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「戦争の出来る国」をめざす、秘密保護法案・NSC法案を許すな! 沖縄県紙の報道。

2013-11-14 01:34:10 | 人権

 

関連記事: 許すな!「戦争のできる国」をめざす、秘密保護法案・NSC法案
http://toyata.blog.ocn.ne.jp/blog/2013/11/nsc_34d1.html

5月27日 沖縄タイムス
社説:[秘密法の国会監視]「追認」機関でしかない

こんな権限しか与えられていない機関ではとても監視することはできない。形ばかりの設置というほかない。 自民、公明両党は特定秘密保護法の運用が恣意(しい)的にならないよう監視するとうたう「情報監視審査会」を衆参両院に設置する与党案をまとめた。常設機関とし、今週にも国会法改正案を衆院に提出する構えだが、この審査会が国会による監視機関となるのかどうか、はなはだ疑問だ。

審査会は政府から毎年、特定秘密の指定や解除などの運用状況の報告を受け、指定が不適切だと判断すれば、解除などを勧告することができる。また秘密の提供を政府が拒んだ場合は、提出するよう勧告することができる。 問題はいずれの場合も勧告に強制力がないことである。政府が特定秘密保護法に基づき「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」を盾にすれば、何でも拒否することができるのである。内部告発者に対する保護も明記されていない。 これでは、審査会に監視という名前を冠しただけで、実際にチェック機能を果たすことはとうていできない。

審査会をそれぞれ議員8人で構成することも疑問だ。各会派の議員数に応じて割り振ることになり、審査会は1強の自民党が仕切ることになるのは間違いないからだ。 審査会が各省庁の膨大な特定秘密をどう選択し、提出を求めることができるかどうかも心もとない。 結局、政府主導で運用が進むのは、目に見えている。

特定秘密保護法は昨年12月、安倍政権がなりふり構わず、数の力で強行採決を繰り返して成立した。 世論の反発が高まったため、安倍政権は採決直前になって泥縄式に政府内に秘密指定が妥当かどうかを担わせる機関の設置を打ち出した。 内閣官房に「保全監視委員会」、内閣府には「独立公文書管理監」と「情報保全監察室」を置く。さらに有識者らでつくる「情報保全諮問会議」もある。だが、諮問会議は「特定秘密指定の基準」を決めるのが役割だが、1月に開かれただけだ。残りの三つの機関は、秘密指定と、指定が妥当かどうかを身内同士で検討するのと同じで、検証の意味は持たない。「第三者機関」とは呼べないのである。 独立性を持った第三者機関となる可能性を持っていたのが今回の審査会だったが、与党案は、政府の暴走の隠れみのになるだけである。

特定秘密保護法は、政府によって恣意的に秘密指定され、国民の知る権利、取材や報道の自由が侵害される懸念が強い。 三権分立の下では、政府をチェックするのは国権の最高機関で、国民の代表である国会の務めである。審査会が強制力を持たないのであれば、政府に歯止めをかけることができず、権力分立を危機に陥れてしまうものだ。 与党案は国会に与えられた重要な役割を国会議員自ら放棄しているといっていい。実効性に重大な疑問が多い審査会によって、12月に法を施行することは許されない。

3月7日 琉球新報
社説:国会監視機関 秘密法施行は危険すぎる 

ふたを開けてみると「張り子の虎」だった。自民党のプロジェクトチームは、特定秘密を監視するため衆参両院に設置する常設監視機関の原案をまとめた。同機関の活動は、既存の各委員会から要請があった時だけで、政府による秘密指定が適切かどうかの判断に踏み込まない。国会の監視機能は骨抜きになっている。安倍政権は反対の声を押し切って特定秘密保護法を成立させたが、この法律はあまりにも問題が多い。数々の危険性が払拭(ふっしょく)されない以上、施行してはならない。
 
特定秘密保護法は「特定秘密」の範囲が広く、定義があいまいだ。秘密指定に当たって官僚の恣意(しい)が働く余地が大いにある。何が秘密なのか不明で、情報漏えいについて処罰範囲が広く刑罰が重い。知る権利、言論の自由、基本的人権を侵害する恐れが大きい。政府・与党は、秘密指定をチェックするため行政内部と国会に監視機関を設置すると表明した。行政内部の監視機関として内閣官房に保全監視委員会、内閣府に情報保全監察室を設置する。しかし官僚がメンバーになる身内の組織だけに、監視が行き届くかどうか、はなはだ疑問だ。
 
そこで注目されたのが衆参両院に設置する常設の監視機関だ。国民の代表で構成する国会が、恣意的で違法な秘密指定がないか政府を監視し、必要に応じて指定解除させるのは当然だ。しかし、自民党原案は指定の適否を国会に判断させず、特定秘密の提供を省庁に求める権限や、法的拘束力も明確に位置づけられていない。各省庁が提供を拒める例外の範囲もあいまいだ。例外の範囲が広がれば恣意的な指定が増える可能性がある。背景として「国会への秘密提供が情報漏えいにつながる」と、政府や自民党幹部が考えているからだという。
 
自民党は今後、公明党との与党内調整を経て国会法改正を目指す。自民党原案通り国会に秘密指定の適否を判断させないなら、国権の最高機関としての役割は果たせない。秘密法は明らかに三権分立という民主国家の基本原理を変質させてしまう。政府が保有する情報は主権者である国民の共有財産だ。秘密法によって情報統制するのではなく、情報の適切な管理と公開の徹底、国会による監視機能の徹底こそ民主国家の基本である。

3月7日 沖縄タイムス
社説:[国会の秘密法監視]機能「骨抜き」にするな

本来公開されるべき情報が特定秘密に指定され、国民の目から隠された。おかしい。本当に、罰則によって保護するに値するほどの「秘密」なのか。違うのではないのか。指定を解除すべきだ-。 このような状況になった際、国権の最高機関である国会に、秘密指定の妥当性を監視する機能がないようでは、政府の暴走を食い止める効果は期待できない。「国会による政府監視」は形ばかりのものとなるのではないか。

自民党の特定秘密保護法プロジェクトチーム(座長・町村信孝元外相)が、国会による特定秘密のチェック機関に関する制度設計原案をまとめた。 原案によると、秘密指定を監視するため新たに国会に設けられる監視機関は、「政府による秘密指定の適否を判断しない」という。では何のための機関なのか。甚だ疑問だ。

昨年12月に成立した秘密保護法に対しては、政府が特定秘密を量産して国民の「知る権利」や取材・報道の自由を脅かすとの批判が絶えない。恣意(しい)的な運用で、秘密の範囲が広がりかねない懸念も払拭(ふっしょく)できないままだ。 にもかかわらず、法案審議が十分尽くされないうちに、安倍政権は強行採決に突き進んだ。 高まる世論の批判に対し、政府は法成立の直前、秘密のチェック機関として「保全監視委員会」「情報保全監察室」などの設置を相次いで打ち出した。 加えて自民党から示されたのが、衆参両院に監視機関として「常設の委員会」を設置する構想だ。

自民党プロジェクトチームの原案は次の内容だ。新機関は常設組織の位置付けだが、要請時のみ秘密会形式で開かれる。国会の常任・特別委員会が政府に特定秘密を含む資料などを提供するよう要請した際(1)新機関が政府に特定秘密の提供を要求(2)政府が新機関に特定秘密を提供(3)新機関で精査し委員会に対し「漏えいにならない範囲でフィードバックする」-という。

つまり秘密の内容の精査はするものの、秘密かどうかの適否の判断はしない。政府から特定秘密の提供を受け、委員会への提供内容を調整するにとどまる。 一方、国会審議で特定秘密を漏らした場合、国会で懲罰対象となる可能性がある。国会外であれば秘密保護法に基づき、最高5年の懲役などが科される。 監視機能を果たすことより情報漏えいを防ぐことを優先したこの監視機関に、一体何ができるというのか。

自民党プロジェクトチームの原案に対しては、与党公明党のプロジェクトチームでも異論が相次いだ。秘密指定の妥当性を監視する機能を持たせるべきだとの認識で一致し、自民党に修正を働き掛ける方針だという。 修正は当然だ。与野党で議論を重ね、小手先の対応ではなく、秘密指定解除を請求する権限なども明確にしてもらいたい。 実効性のある監視機能が働かないのであれば、法律を施行すべきではない。

2月13日 琉球新報
「秘密保護法は違憲」と国提訴 弁護士が静岡地裁に、全国初

昨年12月に成立した特定秘密保護法は憲法違反だとして、静岡県弁護士会所属の藤森克美弁護士(69)が13日、国を相手取り違憲・無効確認と施行の差し止めを求める訴訟を静岡地裁に起こした。藤森弁護士によると、同法の無効を求める訴訟は全国初。訴状では、特定秘密保護法により秘密事項が拡大する恐れは極めて大きく、テロやスパイ活動の防止を口実にあらゆる情報を秘密にできると主張。法案作成が秘密裏に行われ、国会で強行採決されたことを問題視し「民主的な手続きを経ているとは到底言えない」としている。

2月5日 琉球新報
社説:秘密法諮問会議 乱造への歯止め役果たせ

昨年12月に成立した特定秘密保護法は、閣僚ら行政機関の長が指定する特定秘密の範囲が曖昧で、その裁量によって特定秘密が乱造されかねない。共同通信が1月下旬に行った世論調査で、法の修正・廃止を求めた回答は74%に上った。秘密法の重大な欠陥は全く是正されないまま、安倍政権は年内の施行に突き進んでいる。膨大な情報が行政府の思うままに取り扱われる懸念が拭えない。あらためて法の廃止を強く求める。

世論の厳しい批判を受け、臨時国会の審議最終盤で安倍政権がドタバタと打ち出したのが秘密指定を監視する四つの監視機関だった。そのうち、官僚以外のメンバーで唯一構成し、政府の外から意見を出す情報保全諮問会議が1月に始動した。秘密指定や解除の基準の在り方などの検討に入っている。だが、その役割は安倍晋三首相に対する助言にとどまる。特定秘密の中身まで検証する権限は与えられていないのである。政府の独断的、恣意(しい)的な法の運用に歯止めがかけられるだろうか。実効性には大いに疑問がある。

7人のメンバーの選定には安倍首相の意向が強く反映された。法に反対する日弁連の弁護士もいるが、大半が法に賛同している初会合で、座長に就いた渡辺恒雄氏(読売新聞グループ本社会長兼主筆)は「どの政権であろうと言論・報道の自由を抑制してはならない」とあいさつした。だが、その前段で渡辺氏は「今回の法律は二重、三重に拡大解釈、権力の乱用を縛っているので大丈夫だと思う」と語っている。「知る権利」を持つ国民の代弁者として権力を縛るのではなく、法の是認の色合いが濃い形式的な議論を重ねるなら、単なる追認機関に堕してしまうだろう。
 
諮問会議を形骸化させないためにも会議の公開は不可欠だ。だが、初会合は冒頭以外は非公開だった。公開された初会合の議事録は、発言者名を伏せた要旨でしかないが、出席した官僚はその発言を全て把握している。政府は「発言者を萎縮させないため」とするが、「秘密」の在り方を問い直す会議だからこそ、全文公開が必要ではないか。国民の大半が強行成立に疑問を抱いている。国会は秘密指定をチェックする制度創設の論議を始めているが、それ以前に法を廃止し国民的議論をやり直すのが筋だ。

2月2日 琉球新報
社説:首相密約答弁 国民欺く外交は許されぬ

日米外交密約を否定して国民や国会を欺いてきた歴代首相と外務省の行為は犯罪的であり、厳しく断罪されなければならない。安倍晋三首相が国会答弁で、過去の核持ち込みに関する密約を歴代自民党政権が隠し続けたことを「間違い」と認めた一件のことだ。
 
民主党政権時に外相として密約調査を主導した岡田克也氏が、1960年の日米安保条約改定時に米核搭載艦船の通過・寄港を事前協議の対象外とした「核持ち込み」密約を例に、歴代内閣が「密約はない」との答弁を繰り返してきたことを問題視し、質問した。安倍首相は今回の答弁で、密約の存在を否定する虚偽答弁の歴史にけじめを付けたつもりだろう。
 
しかし「間違い」では済まない。うそで塗り固めた密約外交の事実は、国民主権や国権の最高機関である国会をないがしろにするものだ。安倍首相は、歴代自民党政権の不作為を国民に誠意を尽くして謝罪しなければならない。外交当局の責任を追及し、明確にするのは国会の責務だ。密約外交の経過・実態の調査委員会を設置し、国内への核持ち込みの有無を含めて徹底的に検証すべきだ。
 
首相はまた、国会答弁で「有事の際に航空機が不時着し、運搬中の文書が奪取される恐れがある場合は、奪取されないように破棄しなければいけない」と述べた。特定秘密保護法に関連し、秘密指定文書を緊急時には法が定める指定解除手続きを踏まずに廃棄する可能性があるとの認識を示したものだ。この認識は非常に危うい。不時着時という例示は一見、説得力があるように見える。しかし「緊急時」を政府が恣意(しい)的に解釈し、国民や国会の目に触れたら問題になりそうな失態を隠すために指定文書を破棄することも容易となろう。「緊急時」という適用除外は結局、国民の「知る権利」を狭めることにしかなるまい。
 
米軍関連情報が過剰に「特定秘密」に指定され、基地の監視が難しくなるとの懸念も各方面から出ている。適用除外の拡大で国民が知りたい情報は闇から闇へと葬られかねない。主権者の国民を欺く外交は過去も現在も許されない。国民は秘密法を是認していない。憲法や民主主義を破壊する悪法との批判も絶えない。秘密法を廃止し、秘密指定や情報公開の在り方について議論をやり直すべきだ。

1月31日 琉球新報
秘密文書、手続き抜きで廃棄も 首相、秘密保護法で

安倍晋三首相は31日の衆院予算委員会で、特定秘密保護法によって秘密指定した文書を、緊急時には指定解除の手続きを取らずに廃棄する可能性があるとの認識を示した。過去の日米密約を歴代の自民党政権が隠し続けたのは誤りだったと認めた。 秘密指定された文書は秘密保護法などで、指定を解除した上で首相の同意を得ないと廃棄できないとされている。安倍首相は「極めて限定的な状況」に限ると説明したものの、政府の恣意的な判断で公文書が記録から失われるとの懸念がさらに強まりそうだ。首相は「例えば有事の際に航空機が不時着し、運搬中の文書が奪取される恐れがある場合」と例示した。
 

1月7日 沖縄タイムス
首相「戦略的に領土守る」国家安全保障局始動

安倍晋三首相は7日、外交・安全保障政策の司令塔として設置した国家安全保障会議(NSC)の事務局となる国家安全保障局の発足式で「今まで以上に日本は戦略的に領土、領海、領空を守っていく」との決意を表明した。国家安全保障局は、外務、防衛両省や警察庁の出向組を中心とする計67人でこの日始動。首相や関係閣僚を構成メンバーとして先行スタートしていたNSCを補佐する体制を整えた。 初代の谷内正太郎局長は今月中に米ワシントンを訪れ、日本がモデルとしたオバマ米政権のNSC関係者と意見交換。連携強化を図る方針だ。米以外の各国との協力も積極的に進める。

The New York Times
EDITORIAL
ニューヨークタイムズ社説

Japan’s Dangerous Anachronism
December 16, 2013

The government of Prime Minister Shinzo Abe this month rammed through Parliament a state secrecy law that signals a fundamental alteration of the Japanese understanding of democracy. The law is vaguely worded and very broad, and it will allow government to make secret anything that it finds politically inconvenient. Government officials who leak secrets can be jailed for up to 10 years, and journalists who obtain information in an “inappropriate” manner or even seek information that they do not know is classified can be jailed for up to five years. The law covers national security issues, and it includes espionage and terrorism.

Just before the passage of the law, the secretary general of the governing Liberal Democratic Party, Shigeru Ishiba, likened those legally demonstrating against the state secrecy law to terrorists in his blog on Nov. 29. This callous disregard of freedom of speech greatly raised suspicion of what the Abe government really has in mind. The Japanese public clearly seems to fear that the law will infringe on press freedom and personal liberties. In a public opinion poll conducted by the Kyodo News Agency, 82 percent of respondents said that the law should be repealed or revised.

Mr. Abe is, however, arrogantly dismissive of the public’s concerns. “The law does not threaten ordinary life,” he said after the law’s passage. Showing an alarming ignorance of democracy, Gen Nakatani, a senior member of the Liberal Democratic Party, stated that “the affairs of government are distinct from the affairs of the people.”

The law is an integral part of Mr. Abe’s crusade to remake Japan into a “beautiful country,” which envisions expanded government power over the people and reduced protection for individual rights ― a strong state supported by a patriotic people. His stated goal is to rewrite the nation’s Constitution, which was imposed by the United States Army during occupation seven decades ago.

The Liberal Democratic Party’s draft constitution, made public in April last year, deletes the existing article on the guarantee of fundamental human rights. It adds that the people must respect the national flag and national anthem. It states, “The people shall be aware that duties and obligations accompany freedoms and rights and shall never violate the public order and public interest.” It also says that the prime minister will have the power to declare a state of emergency and suspend ordinary law.

Mr. Abe’s aim is to “cast off the postwar regime.” Critics in Japan warn that he is seeking to resurrect the pre-1945 state. It is a vision both anachronistic and dangerous.

