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てっしーずのおでかけ日記

観たこと、聞いたこと、気づいたことを書くよ!

残るものと消えるもの~その26 小平市平櫛田中彫刻美術館

2011年12月14日 | ぐるっとパス
ここにもあるんですね田中美術館

『岡倉天心と日本彫刻会‐日本木彫の「伝統」と「革新」‐』
会期:平成22年9月10日(金)~平成22年10月17日(日)
小平市平櫛田中彫刻美術館
http://denchu-museum.jp/tenrankai_kako

この施設の最寄り駅になる一橋学園駅は以前、仕事でよく行っていたところ。
十年ぶり、いや、それ以上の時間が経っています。
この辺は日立の勢力がすごかったんですが、今やすかり地味になってますねえ。
広かった施設の一部を売却したのか、お店ができています。
昔は日立のバレーボールチームの体育館があって、大林選手が疲れきった顔で自転車に乗っている姿を見たこともありました。

そんな「国破れて山河あり」な気分になった一橋学園ですが、平櫛田中彫刻美術館
に行くのは初めて。
展示室がそんなに広いわけではありませんが、旧宅と庭がすばらしい。
紅葉の時期に行くとすごくいいんだろうなあ。
江戸東京たてもの園の中にあっても、おかしくないような建物です。
107歳まで生きた長生きの田中が最後に製作を行っていた贅沢な建物で、田中の制作していた当時の様子が再現されていたりします。
田中は年を重ねても、美術館に行くことが多かったようで、いろんな美術館のチケットまで展示されています。
普通のチケットではなく、展示が無料になるパスなんですが、こういう有名人でもパスをもっていないと無料にならないのかな、と不思議な気持ちになりました。

晩年まで制作の意欲のつきることがなかった田中の作品はとにかく生真面目。
「いまやらねばいつできる わしがやらねばたれがやる」と書に記しているくらいですから。
田中の作った「尋牛」は牛を一直線に捜し求めているように思えます。
http://denchu-museum.jp/archives/624

迷いなんかないように見えるなあ。
正直、こういう彫刻作品のよさがまだわからないんです。

そういえば、以前行った上野の平櫛田中邸は危機遺産リストに入っているんですね。
確かに、2階に上がるときや一部の部屋の床はかなり心配な状態だったなあ。
今は建物の中が非公開になっているようですが、また入れるようになるんでしょうか。
また、あそこで青島三郎の絵を見たいなあ。(ひ)





言葉の感触~その25 世田谷文学館

2011年12月13日 | ぐるっとパス
石川慶×佐々木友輔 映像詩『時計』(原作:萩原朔太郎)01

企画展
生誕125年 萩原朔太郎展
2011年10月8日[土] ~12月4日[日]
世田谷文学館2階展示室
http://www.setabun.or.jp/exhibition/sakutaro/

常設展
特集 萩原葉子
~出発に年齢はない~
http://www.setabun.or.jp/regular/

つつじヶ丘から芦花公園に戻り、世田谷文学館に。
ここに行くのは久しぶり。
常設展示室がかなり狭くなっている気がしたけど、工事中なのかな?
それとも展示作品数の関係?

今回訪れたのは企画展示の萩原朔太郎目当て。
詩をほとんど読まない人間ですが、朔太郎は大好きです。
乱歩や夢野久作が好きならそうなって当然といえば当然。
「文学」というものを避けて、怪しい本ばかり読んでいた子供がたどりつく数少ない文学といってもいいんじゃないでしょうか。

今回の展示は田中恭吉と恩地孝四郎というふたりの版画家との関係や、朔太郎と音楽といった多面的な方向から朔太郎が紹介されています。
ずっと朔太郎の生原稿や作品紹介ばかりになったら単調ですが、視覚的にも聴覚的にも楽しめる展示でした。

中でも印象に残るのは田中恭吉という版画とのエピソード。
朔太郎が相当彼に期待していたことが手紙からも分かります。
自分の作品集に使うのは彼の版画しかない、と入れ込んで本を作っていたのに、肺結核で23歳の若さで死去。
かなり様態が悪くなってから書いた、朔太郎に仕事を断る手紙が痛々しい。
版画というのは、当然ながら恐ろしく集中力のいる仕事ですから、文字通り身を削っての作業だったんでしょうね。

