翡翠 (かわせみ)

青い空は青いままで緑の森は緑のままで

糸綴じ本の修理・改訂版(2)

2021-01-01 22:38:15 | 本の修理

糸綴じ本の修理・改訂版(1)で

10の折丁ができて

始めの折丁を中綴じしました。

折丁を左から折丁1,2,3、・・・とします。

白い台紙の上に

始めの折丁1、折丁2の順に重ねます。

表紙の側が下です。

これから綴じる糸の端を

折丁1の背側に出て居る糸の右端に結び付けます。

折丁1,2を押さえているクリップは

折丁2を開いたところを押さえます。

折丁2を閉じるとこんな具合

折丁2の右端の針穴から針を刺していきます。

すぐ左側の針穴から針が出ます。

折丁の中を通っている糸を

ゆるみがないようにしっかり引いたら

折丁の背に出ている糸を針ですくい取って糸を引き、しっかり絡めます。

ここが折丁1,2を綴じ合わせる大切なポイントです。

同様にして左方向に綴じ合わせていきます。

折丁2の左端まで綴じたら折丁3を上に重ね

折丁3の左端から右方向に綴じ始めます。

ここからは折丁2と綴じ合わせ方が少し違うので要注意

折丁3の左端の針穴から入って右隣の針穴から針が出ます。

糸が出てきたらしっかり引き締めます。

出てきた糸を絡めるのは

折丁1と2を綴じ合わせて縦につながっている糸で

この糸をを針ですくって絡めます。

(この時に役立つのが先を曲げた針です。)

縦糸をすくってひきしめたら針が出てきた針穴に戻り右方向に進みます。

この後は同様にして折丁6まで進んでいます。。

縦糸に糸が絡んで綴じ合わせている様子がよく分かりますね。

最後の折丁です。

これで最後なのでこのような形で糸を結んでしまいます。

終了。

10の折丁がすべて綴じ合わせられました。

下の図☟を参考にしてください

 

次は中身と表紙をつなげる作業です。

中身の背に木工ボンドを塗り寒冷紗を貼り付けます。

背の幅+両側2.5cm~3㎝ほど。

さらにちけん紙(背の幅)をはりつけます。

この本では中身と背表紙は糊付けされない造りで、

本を開いたときに背の部分が変形するので

それを補強するのがちけん紙です。

中身を取り外した後の表紙です。

真ん中が背表紙、その横が本の溝になるところ、

その両側が表紙と裏表紙、さらにその外側が見返しです。

真ん中の背表紙の部分を避けて糊(木工用ボンド)を塗り

中身の背を背表紙にのせます。

寒冷紗を表紙に貼りつけてさらに上から糊をつけます。

見返しをかぶせ、手で糊がよくつくように押さえます。

(この写真では反対側から撮影したので

上の写真と左右が逆になっています。

写っていr手の左側が表紙で右側がかぶせた見返しとなかみ。

これは正常な位置

表紙を閉じて下敷きなどで見返しが折れてのどになっているところを押さえます。

(まだ糊で柔らかくなっているので破らないように注意して)

溝に太めの竹ひごを当て目玉クリップなどで押さえて乾燥させます。

完成です。

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糸綴じ本の修理・改訂版(1)

2020-11-12 22:07:29 | 本の修理

いちばんノーマルな糸綴じ本の修理です。

 

全部で96ページの本です。

見たところあまり傷んでいないように見えますが

 

綴じがぐずぐずになっていますね。

 

茶色の紙が見返しで、左右で1枚の紙です。

左側は表紙に張り付いています(効き紙)。

 

上の写真で右側(見返し)を開けたところ。

本体(中身)に接続して中身を支えています。

 

後ろ側の見返しです。

紙の右側が効き紙で裏表紙に貼りついています。

 

これも本体に接続していて本体を支えます。

 

本を解体していくと本のつくりが分かります。

接続しているところは5mmぐらいの幅なので

注意して力を入れて横に引っ張ると剥がれます。

 

全部剥がれました。

 

網状の布が現れました

見返しの働きを補強する寒冷紗(かんれいしゃ)です。

 