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12月12日の八重山毎日紙面 西表(竹富町)の方より

12月14日 琉球新報
社説:秘密保護法公布 報道弾圧の悪法許されぬ

政府は13日、特定秘密保護法を公布した。1年以内に施行するという。公布に合わせて秘密指定の妥当性をチェックする第三者機関設置の準備室を内閣官房に設けたが、国民の「知る権利」や報道の自由を保障する道筋は何も示されていない。政府は反対世論の沈静化に躍起だが、国民は強行成立に納得していないことを銘記すべきだ。
 
法成立後、衣の袖から鎧(よろい)がのぞく事態があった。市民デモを「テロ行為」にたとえ批判を浴びた自民党の石破茂幹事長が今度は、記者会見で特定秘密の報道をめぐり「わが国の安全が極めて危機にひんするのであれば、何らかの方向で抑制されることになる」と述べ、報道機関への処罰を示唆した。すぐに訂正したが、それが政府、与党の本音だろう。石破幹事長はその後も「外へ出すと国の安全に大きな影響があると分かっているが報道する。(その結果)大勢の人が死んだとなれば『それはどうだろう』というのはある」と述べた。国民の知る権利に応える報道は、当然ながら高い公益性を有している。国や国民の安全を脅かすことを意図する報道があるかのような石破氏の言説は歪んでおり非常に危うい。
 
秘密保護法は「報道、取材の自由に十分に配慮しなければならない」と明記する。しかし、今回の発言で配慮規定は当てにならず言論規制が十分あり得ることを、石破幹事長が自ら暴露したに等しい。このように為政者によっていくらでも恣意(しい)的に解釈、運用されかねない法律は公布自体、大問題だ。琉球新報は2004年に日米地位協定を解釈する外務省の文書「日米地位協定の考え方」を入手し、「増補版」も含め読者に伝える必要があるとして、全文を掲載した。外務省は現在でもこれら文書を「米側との信頼関係を損なう」として開示を拒んでいる。
 
岸田文雄外相は先の国会で「増補版」が特定秘密保護法の特定秘密に該当するかについて「策定される統一的な運用基準に基づいて精査される」と述べ、指定の可能性に含みを残した。外相発言は、知る権利に応える公益性の高い報道であっても、官僚の恣意的な法運用で取材記者を萎縮させ、いざとなれば逮捕できることを暗示している。この法はこの国の民主主義にとって有害だと言わざるを得ない。やはり即刻廃止すべきだ。

「戦争の出来る国」へ、 新防衛計画の大綱が年内に、来年の通常国会にはいよいよ「共謀罪」そして「国家安全保障基本法」などが。

12月13日 琉球新報
社説:「共謀罪」新設 国民監視する悪法要らない

安倍政権は、話し合いをしただけで処罰される「共謀罪」新設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の検討に入った。犯罪が行われて初めて処罰するという日本の刑事法体系の原則から逸脱し、市民の会話やメールまで捜査対象となる恐れがある。戦前の治安維持法、あるいは米国統治下の沖縄のような監視・密告社会になりかねない。そのような悪法は必要ない。
 
共謀罪は具体的に犯罪が行われるはるか前の、未遂や予備段階よりさらに前に、2人以上が話し合い合意することを処罰の対象にする。思想でなく行為を処罰するという刑事法体系の基本原則に矛盾し、憲法19条(思想・良心の自由)に抵触する。共謀を証明するために、おとり捜査や、市民の日常会話や通話、メールの内容まで捜査対象になりかねない。法学者は盗聴を容易にするため通信傍受法の改正も視野に入れているとみる。
 
改正案は過去に3回廃案になっている。4年以上の懲役・禁錮を定めた600以上の罪が対象になり、捜査当局の恣意(しい)的な適用や拡大解釈が懸念されたからだ。廃案後も政府内では改正の動きが常にくすぶっていたようだ。今回は対象をテロや薬物・銃器取引、密入国などに限る方向で調整するようだが、懸念は拭えない。

石破茂自民党幹事長が特定秘密保護法案への反対運動をテロになぞらえたように、共謀罪によって、市民団体が危険な組織と見なされ監視される可能性がある。戦時下の言論弾圧事件として知られる横浜事件は、当局が目を付けた人物が友人を招いて開いた宴会を共産党再建を共謀したとみなし、治安維持法によって逮捕、4人が獄中死した。米国統治下の沖縄は米軍情報機関(CIC)が住民を監視し、住民の中の密告者から情報を収集した。目を付けられ逮捕、拷問された住民もいる。
 
強行成立させた特定秘密保護法、共謀罪、通信傍受法の三つがそろうと、主権者である国民が徹底して監視される「警察国家」が出来上がるのではないかと危惧する。安倍晋三首相が、国民監視体制を強化する一方、国会で自民党「1強」という数の力に頼って「戦争のできる国」づくりを進め続けることは許されない。まず解散して国民に信を問わねばならない。それが民主主義のルールだ。

12月13日 沖縄タイムス
秘密保護法公布、1年以内に施行 第三者機関準備室が発足

政府は13日午前、国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法を公布した。併せて同日付で、秘密の指定・解除に関する統一基準の策定や、指定の妥当性を監視する第三者機関設置のための準備室を内閣官房に発足させた。秘密法は公布から1年以内に施行される。与党による採決強行で成立した秘密保護法は、国民の「知る権利」や取材・報道の自由を侵害する懸念が解消されないまま、施行に向けて準備が進むことになった。準備室は、内閣情報調査室職員を中心に十数人で構成する。準備室長には内閣情報調査室の能化正樹次長を充てる。

12月12日 八重山毎日
不連続線:あれだけの激しい反対にもかかわらず

あれだけの激しい反対にもかかわらず、ロクに審議も尽くさずに特定秘密保護法が成立した。これで自由民主党は国民全ての幸福を目指す国民政党ではなく、一部集団の利益追求のための政党であることが判明した。これは先日、沖縄自民党県連が辺野古移設を容認して県民党でないことを示したことと全く同じである。米国流にもう少しはっきり言えば1%の富裕層の権益確保のため残り99%の国民の自由を抑圧制限しようとの立法である憲法そのものであり、もちろん憲法違反である。何しろ中身がよく分からないのだ。時の権力の恣意(しい)によっていくらでも、その秘密の内容が変更拡大可能なのだ。

もともとこの法案は米国が米軍の機密を保持するため多数の米軍が駐留する日本に(つまり沖縄)押し付けたもので、安倍政権は「しめた!」とばかりにそれをずるく利用しているのだ。もし沖縄側が辺野古移設を容認すれば、それこそ日米両政府は巨大米軍基地建設に着手し、それに対する一切の疑問、反対、抗議、情報収集などを圧殺する狙いがあるのだ。悪法中の悪法である。戦前の治安維持法や特別高等警察(いわゆる特高)を連想する人もいるくらいだ。われわれはあくまでその非を糾断し、一年後のその法の施行を決して許してはならない。

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12月12日の八重山毎日紙面 西表(竹富町)の方より

衣の下から鎧が見えた!

12月12日 沖縄タイムス
石破氏、秘密報道の自制を要請

自民党の石破茂幹事長は12日、ニッポン放送のラジオ番組で、特定秘密保護法に基づいて指定された秘密情報を報道機関が報じることに重ねて疑問を呈し、自制を求める姿勢を示した。報道は処罰対象にならないと断った上で「外へ出すと国の安全に大きな影響があると分かっているが報道する。(その結果)大勢の人が死んだとなれば『それはどうだろう』というのはある」と述べた。 石破氏は11日の記者会見で、漏えいが禁じられる「特定秘密」を報道機関が報じた場合に処罰されることもあり得るとの見解を示し、その後に撤回している。

12月11日 琉球新報
社説:「秘密法」世論調査 反対の民意受け廃止探れ

世論は、国民の「知る権利」に背を向けた、権力の暴走にノーを突き付けている。共同通信の全国緊急世論調査で、成立したばかりの特定秘密法を今後どうするかについて、「修正」が54・1%、「廃止」が28・2%で計82・3%に上った。法律に反対は60・3%に上り、「不安」を訴える回答は70・8%を占めた。第2次安倍内閣の支持率は前回11月から10・3ポイントも下げて47・6%となり、初めて50%を切った。不支持率は38・4%で、12・2ポイントもはね上がった。当然の結果だ。法成立後も廃止を求める全国的なうねりはやまず、法の欠陥への懸念が噴出している。
 
支持率が急落した安倍晋三首相は会見を開き、「丁寧に時間を取って説明すべきだった。反省している」と述べたが、遅すぎる。法案を審議した衆参両院の特別委員会への首相の出席時間はわずか4時間余だ。反省を口にするぐらいなら、強行採決を避け、廃案か継続審議にすべきだった。後付けの「反省」は、国民の強い批判を意識したポーズにすぎまい。結局、首相は「良い法律」と自賛して本音を見せたが、数を頼りに強行採決を連発した政権与党に対する国民の目の険しさを自覚し、法廃止の道を探るべきだ。
 
会見で、首相は「通常の生活が脅かされることは断じてあり得ない。今ある秘密の範囲が広がることはない」と強調したが、具体性は全くなかった。法案審議の土壇場で、安倍政権は「保全監視委員会」「情報保全観察室」の設立をパッチワークのように打ち出した。首相の会見でも、政府に都合の悪い情報が隠され、恣意(しい)的な運用がなされることへの懸念は払拭(ふっしょく)されていない。
 
国民を情報から遠ざける法が成立すれば、政府が「乱用しない」と断言しても、取り締まる側の警察などにとって便利な道具となり、統制国家、秘密国家の色が濃くなる。歴史の教訓である。日本が戦争に突き進んでいた1941年に成立した国防保安法はスパイ防止の名目で、国の情報を「秘密」の壁で覆った。柳川平助司法大臣(当時)は「他の目的に利用することは一切致さない」と答弁したが、施行初年度だけで検挙は一般人を含めて59件に上り、憲兵らによる国民生活の監視が一気に強まった。柳川大臣の答弁が、安倍首相の釈明と重なってならない。

12月11日 沖縄タイムス
社説:[秘密法13日公布]疑問を一から検証せよ

異例ずくめの強引な国会運営で成立した特定秘密保護法が13日、公布される。法律には1年以内に施行することがうたわれているが、小手先の対応では国民の懸念をぬぐい去ることはできない。 安倍晋三首相は9日の記者会見で世論の反発を意識し、「もっと丁寧に時間をとって説明すべきだった」と述べた。本心からそう思っているのであれば、今度こそ与野党で熟議を重ね、法律の廃止か全面的見直しに着手すべきである。

共同通信社が8、9両日に実施した電話世論調査によると、特定秘密保護法を今後どうすればよいかとの問いに対し、「このまま施行」はわずか9・4%にとどまった。「修正」(54・1%)と「廃止」(28・2%)を含めると、実に82・3%が法律の見直しを求めている。法律への不安を「感じる」と答えた人も70・8%に達した。 法案成立後に実施したマスコミ各社の世論調査は、おおむね似た傾向を示している。国会周辺を取り巻いた人びとの声が国民全体に広く共有されていることを裏付けるものだ。 この事実は、成立した法律に対して国民が「ノー」を突きつけたのに等しい。 国会での相次ぐ強行採決。アリバイづくりとしかいいようのない形骸化した地方公聴会。二転三転の政府側説明。バナナのたたき売りのように成立直前に次々に発表された、法律にない新たな組織。 正当性を欠いた法律は廃止するか全面的に見直すしかない。

安倍首相は記者会見で「野党との法案修正がなされたことは大きな成果」だと強調した。ほんとにそうだったのか。修正で合意した日本維新の会もみんなの党も、参院本会議では議場から退席して棄権するか、反対票(みんなの党の3人)を投じた。 決して採決で賛成したわけではないのだ。それがなぜ「大きな成果」だといえるのか。政府自民党の国会運営には、この種の我田引水の議論や取り繕いがあまりにも多かった。

安倍首相は「秘密が際限なく広がることは断じてあり得ない」と述べた。「知る権利は奪われない」とも強調した。これらの説明には、それを担保する法律の条文がない。法律の中にチェック機能や検証機能が十分に備わっていればまだしも、それが明文化されていないのである。説得力に欠けるのはそのためだ。 たとえ首相であっても「オレを信じてくれ」では担保にならない。それが特定秘密保護法の持つ怖さである。

安倍首相は「一般の方が巻き込まれることは決してない」と指摘した。この言い方にも落とし穴がある。「一般の方」とは誰をさすのか。 憲法が保障する思想・表現の自由とは、何よりも、反対する自由、抗議する自由、政府の政策にノーを言う自由のことを言うのである。 デモとテロを混同するような与党幹事長の下で、公安部門の特定秘密が増殖したらどういうことになるのか。その懸念はぬぐい切れない。

12月11日 八重山毎日
不連続線:防衛や外交、治安に関する国の広範な情報を
 
防衛や外交、治安に関する国の広範な情報を「特定秘密」に指定し、漏えい者に重罰を科す。国民の知る権利と発言の自由がふさがれ、物が言えない国になるとの警戒感が強い特定秘密保護法が、安倍政権で成立した。マスコミや日本弁護士連合会、日本ペンクラブ、学者グループなど国民の懸念の声があるにもかかわらず参院本会議での強行採決。赤信号みんなで渡れば怖くない的に〝付和雷同〟した自民、公明両党の賛成多数で可決、成立させた。

安倍政権には〝民が主〟の民主主義が本当に分かっていないのではないか。国民の声にも心ここにあらず、民意をくんで民意に従う気持ちは少しも見えない。秘密法には官僚が恣意(しい)的に秘密を指定する危険性が危惧される。秘密という名のもとに何が起こるか分からぬとの不安が、黒い雲のように国民の心におおいかぶさる。冷たい政権が次に打ち出すのは何か。日米同盟強化と米軍と自衛隊の一体化推進。集団的自衛権の行使容認などの動きから、識者は憲法改正だと警戒する。

国家権力がどう変わろうとも政治家の声だけがその国の声ではない。民は政権を支えもするが不満ならひっくり返す。対話重視の時代に安倍政権がこれ以上、国民の声に向き合わずとなれば新しい内閣によって人心の一新を図るほかない。

12月10日 琉球新報
特定秘密保護法廃止へ気勢 市民団体150人が集会

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特定秘密保護法の強行採決に抗議し、シュプレヒコールを上げて同法廃止へ決意を示す県内の平和団体メンバーら=9日午後、那覇市泉崎の県民広場
 
6日成立した特定秘密保護法に対し、県内の平和団体などは国会での強行採決を糾弾する緊急集会を那覇市の県民広場で開いた。時折大雨が降るぐずついた天候の下、参加した150人(主催者発表)は同法に反対する意思をあらためて確認し、「国民弾圧許さんぞ」などと、法律廃止を目指し気勢を上げた。
 
沖縄平和運動センターの山城博治議長は、「知る権利」を呼吸に例え「(同法施行で)いったいどこで息をして生きていくことができようか」と強調し、全国の反対運動と連帯して沖縄でも法律廃止を求め続ける決意を示した。同法成立で報道の自由が脅かされる状況について、県マスコミ労働組合協議会の次呂久(じろく)勲議長は「歴史は繰り返されるというが、繰り返してはいけない歴史がある」と主張。「現状はまるで戦前に逆戻りしている」と危機感を訴えた。

12月10日 八重山毎日
秘密保護法成立に抗議 労組や政党などが緊急集会

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特定秘密保護法成立に強く抗議する人たち=9日午後、那覇市

機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法の成立に抗議する緊急集会が9日午後、那覇市の県民ひろばで開かれた。県内の労働組合や政党、沖縄平


許すな!着々と進む歴史の改ざんと隠蔽 ②

2013-05-29 12:24:18 | 人権

 

6月14日 琉球新報
メディア時評・日本型表現の自由「蟻の一穴」の危険性 異論認めない制度と空気

いま東京・上野の森ではバルテュス展が開催中で、多くの観客を集めている。そのちょうど同じ時期、国会では改正子どもポルノ禁止法案が審議され、来週にも成立の見込みと伝えられている。巨匠と呼ばれた同氏は少女画が有名で、描いたワインラベルが子どもポルノとして騒動になったことがあるだけに、そのめぐりあわせは不思議なものだ。規制対象を、実写から漫画・アニメといった創造物に拡張する変更点は最終的に外され、「単純所持」を罰することが目玉の改正となる。しかしながら、いわゆる漫画規制は「一歩前進」をめざしていったん取り下げただけともいえ、実際、同様の規定を持つ東京都青少年条例では、法案審議に合わせるかのように、今国会中に大手出版社角川書店のコミックスを「不健全(有害)図書」と初指定している。いつでも、また再強化の話が出る素地(そじ)があるということだ。
 
単純所持禁止は、世の中から子どもポルノの存在をなくすことを求めるもので、これまでのように流通・販売目的で持っている場合に限らず、親が子の写真を撮った場合や、セルフヌードや未成年夫婦間で撮影した水着動画も、場合によっては摘発の対象となる。あるいは、国会審議でも問題になったように、高校生の下着風の水着写真集が問題とされるわけである。ことほどさように、子どもポルノの定義は芸術作品も含めて、極めて曖昧なものであることを、あらためて確認しておく必要があるだろう。なぜなら、この曖昧さこそが恣意(しい)的な取り締まりを可能にしているからである。しかも今後は、それらを販売目的ではなく、買った側も罰するということにしたわけで、これは出版する側にも、そして一般市民の側にも大きな萎縮効果をもたらすことになる。