この後、朔太郎はしばらく途方に暮れていますが、自分の作品にどんな版画を使うべきかを重要視していたことから分かる通り、彼は単に詩を書くのではなく、どういう本に仕上げるかを深く考えていました。
この辺は詩人というより、画家や版画家のよう。
館林で見た版画家、藤牧義夫も若くして、自分で装丁した本を作っていたなあ、そういえば。
朔太郎は既に一度出版されている詩集も、自分の気に入る形で装丁して出し直したりしています。
印刷されない本が増えている今の時代こそ、こういう拘りをもって作られた本が多く必要かもしれません。
自分の好きな作家が装丁まですべて考えた本なら、やっぱり印刷したものが欲しいですもんね。
朔太郎の本は確かに素敵なものが多い。
今回の展示カタログは朔太郎の作品集に似た装丁になってました。

今回の展示では朔太郎が自作を朗読するテープも会場に流れています。
意外なくらい淡々とした読み方にびっくり。
読み方でずいぶん印象が変わりました。

展示の中には当然ながらムットーニの「猫町」もあります。
常設展示でも2つのムットーニ作品を見てきましたが、村上春樹作品なんかもあるんですね。
まだ見ていないムットーニ作品を見るために、次のぐるっとパスでまた来ることにしよう。(ひ)



なつかしき所~その24 調布市武者小路実篤記念館

2011年12月09日 | ぐるっとパス
実篤公園

秋の特別展「実篤の旅」-美と愛を求めて
会期:10月29日(土曜日)から12月4日(日曜日)
調布市武者小路実篤記念館
http://www.mushakoji.org/schedule201112.html#sche1

ICCの後は京王線で実篤記念館に移動しました。
ここに、ぐるっとパスで行くのは初めて。
学生時代からずっと、つつじヶ丘に住んでいたんですが、ここに行ったのは一度くらい。
あてもなく自転車でそこら中を走っていたので、実篤公園付近は何度となく通っていたんですが。
駅がすっかり様変わりしているのに驚きました。
電車を降りると、地下に降りてから改札に向かうようになっていたのに、上に上がるようになったんですねえ。
駅にお店がいくつも入るんだそうですが、残念ながらオープニング前でそこには寄れず。
つつじヶ丘といい、私が今住んでいる某市といい、どうも駅前にお店が充実していないところに長く住むことがなぜか多いです。

展示ですが、実篤の旅にまつわる展示でした。
ヨーロッパに行ったときにピカソに会い、直接もらっという作品が飾られているのにびっくり。
これがいい作品なんですよ、また。
国内では当然画家とのつきあいも多かった実篤ですが、海外に行っても著名な人たちと会ってるんですねえ。

国内の旅の話が当然ながら中心で、確か志賀直哉が書いていたと思うんですが、実篤とふたりで旅をすると、疲れても意地になって歩こうとして競争になってしまう、やっぱり旅は一人の方が気楽でいいんだそうです。
著名な文人が意地になって先頭を歩こうとする様の映像を誰かこっそり撮れればよかったのに。
映像といえば、話はそれますが、有名な「新しき村」の映像が流れていました。
最初は宮崎に作り、後にそこにダムができることになって埼玉にも作ったんですね。
実篤自身、その「新しき村」以外に鵠沼や我孫子や調布をはじめ、いろんなところを転々としています。
やっぱり作品以上に人生が気になる人ですね。

展示室は狭いんですが、作品や資料がぎっしり詰まっています。
年表の異様な細かさにビックリしました。
転居やら、人との交流がこれだけ多い人って、自分の過去をどのくらいちゃんと憶えているんでしょうか。
とても全部読み切れなかったので、また次回挑戦します。(ひ)


一皮向けば~その23 NTT インターコミュニケーション・センター [ICC]

2011年12月06日 | ぐるっとパス
やくしまるえつこ『ジェニーはご機嫌ななめ』(フルver.)

