岩切天平の甍

親愛なる友へ

O do Borogodo

2008年07月26日 | Weblog

サンパウロにてブラジル撮影終了。仕事は終わって、さて、最後の夜だ。
ホテルの部屋でグーグル・サーチ。サンパウロ、音楽、クラブ。
“サンパウロレコード”と言うブログにたどり着く。
『サンパウロでは毎晩どこかで生演奏で飲めるお店が開いておりますが、ここオードボロゴドは良質なサンバ、ショーロが聴けるお店で有名でございます。「オードボロゴド!」は古いスラングで「最高!」って意味らしいです・・・。』
こ、これだぁ! 地図まで載ってる。

荷物を整理して、収録テープを整理して、えーっと、盗まれたくない物は残してと。さぁ、もう死んでもいいぞー!

フロントのお姉さんに地図を見せて、ココに行きたいんだけど、地下鉄で何分くらいかなと訊くと、泣きそうな顔で悪い事は言わないからタクシーにしなさいと言う。「ここの太い通りはいいけどこっちの路地は入っちゃダメよ・・・。」

タクシーの運ちゃんも親切で、店がちゃんと確認できるまで、僕を降ろそうとしなかった。古いレンガむき出しの壁に殺風景なテーブルと椅子が転がって、奥に5人も並べない小さなバーカウンターがぼんやり浮かんでいる。客は一人もいない。入り口のお兄さんに今日は音楽やるの?と訊くと十時からだと言う。時計を見るとまだ八時過ぎ、街をぶらつくことにする。

バス通りに沿ってぶらぶら歩く、ホテルのお姉さんに言われた路地は、薄暗くて成る程入って行く気にもなれない。

角ごとに通りに大きく間口を開いた定食屋があって、カウンターで男達がビールを飲んでいる。腹が減ったので、入ってみたけど、ガラスケースの中のお惣菜はどれも肉料理ばかり。歩き続けていると、広いバス・ターミナルに出て、その先は少々アブなそうな繁華街、赤羽駅裏。
スーパーマーケットに入ってみる。マルちゃんラーメンがある。そうめんもキッコーマンもある。パパイヤが二個一ドルくらい、安いね。
「アサヒ」と言う名の日本食堂がある。店構えからして本物らしいが、さすがにここまで来て日本食ってのも、入るのはよす。東京に住むアサヒちゃんを思い出した。元気かな。

居酒屋で食事して十時に戻ると店はすでに人で一杯で、大きなテーブルを囲むようにバンドが座っていた。カウンターでビールを買って、バンドの横に転がっていた椅子に落ち着いて、録音機を取り出す。

ギター、バンドリン、カヴァキーニョ、パンデイロにサックス。
ショーロ・バンドだな。と思ったとたんに強烈なスウィングが堰を切る。
せつなくて、情熱的なスウィング。
途端に気持ちがぶるっと震えると、黒人、白人、アジア人、そこいらで喋っていた男女が弾けたように手を廻して折れんばかりに腰を振り始める。
僕の首も百八十度回転運動が止まらない。
メンバーはテーブルに食事やビールを置いて、誰かのソロの合間に食べたり飲んだりしながら、スウィングは三時間続いた。
街角の何も無い古い店に、音楽とダンスと仲間の笑顔。
こりゃあまったく“最高!”だ

あっと言う間に閉店時間、テーブルに並べたCDを買って帰る。
バンド名は“Grupo Cochichando”
素敵な夜だった。
ホテルに帰って“サンパウロレコード”氏にお礼のメールを打つ。