単純所持も禁止
こうした曖昧さ以上に、国会では全く議論された形跡がないものの、より大きな懸念が、単純所持禁止が日本の表現の自由モデル原則を変えてしまう点だ。この「表現物を持っているだけで罰する」という法規制は、特定の表現行為を社会の中で一切認めないということを意味する。これで、確かにいまより捕まえやすくはなるだろう(ちなみに、現行法でも厳しい摘発は十分に可能である)。しかし、子どもポルノが「蟻(あり)の一穴」となって、「例外」が増えていくことを強く懸念せざるをえない。
 
たとえば、いま問題になっているヘイトスピーチも、社会的に存在させるべきではないという考えから絶対的な法による禁止を求める声が強い。社会全体として秩序維持のために公権力による規制を求める空気が広まっているだけに、結果として表現の自由が劣後におかれる可能性が高まっているからである。確かに、反基地デモに罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせる者を取り締まりたい欲求はあるだろう。しかしいったん法ができれば、仮に「ヤマトゥンチューは出ていけ」と口を滑らせた瞬間、公権力に反基地運動を取り締まる法的根拠を与えることになりかねないことを覚えておく必要がある。
 
これまで、箍(たが)を外してこなかったのは、戦前戦中の警察による恣意的な取り締まりに、「例外」が活用された苦い経験があるからだ。欧州諸国のように、一部の表現行為の存在を認めないという選択肢はもちろんありうるが、形式的な「国際基準」にそろえることで、日本の表現の自由の基本構造を変えてしまいかねないことは、もっと議論されなければならない。
 
表現の自由をめぐるもう一つの問題が、相変わらず続く政府からの物言いである。『ビックコミック・スピリッツ』連載の「美味(おい)しんぼ」をめぐる騒動のさなか、政府閣僚等はこぞって「事実に反する」として遺憾表明や批判を行った。新聞報道されただけでも、安倍首相(17日)「根拠ない風評に国として対応」、菅官房長官(12日)「正確な知識を」、根元復興相(13日)「非常に残念で遺憾」、森消費者相(13日)「根拠ない差別を助長」、石原環境相(9日)「被曝と鼻血に因果関係ない」、太田国土交通相(13日)「心情をよく理解する必要ある」、下村文科相(12日)「よく勉強して描く必要ある」、環境省政務官(8日)「とても残念で悲しい」と続いたことがわかる。このほか、自民党福島県連や福島県議会民主・県民連合が抗議している(ほかに、大阪府、大阪市や福島県、双葉町の抗議がある)。

必要な説明責任
しかも気になるのは、会見記録を見る限り、記者の側から「言わせている」節が強いことだ。さらには、こうした政治家発言を受ける形で、各社が社説等で論陣を張るが、むしろその多くは漫画表現を否定し、議論を認めないという状況を認めている。具体的には、「これは『表現の自由』の問題ではない」(13日、産経)、「復興に使うべき貴重な時間と労力を抗議や反論のために浪費させて何が議論か」(14日、福島民報)などの全否定や、「一つの作品を取り上げて過剰に反応したり、大学の学長が教職員の言動を制限するような発言をしたりすることには、賛成できない」(14日、朝日)といった冷静な議論を求めるものが多数派であった。「自由に議論すること自体をためらう風潮が起きることを懸念する」(15日、毎日)は少数派であったといえるだろう。
 
間違ったことをしたら抗議するのが当然、と一般に言われているが、政府が公式の場でこれだけの批判を集中させることは、極めて珍しいことだ。本来、政府は一方的に抗議するのではなく、あくまでも説明責任を果たす役割を負っているのであって、もし風評被害が起こる可能性があると思えば、より詳細で十分なデータを明らかにすることが求められているのではないか。むしろその不足こそが、いま問われていることそのものでもある。当欄前月でも触れたように、原発や沖縄問題に関する神経質なまでの政府の対応は、こうしたところにも表れるのであって、それは表現の自由を覆う重たい雲となって私たちを覆いつつある。

山田健太、専修大学教授・言論法

 

すでに証言はあったが、宮古島の慰安所の存在を裏付ける旧軍文書を林博史教授らが入手 。

 

5月30日 琉球新報
宮古慰安所 公文書に 関東学院大・林教授ら入手 

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林博史関東学院大教授らが入手した軍法会議判決書類の一部。1945年8月中旬に軍の食料を売り、慰安所に行ったことを示す記述がある

沖縄戦当時の宮古島に慰安所が存在し、旧日本兵が通っていたことを裏付ける旧日本軍の資料がこのほど見つかった。宮古島の慰安所の存在はこれまで住民の証言で明らかになっていたが、公文書で証明されるのは初めて。関東学院大学の林博史教授と佐治暁人講師が厚生労働省から情報公開請求で入手した。終戦後も慰安所が継続していたことも新たに分かった。
 
資料は厚労省所蔵の1945年11月20日付の宮古島での軍法会議判決を示した報告書。当時、宮古島に駐留していた陸軍第28師団司令部が法務省に提出したもので、両組織の印が押されている。文書には、第28師団の衛生上等兵が軍の食料を横流しして住民に売却し、それによって得た金を使い、慰安所で遊興消費したとし、懲役1年の刑に処したことと、判決理由などが記されている。判決理由には、宮古島陸軍病院で炊事勤務に就いていた被告人の衛生兵は45年8月中旬に、軍から馬肉約40キロを受け取り、病院に戻る途中に、民家で2斤(約1・2キロ)を20円で売却し、慰安所で消費したのを皮切りに、複数回の同様の犯行が記されている。
 
林教授によると、旧日本軍がアジア各地に設置した慰安所は終戦後、閉鎖されたとされるが、報告書には終戦を迎えていた45年10月2日にも横流しで得た金で、慰安所で遊興したことが記されていた。慰安所の運営形態や場所、慰安婦の数などの記述はなかった。林教授は「軍には貯蓄していた食料があったことが分かった。飢えとマラリアで苦しんでいる島民に分け与えることもしないところは旧日本軍の本質を表している」と指摘した。これまでに17カ所の慰安所が存在したことが証言や調査により判明している。

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5月21日の沖縄タイムス

5月10日 琉球新報
社説:無断加筆 もはや「捏造」に等しい

何かを主張したければ、自身の名の下に、自身の責任で主張すればいい。誰かの発言のように装って主張するのは卑怯(ひきょう)である。米ニューヨーク・タイムズ紙の元東京支局長の著書「英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄」(祥伝社新書)で、「日本軍による『南京大虐殺』はなかった」と主張した部分は、著者に無断で翻訳者が書き加えていたことが分かった。このような行為はもはや「編集」とは言えず、「捏造(ねつぞう)」に等しい。少なくとも現行の本はいったん回収し、無断加筆した部分を削除して、版を改めて発行すべきだ。
 
問題の部分はこう記す。「歴史の事実として『南京大虐殺』は、なかった。それは、中華民国政府が捏造した、プロパガンダだ」これに対し著者のヘンリー・ストークス氏は「そうは言えない。(この文章は)私のものではない。大虐殺と呼べないにせよ、南京で何か非常に恐ろしい事件が起きたかと問われれば、答えはイエスだ」と明言している。翻訳者の藤田裕行氏は「『南京大虐殺』とかぎ括弧付きで表記したのは、30万人が殺害され2万人がレイプされたという、いわゆる『大虐殺』はなかったという趣旨」と言うが、ストークス氏は「訳の分からない釈明」と一蹴する。
 
そもそもこれはストークス氏単独の著書という体裁だが、大部分は同氏へのインタビューを基に藤田氏が日本語で書き下ろした。藤田氏はストークス氏に詳細な内容を説明しておらず、日本語を十分に読めないストークス氏は、取材を受けるまで問題部分を承知していなかった。このような手法が許されるのか。録音を文書化したスタッフは、ストークス氏の発言が「文脈と異なる形で引用され、故意に無視された」ことを理由に辞めたという。
 
藤田氏は南京大虐殺や従軍慰安婦を否定する保守派団体「史実を世界に発信する会」の中心人物の一人だ。自分の著作で書くのでなく、あえて今回のような体裁にした理由について「外国特派員がこういう話をしたら面白いと思った。私が書いたら『あれは右翼だ』と言われる」と説明する。この団体の加瀬英明代表も、韓国人著者の原稿に大幅な加筆修正をしたとして批判されたことがある。そんな手法を意図的に繰り返しているとすれば、看過できない。

5月9日 琉球新報
韓国人慰霊の木なくなる、広島 平和記念公園

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なくなったチョウセンゴヨウが植樹されていた場所(手前の札が立つ部分)。奥は「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」=9日午前、広島市の平和記念公園

平和記念公園(広島市中区)の「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」近くに、追悼のため植樹された木がなくなっていたことが9日、分かった。故意に抜き取られた可能性があるとして、所有していた在日本大韓民国民団(民団)広島県地方本部が広島中央署に届けた。
 
公園を管理している広島市の担当者は「木があった場所はきれいに整地され、自然に枯れたとは考えにくい」と話している。民団や広島市によると、公園の清掃作業をしていた男性が4月16日朝、木を見たが、夕方にはなかったという。24日には市民から「木の説明文があるのに木がない」と市に連絡があった。

5月8日 沖縄タイムス
南京虐殺否定を無断加筆 ベストセラーの翻訳

米ニューヨーク・タイムズ紙の元東京支局長が、ベストセラーの自著「英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄」(祥伝社新書)で、日本軍による「『南京大虐殺』はなかった」と主張した部分は、著者に無断で翻訳者が書き加えていたことが8日明らかになった。

英国人の著者ヘンリー・ストークス氏は共同通信に「後から付け加えられた。修正する必要がある」と述べた。翻訳者の藤田裕行氏は加筆を認め「2人の間で解釈に違いがあると思う。誤解が生じたとすれば私に責任がある」と語った。 同書はストークス氏が、第2次大戦はアジア諸国を欧米の植民地支配から解放する戦争だったと主張する内容。「歴史の事実として『南京大虐殺』は、なかった。それは、中華民国政府が捏造したプロパガンダだった」と記述している。

だがストークス氏は「そうは言えない。(この文章は)私のものでない」と言明。「大虐殺」より「事件」という表現が的確とした上で「非常に恐ろしい事件が起きたかと問われればイエスだ」と述べた。 藤田氏は「『南京大虐殺』とかぎ括弧付きで表記したのは、30万人が殺害され2万人がレイプされたという、いわゆる『大虐殺』はなかったという趣旨だ」と説明した。 だが同書中にその説明はなく、ストークス氏は「わけの分からない釈明だ」と批判した。

同書は昨年12月に発売、約10万部が売れた。ストークス氏単独の著書という体裁だが、大部分は同氏とのインタビューを基に藤田氏が日本語で書き下ろしたという。藤田氏は、日本の戦争責任を否定する立場。ストークス氏に同書の詳細な内容を説明しておらず、日本語を十分に読めないストークス氏は、取材を受けるまで問題の部分を承知していなかった。 関係者によると、インタビューの録音テープを文書化したスタッフの1人は、南京大虐殺や従軍慰安婦に関するストークス氏の発言が「文脈と異なる形で引用され故意に無視された」として辞職した。

5月6日 沖縄タイムス
米軍物資の国民党売却拠点、勝連と首里に

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米海軍が沖縄で撮影した中国兵と米軍の戦時余剰品。「BOSEY(ボーセイ)」と記されている

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勝連半島のチャイナ陣地と予想される範囲

沖縄戦直後、勝連半島や首里石嶺にあった中国(国民党、中華民国)軍陣地の通称・チャイナ陣地が、米国との協定に基づき、沖縄戦で残された米軍の物資を中国に送る拠点だったことが、日本女子大学助教の高橋順子さん(39)、普天間中教諭の森岡稔さん(39)、県知事公室地域安全政策課研究員の波照間陽(しの)さん(28)の共同研究で分かった。武器を除くトラックや通信機などが渡され、共産党と内戦中だった国民党を支援する目的だったとみられる。3月に日本女子大学人間社会研究科紀要に発表した論文「占領初期沖縄の勝連半島地域における『チャイナ陣地』に関する一考察」で明らかにした。(城間有)

「チャイナ陣地」は「チャイナ部隊」「チャイナ・ボーセイ(Bosey)」とも呼ばれ、地域史や新聞に散見されるが、実態を分析した研究は初めて。森岡さんが与勝第二中学校に勤務していた時、地域住民からチャイナ陣地のことを聞いて興味を持ち調べ始めた。高橋さんが歴史的背景を分析し、波照間さんが米国の公文書を調査した。 共同研究は、米国と中国の間で1946年8月30日に結ばれた「中国に対する余剰資産一括売却に関する協定」をほかの公文書から分析。協定そのものは入手できていないが、戦地に残された米政府の資産を中国が一括で買い取る内容だったことを明らかにした。この協定に基づき、チャイナ陣地が設置された。

住民の証言と地域史の記述を総合した結果によると、勝連半島のチャイナ陣地は47年8月から49年6月までの間、平敷屋や安勢理を中心に、現在の平敷屋交番から与那城まで位置していた。住民に物資を提供したり、食堂に遊びに来るなど地域との交流があり、住民が雇われていたことも証言されている。 設置された背景には、米国が当時、国民党と共産党に分裂していた中国の統一を望み、国民党を軍事的、経済的に援助したことがあり「余剰資産の対中売却は、その政策を支える一つの方法だったと考えられる」とした。だが、この支援は共産党の批判の的となり、国民党の軍事力に余裕があったことから、協定からは軍需品が除外されることになったと分析した。高橋さんは「研究は端緒を開いたばかり。体験者と諸領域の専門家の協力を仰いでいきたい」と意欲を示している。

チャイナ陣地 
沖縄戦の直後に勝連半島と那覇市首里石嶺にあった中国・国民党の陣地。米軍が不用になった車両や建築資材、通信機具、医療設備などを中国へ送る拠点になった。チャイナ・ボーセイとも呼ばれた。 米国は共産党と対立していた国民党の支援、中国は戦後の経済復興のため、両国で「中国に対する余剰資産一括売却に関する協定」を締結したとみられる。

4月30日 沖縄タイムス
台湾2・28事件 犠牲者認定へ作業報告

1947年に中華民国統治下の台湾で起きた「2・28事件」に巻き込まれた県出身者の遺族らが26日、那覇市小禄の沖縄産業支援センターで、2~3月に台湾を訪れた「追悼の旅」の報告会を開いた。台湾政府などが主催する記念式典で馬英九総統と対面したことや、被害認定を求める作業を進めていることを説明した。集まった約25人に、事件の真相究明と、後世に事件を語り継ぐ大切さを訴えた。

同事件は国民党の専制支配や台湾人差別を原因に起きた住民と政府の衝突で、軍がおよそ2万8千人を虐殺したとされている。県内の遺族らは1月に「台湾228事件、真実を求める沖縄の会」を結成。台湾政府に犠牲者として認めてもらうため、証言の整理などを進めている。

父・青山惠先さん=当時(38)=が事件に巻き込まれた同会代表世話人の青山惠昭さん(70)は、当時を知る人たちが高齢化していることから、「さまざまな手を尽くして、早めに資料や情報を集めたい」と呼び掛けた。 台北近郊で事件に遭遇したとみられる大長元忠さん=当時(39)=の長男の妻の弘子さん(83)は、台湾を訪問し、「義父の恐怖心や残念な思いに触れた気がした」。今後、事件の解明とともに、「人権や平和の大切さが広がってほしい」と期待を込めた。

4月18日 琉球新報
強制連行追悼碑:群馬県が「政治利用」と許可更新に応じず

第二次世界大戦中の強制連行で犠牲になった韓国・朝鮮人を追悼しようと、群馬県高崎市の県立公園「群馬の森」に建てられた石碑を巡り、県が「政治利用されている可能性がある」として設置許可の更新に応じていないことが分かった。碑を管理する市民団体「追悼碑を守る会」は「平和と友好を誓った碑を撤去せざるを得なくなる」と懸念している。2004年1月に市民団体が県の設置許可を得て、追悼碑を建立。高さ1.8メートルで、「わが国が朝鮮人に対し、多大の損害と苦痛を与えた歴史の事実を深く記憶にとどめ、二度と過ちを繰り返さない決意を表明する」などと刻まれている。
 
県や守る会によると、12年から「碑文が反日的なので撤去して」との苦情が計約100件あった。その後、県は、12年の追悼集会で参加者が高校授業料無償化の対象から朝鮮学校を除外する政府方針を批判したことについて、「政治的行事を行わないと定めた設置許可条件に抵触する可能性がある」と問題視するようになった。県は今年1月に「政治的発言と考えるか」などとの質問を出したが、守る会は「集会が丸ごと政治喧伝(けんでん)の場であったかのように決めつけている」として回答を拒否。碑の設置許可は10年間だが、県は更新申請を保留し、今年1月に期限が切れた。守る会の猪上輝雄事務局長(84)は「韓国や中国との関係がぎくしゃくしているこの時代にこそ、碑の意味がある」と訴える。県都市計画課は「再度の回答要請も含めて対応を検討中」としている。

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4月18日の産経

4月10日 琉球新報
沖縄戦証言、日系米人から集録へ 投降呼び掛け調査も

県は本年度、沖縄戦で米軍の部隊に従軍した県系米国人らの体験談を集録する「日系米国人版戦争体験集録事業」を行う。県が日系米国人の証言を正式に記録するのは初めて。ハワイで調査し、最大15人分の証言を集める予定。映像記録は2015年度に県平和祈念資料館の証言ブースで公開する。
 