三上晴子 欲望のコード
2011年10月22日─12月18日
http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2011/Desire_of_Codes/index_j.html
NTT インターコミュニケーション・センター [ICC]

ということで昨日の続きです。
ようやく再開してくれたICCは喫茶コーナーがなくなっていて、その分、展示が少し増えていました。

年に1、2度行われる企画展を開催中。
作品数は少ないですが、強烈です。
センサー、小型カメラ、大型スクリーンなどを使って、会場にいる人間と外の映像を組み合わせた映像を作り上げている。
こちらが動くとセンサーが反応して、大きな音とともにカメラのついたロボットアームが一斉に動くさまに、自分がルパン三世にでもなったような気分になってきます。
といっても、自分が撮られて大型スクリーンに映し出されるというのはかなり不快なものでもあるんですが。
そう思いながらもやっぱり、映像をまじまじと見てしまうのは人間の欲望というか性なんでしょうか。
監視カメラというのは果たして自分を守ってくれる存在なのか、それとも自分をさらして監視されるだけなのか、私たちは日常的に、こんなグロテスクなものと嫌がおうにも共存しているわけです。
今までにも、目の前の自分を映像化するという展示は何度も見ていますが、これだけ「悪意」あるストレートな形なのが素晴らしい。
普通、もう少し、ソフトな娯楽の要素の強いものにしますからね。
今、世界はこうした「飾り気のない悪意」にさらされているんだということを実感しました。
そう実感しておくのは、今の時代を生きる人間の覚悟として、必要なものでしょう。
先日、レオ・ルビンファインの写真に感じた緩さとモヤモヤ感をここで、すっかり解消できました。

常設展示の中では、渋谷慶一郎+evalaのfor maria anechoic room versionがすごかった。
無響室という音の反響を吸収してしまう部屋はここに以前からありますが、そこで音と光を使った展示を行っています。
予約制で、ひとりだけで部屋に入るというもの。
これから体験する人のために内容については書きませんが、ビックリすることが好きな方はぜひ体験をお勧めします。

ロボットアームにつけられたカメラが音に反応して動き映像を撮影するという作品ではやくしまるえつこの曲が使われ会場内に鳴り響いていました。
なんだか80年代っぽいやくしまるえつこの曲って、ICCにぴったりですね。

ここに来たときには必ず観ることにしている映像コレクションでは、ビル・ヴィオラの映像を鑑賞。
多分、Chott el-Djerid (A Portrait in Light and Heat)という作品だったと思います。
いつも何を見たのかわからなくなるんだよなあ。
それもまたよしということで。(ひ)







タイトル長すぎ~ その20~22 文化学園服飾博物館 刀剣博物館 東京オペラシティアートギャラリー 

2011年12月05日 | ぐるっとパス
結城紬(絣くくり)

徒歩圏内の新宿初台間の4施設に行っていました。
ICCがようやく復活してくれてうれしい限りです。

世界の絣
2011年10月14日(金)~12月17日(土)
文化学園服飾博物館
http://www.bunka.ac.jp/museum/text/kaisaichu.html

絆ではなく、絣(かすり)です。
タイトルのインパクトにもっていかれますねえ。
染色技法に関する展示ですが、まるで版画や器の作り方のようにすごいものでした。
図や文字で紹介されても、どうやって、こんな複雑なことがでいるのか、まったくピンと来なかったのですが、映像だとわかった(気になります)。
縦と横両方を染色して、複雑な模様を作りあげる技法には驚くばかりです。
いろんな国の衣装が展示されていますが、現代アートのようなシンプルなデザインのアフリカのものに惹かれました。
少し前に行った、多摩美の展示でも見ましたが、ティンガティンガなんかとは、またまったく違う味わいがあります。


刀剣博物館
http://www.touken.or.jp/index.html

行ったのはこれで2度目ですが、今回もお客が多かった。
刀好きの人は多いということがよくわかりました。
いるのは五十台以降と思しき男性客ばかり。
しかも、複数できている人が多い。
自分でも刀剣のコレクションのある人もちらほらといるようで、先日買ったらしき刀の話をしていたり、いい刀を買うツテの話をしていたりと、すごい世界が展開されています。
刀に全然興味のない(だったら行くなという話ですが)私には、おっさんたちの話が面白かった。
こういう人たちって何者なんでしょう。
服装は地味なのになあ。

[収蔵品展]
039寺田コレクションの若手作家たち
[project N]
project N 47 上西エリカ
10.18[火]- 12.25[日]
東京オペラシティアートギャラリー
http://www.operacity.jp/ag/exh136.php

