いきけんこう!

生き健康、意気兼行、粋健康、意気軒昂
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元気印シニアとの対話。

千鳥足でつぶやく『映画ばなし』その10:婚活マニュアルを厳守して相手を探す香苗

2012-11-20 22:36:30 | Weblog
しなやかな発想をする内田 けんじ監督の映画「鍵泥棒のメソッド」を観ました。
毎回、プログラムを購入している元気印ですが、600円のプログラムにシナリオを掲載したそれは、稀です。年間数十本しか映画を観ないのですが、数十年に亘って購入した、部屋の片隅にうず高く積んであるプログラムで、シナリオを掲載したものは片手で数えられるから・・・。

映画製作、脚本のノウハウをサンフランシスコ州立大学で習得した、昭和47年生まれの内田監督は今年41歳を迎えるので、中堅監督になるでしょうが、この映画が3作目に当るという。



なにはともあれ、売れない役者で無職の桜井 武史(堺 雅人)は、銭湯で転倒した時、後頭部を強打して記憶喪失する伝説の殺し屋コンドウ(香川 照之)の手から外れたロッカーの鍵を拾い、コンドウに成りすます。先ず、内田監督の着想に口説き落とされます。

記憶喪失後の生活が、桜井の生活環境にはめ込まれてしまうコンドウ。
銭湯番台の老女は、桜井がすり替えたロッカーの鍵からコンドウは桜井である、と証言する。
過去の記憶をすべて喪失したコンドウが、桜井の生活環境の中で過ごさねばならなくなった経緯が語られるところ。

芝居が下手で売れない役者・桜井は、その世界では著名だが、顔の知られていない殺し屋コンドウに依頼された殺人を遂行する。その反面、桜井の生活環境を介して記憶を取り戻そうと必死にもがくコンドウ。

つまり、「鍵泥棒のメソッド」は、貧乏役者・桜井から伝説の殺し屋・コンドウへ変身する堺 雅人、その逆を演じる香川 照之が主役です。いってみれば、二役を演じ分ける堺と香川の芝居を堪能できる映画ですね。

特に、丸めた雑誌をナイフに見立て、意識を取り戻した殺し屋・コンドウに腹を刺された桜井が倒れる時、

「なんだそれ。いいか、突然腹を刺された場合は、そんなに早く身体は反応できない。まず衝撃。それから事態の把握。緊張。それから痛みだ。もう1回いくぞ」

ヤクザの親分・荒川 良々(工藤 純一)に見破られては、コンドウの計画は水の泡。
もう一度同じ動き(芝居)を繰り返す桜井。

「駄目だ。お前は演技の基本ができていない」

コンドウと桜井との掛け合いと、堺の芝居を魅せる内田監督の工夫があります。
この場面で俳優・堺は、芝居が下手くそで売れない、貧乏な役者・桜井を演じる彼の真偽が問われており、堺はそれを存分に楽しんで演じている。

さて、この二人に絡むのが、末広 涼子演じる水嶋 香苗。
雑誌編集者・香苗は、相手もいないのに結婚式の日取りまでのスケジュールをビジネス手帳に書き込み、「私、結婚することに決めました」と、職場で宣言する。

マニフェストで約束したことは、政権をとったら必ず実現できるとTVで公約していた政治家?に酷似する滑稽さ加減に吹き出してしまった。このシーンは映画の冒頭にあり、それ以降、彼女が遭遇する出来事の伏線になっている。

おそらく、元気印を含めた好事家さん達は、そのスケジュールに彼女の行動がどんなエピソードで絡んでくるのか? 
それを期待して話の進展を推し量り、何時それが現れるのかを想像しながら観ている。好奇心をくすぐる出だしですね。

 翔子「結婚相手見つかったの?」
 香苗「まだ。ただ・・・恋をしてもいいかっていう人はいる」
 翔子「ああ・・・。それは無理よ」
 香苗「なんで無理なの」
 翔子「・・・あんた、ちゃんと恋をしてから結婚する気?」
 香苗「当たり前でしょう。ちゃんとその期間は用意してます」
    あきれて笑う翔子。
 香苗「何?」
 翔子「若い頃、胸がキューンてしたでしょう?」
 香苗「何それ?」
 翔子「この辺に・・・キューンていう言葉でしか表現できないような痛みが走るのよ。好きな人のことを考えるだけでキューン、キューンって・・・」
   (シナリオから抜粋)

とにかく、翔子が呆れるほど恋には初な香苗。
胸キューンは、香苗の心境の変化を象徴するキーワードになっている。映画の最後を胸キューンで締める用意周到さもあるから、キューンの痛みを胸のあたりに走らせて映画館を後にするのでした。

また、内田監督の遊び心とサービス精神が、胸キューンを見事に勝ち取る二人の女性の対比描写に充満しているから、観なけりゃソン、ソン。

余談です。
邦画の世界でキャステイングは、余り重要視されていないように思います。
洋画では、監督、脚本と同じ扱いでクレジットされていますが、苦労して探さなくてはならないのが邦画ですよ。
ちなみに、「鍵泥棒のメソッド」のキャステイングは、杉野 剛。
かなりの映画本数をキャステイングしていますが、「ステキな金縛り」「トウキョウソナタ」「明日への遺言」そして、「博士の愛した数式」は観ています。元気印の勝手な思い込みですが、どの映画も印象に残るキャステイングでした。









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