通勤する人にとって8分の時間短縮は、貴重な時間。乗り換えがある場合は、
ホーム、改札口などから、乗る電車の車両を決めている。
通勤時間を短くするためのノウハウを習得すると、無意識の内に自宅から出先
までの最短コースを選択し、それを利用する習慣になってしまう。
107名の死者、負傷者460名を出した、JR西日本福知山線脱線事故。
航空・鉄道事故調査委員会で、転覆脱線事故の原因調査が進められている。
マスメディアの報道も、事故発生当初に比べると冷静さを取り戻してきた。
常磐線三河島駅で列車の二重衝突があり、160名の死者、重軽症者325名
を出す列車事故が起こった。昭和37(1962)年5月3日のこと。
1三河島事故を契機に旧国鉄は、運転手が赤信号を見落とした場合そのことを
警告する安全対策の導入を始め改良を行ってきた。現在のATS-P型になっ
て事故防止対策は万全となった。
2列車を自動停止させるのがATS(オート・トレイン・ストップ)。
型番が古い順に①ATS-S②ATS-SW③ATS-Pになる。
JR東日本は③をほぼ全線に設置し、JR西日本は全路線の8%に設置され
ている。
新幹線などに採用されている、最新型のATC(オート・トレイン・コントロール)がある。
尼崎駅は超過密ダイヤ編成がされているので事故原因のひとつになった、と
ある番組で指摘されたので、新宿駅と尼崎駅の8時台の列車運行数を時刻表
で比較してみた。
前者は東京駅行 後者は大阪行とする。
新宿駅 尼崎駅
中央線快速 28本 東海道線快速 15本
各駅 22本 各駅 17本
山の手線(内廻り)24本 福知山線快速 7本
各駅 1本
超過密ダイヤで運行しているのは新宿駅の方で、尼崎駅の比ではない。
それでも、中央線快速は2分前後の余裕をみて運行しているし、ATS-P型を
設置し安全運行を確保して、2分間隔の運行サービスを乗客に提供している。
三河島駅での二重衝突事故の経験が、ここに生かされていると思う。
福知山線の安全対策は、どうなんだろうか。
今回の転覆脱線事故で、JR西日本の機械的な安全対策の実態が逐次報道された。
NHKスペシャル「脱線は何故起こったか」では、脱線した車両の運転席の上部
にある名板「ATS-S」を放映していた。これは、一番古い型番の列車停止装
置のはず。
ATS-S型を改良したのがATS-SW型だし、福知山路線上に設置した型番
との整合性など、素人判断は出来ないが、気になる映像だった。
番組では、S型とSW型の違いは触れずじまいで、ATS-P型の導入が予定さ
れていることに触れて、番組は進められた。内容から、SW型を想定していると
判断している。
運転手が赤信号を見落とした場合、信号のところで列車を急停止するのが
ATSで、青信号の場合は何の作動もしない。スピードオーバーでも、列車は信
号を通過してしまう。
「S型とSW型は、どう違うんですか?」
観音さまは、突っ込みをいれてくる。
「現時点では、不明なんです。ごめんなさい」
SW型2個を組にして使用すると速度制限機能を持ちコストメリットが得られる
ので、私鉄では多用している。
福知山線はSW型を設置しているが、今度事故が起きた区間には設置してい
ないため6月末までにATS-P型を設置する予定であった。
つまり、電車が制限速度を超えて走行しても、運転手が速度計を見て制限速度
に減速しなければならない区間があった。
制限時速70Kmに減速する操作を、運転手に任せていた区間で脱線事故が
起こっている。
事故現場の前約3kmは直線で、制限時速120km区間になっている。遅れが
出た場合それを取り戻す最後の調整区間でもあった。
(JR西日本関係者のインタビュー談話)
ここで見落としてはならないのが、運転手に不測の事態が起きた場合、一時的
な意識不明に襲われたような場合、列車を停止させるバックアップが施されて
いないこと。
後部車両に乗っている車掌が、急ブレーキをかけて急停車させる方法しかない。
SW型2個を組にして2組設定すれば、事故は防止できた。
時速110Km、85Kmに速度設定したSW型速度制限装置を各1組線路内に
設置して置けば、制限時速70Kmに減速して走行できたので、事故は防止
できた。このことは、JR西日本の関係者は承知していた。
(サンデープロジエクト:ジャーナリスト内田誠 工学院大学教授 曽根悟)