ファッションのわからない人間なので、無料の収蔵品展と若手作家の作品だけ見てきました。
常設展示だけだと、エレベーターで2階にあがるように言われるんですねえ。
額田宣彦や島伸彦のシンプルさ印象に残りました。
単にシンプルというと、悪口のようですが、日常的から、半歩はみ出ているような不思議さが感じられます。
特に島伸彦の方はこれからどんな造形を描いていくのか気になります。
http://kgs-tokyo.jp/human/2008/1215/1215.htm

ICCはすごくよかったので、次回、改めて感想を書きます。(ひ)



はじまりとおわり~その18 国立科学博物館附属自然教育園 その19 東京都庭園美術館

2011年12月01日 | ぐるっとパス
東京都庭園美術館最終日

東京都庭園美術館建物公開 アール・デコの館
11/10/06 - 10/31
東京都庭園美術館

10月末で、庭園美術館が長期休館になる、ということなので、閉館前最後の日曜日に行ってきました。
いつもより、たくさん観に来ている人がいるとは思いましたが、予想以上の大盛況。
入り口前のチケット売り場に長蛇の列ができている・・・・・・。
警備の人にぐるっとパスをもっていることを告げると、「じゃあ、そのまま中へどうぞ」と言われてほっとしました。
こういうとき、一番お得感がありますね、ぐるっとパスは。
まあ、めったにあることじゃありませんが。

建物に入るまでに、また列に並びましたが、こちらはそれほどではありませんでした。
夕方近くに行ったので、すでにライトアップが始まっていました。
帰りには結構暗くなっていたので、照明に映える美しい庭園美術館の姿を堪能できました。

建物の中はいつも、入れない部屋やカーテンなどで隠されていた部分が大解放されてました。
窓から中庭を見ることができたのも新鮮。
なぜ、普段は隠していたんだろう?
建物は開放的でしたが、とにかく人の数がすごい。
自分も含めてですが、みんな写真を撮っているので、どこにいればいいか困ってしまう状態。
普通に人を撮影する写真を撮っているならいいけど、みんな建物の一部や部屋の全体像を取ろうとしているから、カメラから逃げ場がない。
不思議と誰か撮影していると、みんな一緒に撮ろうとはせず、順番を待って撮影するのは
、日本人ならでは、って言われちゃうのかな?

二階の書斎に入るために一階の階段から、ずっと長蛇の列ができているのに一番びっくりしました。
私にはそんな忍耐力がないので、並びませんでしたが、待つのが苦にならない人が多いんですねえ。

今回は特に展示があるわけではなく、建物を見せる展示なのに、一ヶ月弱で五万人がきたそうです。
やっぱり、休館前に最後のお披露目、というと気になるものですよねえ。
こんなことなら、東京都美術館や東京芸術劇場もリニューアル前に、建物を見せる展示をやればよかったのに。
こういう悲しくない最後はいいですね。
完全閉館とか、会社や店がつぶれるというときの独特の殺伐とした空気もないですし。

そのついでといってはなんですが、自然教育園にも行ってきました。
紅葉には相当早くて地味な時期。
こちらは空いてました。
今頃いければよかったんでしょうが、なかなかうまくいきません。
紅葉の時期の今は月曜も開館しているそうです。(ひ)


その先に~その17 ブリヂストン美術館

2011年11月29日 | ぐるっとパス
ステンドグラス「いつかは会える」(原画:野見山暁治)

野見山暁治展
2011年10月28日(金)〜2011年12月25日(日)
ブリヂストン美術館
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibitions/

ブリヂストン美術館というと、夜まで開館しているから、ぐるっとパスを使っているときは、その日のシメとして、最後に見ることができる、いい美術館だったのですが、自粛の影響なんでしょうか、すべての開館日が6時閉館になってました。
一度、夕方の5時30過ぎに行って、その事実を知ってびっくり。
うちひしがれて帰りました・・・・・。
これから12月以降はまた、美術館の閉館時間に気をつけないといけないんだろうなあ。