米陸軍情報部(MIS)として沖縄戦に従軍したり、米国に忠誠を誓わずツールレイク強制収容所に移されたりした日系人などの取材を予定している。「帰日」中に開戦し、旧日本軍として米国と戦った日系人の聞き取りも行う。5月中に事前調査し、8月ごろに証言を集録する。MISは旧日本軍の資料翻訳や捕虜の尋問が主任務だったが、沖縄戦ではガマに避難した住民にウチナーグチで投降を呼び掛けるなど、住民の救命にも尽力した。投降に応じた住民の記録は残っているが、呼び掛けた側の証言は正式な記録はない。
 
収容所の日系人は「命令があれば日本と戦うか」「米国に忠誠を誓うか」という二つの質問に、いずれも「ノー」と答えた人々で、通称「ノーノーボーイ」と言われ差別を受けた。昨年、平和祈念資料館が開いた特別企画展で、沖縄戦に関する日系米国人の証言が得られたため、正式な記録として残す事業を行うことになった。事業費は1490万円で一括交付金を活用する。同資料館での映像公開のほか、DVDの制作、貸し出しも検討している。

4月5日 沖縄タイムス
南京市が「慰安所」保存へ 日本けん制

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中国江蘇省南京市に残る旧日本軍の「慰安所」の建物=3月

中国江蘇省南京市が、同市内に残る旧日本軍の「慰安所」の建物を文化財として保存することを検討していることが4日、分かった。南京市当局者が明らかにした。ただ最終決定には至っていないという。 これまで中国は、従軍慰安婦問題を対日外交カードとはしてこなかったが、最近は歴史問題で韓国と〝共闘〟し、日本に対する圧力を強めている。慰安所保存も日本けん制の動きとみられる。

4月4日 琉球新報
文科相、衆院委理事会答弁訂正へ 村山談話は閣議決定

冨岡勉文部科学政務官は4日の衆院文部科学委員会理事会で、過去の植民地支配と侵略を認めた村山富市首相談話は閣議決定されていないとした下村博文文科相の答弁について、実際は閣議決定されていたとして陳謝した。冨岡氏は「事実誤認があったので訂正したい」と説明。下村氏は9日に答弁を訂正する。下村氏は2月21日と3月26日の委員会で、教科書検定基準に関する質問への答弁として発言。村山談話は閣議決定されていないとして「検定基準における政府の統一的な見解には当たらない」と述べた。答弁をめぐっては、韓国の外務省報道官が「極めて望ましくない発言だ」などと批判していた。

3月24日 琉球新報
社説:慰安婦隠蔽疑い 所蔵資料で強制性補強を

戦時中の最たる人権侵害である旧日本軍の従軍慰安婦問題で、軍の組織的関与を示す新たな事実が明るみに出た。太平洋戦争中にインドネシアで海軍兵曹長だった男性が、現地での女性の強制連行と隠蔽(いんぺい)工作を証言していた。1962年に法務省が実施した戦争犯罪に問われた元軍人への聞き取りに対し、元兵曹長は「(慰安婦として)現地人など約70人を連れてきた」「他にも約200人を部隊の命で連れ込んだ」と、供述していた。
 
関東学院大の林博史教授の研究室が国立公文書館の保管資料を見つけた。さらに、元兵曹長は、強制売春が戦争犯罪に問われることを「最も恐れた」と告白し、「軍需部などに強硬談判して約70万円をもらい、各村長を通し住民の懐柔工作に使った」と、隠蔽の生々しい実態を語っていた。軍当局が大金をばらまいてまで現地住民に口止めを図った事実は、重大な戦犯行為に当たると認識していた証左であろう。強制連行、売春強要が違法であることを熟知した日本軍が公文書に記録を残すことはほとんどない。加えて敗戦時には膨大な公文書が焼却され、従軍慰安婦問題などの検証を困難にしている。
 
今回の兵曹長の供述は、強制連行、兵士の性のはけ口となる行為の強要、隠蔽工作がセットになっている点で重要だ。軍の組織的関与を十分に裏付けている。安倍政権は、日本軍の関与と強制性を認めた1993年の河野洋平官房長官談話を維持するとしつつ、作成経緯を検証する方針を崩していない。談話の根拠となった韓国の元慰安婦の証言に関し、韓国政府とのすり合わせがあったかを軸に検証する方針だ。
 
「命令書」の発見が難しいことを想定して被害者の証言内容に疑義を挟み、「強制性」を徐々に否定することをもくろんでいるのではないか。なお、疑念は尽きない。従軍慰安婦問題の本質は、日本軍による組織的な戦時性暴力がなされたことにある。河野談話の検証に際し、加害者側の日本軍などが残した暴力行為の有無に比重を置き、元慰安婦の証言の作成経緯を調べるというのは、本末転倒ではないか。今回の新資料は法務省が所蔵しながら、河野談話にも反映されていない。軍の組織的関与を示す足元の一級資料にも目を向け、強制性の証明を補強すべきだ。

3月20日 沖縄タイムス
泉佐野市教委がはだしのゲン回収 「差別的な表現が多い」

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漫画「はだしのゲン」

大阪府泉佐野市教育委員会が今年1月、原爆の悲惨さを描いた漫画「はだしのゲン」に差別的な表現が多いとする千代松大耕市長の要請を受け、市立小中学校の蔵書を回収していたことが20日、分かった。 中藤辰洋教育長によると、千代松市長や市教委は昨年から、漫画に「きちがい」「こじき」などの表現が使われていることを「差別を助長する」と問題視。小中学校の保有状況を調査し今年1月、小学校8校、中学校5校の蔵書を回収し、児童、生徒が閲覧できない状態になっていた。

3月6日 琉球新報
社説:河野談話検証 強制性を直視すべきだ

近隣国との関係悪化がのっぴきならない局面に至るだろう。菅義偉官房長官は、従軍慰安婦問題をめぐる1993年の河野洋平官房長官談話について、作成過程を検証する方針を明言した。日本は、過去の事実を正面から見据えず、後になって歴史を塗り替えようとする「歴史修正主義」の国とみなされるはずだ。世界から「異質な国」と烙印(らくいん)を押されかねない態度は、直ちに改めるべきだ。国会で菅氏は、談話当時、日韓の間で文言の擦り合わせ作業があったか検証する考えを示した。元慰安婦から再び聴取する計画はないようだが、どう取り繕っても元慰安婦の証言を疑っているとしか思えない。過酷な体験をした被害者をうそつき呼ばわりするのに等しい。韓国が猛反発するのは必至であり、当然だ。
 
2007年、前回の第1次安倍内閣は、朝鮮半島で日本の軍や官憲が直接、強制連行したことを示す資料はないとの答弁を閣議決定した。河野談話を攻撃する論者はしきりにその点を強調する。だが河野談話はそうは書いていない。「軍の要請を受けた業者が(中略)甘言、強圧など(同)本人の意に反して集められた例が数多くある」と述べているのだ。それらは証言や資料で裏付けられている。談話にないことをあたかも書いてあるかのように勝手に膨らませ、「証拠を示せ」と攻撃するのは不当だ。
 
朝鮮半島以外で日本軍が強制連行したり、慰安婦を強いたりした例は多数ある。朝鮮半島でも「負傷兵の見舞い」や「歌や踊りの慰問」などと「甘言」で誘い、気付いた時には逃げられないという時点で、正当化は不可能だ。細部に限定を付け否定に躍起となればなるほど、日本は反省していないと諸外国に印象付けることになる。朝鮮半島から来た慰安婦の多くは未成年者だった。当時ですら、未成年者の売春勧誘は国際条約違反で、日本政府は処罰する義務を負っていた。日本軍は、彼女たちが甘言で連れて来られたと分かった時点で解放すべきではないか。軍直営・軍専用の慰安所だ。調べる義務がある。言い逃れできるはずがない。そもそも彼女たちに慰安所以外に住む自由はあったのか。拒否の自由、廃業の自由はあったのか。慰安所での強制性自体が人道に著しく背いている。永田町の政治家はその基本的事実を直視すべきだ。

「集団自決」軍命を歴史教科書に明記を求めた9.29県民大会から6年余、実現させる会から県P連、沖子連脱退。

2月26日 琉球新報
9・29決議実現させる会 県P連、沖子連が脱退

「9・29県民大会決議を実現させる会」(玉寄哲永世話人)は25日、那覇市の県総合福祉センターで定例会を開き、県PTA連合会(県P連)、県子ども会育成連絡協議会(沖子連)の本年度末での脱退表明を承認した。県P連、沖子連の脱退後、実現させる会は残る5団体で活動を継続するが、脱退した2団体に活動状況を伝えながら再加入を促していく方針だ。実現させる会の協議内容を「政治的だ」として脱退を表明した2団体に対し、玉寄世話人は「(実現させる会の活動は)平和運動であって、政治が入る余地はない」とし、「今後もずっと運動を続けていく」と話した。
 
団体代表らは毎月開かれる定例会について、協議内容を理解しやすいよう勉強会や情報交換会などを適宜設けることを決めた。県老人クラブ連合会の知花徳盛事務局長は「(教科書をめぐる)今の動きは複雑だ。各会員に簡潔に分かりやすく説明する必要がある」と提起した。団体の役員交代時に、実現させる会の協議内容を引き継ぐよう呼び掛けることも確認した。
 
遺骨収集ボランティア団体ガマフヤー(具志堅隆松代表)が実現させる会への加入を希望しており、3月定例会で加入について協議することも報告された。具志堅代表は「沖縄戦の事実を次の世代につなぐのは大人の義務だ。われわれは声を上げる側に回りたい」と話している。実現させる会は2007年の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」を開いた構成団体からなり、「集団自決(強制集団死)」の軍命を歴史教科書に明記するよう求めている。県P連と沖子連は1月、実現させる会の協議内容を「政治的」だとして会からの脱退を表明していた。

「平和教育とは別」 県P連・伊敷会長
「9・29県民大会決議を実現させる会」の脱退承認を受け、県PTA連合会の伊敷猛会長は「PTAとして平和教育に取り組む必要性は感じているが、それと実現させる会の協議内容とは別物だ」と話した。実現させる会の再加入を促すという方針に「戻ることは特に考えていない」と述べた。

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沖縄で続く米兵のレイプ、暴行、侵入、脱走など。日米地位協定を見直せ!

2012-10-17 14:27:39 | 人権

フィッシャーさんの呼びかけです。

仲井真知事への嘆願書に署名を!

Tangan

http://www.avaaz.org/jp/petition/Stop_military_rape_in_Okinawa/?tecjDdb

沖縄米軍によるレイプを繰り返させない

私も皆さんと同じように、沖縄県で火曜日朝に起きた若い女性に対する米兵2人による強姦事件を耳にした時、心が引き裂かれる思いでした。その若い女性が、10年前の私と重なりました。

私はこの10年間、日本社会に正義をもたらすため闘い続けてきました。この国では今もなお、私の人生を変えた米兵によるあのような犯罪が後を絶ちません。しかし、ほとんどの事件において、米兵が罪に問われることはありません。この悲劇がマスコミでも大々的に取り上げられている今こそ、強く政府に訴え行動を起こすよう説得する貴重なチャンスです。

私は今週金曜日、この件において迅速に正義を追求し、沖縄における在日米軍の刑事免責を終わらせるよう沖縄県知事に訴えるため、全国メディアにこの問題を提起します。しかし、その訴えが聞き届けられるためには、訴えているのは被害者だけでなく、その周りに大きな支援の輪があるのだということを仲井真知事に示さなければなりません。嘆願書に署名し、お知り合いの皆さまにも署名の協力を呼びかけて頂くようお願い致します。

さあ、力を合わせ変化を起こしましょう。
Jane Fisher

10月20日の沖縄タイムスより: 2米兵暴行:あなたを思う人、多くいるよ。

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抗議行動が続く野嵩ゲート前に駆けつけたフィッシャーさん。
戦後、沖縄で起きた米兵犯罪の概要を手書きしたベッドシーツを掲げた。

「10年たってもまだ正義は実現していない」。2002年に米兵から暴行を受けたキャサリン・フィッシャーさんが19日、米軍普天間飛行場の野嵩ゲート前を訪れ、県内でまたも起きた米兵による暴行事件や、オスプレイ強行配備に抗議を続ける県民を励ました。加害米兵への怒りや、被害者である自身の尊厳回復を表現した作品を掲げ、日米地位協定改定を「あきらめないで」と呼び掛けた。(新里健)

かつて「ジェーン」と名乗っていたフィッシャーさんは、午前9時50分ごろ到着した。座り込みをしていた平和市民連絡会の城間勝共同代表(67)らと30分間懇談。1940年代から現在まで、沖縄で米兵が起こした事件の概要を細かく列記したベッドシーツを広げた。「野蛮な罪を犯したのに、よく眠れますね」という皮肉を込めた。

カラフルな色使いながら目玉を無数に描き込んだ自作の絵も紹介し、「加害米兵への処罰と謝罪を求め始めて以来、ずっと公安警察に目を付けられている」と訴えた。曲線やしずくを描き、英語で「忍耐」と小さく記した絵も掲げ、「私は10年間耐えてきた。カミングアウトするのは怖かった。でも今は怖くない」と、作品に込めた心象を語った。

この後、県庁で記者会見し、急きょ来県した理由を「私が被害に遭った時は誰も助けてくれなかった。彼女を思う人が多いことを示したかった」と涙ながらに語った。「沖縄は戦後67年間、血を流し続けてきた。日本の国旗はその血の色に見える」とも。日本政府に、米軍犯罪被害者の対策チームと、24時間態勢のレイプ救援センターの発足を働き掛けるとした。

 

                                     

 

9月14日 琉球新報
社説:2米兵不起訴 暗黒社会招く不正義だ

この国は正義が実行されない社会になってしまったのか。ことし5月に長崎県佐世保市で日本人女性に性的暴行を加えたとして書類送検されていた米兵2人について、長崎地検は嫌疑不十分で不起訴処分にした。「起訴するに足りる証拠がなかった」と説明するが、十分な捜査をしているとは言い難く、強い疑問が残る結論だ。
 
この事件を捜査した長崎県警は米兵2人の身柄引き渡しを米側に要求していない。逮捕せずに任意で事情を聴いた上で書類送検した。日米地位協定では米軍人、軍属の身柄が米側にある場合は、起訴までは日本側に引き渡さないことを定めている。しかし1995年の日米合同委員会合意で、殺人、強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪は起訴前の身柄引き渡しについて米側が「好意的考慮を払う」ことになった。
 
今回の事件は日米合意に該当する。不平等な地位協定に限定的といえ風穴を開けた権利すらも行使しない警察の姿勢は、加害者側に立っているとしか思えない。米兵2人は佐世保基地内にとどめられていたが、拘禁状態にあったのかは不明だ。証拠隠滅や連絡を取り合って口裏合わせをすることさえ可能だったと疑わざるを得ない。過去に県内で発生した強盗致傷事件では、禁足中の兵士同士が基地内で会っていた。検察は公判で「口裏合わせをしていた可能性が高い」と批判した。それなのに長崎地検は今回の事件で引き渡しを要求しなかったことについて「影響はない。必要な捜査は遂げた」と説明する。何の根拠をもって遂げられたと言えるのか。全く説得力がない。
 
1953年の日米合同委非公開議事録で、日本側代表が「(米兵の事件なら公務外でも)特に重要な事案以外、日本側は第一次裁判権を行使するつもりはない」と発言し、法務省は同じ年に全国の地検に対して「重要と認められる事件のみ裁判権を行使する」と通達している。今回の長崎地検の結論をみると、この密約と通達に従って裁判権を事務的に放棄したとしか思えない。日本の捜査機関は国民の生命財産を守らず、加害者を無罪放免にすることをこれからも続けるのだろうか。これでは不正義がまかり通る暗黒社会ではないか。基地の集中する沖縄にとって、被害者側に立っているとは思えない今回の結論は到底容認できない。

8月28日 琉球新報
社説:米兵身柄要求せず これで国民の人権守れるか 

米海軍佐世保基地所属の米兵2人が基地外の民間地で日本人女性に性的暴行を加えた疑いのある事件で、長崎県警が兵士2人を女性暴行容疑で書類送検していたことが分かった。長崎県警は琉球新報の取材に「この事件に関してコメントを差し控えている」と回答。しかし取材当初は「米側に身柄の引き渡しを求めていない」と答えていた。長崎県警は十分な捜査手順を踏んだとは言えず、対応は疑問だ。
 
日米地位協定17条5項Cでは米軍人、軍属の被疑者の身柄が米側にある場合は、起訴されるまで日本側に引き渡さないことを定めている。しかし1995年の日米合同委員会合意で、殺人、強姦(ごうかん)、その他に日本政府が重要だと認識するものについては、起訴前の身柄引き渡しについて米側が「好意的な考慮を払う」ことを決めた。殺人、女性暴行など凶悪犯罪の容疑者に限って日本から要請があれば、米側が身柄引き渡しに応じることになったのだ。
 
運用改善は同じ年に沖縄県で発生した米兵暴行事件がきっかけだ。県民の反発の高まりで米側が譲歩し、限定的だが日本側の捜査の正常化を前進させる合意だったはずだ。それなのに長崎県警は引き渡しを求めていない。要求できる権利を放棄した長崎県警の姿勢は、被害者よりも加害者側に立っていると思われても仕方がない。
 
今回の事件は被害を受けた女性が佐世保基地に相談して発覚し、佐世保署に被害を届け出たものだ。身柄を確保しないことで十分な捜査ができず不起訴や起訴猶予になったら、長崎県警は勇気を出して被害を訴えた女性にどう釈明するのか。こうしたことが続けば、被害者は警察に届け出ることをためらうだろう。警察が被害者に泣き寝入りを促し、米兵犯罪を助長するような愚を犯してはならない。
 
長崎県警にとどまらない。日米合意後の96年以降に全国で女性暴行容疑で摘発された米兵35人のうち、8割強の30人が逮捕されずに事件処理されていたことが分かっている。果たしてこれで警察は国民の人権を守っていると言えるのか。全ての犯罪で起訴前に身柄を引き渡すよう地位協定を抜本的に改定すべきだ。それを犯罪の抑止につなげたい。現時点では、少なくとも日米合意の運用改善の適用事件は全て身柄引き渡しを要求すべきだ。主権国家なら当たり前のことだ。

自衛隊の女性自衛官はどうなのか?