列車の運転手は、事故を起こした当事者責任から免れることは出来ないが、
それ以上に安全対策を講じないまま列車運行を黙認していた事業者の責任
の方が計り知れなく大きい。
収益第一で事業展開した結果が、死者107名、負傷者460名の負傷者を出
す転覆脱線事故を誘引したともいえる。
安全運行サービスを顧客(利用者)に提供して事業の継続と発展を図る企業
が、収益拡大方針を最優先にした経営をしている。
こんな事が許される事業と考えて経営しているとすれば、経営陣は即刻退陣し
てもらわなければならないだろう。
今回の事故責任云々以前の問題で、通勤や用事で毎日電車を利用する顧客
にとって、迷惑千番な話だし、事故の犠牲者に詫びを入れて許される性質の
問題ではない。
宝塚駅から大阪駅までの運賃は、阪急電鉄より50円も高い。年間24,000円
違う。(50円×利用回数:通勤の場合20日/月×12ヶ月×2)
でも、大阪駅到着時間が、阪急電鉄より8分早いのは、魅力だ。
JR西日本は、ここにビジネスチャンスありとして、事業展開に成功した。
列車運行の安全保障を運転手に任せっぱなしにしないで、乗客の安全確保を
最優先する設備投資を惜しんだばっかりに、取り返しの出来ないしっぺ返し
を食ってしまった。
安全作りの基本は①機械的なバックアップ(ハード)②運転技量(ソフト)である
と鉄道車両メーカー勤務経験のある機械部門技術士は、提言していた。
ハードとソフトが車輪の両輪のようにバランスが取れていると、列車運行の安全
は担保されるのに、JR西日本の安全運行管理思想には前者を欠き、片輪走行
を強行していたが、バランスが保たれなくなり脱線転覆してしまった。
アンバランスな経営実態を、事故は象徴しているようだ。
旧国鉄時代の事故経験則が、安全管理思想に反映されていれば、顧客から得
ている信頼と優良企業評価を、裏切ることはなかった。
1両目は終点の同志社前駅で改札が近い、2両目は尼崎駅6番ホームから向
かいの東海道線大阪行き5番ホーム列車への乗り継ぎに便利なので、乗客が
多い。
後者は乗り継ぎに2分しかないので90秒の遅れが厳しく、運転手に”遅れを取
り戻さなければならない”という心理的なプレッシャーとして重くのしかかって
いた。殆どのTVキャスターは、このように解説している。
そうかも知れないが、機械的なバックアップがあることを前提にしての話だと思う。
利用者にとっても、乗り継ぎ時間を考えると90秒の遅れでも、気が焦る。
最短時間になるように通勤電車を選択していた現役時代を思い浮かべると、
よ~く解る。
だから、時間通りに運行しなければならない、とする運転手に90秒の遅れは精
神的な重圧を与え、それを解消するバックアップ体制があれば、正常な列車運
行に戻り犠牲者もでなかった。
「狭い日本、そんなに急いで、どこへ行くの?」
ボケ封じ観音さまは、ヒナゲシ(写真)を指差して、元気印を慰めてくれた。
ホーム、改札口などから、乗る電車の車両を決めている。
通勤時間を短くするためのノウハウを習得すると、無意識の内に自宅から出先
までの最短コースを選択し、それを利用する習慣になってしまう。
107名の死者、負傷者460名を出した、JR西日本福知山線脱線事故。
航空・鉄道事故調査委員会で、転覆脱線事故の原因調査が進められている。
マスメディアの報道も、事故発生当初に比べると冷静さを取り戻してきた。
常磐線三河島駅で列車の二重衝突があり、160名の死者、重軽症者325名
を出す列車事故が起こった。昭和37(1962)年5月3日のこと。
1三河島事故を契機に旧国鉄は、運転手が赤信号を見落とした場合そのことを
警告する安全対策の導入を始め改良を行ってきた。現在のATS-P型になっ
て事故防止対策は万全となった。
2列車を自動停止させるのがATS(オート・トレイン・ストップ)。
型番が古い順に①ATS-S②ATS-SW③ATS-Pになる。
JR東日本は③をほぼ全線に設置し、JR西日本は全路線の8%に設置され
ている。
新幹線などに採用されている、最新型のATC(オート・トレイン・コントロール)がある。
尼崎駅は超過密ダイヤ編成がされているので事故原因のひとつになった、と
ある番組で指摘されたので、新宿駅と尼崎駅の8時台の列車運行数を時刻表
で比較してみた。
前者は東京駅行 後者は大阪行とする。
新宿駅 尼崎駅
中央線快速 28本 東海道線快速 15本
各駅 22本 各駅 17本