後日、改めて展示を見に行きましたが、「野見山暁治展」は作品数も内容も満足のいくものでした。
ブリヂストン美術館の企画展は、このところ地味だけど、いい内容が続いていていいですね。
野見山暁治の抽象画はとても絵画的だなあ、というのが大まかな印象です。
先日、見た 瑛九の感想を書いたときも、同じようなことを書きましたが、瑛九の方はもっと広い意味での「絵」という印象でした。
ひとつひとつのバラバラの造形がひとつの作品に収まっているおもしろさを感じたのですが、野見山暁治の場合は全体がきちんと一枚の絵。
あるべきものがあるべき場所に収まっているし、朝起きたら、こんな風景が広がっていても、ある意味納得できる気がします。
目の前に見えるもののもうひとつの見方、というか、ある時点で私たちがどこかにおいてきてしまった、ものの見方があるように思える作品でした。
そういう意味で、ゲルハルト・リヒターの作品を勝手に連想してしまいました。
どちらの作品も、「現実」から解放される気持ちよさと、一歩そこから外に出たら帰ってこられないんじゃないか、という不安の境界線に立たせてくれます。
この不安定な心地よさというのがアートの魅力じゃないかなあ。

野見山暁治の作品には自然を描いたものが多いのも特徴です。
自然という、一見穏やかなものの奥に潜む凶暴性を見事に描き出しています。
山や海の雄大な風景に限らず、都会の風景にも、その凶暴性が潜んでいることも含めて。
明治神宮駅に展示されている「いつかは会える」の原画が本当にすばらしかった。
作品の前のソファーに座って、じっくり堪能させていただきました。(ひ)


月にほほえむ~その16 出光美術館

2011年11月28日 | ぐるっとパス
仲井戸麗市 - 慕情

日本の美・発見V大雅・蕪村・玉堂と仙―「笑(わらい)」のこころ
2011年9月10日(土)~10月23日(日) 
出光美術館

出光美術館はぐるっとパスで無料にならなくなって久しいのですが、この展示はどうしても見たくなりました。
仙はおまけのように最後に名前があるので、ほんの少ししか展示がないのかと思いきや、結構多くの作品を見ることができました。
笑いをテーマにした展示と言っても、笑っている人がでてくる作品だけでなく、中国の「文人画」にない日本の「文人画」特有の軽さというか明るさのことまでをさしています。
多分、以前にもここで見ている作品が多いと思うのですが、仙と大雅を一度に見られるのが興味深く感じられました。
文人画的な力強い作品が多いというイメージをなぜかもっていた池大雅の作品に、最近になって、仙に近いものを感じたので一緒に見たかったのです。

一番印象に残ったのは伝牧谿の「寒山拾得図」。
「寒山拾得図」は相当頻繁に見ていますが、この寒山と拾得はずいぶん距離が近いし、ふたりとも月を見ているというのが特徴。
大きく描かれた寒山と拾得に比べると、月は不釣り合いなくらい小さいのですが、存在感たっぷり。
これって、寒山と拾得の話に出てくる有名な場面なんでしょうか。
仙にも月を描いたり、月が重要な役割を果たしている作品が少なくありません。
ぜひ、各時代や日本と中国を比較したりしながらの、月に関する展示というのもしていただきたいものです。
来年の秋くらいにどうでしょう。
そのときはルオーとムンクも月を描いた作品にして欲しいなあ、ぜひ。(ひ)

なにが怖いって~その14 紙の博物館、その15 北区飛鳥山博物館

2011年11月24日 | ぐるっとパス
DVD「おりがみ Origami」

紙の博物館
生誕100周年記念
吉澤章 創作折り紙
2011年09月17日(土)~2011年11月27日(日)
http://www.papermuseum.jp/exhibit/temporary/2011/0917.html

北区飛鳥山博物館
企画展示天明以来ノ大惨事-明治43年水害と岩淵
10月22日(土)~12月4日(日)
http://www.city.kita.tokyo.jp/misc/history/museum/aind03.php

時間が空きましたが、前回のつづきです。
千住大橋から王子に移動しました。
紙の博物館では常設展示の他、創作折り紙の展示がありました。
動物、仮面、建物など、折り紙でここまでできるのかあ、と驚く展示。
その世界では海外にまで名をとどろかす存在だそうですが、納得。
昔、ナイトスクープで、折り紙好きの少年が、難しい作品の折り方にチャレンジするというのがありましたが、あのときの数十倍、難易度の高い作品ばかりなんだろうなあ、当然、折り方もすべて自分が開発している訳だし。
いくらすごい人でも、折り紙では食べていけず、普通の職業に就きながら、折り紙をやっってきたそうです。
こんなすごくなったきっかけは、子供のときに折ってもらった折り紙と同じものを作りたいという思いだったそうです。
圧倒的なレベルになっても、まだ、あのときの折り紙を折るところまでいっていない、という気持ちだったとか。
なんだか映画になりそうなエピソードだなあ。
意外に、折り紙の映画とかいけるかもしれません。
電気がいらないという意味ではエコ(?)だし。