5月9日 沖縄タイムス
米兵性被害2万6千人 国防総省推計
       
米国防総省が7日に公表した米軍の性的暴行事件に関する年次報告書で、2012会計年度(2011年10月~12年9月)中に、被害を受けた米兵の実質推定数が2万6千人で、前回調査時(10年度)の1万9千人から37%増加していることが分かった。オバマ大統領やヘーゲル国防長官は同日に記者会見し、罰則の強化を訴える一方で、米軍幹部らは議会が開いた公聴会で謝罪するとともに改善を約束した。

報告書によると、12年度に実際に届け出があったのは3374件で、前年度に比べて182件増加した。届け出件数と実質推定数の差異について、被害報告や訴追がすべて米軍内で処理されるため、被害者が報復を恐れるなどの理由で届け出を見送るケースが多いなどと指摘している。部門別の届け出件数は、前年度比で陸軍は16%減(1695件から1423件)、海軍は32%増(550件から726件)、海兵隊は30%増(333件から435件)、空軍は33%増(594件から790件)となっている。オバマ大統領は同日の記者会見で「まったく許容できない」と述べ、綱紀粛正を唱えた防止キャンペーンだけでは犯罪は防げないと指摘。罰則強化など抜本的改善の必要性を強調した。

公表に先立ち、5日には米バージニア州の国防総省近くの駐車場で空軍中佐が性的暴行容疑で逮捕される事件が発生。容疑者が性的暴行防止班の責任者だったことから、米上院軍事委員会が7日に開いた公聴会では、非難が集中した。ギリブランド上院議員はドンリー空軍長官に対し、「責任者が罪を犯すのであれば、米軍幹部らは調査や犯罪捜査はできない」と厳しく批判。レビン同委員長らも、現行システムの実効性に疑問を呈した。

5月8日 沖縄タイムス
米軍人の夫の転勤に伴い
       
米軍人の夫の転勤に伴い異国の沖縄にやってきたのに、知らぬ間に結婚無効となって在留資格を失い、やがて母子ともに国外退去を命じられたとしたら。 裁判に訴えた母子は、沖縄生まれで公立小学校に通う9歳の女の子と、フィリピン国籍の母(43)だ。夫の申し出で結婚無効が米国の裁判で認められ、日米地位協定上の在留資格を失ったからという。

女の子の置かれた状況に重ねたのは4年前、当時中学2年生だったフィリピン国籍のカルデン・のり子さんだ。同じように日本で生まれ、公立学校で教育を受けた。日本語しか話せない。日本で長期にわたってつつましく生きた一家は不法滞在で国外退去処分を受け、13歳ののり子さんだけが在留特別許可を認められ日本に残った。親子は今も離れ離れで暮らすという

今回の沖縄のケースは、より深刻だ。日米の国と国の取り決めに従い、母は旅券やビザを免除されて適法に入国・滞在したのに、夫の状況変化で母子が不利益を被っている。女児はフィリピンを訪れたことはあるものの、タガログ語や英語は片言しか話せず、学校の図書館で借りた本を読むのが大好きだという。母が沖縄での子育てを願うのは「日本語しか分からない娘を、ちゃんとした大人に育てたいから」という切ない親心にすぎない。

5月8日 沖縄タイムス
比から来沖の米兵元妻、在留求め提訴
       
米軍人男性との結婚無効がきっかけで日米地位協定上の在留資格を失ったフィリピン国籍の女性(43)と娘(9)=沖縄本島内在住=が7日までに、福岡入国管理局那覇支局から国外退去処分を命じられたのは不当として、同処分の取り消しを求める訴訟を那覇地裁に起こした。

訴状によると、女性は米軍人男性と2000年にフィリピンで結婚。その後、日米地位協定に基づき、旅券やビザを免除されて来沖し、本島内アパートで共同生活を開始、娘を出産した。しかし、04年ごろから米軍人男性が別の女性と付き合い翌年帰国し、米国内で結婚無効を求めて提訴、無効が認められた。これを受け、日米地位協定上の在留資格を失ったことなどから、同支局は今年3月、女性と娘に対し、国外退去を命じる退去強制令書を発布した。

女性側の代理人弁護士によると、日米地位協定が原因で同様なケースが起こる事例は県内でめったにないという。現在、娘は沖縄本島内の市町村立小学校に通い、日本語を母国語として育っており、英語やフィリピンのタガログ語は片言しか話せないという。女性側代理人の喜多自然弁護士は「娘は長期にわたり日本の教育を受けており、今後も日本社会で生活していくことが望ましい。退去強制は不当で、国は在留特別許可を与えるべきだ」と指摘する。一方、同局は「現時点で個別の案件にはコメントは差し控えたい」としている。

5月8日 琉球新報
米兵住居侵入「想像しても恐ろしい」 防衛局に抗議      

5日に米軍嘉手納基地所属の海軍曹長が住居侵入の疑いで逮捕されたことを受け、県内では7日、県や関係市町村、政党などによる関係機関への抗議要請が相次いだ。
 
嘉手納基地へのオスプレイ配備計画撤回を申し入れるため沖縄防衛局を訪れた沖縄市の東門美津子市長は、住居侵入事件に触れ「安全なはずの自宅で就寝中に見知らぬ男が入り込むとは想像しただけで恐ろしい。仕方がないでは済まされない」と憤った。対応した武田博史局長は「事件事故の再発防止に努力する立場として被害者や県民に大変申し訳ない」と謝罪した。県は7日、防衛局に対し電話で「より一層の綱紀粛正と再発防止に努めるよう隊員の教育を徹底してほしい」と強く申し入れた。基地対策課によると、6日には在沖米海軍に対しても電話で要請した。
 
一方、外務省や同省沖縄事務所も米海軍と在日米国大使館に電話で抗議した。公明党県本部も同日、防衛局と外務省沖縄事務所を相次いで訪ね、米軍人・軍属らへの教育、実効性のある再発防止策や日米地位協定の抜本的改定などを求めた。糸洲朝則県本代表は「事件・事故が後を絶たず、再発防止が徹底されていない」と指摘した。

5月5日 琉球新報
住居侵入容疑の米兵を現行犯逮捕 飲酒、禁止令違反の疑いも      
 
沖縄署は5日、沖縄市美里のアパートの一室に正当な理由なく侵入したとして、住居侵入の疑いで在沖米海軍嘉手納基地所属の上等兵曹(38)を現行犯逮捕した。同署によると、上等兵曹は「部屋に入っていない」と容疑を否認している。上等兵曹からは酒の臭いがしており飲酒したことは認めているが「捜査には協力できない」と飲酒検知も拒否している。
 
逮捕容疑は、5日午前7時25分ごろ、沖縄市美里のアパートの一室に正当な理由なく侵入した疑い。同署によると、同部屋に住む被害者の女性(33)が寝室で休んでいたところ、無施錠だった玄関ドアを開け、上等兵曹が部屋に侵入した。女性が上等兵曹を玄関先に押し出して110番通報した。通報を受けて駆けつけた沖縄署員がアパート内の通路にいた上等兵曹を現行犯逮捕した。
 
同署によると、上等兵曹は嘉手納基地内居住。在沖米軍は基地外では自宅や滞在先の宿泊施設を除き、終日飲酒を禁止しているほか、基地内での飲酒後の外出や血中アルコール濃度0・03%以上の兵士の基地外外出を禁じている。上等兵曹は禁止令を破り、犯行に及んだ可能性がある。

2月23日 琉球新報
社説:参考人招致拒否 沖縄駐在の意味問われる
      
県議会米軍基地関係特別委員会が米兵事件の再発防止策などを聞くため、参考人招致を要請していた武田博史沖縄防衛局長と竹内春久外務省沖縄大使が共に要請を断ってきた。県民代表の県議会が説明を求めている場への出席を拒む姿勢は理解に苦しむ。外務省沖縄事務所は主要業務について「在沖米軍の駐留にかかわる事項につき地元の意見要望の聴取」などと説明する。沖縄防衛局は「地方公共団体との調整や意見集約などの協力確保事務」「防衛省の施策を地元に丁寧に説明」などとしている。
 
県議会は参考人招致で防衛局長には上司へのペナルティー制度導入の提案についての見解を聞き、沖縄大使には外務省が日米地位協定の見直しに否定的な理由などを尋ねるつもりだった。両組織は地元から「意見要望」と「説明」を求められたのだ。まさに主要業務ではないのか。これに応じないとなると、沖縄防衛局長も外務省沖縄大使も存在する必要があるのかという疑問が出るのは当然だ。不可解なのは県議会に届いた招致を断る防衛局長と沖縄大使の回答文が大使の追記2行以外は一字一句同じ文章となっていることだ。両組織が裏で連絡を取り合ったのだろう。県民への説明責任を果たすことに背を向けるために足並みをそろえるなど言語道断だ。
 
外務省沖縄事務所は1997年2月に発足以来、今月で16年を迎え、9人の大使が赴任した。大使の一人は県民への要望として「米軍に常に抗議するのではなく、双方通行の対話をしてほしい」と述べ、別の大使は名護市議会の要請で「いくらあなたが言ったって聞かない」と声を荒らげたこともある。こうした発言など県民からは一体何のため、誰のために仕事をしているのかと疑問を抱くことが過去に何度も起きている。また毎月1回開催されていた定例記者会見も前大使が赴任した2009年6月から4年近く1度も開かれてない。これを怠慢と言わずに何と言おうか。
 
2年前に当時の沖縄防衛局長が「普天間」移設作業で環境影響評価書の提出時期を問われ「犯す前に、これから犯すと言いますか」と県民を侮蔑する発言をしたことも記憶に新しい。防衛局長と沖縄大使は県民に顔を向けて仕事をしているのか。自らの存在意義を示すためにも、参考人招致に応じるべきだ。

2月19日 琉球新報
沖縄大使ら参考人招致返答なく軍特委、対応を疑問視

県内で18日に米兵が住居侵入で逮捕される事件がまたも発生したが、武田博史沖縄防衛局長と竹内春久外務省沖縄大使は県議会米軍基地関係特別委員会(新垣清涼委員長)から求められている米兵事件の再発防止策についての参考人招致に応じるか、同日も同委員会に返答しなかった。18、19、22日のいずれかで招致を予定していたが、18、19日は実施できなくなった。
 

22日についても両氏が応じるか不透明。岸田文雄外相は16日に来県した際の記者会見で「諸般の事情をいろいろと考えながら検討している段階だ」と述べ、判断を保留していた。新垣委員長はいずれにしても22日、委員会を開く方針。招致に応じない場合「委員会として何らかの意思表示をしなければならない」としている。
 
同委員会は今月4日に両氏の招致を決め、県議会事務局が同日中に両氏に招致を打診。その後、11日と12日の2日連続で、米軍関係者が酒気帯びの状態で車両事故を起こし、県警に逮捕される事件が発生した。再発防止策の実効性の乏しさが際立つ中、武田、竹内氏は招致要請に対する返答を先送りしている。新垣委員長は「政府が米側に強く言い切れていないからではないか。県民の声を伝えているのなら招致に応じるはずだ」と話す。
 
米兵事件の発生に歯止めがかからないことを受け、県は今年に入り「米軍人・軍属等による事件・事故防止のための協力ワーキング・チーム」(CWT)をあらためて早期に開くよう外務省沖縄事務所に求めたが、実現していない。県基地対策課は「再発防止で在沖米軍の新たな行動指針も発表された。今の状況でワーキングチームが開催されるべきではないか」との声が上がった。

2月6日 沖縄タイムス
読谷の怒り「ゼロ回答に等しい」
       
読谷村の石嶺傳實村長ら20人は5日、外務省の河邉賢裕日米地位協定室長を訪れ、昨年11月に村内で発生した米兵による住居侵入と傷害事件に抗議、日米地位協定の抜本的改定などを求めた。村民の怒りや不安を訴え、地位協定の改定に踏み込んだ回答を求めた村長や元村長の山内徳信参院議員。だが河邉室長は「政治レベルの話で、私から明確な発言はできない」との説明に終始。一行は「ゼロ回答に等しい」と失望した。

会談は非公開で開かれた。予定していた30分をオーバーし、1時間続いた。県関係国会議員らも同行した。会談後、一行からは「私が申し上げられる範囲は限られている」「発言する立場にない」と繰り返した外務省の実務担当者の回答に落胆の声が上がった。村観光協会会長の小平武さん(71)は「沖縄の心は聞きたくないという印象すら受けた」と怒り心頭。村労働組合連絡協議会会長の山城明男さん(40)は「室長は個人的な気持ちすら聞かせてくれなかった。道のりは長いが地位協定の改定まで、闘いを続けるしかない」と話した。

村内5千人以上の児童・生徒を預かる村教育委員会の松田平次教育長は「人材をもって資源となす教育方針にはいい環境が必要。よそから(環境を)崩されるのは最悪だ」と、米兵の事件や事故が安全な教育環境を脅かしていると批判。国に交通マナーの順守を米側に働きかけるよう求めた。石嶺村長は、日米地位協定は「米軍優位で特権的」として、見直しを求めた。要請団は6日、防衛省や首相官邸、駐日米大使館にも同様に抗議する。

2月6日  琉球新報
地位協定改定を 読谷村実行委が外務省に抗議  米兵中学生傷害

読谷村で起きた米空軍兵による住居侵入中学生傷害事件に対する緊急抗議村民大会実行委員会の石嶺伝実委員長(読谷村長)ら20人は5日、外務省の河辺賢裕日米地位協定室長を訪ね、事件の再発防止と日米地位協定の抜本的な改定を求める岸田文雄外相宛ての大会決議文を手渡した。 

石嶺村長によると、河辺室長は「事件については政府として許し難い。ルース駐日米大使に抗議した」と述べるにとどめ、地位協定改定について、具体的な発言はなかったという。要請の冒頭、石嶺委員長が決議文を読み上げた。決議文は、県警の本格捜査が始まらない時点で、官房長官が身柄の引き渡し要請を考えていないとしたことに、「米国優位の日米地位協定を優先し、弱い立場である子どもの人権を無視するという政府の姿勢を示している」と指摘。(1)加害者への謝罪・補償(2)再発防止策の公表(3)日米地位協定の抜本的改定-などを求めた。
 
要請後、石嶺村長は「(米兵が)事件を起こせば、日本の法律で裁かれるという自覚があることが一番大切だ。米軍優位の特権的な協定になっていることが過去の事件事故で確認されている」と述べた。今後は、地位協定改定に向け、全県的な取り組みの中で動いていきたいとした。新垣修幸読谷村議会議長は「(地位協定の)運用改善では限界がきている。抜本的に改定し、国民の命を大事にしないといけない。きょうの回答を聞いてがっかりした。改正すると一言もなかった」と述べ、外務省の対応を批判した。松田平次教育長は「米兵の交通ルールがなっていない」と訴えた。

2月5日 琉球新報
きょう上京、抗議へ 米兵中学生傷害
      
読谷村で起きた米空軍兵による住居侵入中学生傷害事件に対する緊急抗議村民大会実行委員会の石嶺伝実委員長(読谷村長)ら20人は5、6の両日、首相官邸や外務省、防衛省、在日米国大使館を訪れ、大会決議文を手渡し事件に抗議する。日米地位協定の抜本改定をはじめ、事件への抜本的な再発防止策などを求める。
 
石嶺委員長は「同じ日本に住むなら、日本の国内法で対処されるべきだ。不平等な日米地位協定の抜本改定をまず求めたい」と強調した。首相官邸は総理秘書官、大使館は安保課長補佐、外務省は日米地位協定室長、防衛省は地方協力局次長が、それぞれ対応する。外務省を通して面談を申し入れた在日米軍司令部は「難しい」と面談を断った。それ以上の明確な理由は読谷村側に伝えられていない。
 
事件は昨年11月2日の未明に発生。深夜外出禁止令を破った米空軍兵が読谷村古堅のアパートの一室に侵入し中学生の顔面を殴打、けがを負わせた後、テレビを足蹴りして壊した。逃げようとして窓から落ちた。

1月16日 琉球新報
社説:強姦不逮捕8割 協定改定で対米交渉を      
 
日米地位協定の抜本的な改定以外に、もはや解決策はないだろう。1996年以降に発生した殺人、強盗、放火、強姦(ごうかん)の凶悪犯罪の米兵被疑者118人のうち、逮捕せず身柄不拘束で事件処理されたのが約半数の58人で、強姦では米兵35人のうち30人と85・7%までもが不拘束だった。
 
日米両政府は95年に凶悪犯罪については起訴前の身柄引き渡しに米軍が好意的考慮を払うとの運用改善に合意している。しかし実態は運用改善が事件処理で十分に反映されていないことが分かった。これでは何のための日米合意だろうか。そもそも好意的考慮などという米側の裁量でどうにでもなる曖昧な合意だから、こうした事態を生んでいるのだろう。少なくとも凶悪犯罪については、起訴前に身柄を日本側へ引き渡すことを義務付ける合意に改めるべきだ。
 