山の手線(内廻り)24本 福知山線快速 7本
各駅 1本
超過密ダイヤで運行しているのは新宿駅の方で、尼崎駅の比ではない。
それでも、中央線快速は2分前後の余裕をみて運行しているし、ATS-P型を
設置し安全運行を確保して、2分間隔の運行サービスを乗客に提供している。
三河島駅での二重衝突事故の経験が、ここに生かされていると思う。
福知山線の安全対策は、どうなんだろうか。
今回の転覆脱線事故で、JR西日本の機械的な安全対策の実態が逐次報道された。
NHKスペシャル「脱線は何故起こったか」では、脱線した車両の運転席の上部
にある名板「ATS-S」を放映していた。これは、一番古い型番の列車停止装
置のはず。
ATS-S型を改良したのがATS-SW型だし、福知山路線上に設置した型番
との整合性など、素人判断は出来ないが、気になる映像だった。
番組では、S型とSW型の違いは触れずじまいで、ATS-P型の導入が予定さ
れていることに触れて、番組は進められた。内容から、SW型を想定していると
判断している。
運転手が赤信号を見落とした場合、信号のところで列車を急停止するのが
ATSで、青信号の場合は何の作動もしない。スピードオーバーでも、列車は信
号を通過してしまう。
「S型とSW型は、どう違うんですか?」
観音さまは、突っ込みをいれてくる。
「現時点では、不明なんです。ごめんなさい」
SW型2個を組にして使用すると速度制限機能を持ちコストメリットが得られる
ので、私鉄では多用している。
福知山線はSW型を設置しているが、今度事故が起きた区間には設置してい
ないため6月末までにATS-P型を設置する予定であった。
つまり、電車が制限速度を超えて走行しても、運転手が速度計を見て制限速度
に減速しなければならない区間があった。
制限時速70Kmに減速する操作を、運転手に任せていた区間で脱線事故が
起こっている。
事故現場の前約3kmは直線で、制限時速120km区間になっている。遅れが
出た場合それを取り戻す最後の調整区間でもあった。
(JR西日本関係者のインタビュー談話)
ここで見落としてはならないのが、運転手に不測の事態が起きた場合、一時的
な意識不明に襲われたような場合、列車を停止させるバックアップが施されて
いないこと。
後部車両に乗っている車掌が、急ブレーキをかけて急停車させる方法しかない。
SW型2個を組にして2組設定すれば、事故は防止できた。
時速110Km、85Kmに速度設定したSW型速度制限装置を各1組線路内に
設置して置けば、制限時速70Kmに減速して走行できたので、事故は防止
できた。このことは、JR西日本の関係者は承知していた。
(サンデープロジエクト:ジャーナリスト内田誠 工学院大学教授 曽根悟)
列車の運転手は、事故を起こした当事者責任から免れることは出来ないが、
それ以上に安全対策を講じないまま列車運行を黙認していた事業者の責任
の方が計り知れなく大きい。
収益第一で事業展開した結果が、死者107名、負傷者460名の負傷者を出
す転覆脱線事故を誘引したともいえる。
安全運行サービスを顧客(利用者)に提供して事業の継続と発展を図る企業
が、収益拡大方針を最優先にした経営をしている。
こんな事が許される事業と考えて経営しているとすれば、経営陣は即刻退陣し
てもらわなければならないだろう。
今回の事故責任云々以前の問題で、通勤や用事で毎日電車を利用する顧客
にとって、迷惑千番な話だし、事故の犠牲者に詫びを入れて許される性質の
問題ではない。
宝塚駅から大阪駅までの運賃は、阪急電鉄より50円も高い。年間24,000円
違う。(50円×利用回数:通勤の場合20日/月×12ヶ月×2)
でも、大阪駅到着時間が、阪急電鉄より8分早いのは、魅力だ。
JR西日本は、ここにビジネスチャンスありとして、事業展開に成功した。
列車運行の安全保障を運転手に任せっぱなしにしないで、乗客の安全確保を
最優先する設備投資を惜しんだばっかりに、取り返しの出来ないしっぺ返し
を食ってしまった。
安全作りの基本は①機械的なバックアップ(ハード)②運転技量(ソフト)である
と鉄道車両メーカー勤務経験のある機械部門技術士は、提言していた。
ハードとソフトが車輪の両輪のようにバランスが取れていると、列車運行の安全
は担保されるのに、JR西日本の安全運行管理思想には前者を欠き、片輪走行
