つれつれたれたれ

日常のことなどのんびり書いていきます。

絵画の冒険者 暁斎 Kyosai -近代へ架ける橋ー

2008-05-10 | 散歩

  

行ってきました、京都国立博物館。
絵画の冒険者 暁斎 Kyosai -近代へ架ける橋ー》展です。

河鍋暁斎を包括的に捉えた展覧会。
圧巻なのは展示品がほぼ肉筆画ということです。

1. 「狂斎」の時代
2. 冥界・異界、鬼神・幽霊 
 特集「本画と下絵」 
3. 少女たつへの鎮魂歌(レクイエム)
4. 巨大画面への挑戦
5. 森羅万象 
 特集「写生と粉本」 
6. 笑いの絵画
7. 物語、年中行事
8. 暁斎の真骨頂 

と分けられた展示は何処も人でいっぱい。
入場制限もかけられていました。
展示品は超細密画から巨大画まで。
最初から最後まで濃い展示で、途中で幾度か休憩しながらでないと疲れてしまいます。

 「狂斎」の時代。
入場早々毘沙門天がお出迎えです。
鍾馗様の幟や五月の幟。
笑いを誘う布袋様(蝉を取っているのですが虫取り網の長さが微妙)。
人が群がっていたのが九相図でした。
九相図と九相図下絵が並べておいてあるので、行きつ戻りつ。
野ざらしの人が骨になるまでが描かれていきますが、微に入り細をうがった骸骨の足を旨そうに犬がむしゃぶりついていたり。
放屁合戦は全編映像で紹介されていました。
貴人が催した放屁合戦の様子が、ユーモラスに。
男色が認められていた時代。男色画の一部として描かれたそうです。
当時の人は大笑いして見たのでしょう。今見ても、漫画的で面白い!

 冥界・異界、鬼神・幽霊。
閻魔や脱衣婆、風神雷神など、おなじみの神様が真面目に、ユーモアに描かれます。
異界の神々が面白く描かれるのとは対照的に、幽霊達は写実的でその分恐ろしい。
宴席で即興的に描かれた骸骨図が展示されていたのも興味深かったです。
描いていくうちに酒が廻ったらしく、途中から線が怪しく。笑。
飴天狗図 では、竹皮の飴に吸い寄せられる小さい天狗達が笑いを誘います。

 特集「本画と下絵」 

幽霊図、山姥(金太郎と母親)、文読む美人など。
下絵と本画を見比べることができるので、とっても得した気分に。
下絵は和紙を貼って書き直したり、胡粉を塗ったり、幾重にも線を書いたり。
本画では消されたものが描かれていたり。
作者が推敲した跡がよく判りました。
ここだけでも一見の価値があります。

 少女たつへの鎮魂歌(レクイエム) 。
パトロンの令嬢勝田たつの追善の為に依頼された地獄めぐりです。
まずはお嬢様のお召しかえから。観音様風の衣装に変えるところが見ていて優しい気持ちにさせてられます。
菩薩に付き添われて地獄に着いたら、閻魔様が頭を下げてお出迎え。
地獄の様子を色々案内してくれます。
といいつつも、見世物小屋が並んでいたり、芝居見物をしたりと、地獄はあまり恐ろしくは描かれません。
閻魔様の裁判や刑罰は遠くから覗く位でお見送りされ極楽へ。
 
何故か汽車で向かいます。
極彩色の画面に眼が釘付けに。
遺族の方も、これを見てなぐさめられたのでしょう。
見て涙を誘ったのがひな祭り図。
14歳でなくなったたつの辞世の句が
「遊べるも これが最後か ひなまつり」
だったそうで、そのたつが雛人形を飾る姿が。
天人は甘酒を持って下り、仏がたつを手伝う。閻魔と脱衣婆が菩薩に内裏雛を贈る。
とても優しい視線が感じられる絵でした。

 巨大画面への挑戦 

新富座妖怪引幕が圧巻です。
4時間で描いたというのが信じられない巨大な幕が、
どん!!と展示されています。
龍頭観音像と地獄極楽図も大きいすが、妖怪には負けます。

 5. 森羅万象 
正統派の日本画が多く展示。題材も日本画で多く描かれたものです。
ここに美人観蛙戯図が展示されているのですが、今回の展示の紹介表はこのカエルさん達が出張っています。
可愛い。


 特集「写生と粉本」
お弟子の為に描いた手本帳。といいつつも、
日光地取絵巻には、英国人の弟子と自分の姿もさりげなく書いてしまう。
お茶目です。
自身の勉強の為にした模写もここで展示されていました。
春画の模写に、人だかりが。笑。

 6. 笑いの絵画 
大津絵を屏風に描いたものがおかしい。
他にも蛙の学校や、蟹の綱渡りなど。
鳥獣戯画が笑いを誘います。
風俗だけでなく、風刺画も笑えます。
書画会図は実際に参加していた書家・画家が絵中の書に書き込んだそうで、
知識があればもっと楽しめたのでしょう。


 7. 物語、年中行事 
旧幕時代の人は今より年中行事を大切にしたそうです。
岡本綺堂の半七捕物帳でも、明治になって風俗が廃れてきたと書かれています。
牛若丸図や桃太郎絵巻。日本神話に題材を取ったもの、年中行事を連作にしたもの。
なじみの薄い風俗が描かれたもの。
ここも詳しい方に解説をしていただきたい。

 8. 暁斎の真骨頂 
地獄太夫と一休が展示されているのが、このスペース。
ポスターにも採用されていますが、骸骨が空三味線を爪弾き、一休がその上で骨だけの扇を振り踊る。地獄太夫の足元には、小さい骸骨どもが踊っています。
大和美人図屏風もここに。

これは《美の巨人たち》で紹介されていました。
これを見ているとき、学芸員の方が外国の方を案内している所にばったり。
学芸員の方の案内を、ふむふむと聞かせていただきました。
左は夜、右は昼の図だそうです。服装も姿も対照を効かせてあるのが、案内を聞いてよくわかりました。
専門の方の解説を聞けて贅沢でしたよ。
最後は成田山霊光館にある大絵馬、大森彦七鬼女と争う図
仰ぎ見られることを前提に描かれた絵馬は圧巻です。
最後の最後まで楽しい、中身の濃い展覧会でした。