今回明らかになった警察庁の統計資料では日本側が引き渡しを要求して米側が拒否したのか、日本側が引き渡しを要求しなかったのかなどの内訳は分からない。日本側が引き渡しを求めていない事例があれば大問題だろう。日本政府が身柄引き渡しを求めない際、「米軍が捜査に協力的」だという理由を挙げることが多い。しかし起訴前に身柄が引き渡されなかったことで捜査に支障を来した事例は何度も起きている。
 
93年に発生した強姦事件では嘉手納基地内で禁足処分を受けていたはずの米兵が民間機で米国に逃亡していた。2003年に発生した複数の米海兵隊員による強盗致傷事件では禁足中の兵士が基地内で会っており、検察は公判で「口裏合わせをした可能性が強い。被告らが自由に通牒できる環境に置き、軍による自浄作用は全く期待できない」と批判した。
 
それなのに起訴前の身柄引き渡しが少数にとどまっているのはなぜか。1953年の日米密約が今でも生きているのか。すなわち「(米兵の事件なら公務外でも)特に重要な事案以外、日本側は第一次裁判権を行使するつもりがない」との日米合同委非公開議事録の屈辱的な合意が今なお作用しているとしたら、即座に破棄する必要がある。運用改善では根本的な解決とならない。日本政府は自国の被害者の尊厳を守るために日米地位協定の抜本的な改定を米側に強く要求すべきだ。

1月16日 琉球新報
首長ら地位協定改定訴え 米兵凶悪犯罪 不逮捕処理      
 
日米地位協定の運用改善で凶悪犯罪について起訴前の身柄引き渡しが可能となったにもかかわらず、女性暴行事件で摘発された米兵の8割強が逮捕されないなど運用改善が徹底されていないことが浮き彫りとなったことを受け、米軍人絡みの凶悪犯罪が頻発する本島中北部の基地所在市町村の首長らは「運用改善では限界がある」と強調し、一様に日米地位協定の改定を訴えた。
 
石嶺伝実読谷村長は2009年11月に村内で起きた米陸軍兵による男性ひき逃げ死亡事件に言及。「当時も(容疑者の)身柄引き渡しができず、徹底した捜査がされなかった。犯罪者は当然、その国のルールで取り扱われるべきだ」と疑問を呈した。本島中部では昨年10月、米海軍兵による集団女性暴行致傷事件が発生。東門美津子沖縄市長は小野寺五典防衛相の来県にも触れ「知事をはじめ、県民が求めているのは地位協定の抜本改定だ。地元の声を聞きに来るのなら、その声を反映させなくては意味がない」と強調した。
 
北谷町には、基地外居住者として約4千人の米軍関係者が暮らす。野国昌春町長は「米軍の好意や運用改善での対処では限界がある。(今後)漠然とした不安が的中する前に抜本的改定が必要だ」と語気を強めた。稲嶺進名護市長は「運用改善では限界がある。地位協定を変えるしかない」と強調し「沖縄だけの話ではない。全国民が一緒に怒らないといけない」と求めた。儀武剛金武町長も運用改善では不十分だと指摘。米国からの信頼回復を掲げる安倍政権に対し、「今がそうか分からないが、真に信頼し合える関係なら、不平等な地位協定の改善を率直に要求するべきだ」と批判した。

12月30日 沖縄タイムス
女性兵士性被害 4人に1人経験
       
米退役軍人省がイラクやアフガニスタンなどの戦地に派遣された女性兵士約1100人を対象に実施した最新調査で、約4人に1人がレイプなどの性的暴行を受けた経験があると回答していることが分かった。性的嫌がらせを受けたと答えたのは半数に達している。米紙USAトゥデーが27日報じた。

調査結果によると、加害者の大半は同じ部隊に所属する米兵で、そのうち47%が加害者は上官と答えている。退役軍人省のストリート調査委員長は、「調査結果は、兵士らが戦闘地で極度の緊張状態にあることを示している」と指摘した。

米国防総省によると、アフガニスタンで兵役した女性兵士数は、今年2月で約2万人。同省がまとめた2011年度の報告書では、戦闘地での性的暴行の届け出件数は115件となっている。

米兵による性的暴行問題を議会で追及しているジャッキー・スパイヤー米下院議員(カリフォルニア州選出)は同紙に対し、「性犯罪は米軍の文化だ。調査結果は状況が改善されていないことを示している」と指摘した。

12月30日 琉球新報
社説:米兵住居侵入 特権意識こそ諸悪の根源      
 
米兵による事件が続発し、深夜外出禁止令など事件防止策が取られる中、那覇市で海兵隊伍長が住居侵入の疑いでまた逮捕された。仲井真弘多知事が言うように「開いた口がふさがらない」というのが県民共通の思いだろう。
 
国は、住居侵入を軽く受け取ってはならない。読谷村で中学生が殴打された事件や、中部で起きた集団女性暴行致傷など大事件につながりかねないという恐れと、米兵によるあまたの事件事故に対する憤りが県民の心に深く刻まれている。翁長雄志那覇市長らが提起するように、在沖米軍の責任者が県や那覇市を訪れ、被害者と県民に謝罪してもらいたい。国には日米地位協定の抜本的改定を求めたい。
 
在沖米軍は深夜外出禁止令に加え、基地内居住者を対象に基地外でのアルコール購入と飲酒を禁じた。深夜から早朝の基地内アルコール販売、飲酒後に基地と基地外住宅から外出することも禁止した。今回の事件も防止策に反しているが、問題の本質は飲酒ではない。沖縄を植民地として見下す傍若無人な米兵の特権意識こそ、諸悪の根源だ。その特権意識を生み助長させているのは、治外法権を放置する不平等な日米地位協定だ。
 
韓国では米軍人・軍属・家族の犯罪容疑者について12種の犯罪で起訴前に身柄を引き渡せるよう規定を改めた。日本では殺人と強姦の2種のみだ。新外相はこれを見て見ぬふりをするのか。一地域に基地を集中させ地位協定改定を地域の問題に矮小(わいしょう)化し、放置している日本と、主権の問題として国を挙げて取り組んだ韓国との差が歴然としている。戦火を交えた北朝鮮と直接対峙(たいじ)する韓国は、日本以上に駐留米軍の重要性を感じているはずだ。要は地位協定改定に真摯(しんし)に向き合う姿勢が、国にあるかどうかだ。
 
「安全保障の第一人者」とされる森本敏前防衛相は、米軍普天間飛行場について「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると沖縄が最適の地域だ」と述べた。一地域に過重な負担を押し付ける国の姿勢は差別であり、それが県民の反基地感情を増幅させ、日米関係を損ねかねないと国は認識すべきだ。公務であろうと、公務外であろうと罪を犯せば日本の法で裁く。沖縄が望む地位協定改定は、当然のことを求めているにすぎない。

12月30日 沖縄タイムス
酒気帯び米兵が事故 一方通行を逆走
       
29日午後5時25分ごろ、那覇市久茂地の一方通行の市道で、米軍牧港補給地区(浦添市)所属の海兵隊上等兵(24)が酒気を帯びた状態で普通乗用車を逆方向に運転し、125ccバイクと衝突する事故を起こした。那覇署は車を運転していた上等兵を道交法違反(酒気帯び運転)の容疑で現行犯逮捕した。

バイクを運転していた調理師男性(54)=那覇市=は救急車で病院に搬送され、左ひじと両ひざなどを強く打って歩けない状態だという。被害男性によると、米兵は事故後現場から立ち去ろうとしたため、本人が引き留めたという。那覇市では28日にも飲酒をした海兵隊の伍長が住居に侵入する事件を起こしたばかりで、県民の強い反発を招くのは必至だ。

那覇署によると、同容疑者は会話には応じているものの、容疑についての聴取には「弁護士を呼んでほしい」などと供述を拒否。事故を起こしたことや飲んだ場所などについて黙秘を続けているという。同容疑者の呼気からは基準値の4倍を超えるアルコールが検出された。

同署によると、事故の現場は那覇市を流れる久茂地川沿いの一方通行の道。バイクの男性が県庁方面から美栄橋駅向けに走っていたところ、突然前方から逆走した車が現れ、車の右側がバイクに衝突した。米兵の車は右前方のバンパーやサイドミラーが損壊した。

那覇署は医師の診断書を待って、自動車運転過失傷害の容疑も視野に捜査を進める。事故後、那覇署には米軍関係者数人が訪れ、午後11時ごろから米側の法務官が同容疑者に接見したとみられる。在沖米軍は現在、沖縄に駐留する全軍人に基地外での飲酒を禁じている。

夜間の外出は禁止なのに、米海兵隊員が早朝に女性の住む住居へ侵入。

12月29日 沖縄タイムス
県議会、米軍幹部の呼び出し検討
       
米兵による住居侵入事件を受け、県議会の喜納昌春議長は28日、「無軌道でネジが緩んでおり、解決策は基地の撤去しかないことを米兵が自ら証明している」と厳しく批判した。喜納議長は同日、米軍基地関係特別委員会の新垣清涼委員長と対応を協議し、年明けに軍特委を開催する方向で調整する方針を確認。夜間外出禁止令が出た後も米兵による事件が続発していることから、米海兵隊司令官を県議会に呼び、直接抗議する異例の対応も検討することで一致した。

軍特委は従来、米兵による事件が発生した場合は抗議決議と意見書を可決し、日米の関係機関に抗議行動していた。しかし「抗議行動を繰り返しても事件が一向に減らない」(新垣委員長)ため、議会側が米軍幹部を呼んで対応を問いただす案が浮上している。喜納議長は「米兵からすればささいな案件かもしれないが、大きな犯罪の第一歩になりかねない重大な事件だと認識してもらいたい」と説明している。

12月29日 沖縄タイムス
米兵“飛来”禁止令どこ吹く風
       
米兵がまたまた逮捕された。28日未明の那覇市での住居侵入事件。外出禁止令や禁酒令の中でも、米兵の事件・事故は一向に減る気配もなく、被害の連続に「またか」と県民はあきれ果てる。県民の反対を無視したオスプレイの強行配備もあり、米軍被害に悩まされ続けたこの一年。「ばかにしている」。米軍への怒り、不信はおさまらない。

「男と目が合った」。自宅のベランダへ入り込まれた20代の女性は、警察にこう話した。地上から高さ約10メートルのアパート4階。容疑者は、隣のアパートの外階段を屋上まで上がり、腰ほどの高さがある柵を乗り越え、約70センチの隙間をジャンプして、ベランダへ入ったとみられる。屋上へつながる外階段に鍵はかかっていない。住民の女性(72)は「家の玄関にしても普段は開けっ放し。住んでおれない」と顔をひきつらせた。

現場は、ゆいレール美栄橋駅そばの繁華街。アパートやオフィス、ゲストハウスなどが混在し、深夜まで営業するクラブやバーなども近い。在沖米軍も独自のパトロールのエリアとした地域だ。ただ、米兵に限らず、外国からの観光客も多い。

現場アパートの別の部屋に住む主婦(44)は「夜中に外国人を見かけても、米兵かどうかは見た目では分からない」と話す。外出禁止令などの対策にもかかわらず、酒に酔った米兵がからむ事件が続くことに、付近で暮らす人たちは言葉を失う。近くの会社に勤める女性(30)は「『またかよ』という感じ」。「身近で事件が起きて、あらためて怖い。米軍の外出禁止令がどこまで徹底されているのか」と首をかしげる。毎朝、現場付近を犬の散歩で通る主婦(60)は「米兵の資質が疑われる。落ち着いていいお正月を迎えさせてほしい」とうんざりした様子で話した。

12月28日 琉球新報
住居侵入容疑の外国人逮捕 海兵隊の身分証所持、那覇署      
 
28日午前4時半ご


許すな!着々と進む歴史の改ざんと隠蔽 ①

2012-02-24 10:36:42 | 人権

妄言続ける、「公党」?の共同代表、 沖縄遊説で「感謝の念」と言いながら沖縄女性を侮蔑。

7月6日 琉球新報
「沖縄女性、慰安所で頑張った」 橋下氏「感謝の念」参院選遊説
 
日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は5日、県内から参院選比例代表に立候補している公認候補を支援するため来県した。橋下氏は応援演説で、米施政権下の県内で日本政府による米兵向け慰安所が設置されたとして「レイプを止めるために、沖縄県の女性が一生懸命になってやってくださった。感謝の念を表す」などと発言した。橋下氏は5月の米兵風俗利用発言を撤回し、米側に謝罪の意を示していたが「過去に女性を性の対象に利用していた、とアメリカに言いたい」と述べた。
 
橋下氏は沖縄本島中南部の4カ所を遊説した。沖縄市の胡屋十字路では「米軍の沖縄占領時、日本の政府が真っ先に作ったのは、RAAという特殊慰安所協会だ」などと主張した。「女性の人権を蔑視していると言うが、沖縄の女性が特殊慰安所協会で一生懸命頑張ったことを全部無しにするのか」と持論を展開した。沖縄女性史研究家の宮城晴美氏によると、日本政府が米国占領下の県内で、慰安所を設置した事実は確認されていない。

5月10日 琉球新報
社説:首相の歴史認識 過去に目を閉ざすな      
 
異例の苦言である。韓国の朴槿恵大統領が米議会の上下両院合同会議で、日本の歴史認識について訴えた。「歴史問題に端を発した対立が一層深刻になっている。歴史に正しい認識を持てなければ明日はない」第2次大戦中の「従軍慰安婦」や歴史教科書、靖国神社参拝などをめぐる安倍晋三首相の歴史認識は、日本の急激な右傾化と理解され、近隣諸国から警戒されている。首相の歴史認識に対して米国政府は非公式に「懸念」を伝達している。米議会調査局は「東アジアの国際関係を混乱させ、米国の国益を損なう可能性がある」との報告書を発表した。
 
歴代政権は、近隣諸国に配慮した教科書記述を約束した「宮沢談話」(1982年)、「従軍慰安婦」問題で戦時中の旧日本軍の関与や強制性を認めた「河野談話」(93年)、植民地支配と侵略を謝罪した「村山談話」(95年)を発表してきた。「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げる安倍氏が行おうとしているのは、日本が内外に確認してきた歴史認識の転換にほかならない。ヴァイツゼッカー元ドイツ大統領が指摘したように「後に過去を変更したり、あるいは起こらなかったことにしたりすることはできない」のである。そして「過去に目を閉ざす者は結局、現在にも盲目となる」のである。
 
安倍首相は「歴史認識に関する問題が外交、政治問題化されることは望んでいない」と言う。しかし他国に到底受け入れられないような歴史認識が問題化するのは当然だ。国内でも4・28をめぐり「主権回復の日」という認識が沖縄側から反発を受けたばかりだ。特に「侵略という定義は国際的にも定まっていない」という首相発言は、独りよがりで国際社会に通用するものではない。米紙は「恥ずべき発言」「歴史に向き合う能力がない」などと批判した。侵略は74年の国連総会決議で明確に定義されている。その定義に照らすまでもなく、日本は明らかに他国を侵略したのである。首相の言う「未来志向」の国際関係は、過去に目を閉ざしたままでは築けない。首相は朴大統領の発言を重く受け止め、歴史を直視すべきだ。

4月26日 沖縄タイムス
社説:[靖国参拝]歴史摩擦はマイナスだ

靖国神社参拝をめぐる安倍晋三首相や現職閣僚、国会議員の言動に対し、中国、韓国の反発が日増しに強まっている。中韓両国の批判に参拝議員は「参拝はごく自然な行為」「外交問題になる方がおかしい」と弁明するが、中韓両国は「侵略の歴史を否定するもの」と批判を浴びせた。これを受け安倍首相は「わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない」と半ばけんか腰で不快感をあらわにした。すると今度は、韓国外務省が駐韓日本大使を呼び、厳重抗議。批判の応酬が続き、対立はエスカレートするばかりだ。まずは、日本も中韓両国も冷静になって考えてほしい。目下の外交課題は、日中韓が協力し、北朝鮮の

ミサイル発射に向けた挑発行動にどう対処するかではなかったか。東アジアの緊張をどう和らげていくのか、関係国の協調が求められる時に、首相をはじめ議員らがあえてデリケートな問題に踏み込み、無用な緊張を高めてしまった。極めて危ういと言わざるを得ない。北朝鮮側もこうした情勢を見越したように「軍国主義の亡霊をよみがえらせようとする妄動」と日本批判を始め、日中、日韓の亀裂を広げようとしている。米紙ニューヨーク・タイムズは「日本の不必要なナショナリズム」と題した社説で、「日本の方から中韓両国の反感をあおった。著しく無謀な行為」と批判。米国務省も緊張を高める行動を避けるよう全ての関係国に要請する異例のメッセージを出した。

安倍首相が挑発的な発言に踏み込むのはなぜか。第1次内閣時に靖国を参拝しなかったことを「痛恨の極み」と後悔するほど意欲的で、自民圧勝による政権奪還やその後の高支持率もあるだろう。靖国参拝に限らず、「主権回復の日」式典の開催や尖閣諸島など領土問題での強硬姿勢、憲法改正に向けた動きなど国内の右傾化する動きに呼応している。前回の内閣で果たせなかった“懸案”を一気に進める勢いだ。