を強行していたが、バランスが保たれなくなり脱線転覆してしまった。
アンバランスな経営実態を、事故は象徴しているようだ。
旧国鉄時代の事故経験則が、安全管理思想に反映されていれば、顧客から得
ている信頼と優良企業評価を、裏切ることはなかった。
1両目は終点の同志社前駅で改札が近い、2両目は尼崎駅6番ホームから向
かいの東海道線大阪行き5番ホーム列車への乗り継ぎに便利なので、乗客が
多い。
後者は乗り継ぎに2分しかないので90秒の遅れが厳しく、運転手に”遅れを取
り戻さなければならない”という心理的なプレッシャーとして重くのしかかって
いた。殆どのTVキャスターは、このように解説している。
そうかも知れないが、機械的なバックアップがあることを前提にしての話だと思う。
利用者にとっても、乗り継ぎ時間を考えると90秒の遅れでも、気が焦る。
最短時間になるように通勤電車を選択していた現役時代を思い浮かべると、
よ~く解る。
だから、時間通りに運行しなければならない、とする運転手に90秒の遅れは精
神的な重圧を与え、それを解消するバックアップ体制があれば、正常な列車運
行に戻り犠牲者もでなかった。
「狭い日本、そんなに急いで、どこへ行くの?」
ボケ封じ観音さまは、ヒナゲシ(写真)を指差して、元気印を慰めてくれた。
『福知山線脱線事故』に関連した話題であり、
頷きながら読み進めていったのですが、やはり、「対処療法」に過ぎないなぁ、と感じてしまいます。
JR西日本の、経営の背景にある問題、それが重しになっているからこそ、「儲け優先」に陥っているもの、と思うからです。
JR西日本は、発足当初から経営状態が悪い、と言われています。
何故なら、関西圏や山陽新幹線で収入があっても額が小さい上、ローカル線を多く抱えているために、収益を食われる構造がある、と言われているのです。
特に、山陰や北陸のほとんどの路線は赤字路線、と言われています。
その上、自家用車が広く行き渡り、鉄道に乗らなくなる事で、少ない需要がさらに減る。東京・大阪などの大都市圏でも、同じ様な問題が発生している――と言う現実があります。
ところが、タチの悪いことに、鉄道も自家用車も、共に当たり前な存在。
そのため、先述したような「因果性」が、殆ど意識されない傾向にある、と思います。
これは、恐ろしい事です。
「意識されない」ために乗客が減り続け、鉄道路線の収益は、損得分岐点を割ってしまい、その為に赤字に陥る。
会社としては、当然放置は出来ず、穴埋めをしなければならない――それが、今回の儲け優先の真相、とも言えるのです。
JR西日本を擁護している、と言われる事は、覚悟しています。
糾弾を受けるのは当然、と思います。
でも、「鉄道の、利用需要の回復」も、同時に考えていかなければ、批判をしても意味が成さない、と思います。
そして、”カネ”の事で言うなら、もう一つ、問題があります。
固定資産税の問題です。
ATSには、線路に設置する「地上装置」と、車輌に搭載される「車上装置」があります。
これら、ATS一式を取り付けていく度に、固定資産税が科される事になるし、さらに、減価償却の問題も発生する。
「税金がかかる=贅沢品」
――と、言うセオリーがあり、その上で、「乗客が減り続ける」とあれば、「安全の投資」と言えど、”無駄金”に見えてしまうのではないか?
そんな、複雑な流れの中で、今回の問題が有るのではないか?――と思うのです。
責任の追及と同時に、「安全優先」が「報われる」システムを構築していく事こそ、重要になるのではないのか。
現状では、「必ずしも報われない」。
それこそ、「安全軽視」の本質では無いのでしょうか。
それを克服出来てこそ、「安全第一」になるのではないのでしょうか?
そして、私も含めた鉄道ファンの側にも原因がある、と感じているのです。
どうしても、鉄道車輌のデザインや性能など、見た目だけで上っ面の、華やかな部分だけを見ていて、影の部分――つまり、鉄道経営が抱える問題には、目を向けては居なかった。
もう少し、目を向けて行動に移れていれば、JRも含めた鉄道業界の経営状況が、良くなっていたかも知れない。
救われていた可能性も、有ったかも知れない。
そこを、反省しなければいけない、と思います。
最近、「鉄道ブーム」である、と聞きますが、実は、その切っ掛けが今回の大事故であり、それを意識して行動に移られている方が、沢山居られるのかも知れない――とも思っています。