アパッチ蹴球団-高校サッカー篇:project“N”- 

しばらく自分のサッカー観や指導を見つめなおしていきたいと思っています。

修徳高校との試合で、太宰治を思い出す

2007年12月03日 01時35分27秒 | 戦術の謎
先日、修徳高校とのリーグ戦の後、
修徳高校の先生方の御理解と御協力の下、
2試合の練習試合を組んでいただくことができた。



東京を代表するようなチーム試合ができるのは
そうないことなので、
有難く胸をお貸りして、
選手ともども勉強させていただいた。



修徳高校のサッカーには
試合に勝つ為のリアリティーがあった。
技術はもちろん、判断の速さをベースに
動き出す速さ、ボールを動かす速さ、
ボールのないところでのランニング、
フィジカルコンタクトの強さ等・・・。



うちのチームとの一番の違いは
やはり[ボールを動かすスピード]にあったと思う。
典型的だったのは
自陣内でサイドを2回変えられたシーン。
相手の展開の速さについていけず、
結果的に球際に正しくアプローチできず、
カバーリングをはじめ、
守備において数的優位を適切なタイミングで作ることが
なかなかできなかった。



相手のミスからボールを奪い、
攻撃につなげることはできたが、
局面において数的優位を作り、
相手からいいボールの奪い方をすることができなかった。



ボールを早く動かすということは
ロングボール一辺倒でない限りは
必然的に人も動かざるを得ないが
修徳高はオフ・ザ・ボールのランニングも
うちの選手の運動量を圧倒していた。



ボールを奪ってから、
いわゆるアタッキングサードに入るスピードも
明らかに修徳高の方が優っていた。



リーグ戦の試合では
うちの選手達も負けてはいなかったが
リーグ戦以降の練習試合では
圧倒されていた。
修徳高のチームとしての選手層の厚さ、レベルの高さを感じた。



わかっていても止められないやられてしまう、
という修徳高の展開の速さは
見習うべきだし、吸収すべき。
対戦相手のいい部分は
正直、真似してもいいと思う。



技術的な底上げも継続して練習しつつ、
修徳高のボールを奪ってからのスピードの上げ方は
今後の練習内容の参考にさせていただきたいと考えている。



全国レベルの強豪チームとゲームする際に
ゲームを壊さずに、しっかりとゲームをするには
守備が極めて重要になる。



「自分達のサッカーができない時には、
 相手にもサッカーをさせない」
というのが自分の考え方。



守備で相手のサッカーを形にさせないことが
少しずつでもできてくれば、
流れは少しずつ変わってくる。



相手の攻撃の特徴が
スピードにあるならば、
スピードアップさせない。

上手さにあるなら、
球際の強さとアプローチのスピードで勝負する。

個人の強さにあるなら、
集団で勝負する。



いずれにせよ、
自分達よりレベルの高いチームと対戦する場合は
ボールのある局面でいかに数的優位を作れるかが、
需要なポイントになる。



数的優位を作るためには
相手のスピードを止めなければならないし、
カウンターを受けそうな状況では
相手のボールホルダーに正しくアプローチして
相手の展開を遅らせる必要がある。



中盤で数的優位を作るのか、
ゴール前で数的優位を作るのか、
相手に奪われた瞬間に数的優位を作るのか、
リトリートするのか、
数的優位の形成は中央かサイドか、
それはチーム戦術や状況によって異なってくる。



いずれにせよ、
攻撃から守備への切り替えの速さが極めて重要になる。
正直、この点でうちの選手達は修徳高の選手と差があった。



まず、攻撃から守備への切り替えが遅かったことは
一番の改善点ではあるが、
攻守の切り替えの意識自体は悪くない選手は居たにしても
何をすべきか、ということが整理されていない感じだった。



少なくとも、ボールのある局面で
数的優位を作って、相手を囲んでいくために何をすべきか、
ということが
プレーを見る限りは
整理されていなかった。



もしかしたら、
チームプレーの意識の欠如や人任せな受身の意識も
あったのかもしれない。

また、修徳高という全国大会に何度も出ているチームと対戦することで
平常心を失ってしまったのか。

修徳高の強さを目の当たりにして、
現実逃避してしまい、
どうすればいいのかすら整理できないような
パニック状態だったのだろうか。



一番気になったのは
[相手に抜かれても、追わないプレー]や、
シュートを打った訳でもないのに、
自分が〝ボールよりも高い位置にいる〟にもかかわらず、
 (※〝高い位置〟とは
  自分が相手ボールホルダーよりも
  守るべきゴールから遠い位置にいる状態を指す)
[ボールの高さまで戻ってこない]こと。



相手チームがボールを保持している状況において、
守備ですべきことは
【ボール】にいくか?
【人】をマークするか?
【スペース】を消すか?
この3つしかない。



[抜かれた後に追いかけない]、
[ボールの高さまで戻ってこない]のは
【ボール】にも【人】にもついていっていない、ということ。
もちろん、【スペース】も消していない。
味方のDFやGKがなんとかしてくれる、
という人任せで受身なプレーと言わざるを得ない。
怪我や足をつっていたりしていない限りは
「傍観」「サボリ」と
言われても仕方ないと思う。



極めて例外的ではあるが、
一人で点が取れるFWであれば
守備をしないという判断はありえるのかもしれない。



ただ、やはり、強いチームとやる場合には
守備の意識は絶対に必要。



相手が前から来る場合に
ボールに対して当たりに行くのは
誰でも、またどんなチームでもできる。



大切なのは
[抜かれた後]や[ボールより高い位置にいる場合]の対応。



場合によっては
味方と2人で相手ボールホルダーを囲んでもいいし、
ボールを追い越してきた相手選手や
オーバーラップしてきた相手選手をマークしてもいい。



[抜かれて]も[ボールより高い位置に入ってしまって]も、
その後の守備への切り替えを早くすれば、
すべきことやできることは少なくない。



むしろ、[抜かれた時]や[ボールより高い位置にいる時]こそ、
自分のできることやすべきことを探しながら、
足を止めずに、動き続ける、走り続けることを
習慣にしていくべきだと思う。



攻撃時に、わざと止まることも
駆け引きや判断の1つとして十分ありえるが、
守備においてはボールのない時こそ、
走るべき。



[抜かれた時][ボールより高い位置にいる時]こそ、
走るべき。



走るべき状況で足が止まってしまうのは
チームプレーとは言わない。



負けている試合で
走るべき時に走らないのは
勝つチャンスを自ら放棄しているのと同じ。


全国レベルのチームとの対戦において、
個人では勝てなくても、
コンビで、グループで、チームで戦い、
相手に相手のサッカーをさせないことには
トライすべき。



強いチームに勝つには
できることを最大限にやることが必要。



声を出すこと、走ること。



チームで戦う意識と
守備でやるべきことを当たり前のようにやる意識こそが
強いチームとしぶとく戦うことにつながってくる。



特に、[抜かれた後][ボールより高い位置にいる時]こそ、
幼い頃に読んだ太宰治の『走れメロス』の如く、
味方のために走ることを
忘れるべきでない。



走ることは、
例えどんなに遅くても
誰にでもできる。



味方のために、
チームのために、
試合に勝つ為に、
自分が納得するために、
走ること・声を出すこと、といった
自分のできることを最後までやりきる強い気持ちこそが
強いチームに勝つためには必要だということを
修徳高の先生や選手達から学ばせてもらった。



今後の指導でも忘れないようにしたい。