戦火をくぐり抜けてきた沖縄の歴史体験からして、 今を生きる私たちには、育鵬社版教科書が沖縄の子どもにとって相応しくないことは明らかなことです。

この歴史的『教育事件』は、八重山教育界に汚点を残しましたが、後世必ずやこの国とこの島々の未来を担う次世代によって、竹教委とそれを支持し続けた町民、全国の仲間は、正当に、そして高く評価されることになるでしょう。

この教科書問題に関心を寄せて激励してくださリ、竹富町の公民教科書のみが有償となってからは、浄財を提供していただいたり、激励の言葉をくださった皆さまに心から感謝申し上げます。

多くの支援者のお陰をもって、ひとまず竹富町の教科書採択をめぐる教育の混乱が幕引きとなったことを内外に明らかにするとともに、これは、新たなステージのはじまりでもあることを付け加えます。

そして今なお、石垣市と与那国町では育鵬社版教科書が子どもにとって最適として使用されていることに私たちは疑問を抱きます。2年後の次期中学校教科書採択では、二度と同じ過ちを繰り返すことなく、今回の教訓が生かされることを念じてやみません。

八重山教科害採択問題は、まさに「終わりの始まリ」です。政権政党が面子を盾に国防意識を子どもに植え付けるために教科書採択に躍起になった根幹がここにあります。教科害採択問題が、いかにこの国の未来を占う重要なことだったかを多くの人々が再認識したことは間違いないことでしよう。

竹富町の教科書採択問題は、教育への政治介入を許さず、教育権は国民(町民)にあることに勇気をもって主張し続けた良識の勝利だと確信します。

以上をもって町民の会声明とします。

2014年5月29日
竹富町の子どもに真理を教える教科書採択を求める町民の会
 

 

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5月28日の八重山毎日紙面 西表(竹富町)の方より

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5月28日の八重山日報

5月24日 八重山毎日