飛鳥山博物館は水害をふり返る企画展示がありました。
こういう災害ものの展示が結構多い気がします。
まあ、今年はそうならざるをえないかな。

水害に遭った方々へのボランティアを当時(明治43年)の学生達がしていて、その中に芥川龍之介もいました。
日記にそのときのことが書かれていて、手紙に書くような内容でないことを代筆するよう頼まれて困ったという話が載っていました。
それに対し、被災者の気持ちが分かっていない、と芥川を批判するようなコメントが展示についているのが面白かった。
確かにバカにしているところがある文章ですが、日記を他人に読まれるのは怖いですねえ。
作家も日記に書いた内容まで、責任とりたくないでしょう。

この展示は水害の記録というだけでなく、当時の一般の人びとや作家がどんな被害に遭い、どう困ったのか分かりやすくまとめられていて、いい展示でした。
最近は美術館や博物館でお金のかかっていない地味な展示が多いですが、本当によく工夫されていると思います。

池袋に戻るついでに、この後、田端文士村記念文学館に寄ってきました。
「画家小杉放庵と田端の輩たち~雑誌『方寸』の仲間から芥川龍之介まで~」 という企画展が行われています。
http://www.sankei-map.com/2011/10/28/painter-kosugi-houan-and-the-fellows-of-tabata-leaving/

個人的に驚いたのは日光にいた小杉放庵のところに吉田博が遊びに行って、上京するよう勧めたという事実。
吉田家はお金持ちだから、悠々自適に作品を製作できたのに、よくそんなことを言ったなあ、と驚きました。
その度、小杉放庵はお金に苦労しているんですが、助けてあげたのかなあ、なんて気になります。
この時代、いろんなところに吉田博の名前がでてきます。(ひ)



近いけど遠かった~その13 石洞美術館

2011年11月18日 | ぐるっとパス
ヒンドゥー美術展
同時展示:16・17世紀ヨーロッパで製作の南アジア地図
9月3日(土)~12月18日(日)
石洞美術館
http://sekido-museum.jp/

石洞美術館にはじめて行ってきました。
山手線から京成線に乗り換えたりすると結構時間がかかるのかな、と思っていたんですが、行ってみると思いのほか近い。
王子の博物館と一緒に行くのにちょうどいいところでした。
千住大橋駅には初めておりたんですが、なんだかそごい状態ですねえ。
おそらく数年前までは古い町並みが残っていたんでしょうが、再開発の途中(もしくは再開発が途中でとまってしまった)という雰囲気で、町の中がスカスカ。
駅前がこんなスカスカな状態って不思議です。
食事するところも駅の付近に数件見あたるくらい。
その中の一件でめちゃくちゃ安いカレーを食べたんですが(量が結構多くて、お新香もついてたしか350円くらい)なんと店の中では携帯が圏外。
さすが、圏外チャンピオン・ソフトバンクの面目躍如ですが、駅前の平屋の店で電波が来ないとは。
駅から美術館まですぐ近くですが、家があまりないからすぐに建物が見えました。
日曜の昼間なのに、町には人気が全然無い。
果たしてスカイツリーの恩恵がここまでくる日があるのかどうか。

展示ですが、インドのヒンドゥー美術の特集です。
国立博物館や松岡美術館でも見ていますが、こちらはずっとディープなものが集まっています。
性に開放的なインドならではの仏教美術。
男女の交わりが描かれているものを子供が見たりするものなのかなあ、インドだと。
そんな場面を描いていなくても、人の造形がずいぶんとなまめかしい。

「16・17世紀ヨーロッパで製作の南アジア地図」という展示もユニークなものでした。
地図には様々な描き方があるものですが、展示されているものはひとつひとつがまったく違っている。
どういう図法かという違いもあるんですが、一枚一枚インドの形や川や海の場所や形も違うし、当然のこと、その他の国の形も違っている。
ここが日本だな、と分かる地図もあるんですが、こんなに大きい国だったっけ?とか、四国がずいぶん大きいなあ、と感じるものがあって、楽しい。
世界は広いですね、いろんな意味で。(ひ)