しかし、今回の靖国参拝のように、自らの支持層を意識した「内向きの政策」が外交に影響を与えることを冷静に考える必要がある。国内外で一定評価された経済政策でさえ諸外国との関係は深い。信頼を損なえばアベノミクスに影響が及ぶ可能性がある。政権への高支持率は経済政策への期待が支えている。歴史認識をめぐり隣国の反発を買う政策まで国民が支持していると思うのは傲慢(ごうまん)だ。かつて官房長官など主要閣僚を務めた自民党の後藤田正晴氏は、首相の靖国参拝は控えるべきだと主張していた。東京裁判で、靖国に合祀(ごうし)されたA級戦犯が敗戦の責任を負い、それを日本がサンフランシスコ講和条約で受け入れたことを「国家間の約束」と見る。「誠実な付き合いのできる国」だと思われるよう、対外的な条約順守を重視した考え方だ。安倍首相もこうした先人の見識を思い起こし、国内外のバランスを考慮した国政運営を進めるべきだ。

4月25日 琉球新報
社説:靖国参拝 強烈な違和感覚える   
 
与野党の国会議員168人が春季例大祭に合わせて靖国神社を集団参拝した。すでに、麻生太郎副総理兼財務相ら現職閣僚3人の参拝や、安倍晋三首相の供物「真榊(まさかき)」奉納で波紋が広がっていたが、参拝に強烈な違和感を覚える。
 
大戦でアジア諸国の死者は2千万人を数え、日本人の犠牲者は310万人を数えた。沖縄は本土防衛の「捨て石」として、3カ月余で住民9万4千人を含む20万人が命を落とす凄惨な地上戦を強いられたが、靖国神社には東京裁判で処刑された東条英機元首相らA級戦犯が合祀(ごうし)されている。元首相は1941年に陸軍相として戦場での心構えを定めた「戦陣訓」を通達。この中にある「生きて虜囚(りょしゅう)の辱めを受けず」との文言が後に「集団自決」などの悲劇につながった。沖縄や国全体を破滅に導いた戦争指導者らがまつられている事実は極めて重大であり、昭和天皇も靖国のA級戦犯合祀に不快感を持っていたことが知られている。
 
集団参拝では県選出の島尻安伊子内閣府政務官をはじめ安倍内閣の政務三役も多数が参加。靖国との関係を考えた時、県選出議員の参拝は極めて残念だが、閣僚らの靖国参拝は憲法が定める政教分離原則からも疑問視されていることもあらためて指摘しておきたい。参拝に中国と韓国は強く反発し、日韓外相会談や日中友好議員連盟の訪中が白紙となった。影響は拡大しており、事態が国益を大きく損ねていることは明らかだ。参拝した議員らは「どう慰霊するかは日本国内の問題。外交問題になる方がおかしい」(高市早苗自民党政調会長)と話しているが、靖国参拝が海外の目に「侵略戦争の美化」と映っている事実を真摯(し)に受け止めるべきだ。
 
参拝議員数は過去最多となり、昨年の同時期から倍増。「保守化」を指摘する声があるが、議員らは一部の支持層向けの行動を最優先しているように見える。国民の多くは、喧噪(けんそう)中ではなく、静かな環境で心安らかに戦没者を追悼したいと願っているはずだ。中韓両国の反発に安倍晋三首相は「わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない」と強く反論したが、これでは批判の応酬を招くだけではないか。一体どう近隣外交のかじを取るつもりなのか。強い危機感を抱かざるを得ない。

4月23日 沖縄タイムス
社説:[韓国外相訪日中止]歴史問題を直視しよう
       
韓国政府は、尹炳世(ユンビョンセ)外相の訪日をとりやめた。安倍政権の現職閣僚が相次いで靖国神社に参拝したためだという。尹外相は今週末、岸田文雄外相と会談し、ミサイル発射などの挑発を繰り返す北朝鮮への対処を話し合う予定だった。中国外務省も閣僚の靖国参拝に抗議したことを明らかにし、韓国と足並みをそろえた。5月下旬にソウルで予定されていた日中韓首脳会談は、中国側が難色を示し、先送りすることがすでに決まっている。日中韓3カ国の協調と連携が求められるこの時期に、外交日程の取り消しや先送りが表面化したことは、安倍外交にとって大きな痛手だ。政権発足時から危ぶまれていたことが表面化したとみることもできる。

靖国神社の春季例大祭にあわせ、新藤義孝総務相、麻生太郎副総理、古屋圭司拉致問題相が相次いで参拝。安倍晋三首相は21日、神前にささげる供物の「真榊(まさかき)」を内閣総理大臣名で奉納した。

韓国、中国が日本の首相や閣僚の靖国参拝に反発する最大の理由はA級戦犯が合祀(ごうし)されているからだ。中韓両国に過度に配慮すれば、安倍政権を支持する保守層の離反を招き、逆に、保守層の主張を過度に取り入れると、中韓が反発する。歴史問題は安倍政権のアキレスけんである。歴史問題に正面から向き合い、政治的知恵でコントロールし、日中韓の協調と連携を実現することが、優先すべき外交課題である。

靖国参拝問題といい、尖閣、竹島の領有権問題といい、いずれもサンフランシスコ講和条約と密接にかかわる。極東国際軍事裁判(東京裁判)のA級戦犯について安倍首相は、国会答弁で「連合国の勝者の判断によって断罪」された、との見解を明らかにした。東京裁判の評価は歴史家の間でもさまざまであるが、日本は、講和条約第11条に基づいて、国と国との関係においては、東京裁判の結果を「受諾」している。それが政府の公式見解だ。

戦前の日本は植民地帝国だった。1895年から台湾を統治し、1910年からは朝鮮半島を統治した。南洋諸島を委任統治したほか中国の関東州を租借地とし、満州国を間接統治した。講和条約によって日本は、これらの領域に対するすべての権利を放棄したが、尖閣諸島や竹島、南沙・西沙諸島などの帰属先は条約には明記されていない。

中国や南北朝鮮は、被害国であるにもかかわらず講和会議には招かれなかった。日中、日韓の間に横たわる歴史問題は、いわばサンフランシスコ講和条約で処理することのできなかった「未解決の問題」といってもいい。政府は、条約が発効した4月28日を「主権回復の日」と位置づけ記念式典を開く予定だが、同条約によって沖縄が切り離されたことや、「アジア不在」の講和だったことなど、条約の別の側面を忘れるわけにはいかない。

4月1日 琉球新報
「集団自決」真実後世に チビチリガマで慰霊祭      

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ガマの中の祭壇に線香を手向けて手を合わせる遺族ら=3月31日、読谷村波平のチビチリガマ

沖縄戦で米軍が上陸した直後の1945年4月2日に住民83人が「集団自決」(強制集団死)に追い込まれた読谷村波平の自然洞窟・チビチリガマで3月31日、慰霊祭が開かれた。遺族ら20人が集まり、亡くなった家族のみ霊の冥福を祈り、平和への思いを新たにした。遺族らはガマの中の祭壇に果物や餅などを供え、線香を手向けた。手を合わせて目を閉じながら、涙を流す遺族もいた。

遺族会の与那覇徳雄さん(58)は、チビチリの事件が明るみに出てことしで30年になると言い「子や孫も大きくなる。私たちにできることは彼らに歴史の真実を伝え、戦争をさせないことだ」と呼び掛けた。祖母とそのきょうだいら5人を亡くした与那覇徳市さん(70)は戦後の幼いころに、母フミさんに連れられてガマに手を合わせたことがある。「母はガマを見ないようにいつも遠回りをしていた。あの時は分からなかったが、当時の母の気持ちが今になって分かる」と話した。

3月29日 沖縄タイムス
「集団自決」渡嘉敷で慰霊 戦争責任問う
       
1945年に「集団自決(強制集団死)」で330人が犠牲になった渡嘉敷村で28日、村主催の慰霊式典が、犠牲者を祀る「白玉之塔」前で開かれた。島内外から約100人が参列。塔に刻まれた名前に手を合わせて献花、黙祷(もくとう)し、犠牲者を悼み、恒久平和を誓った。

遺族代表の新崎直恒さん(74)は追悼の言葉で、指示を受けた集合場所で「手榴(しゅりゅう)弾が爆発し、想像を絶する集団自決」を目撃したことを告白。「軍命により集められた。駐屯がなければ、米軍の上陸はなかった。軍がいなければ、手榴弾は配られず、悲惨な集団自決は起こらなかった」とし、国家の戦争責任を問うた。渡嘉敷小中学校と阿波連小学校の児童代表9人が、「二度とあの悲しみを繰り返さない」との平和の詩を朗読。また犠牲者の孫の宮城千恵さん(54)=宜野湾市=が、自作の歌「命どぅ宝」を遺族とともに歌いあげた。

3月28日 琉球新報
社説:高校教科書 「軍命」記述なしは疑問/検定意見撤回が不可欠だ
      
2014年4月から高校生が使用する日本史教科書で沖縄戦時の「集団自決」(強制集団死)について、「日本軍による命令」「軍命」を明記した教科書はなかった。文部科学省が公表した教科書検定結果で分かった。「日本軍が強いた」「日本兵による命令」など表現を工夫した教科書もあるが、検定結果は全体的評価として、史実の正しい継承の観点から決して納得できない。文部科学省や教科書検定にかかわる有識者、出版社など全ての関係者に、あらためて公明正大な教科書づくりを強く求めたい。

「屈辱の日」欠落
1952年4月28日に発効したサンフランシスコ講和条約については、日本史全9冊が「独立国としての主権を回復した日」として触れたが、「4・28」を日本から分離された「屈辱の日」と位置付ける沖縄側の視点での記述はなく、これも不満が残る内容だ。沖縄戦や米軍統治で沖縄住民が虐げられた歴史事実を、生徒が理解不能な曖昧な表現で記述したり、一面的な見方で記述したりする教科書がまかり通ってはならない。
 
06年度検定意見に基づく高校教科書検定で、沖縄戦の「集団自決」記述から日本軍の関与が削除されたことに抗議し、07年9月29日に超党派の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が開かれた。以来、県内では日本軍強制に関する記述復活と「軍の強制を示す表現」を削除した06年度検定意見の撤回を求める意見が根強いが、今回、いずれも実現しなかった。
 
実教出版、山川出版社、清水書院、東京書籍の4社9冊のうち、4社8冊が沖縄戦の「集団自決」を取り上げた。このうち、新たに「日本兵による命令によっても集団自決をとげた」という記述を加えた清水書院「日本史B」をはじめ6冊が現行本より踏み込んだ。文科省が06年度検定意見を堅持する中、教科書会社の編集者、執筆者の努力は一定の評価をしたい。
 
だが、強い違和感も覚える。「集団自決」への軍命の有無が争われた「岩波・大江裁判」で、11年4月22日、最高裁で軍関与を認める判決が確定した。本来なら教科書会社は「軍命」に否定的な検定意見に風穴を開けるべく、「軍命」の記述を含め申請すべきだった。同裁判の二審では沖縄戦体験者の多くが他界する中、60年以上の経過や軍命が口頭で行われ命令書の類いが廃棄されたとみられる事情を勘案し、オーラル・ヒストリー(口述証言)を証拠として採用する画期的な判断も下した。

司法判断順守を
二審は最新の沖縄戦研究も踏まえ、座間味、渡嘉敷の「集団自決」について「軍官民共生共死の一体化」方針の下、広い意味で「日本軍の強制ないし命令と評価する見解もあり得る」とも判断した。文科省は今回の検定結果公表にあたり「裁判と検定は無関係」としたが、司法判断を順守すべきだ。
 
日本の独立に伴う沖縄分離の背景について、実教出版「高校日本史B」のように、琉球諸島の長期軍事占領を昭和天皇が希望した、いわゆる「天皇メッセージ」に言及した教科書もあるが、踏み込んだ試みは一部にとどまった。日本史や政治・経済では普天間飛行場返還・移設問題や日米地位協定など沖縄の米軍基地問題が多く取り上げられたが、これも記述の踏み込み具合にばらつきがあった。
 
地理と政治・経済では尖閣問題で、日本政府の認識と異なり、領土問題があると受け止められる表現には、「誤解を招く」などの検定意見が付された。こうした対応が国際理解を妨げる要因になっては本末転倒だ。関係国との立場の違いを明確にし、多角的に学ぶことが世界で通用する人材の育成に不可欠ではないか。司法判断に反する偏った歴史観で教科書づくりが進められては、国民の利益も日本の国際的信用も損ないかねない。教科書検定制度は多角的に見直されるべきだ。この国の民主主義の成熟度が問われる。   

3月28日 沖縄タイムス
教科書検定:戦争体験者ら怒り

「軍命」「強制」の記述復活を求めてきた戦争体験者からは、「事実を隠してはいけない」「正しい歴史を教える教科書でなければならない」など怒りの声が上がった。渡嘉敷島で「集団自決(強制集団死)」を体験した、沖縄キリスト教短期大名誉教授の金城重明さん(84)は「教科書会社の工夫は評価できるが、史実は薄めてはならない」と憤る。「2006年度検定意見から、文部科学省に『軍命がなかった』という方向性があるのは明らか。今後、悪い方向に変えることも考えられる。歴史を正しく伝えるには、検定意見の撤回が必要だ」と述べた。

座間味島で「集団自決(強制集団死)」を体験した宮城恒彦さん(78)は「戦争経験者がいなくなったら、集団自決(強制集団死)を教えられるのは教科書だけになる」と指摘。「そのために軍命や強制の事実が薄められてはいけない。沖縄から文科省の壁を破らなければいけない」と語気を強めた。

渡嘉敷島で「集団自決(強制集団死)」を試みたが思いとどまった吉川嘉勝さん(74)は「軍の強制や命令が読み取れるようになったのは、県民の働き掛けや教科書会社の努力だ」と一定評価。一方、政府に「沖縄戦の記述の問題を含め、県民の気持ちを訴える努力をしてほしい」と求めた。

3月28日 沖縄タイムス
12年教科書検定意見の撤回要請
       
日本史教科書の「集団自決(強制集団死)」について「軍命」「強制」記述の復活を求めてきた「9・29県民大会決議を実現させる会」(玉寄哲永代表世話人)は27日、県庁で会見し、「軍命」「強制」の削除が撤回されなかった文部科学省の2012年度高校日本史教科書検定結果について、「07年の県民大会決議が達成されたとは到底いえない。沖縄戦の実相を学ぶため、さらなる記述の充実を求めて今後も活動を続けていく」との声明を発表した。

声明は、今回の検定教科書で「集団自決(強制集団死)」について「命令」「強要」の記述があったことについて「5年余に及んだ活動が一定の成果に結びついた」と評価。一方で、07年9月に約11万人が参加した県民大会で決議した、「検定意見撤回」と「記述回復」が達成されたとはいえないと指摘した。

玉寄代表世話人は「『大江・岩波裁判』の結果を見ても、『集団自決』への軍関与ははっきりしている。『軍命』の記述を引き続き求めるとともに、『4・28』を沖縄が切り捨てられた日だと位置付け、歴史が捏造(ねつぞう)されないために要請行動を行う」と強調した。

3月28日 沖縄タイムス
社説:高校教科書検定]重み増す「記憶の継承」
       
文部科学省は2014年度から使用される高校の日本史教科書の検定結果を公表した。沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」は9冊のうち8冊が取り上げた。教科書執筆者が文科省検定の制約の中で表現に苦心した跡がうかがえる。

例えば「極度の混乱に陥った住民は、捕虜になることを恐れ、日本兵による命令によっても集団自決をとげた」「なかには日本軍が住民に集団での『自決』を強いたところもあった」-などである。ここまで記述を取り戻したのは、11万人が結集した07年9月の県民大会やその後も継続して「軍命」「強制」記述の復活を求めた運動が後押ししたのは間違いないだろう。

だが、文科省は「軍命」や「軍の強制」を認めていない。これらを「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」と指摘した06年度の検定意見は依然として撤回していない。「集団自決が、直接的な軍の命令により行われたことを示す根拠は、確認できていない」との姿勢を堅持しているのだ。今回の検定は実質的に民主党政権下の12年に終了しており、安倍政権下でなされた検定ではないことに注意しなければならない。

06年度の検定は、「戦後レジーム(体制)」からの脱却を前面に掲げた第1次安倍政権時代であった。安倍晋三首相の基本姿勢はいまも変わらず、教育改革にも並々ならぬ意欲を示す。これからの検定で復古的な安倍カラーを前面に押し出し、検定に政治介入してくる懸念が消えない。

沖縄が日本から切り離されたサンフランシスコ講和条約はどう扱われているか。日本が独立した日としてすべての教科書が盛り込んでいるものの、沖縄分離の背景など十分な説明がなされているとはいえない。沖縄を長期間にわたって軍事占領することを昭和天皇が希望していることを米側に伝えた「天皇メッセージ」に触れたのは1冊だけである。

安倍政権は同条約が発効した4月28日を「主権回復の日」として政府主催の式典を初めて開くことを決めている。自民党には、「4・28」を「主権回復記念日」とするよう求めてきた議員連盟がある。野党時代の11年8月、同議員連盟が中心となって国民の祝日法改正案を衆院に提出している。解散総選挙で廃案になったものの、昨年4月28日には「国民集会」を開いている。主権回復の日は突然出てきたものではないのである。

沖縄戦に関しては、実証的に積み上げられた膨大な証言の蓄積と、これまで黙して語らなかった当事者による新たな証言の発掘がある。その一方で、沖縄戦体験者は年々少なくなっていく。復帰から40年が過ぎ、米軍統治下の沖縄を直接知らない人も増えていく。ウヤファーフジ(祖先)が経験した苛烈な沖縄戦、主権をないがしろにされた米軍統治下の体験をどう新しい世代が学び直し、記憶を継承していくか。沖縄戦から現在までの戦後史が地続きであることを認識する必要がある。