表紙側の見返しも剥がしました。

 

寒冷紗を切断します。

カッターナイフなどで下側の紙を傷つけないように

本体を切り離します。

 

本体が切り離されました。

 

本体の背に厚紙と寒冷紗が付いています。

 

寒冷紗とちけん紙です。

ちけん紙は本を見開いたとき背が湾曲するのを補強します。

ノリで貼り付いているものですが長い間に剥がれやすくなっています。

 

本体が独立しました。

 

本体を綴じ合わせている糸や糸の跡が分かりますね。

 

綴じ糸を取り除くと10の束になりました。

この束を折丁といいます。

 

一つの折丁は、2つ折りの紙2枚一組で8ページの束になっています。

 

この本では最後の2つの折丁がそれぞれ4枚32ページで

全体で96ページになっています。

折丁それぞれ同じ位置に針穴があけられるように印をつけます。

(前から使っていた針穴は傷んでいるので使わないことが多いようです。)

 

目抜きなどで穴をあけます。

大きくなり過ぎず、

折丁の2つ折りの線から外れないように気を付けます。

 

これから糸で綴じていきます。始めの折丁は中綴じをします。

(前回の本の修理のブログも参考にしてください。)

 

 

 

中ほどの針穴から針を進めます。

糸を送って5cmほどを残しメンディングテープなどで糸を押さえます。

 

 

左方向へ針を進めて折り返して来たら

最初の針穴の1つ前の穴に出ます。最初の穴を跳びこして一つ先の穴へ行きます。

 

右端に行って折り返します。

 

今度は最初の穴に戻って針が出てきます。(必ずそうなります。)

 

 

 

先ほど跳びこしたときの糸がそこにあるので、

 

その糸を挟んで始めの糸と終わりの糸を結び合わせます。

この折丁はこれでおしまい。(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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中綴じ絵本の修理

2020-10-24 20:44:26 | 本の修理

「本の修理・絵本の修理」リニューアル版

スマホで見ると文が読みにくいことがわかって

内容も変えた方がいいところもあったりするので

リニューアル版を作ることにしました

前よりましになるかどうかわかりませんがご覧ください

 

この本は本文が24ページ

2つ折りで4ページになる紙を6枚と

見返しの紙を1枚足して7枚の紙をまとめて

真ん中で綴じて表紙にくっつけてあります

 

本の中身が表紙から外れています

 

こんな具合に中身は綴じられたまま

表紙から外れています

効き紙(中身を表紙に固定する)が破れました

 

かんたんな模型を作りました 

1表紙 2寒冷紗 3見返し(効き紙) 4見返し 5本体(中身)

こんなふうに重なっています

 

2を3に糊付けして2・3 4 5を糸で綴じます

(本一冊を真ん中一か所で綴じる:中綴じ)

 

2・3を表紙にべたっと貼り付けるとこうなります

模型の本完成

 

修理本に戻ります

効き紙(見返し)は表紙に張り付いているので

同じ大きさの新しい紙を用意します

(これを後で表紙に貼り付けます)

 

真ん中に幅3cmの寒冷紗を張り付けておきます

これは裏側になります

 

下側から 

表紙 寒冷紗・効き紙 見返し 本体

と揃えました

 

表紙以外を束ねて

この束を糸で綴じます

 

中綴じの糸の運び

aから入って綴じていき左端で折り返す

aが入った穴を跳びこして右端に行きおりかえす

順に行くとちゃんと最初のaの針穴から出るようになる→ c

はじめは真ん中でなくても必ずそのようになります

先ほど跳びこした時の糸bを挟んで

aとcを結び合わせる

 

aが入って1つとなりから出たところ

糸を最後の10㎝を残して引き 糸の端を止めておきます

 

左端で折り返し

aの一つ前に来ました

 

aの穴を跳びこして一つ先に

 

 

右端に到着

折り返し

 

aの2個前にきた

 

aが初めに入った穴から出て

aとcをbをはさんで結び合わせました

 

模型の2・3にあたる効きが紙を表紙に貼り付けます

 

完成

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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小わざときどき裏わざ(2) ~ 絵本の修理

2018-07-05 23:26:59 | 本の修理

 

 

       見返しのノドのゆるみの修理

 

       見た目はきれいな絵本です

 

   

 

 

         綴じ具合を見てもまあきれい

         傷んでいるところは見られません

 

  

 

 

     でも

     表紙をおさえて

     中身(本体)を手前に引いてみると

     ノドが浮いていることが分かります

     (見返しがV字になっている谷の所がノド)

 

  

 

 

      ノドが浮いて裏側がすきまになっていますが

      ここは本来はピタっと表紙側についている所なんです

 

  

 

      竹ひごに糊(木工用ボンド)をつけて

 

  

 

 

     のどが浮いた隙間に糊をくっつけます

 

  

 

 

         右側の隙間で竹ひごを奥まで差し込んで糊をつけたら

         左側も同じことをやり

         さらに下側からも同じ作業をやります

 

  

 

 

       糊を入れ終わったらはみ出た糊をふき取り

       のどにビニールコーティングされた紙をはさんで

 

  

 

 

      本を閉じます

 

  

 

 

       溝の所を太めの竹ひごなどでおさえ

       目玉クリップで固定して乾かします

 

  

 

 

         乾燥したら出来上がり

         見返しののどのゆるみは

         ほおっておくと本全体がぐずぐずになるので

         よく目を配って早めに糊入れをしましょう

 

  

 

   

 

 

 

  

  

  

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小わざときどき裏わざ(1) ~ 絵本修理

2018-06-30 22:47:43 | 本の修理

 

        背表紙の上部の壊れの修理

 

        絵本の背の上部がささくれています

        書架から本を抜き取る時に指をかけて引っ張るので

        子どもの本では特に多いですね

     

 

        こんな具合です

        これを外側から何か張り付けて修理するのはかなり難しいですね  

     

 

        中身(本体)はどこも損傷なくきれいなんです

     

 

       ことに背の部分が欠けてしまったりしている場合は

       思い切って手術をします

       表紙と本体をつないでいる見返しを本体から切り離します

       本体(左側)をおさえて見返し(右側)を引っ張って強制的に剥がしていきます

       (加減をしながらも けっこう力を入れてやりますー上端からやったり下端からやったり)

       見返しが離れた下から たいてい寒冷紗(網目状の布)がでてくるので

       カッターかハサミで左右に切り離します(寒冷紗の下の紙を傷つけないように)

 

     

 

       見返しと本体が分かれました

       裏表紙側の見返しも同じ作業をすると 表紙と本体が切り離されます

 

     

 

        背表紙の裏側が表れました

        だいぶ欠けているのでこの部分を継ぎ足す作業が必要です

 

     

 

       このようにささくれているだけなら

       この部分に糊を入れて固めれば済みますが

       今回は欠けているのでボール紙を継ぎ足します

 

     

 

 

        壊れた部分を切り取ってしまいました

        表側から見ると表紙に穴があいた状態になっています

 

        

 

         なので このように白い紙を表側から貼ってやります

      

 

         白い紙を表側から貼りました

      

 

 

          ボール紙で背表紙の台になる部分を継ぎ足します

  

      

 

 

          左右(実際には上下)にはみ出ている白い紙に糊(少しだけ薄くした木工用ボンド)をつけて

          表紙を包むように貼ります

      

 

 

         こんな具合になります

      

 

 

         この間に

         本体の背の部分に寒冷紗を接着しておきます(背から2.5cmほどはみでるように)

         作業の進行がスムーズにいくように 

         本体が表紙から切り離されたときにやっておくといいですね

 

      

 

 

           表紙の台(ボール紙のところ)と見返しの裏側に糊を塗って本体と表紙を合体させます

          下の図のように組み立てます

      

 

          

 

         本体を表紙でくるんだら固定して一晩おきます

      

 

 

         背が白い本ができました

      

 

      

 

          ワードで地と文字を入れ背表紙を印刷しました

      

 

         完成です

      

 

  

 

  

 

  

 

  

 

  

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