3月27日 沖縄タイムス
教科書検定:軍の「強制」表現前進   

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沖縄戦の記述があった教科書

26日に文部科学省が公表した2012年度の教科書検定は「日本史」で4社8冊が沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」を取り上げたが、いずれも文科省が検定意見を付けず、「軍命」や「強制」の記述に修正を求めなかった。06年度に「軍命」などの削除が求められて以降、2度目の検定で11年度の前回同様、記述の復活こそなかったが、現行版に比べて「軍命」「強制」の意味に近づけた強い表現もあり、「軍命」などの記述復活に向けて一歩前進した。

文科省の教科用図書検定調査審議会・日本史小委員会が07年にまとめた「基本的とらえ方」では、集団自決の記述について「沖縄戦における戦時体制、さらに戦争末期の極限的な状況の中で、複合的な背景・要因によって住民が集団自決に追い込まれていった」と強調。「軍命」や「強制」との因果関係を曖昧にし、その後の教科書検定に影響力を持ってきた。

今回の検定は「とらえ方」の範囲を超えないが「集団自決」を取り上げた8冊とも内容に踏み込んだ。「軍命」の記述で、清水書院の「日本史B」は本文とは別のコラムの中で「日本兵による命令によっても集団自決をとげた」と表現した。検定では「『日本兵による命令』という表現がある」との指摘があったものの、文科省教科書課は「軍の直接的な命令かどうか断定できない。欠陥として指摘できない」との判断で書き換えはなかった。

清水書院の編集担当者は「多くの世論を考えて、断定的過ぎない書き方を心掛けた。本文よりも紙幅の多いコラムで詳しく書き込む方法もある」と話した。

実教出版は「日本史B」で、集団自決について軍の「強制」を自決の一例として記述した。同社の担当者は「沖縄や日中関係の記述は今まで通り」と話しながら、「文科省の検定方針は必ずしも首尾一貫しているわけではない。執筆者の踏み込んだ書き方が求められる」と強調した。

東京書籍は今回も「日本軍に強いられた」ではなく「追い込まれた」の表現にとどまったことについて「執筆者と議論した結果そのような記述になった」と説明した。一方、日本史教科書最大手の山川出版社は「日本史B」2冊中、1冊で集団自決の表記が全くなかった。担当者は「カリキュラムの多様化、学校間の格差に応じて使えるように(集団自決の記述について)内容を変えた。内容の差はあっても沖縄戦について取り上げている」と話している。

3月27日 沖縄タイムス
教科書検定「4・28」背景説明薄く
       
2012年度の高校教科書検定に合格した「日本史A」「同B」では、政府が「主権回復」の日として式典開催を決めた4月28日のサンフランシスコ講和条約について、4社9冊全てが取り上げている。一方で沖縄の米軍占領を望み、条約締結の背景の一つとされる「天皇メッセージ」に触れた教科書は1冊にとどまった。米軍普天間飛行場移設については「日本史」9冊中7冊、「政治・経済」は5社7冊全てが取り上げた。

講和条約については「沖縄(中略)はアメリカの施政権下におかれた」(清水書院)など、全ての日本史で、沖縄分離に触れている。しかし、条約の運用をめぐる議論や本土復帰まで20年もかかった経緯など詳細に示されていない。

「天皇メッセージ」については、実教出版のみが「アメリカの沖縄政策に影響を与えたものと推測されている」(日本史B)と紹介。琉大名誉教授の高嶋伸欣氏は「日本政府の人権意識の希薄さ、沖縄の主権回復の本質を知る上で、4・28の充実した記述が必要」と指摘している。

普天間飛行場移設では、
1996年の県民投票を紹介した実教出版(日本史A)の記述に文科省から検定意見が付いた。同出版は当初「沖縄の人々は、日米安保条約という国の政策に関して自己決定権を行使しました」と記述していたが、文科省は「説明不足」と指摘。これを受けて「(中略)有権者の過半数が基地縮小に賛成したことになります」と変更した。

沖縄の基地問題は、清水書院(日本史A)が4ページの特集を組んだほか、実教出版(同)がコラムで反戦運動家の故阿波根昌鴻氏や復帰運動をリードした故屋良朝苗氏を紹介。基地問題を日本の課題として積極的に取り上げた教科書もあった。

3月27日 沖縄タイムス
教科書検定 8冊に「集団自決」
       
文部科学省は26日、2014年度から高校2年生が使う教科書の検定結果を公表した。今回申請のあった日本史の4社9冊のうち8冊が沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」を取り上げた。8冊とも06年度検定以降に削除された「軍の命令」や「強制」が読み取れる記述に戻した。一方、沖縄が日本から分離された「4月28日」の記念式典化をめぐり、県内で反発が起きている「サンフランシスコ講和条約」の記述は、日本史、政治・経済全教科書が記したが、沖縄分離の背景とされる「天皇メッセージ」は1冊だけだった。

「軍の命令」や「強制」については、書き方を工夫し、可能な限りその意味を盛り込もうという教科書会社も複数あった。削除された「軍の強制や命令」を明記した教科書はないものの、記述の復活を目指した07年の県民大会や、その後の一連の県民運動の成果が一定反映される形となった。

日本史は申請のあった4社9冊全てが沖縄戦について触れた。そのうち「集団自決」については「日本史A」3社3冊、「同B」4社5冊の計8冊が取り上げた。教科書の中には「日本兵による命令によっても集団自決をとげた」(清水書院・日本史B)、「日本軍により、戦闘の妨げになるなどの理由で県民が集団自決を強いられたり」(実教出版・日本史B)と記述している。

一方、政府が4月28日に「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」の開催を決める中、1952年の「サンフランシスコ講和条約」は沖縄分離を含め日本史全9冊が盛り込んだ。しかし、沖縄分離の背景とされ、米軍の長期占領を認めた「天皇メッセージ」については実教出版の日本史B1冊のみだった。

沖縄の米軍基地については日本史の全9冊、「普天間」移設問題は「日本史A」3冊中2冊、「同B」6冊中5冊、「政治・経済」は7冊全てが取り上げた。個別のコラムで日米地位協定や思いやり予算、基地被害などを紹介する教科書もあり、沖縄問題についての全国的な関心が示された。地理の全2冊と政治・経済7冊中6冊が、中国と台湾が領有権を主張する尖閣諸島と、韓国が領有権を主張する竹島を「日本の領土」と明記した。

3月27日 琉球新報
「軍が強いた」と表記 高校教科書検定      

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沖縄戦での住民の「集団自決」や、米軍普天間飛行場の移設問題を扱った教科書
 
文部科学省は26日、2014年4月から主に高校2、3年生が使用する新学習指導要領(09年告示)に基づく教科書の検定結果を公表した。日本史教科書で、実教出版、山川出版社、清水書院、東京書籍の4社9冊のうち、4社8冊が沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)を取り上げた。「日本軍による命令」や「軍命」を明記した教科書はなかった。07年9月29日の「9・29県民大会」で11万6千人余(主催者発表)が求めた日本軍強制に関する記述復活と、「軍命」を削除した06年度の検定意見撤回はことしも実現しなかった。一部踏み込んだ表現が複数の教科書でみられたが、いずれも検定意見は付かなかった。踏み込んだ表現は「日本軍が強いた」「日本兵による命令」など。住民を「集団自決」に追い込んだ主体として「日本軍により」と追記した記述も多かった。
 
文科省は今検定が06年度の検定意見や「集団自決」への直接的な軍の命令を示す根拠は「確認できていない」とした教科用図書検定調査審議会日本史小委員会の「基本的とらえ方」(09年12月)に基づき行われたが、いずれの表記も「その範囲を超えない」(担当課)との認識を説明。研究者らは「どう軍の強制を表現しようか努力した点もみられる」などと分析した。06年度の検定意見以降、「集団自決」の記述は「軍の関与」や「集団自決」に「追い込まれた」などにとどまり「集団自決」に追い込んだ主体も曖昧(あいまい)にした表記になっていた。「集団自決」への軍命の有無が争われた「岩波・大江裁判」では11年4月22日、軍関与を認める判決が確定したが、今検定でも文科省は「裁判と検定は無関係」とする姿勢は堅持した。
 
日本史や政治・経済では普天間飛行場返還・移設問題や日米地位協定など沖縄の米軍基地問題が多く取り上げられた。地理と政治・経済では、尖閣問題が多く扱われたが、日本政府の認識と異なり、領土問題があると受け止められる表現に「誤解を招く」などの検定意見が付された。教科書は11年に編集を終えており、米海兵隊のMV22オスプレイの沖縄配備(12年10月)などの記載はなかった。

3月26日 琉球新報
「軍命」復活ならず 高校日本史教科書      

文部科学省は26日、2014年4月から主に高校2、3年生が使用する新学習指導要領(09年告示)に基づく教科書の検定結果を公表した。日本史教科書で、実教出版、山川出版社、清水書院、東京書籍の4社9冊のうち、4社8冊が沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)を取り上げた。直接、「日本軍による命令」や「軍命」と明記した教科書はなかった。
 
ただ「日本軍が強いた」「日本兵による命令」など、一部踏み込んだ表現が複数の教科書で見られた。住民を集団自決に追い込んだ主体として「日本軍により」と新たに明記した記述も多かった。いずれも検定意見はつかなかった。

3月26日 沖縄タイムス
教科書検定「集団自決」軍命、読み取れる記述に
       
文部科学省は26日、2014年度から高校2年生が使う教科書の検定結果を公表した。今回申請のあった日本史では4社9冊のうち8冊が沖縄戦の「集団自決(集団強制死)」を取り上げた。06年度検定以降に削除された「軍の命令」や「強制」が読み取れる記述に戻した教科書もあったが検定意見はなく、修正は求められなかった。

軍の「命令」や「強制」については、書き方を工夫し、可能な限りその意味を盛り込もうという教科書各社も複数あった。「軍の強制や命令」を明記した教科書はないものの、記述の復活を目指した07年の県民大会やその後の一連の県民運動の成果が一定反映される形となった。

日本史は申請のあった4社9冊全てが沖縄戦について触れた。そのうち「集団自決」については「日本史A」3社3冊、「同B」4社5冊の計8冊が取り上げた。教科書の中には「日本兵による命令によっても集団自決をとげた」(清水書院・日本史B)、「日本軍により、戦闘の妨げになるなどの理由で県民が集団自決を強いられたり」(実教出版・日本史B)と記述している。

3月7日 琉球新報
32軍壕、文化財検討へ 県教育長が方針 

沖縄戦当時、首里城地下にあった旧日本軍第32軍司令部壕について、大城浩県教育長は6日の県議会2月定例会一般質問で「第32軍司令部壕の文化財指定に向けて検討を進めたい」との考えを示した。渡久地修氏(共産)への答弁。議会後、取材に対し大城教育長は「旧日本軍第32軍司令部壕は重要な沖縄戦跡だと認識している。文化財指定に向けて前向きに進めていきたい」と話した。
 
現在、壕の維持管理を担当する県環境生活部が壕内の地質などを調査しており、県立埋蔵文化財センターが実施する県戦争遺跡詳細確認調査の過程や結果を踏まえ、維持管理の在り方を検討している。文化財として指定されれば、管理を担当する行政の所管も変わり、文化財保護法などによって保存に努めなければならなくなるという。
 
県教育庁文化財課によると指定には、県立埋蔵文化財センターの調査が終わる2014年度以降に、有識者らで構成される審議会での審議や文化庁との協議などを経る必要があるという。同課は調査の進展状況について「内部は落盤や酸素濃度不足の場所などがあり、立ち入れる範囲まで調査を進めている。専門家の意見を聞きながら、調査を進めていきたい」と話した。

2月28日 沖縄タイムス
32軍壕埋めず 県、専門家調査受け判断
       
沖縄戦を指揮した首里城地下の第32軍司令部壕について、県は26日、当面埋め戻さないことを決めた。崩落などがあり危険だとして一般公開もせず、維持管理を続ける。専門家による調査結果を受けて判断した。

県は昨年3月、「工学的に調査し、埋めることも含めて最終判断する」と表明。沖縄戦研究者などから「貴重な戦争遺跡を埋めてしまったら取り返しがつかない」との懸念が出ていた。本年度、県内外の土木専門家6人が現地調査などをした結果、「緊急的に埋め戻し等による対策が必要な状態ではない」との結論が出た。今後の方針は、32軍壕を含めた戦争遺跡の史跡指定に向けた県教育庁の調査が終わる2014年度以降に決める。平和・男女共同参画課は「これまで崩落するたびに応急処置していたが、新たな調査項目も提案され、今後は計画的に保全できる」とした。1995年度から続く維持管理事業は、来年度から調査項目などを見直す。一方、97年度に策定した公開計画は安全性や約21億円の費用が課題となり、棚上げが続くことになる。

32軍壕は昨年、県が説明板を作ったものの、当初の文案から「慰安婦」「住民虐殺」の文言を削除し、批判を浴びた。文案を作った検討委員会の池田榮史委員長(琉球大教授)は県の今回の決定について、「32軍壕を単なるトンネルではなく、文化財として扱うチャンスが生まれた」と評価した。村上有慶委員は「沖縄戦の負の部分を説明するのに欠かせない遺跡で、たとえ内部に入れないとしても平和教育に生かすべきだ」と指摘。「そのためにも、説明板は一度撤去し史実を反映した記述に直す必要がある」と求めた。県は26日、方針をホームページにも掲載した。

1月30日 沖縄タイムス
NY上院:慰安婦は「人道への罪」決議
       
旧日本軍の従軍慰安婦問題をめぐり、ニューヨーク州上院は29日、慰安婦は「人道に対する罪」だと指摘する決議を採択した。上院関係


『原発ジプシー』 原発で「英雄的に働く」下請け原発労働者

2011-04-28 10:47:29 | 人権

①「原発ジプシー」とは

日本において原子力発電所の定期点検時には、原発を運転する電力会社の社員ではなく、関電プラントなど原発の保全業務を担当する会社の下請け企業に一時的に雇用された労働者が、点検業務にあたる。

*給与のピンハネ
1人の労働者に対し元請け企業から日当15,000円が下請け企業に支払われていると推定されるものの、労働者自身には5,500円しか渡らず、9,500円を下請けがピンハネしていると考えられる[1]事例が紹介される。

*労働災害
電力会社が労働災害を嫌う事例が紹介されている。筆者が作業中に3週間の怪我を負った際には、雇用した下請け会社の安全管理者より、治療費を会社で負担し休養中の給与も補償するとの申し出を受けている[2]。 また、労働者が会社に労災を認めさせたものの、会社から原発構内以外の場所で負傷したことにするよう求められた事例が紹介される[3]。

*労働者の被曝
労働者の放射線被曝を防ぐ意識が低かった頃は、人手が足りなければ放射線管理教育もせずに放射線管理区域に労働者を入れて被曝させた例があったとされる。          労働者の中には、自分の被曝が原因となって生まれてくる子供が障害を持つことを心配する人もいる。 原発で働く前に生まれた子供は健常であったが原発就労後に生まれた子供に指がなかったため転職した事例が紹介される。就労者の子供が奇形をもって生まれた例を見聞きしたことも紹介される。ただしこれらが放射線障害に起因した現象とは限らないとされる。

*外国人労働者との格差
なお、ゼネラル・エレクトリックの労働者が日本に来て福島原発の修理をしたり、敦賀原発など他の原発でも就労している事例が紹介される。こうした外国人労働者には日本人労働者より高い数値にセットしたアラームを与えられ、1日に700ミリレムを被曝するものの数日で交代する例もあった。給料は非常に高額であったが、彼らの出身はスラム街であったり、刑務所を出た者であったりしたとされる。計画線量が日本人労働者の10倍の1,000ミリレムであった事例もあった。

関連URL:
2011/03/24
2011 0324 現場に踏みとどまる原発作業員に「死の危険」 仏専門家が増援呼び掛け 共同通信
http://blog.goo.ne.jp/teyata/d/20110324

2011/03/28
NY TIMES 3月27日記事より 「福島第一の労働者の放射線の危険性」
http://blog.goo.ne.jp/teyata/d/20110328

②「原発ジプシー」が描かれた映画

生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言      森崎東監督 1985年作品

森崎東アーカイブ http://www.asahi-net.or.jp/~hi2h-ikd/film/morisakidata/di001330.htm

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この映画は原発ジプシーと呼ばれる危険な原子力発電所の作業をするために全国各地の原子力発電所を渡り歩く労務者の現実を描いています。

かって窪川町ではこの映画を上映し、多くの町民が鑑賞. 結果窪川原発は断念されました。 
上映の翌年にはチェルノブイリ原子力発電所の大事故がありました。

③原発ジプシー 加藤登紀子さん作品カバー

見えない光 体にうけて
赤いブザーの 鳴りひびくまで
闇の世界で 仮面をつけて
旅するジプシー

アップロードしたユーザーのコメント
加藤登紀子さんが「さよなら20世紀」と言うシリーズの三作目に?この曲を入れましたが、差別用語が有ると言う理由でSonyが突?如、発売禁止に。この曲を削除して再発売。まもなく彼女は契約を?解除、Sonyを去った!?
ジプシーという言葉が差別用語だというのが表向きの理由でしたが?、
本当は別の意味で圧力を受けたのは間違いありませんね。
登紀子さんの無念を少しでも晴らそうと密かにカバーしていたので?すが・・・
こんな形で注目される事になるとは、私自身複雑な心境です。