オソマツ君が子供の頃家に80歳代の祖母がいて、この祖母が派手に呆けていた。
何時も着物を着ていてそば殻が入った枕を胸に抱いてどこかへでかけようとする。
お婆ちゃん「何処へ行くの?と聞くと「おっか様のところへ、これを届けに行く」と云う。
「お婆ちゃんのおっかさまは、もう亡くなったでしょう」と云うと「亡くなった?嘘こきゃあ!」と云って怒る。
「お婆ちゃんはいまいくつ?」と聞くと「80歳だと答える。そこで。お婆ちゃんはおっか様がいくつの時の子どもだね」と聞けば私はおっか様の最初の子どもだから、
おっかさまは23ぐらいだったと思う。と此処まではキチンと答えられる。
「とすればおっかさまは103歳だからもうあの世でしょう」と云うともうわからなくなって、
「わしは忙しいで邪魔しやあすな」といいでかけようとする。
こうなるともう子供の手におえないので急いで母親に知らせたものだ。
それから数年過ぎてオソマツ君がある高等学校に勤めていたころだった。祖母がパトカーに乗って家に送られてきた。僕が迎えに出ると送ってきた警察官がかかとをパッと踵つけて右手をパッと帽子につけて敬礼をした。警察官が「あつ、先生のうちのお婆さんでしたか」と云われて僕は顔から火が出るほど恥ずかしかった。
どうやら僕が勤め始めた高校の卒業生で愛知県警へ就職、僕の家の周辺を管轄する警察本部に配属になったようだ。「こういうおばあちゃんは着物の襟に住所と電話番号を書いた布を縫いつけておくと皆さんが連絡してくださるから・・・事故に遭われると一番悔いが残るからね」と諭してくださった。
今僕がお婆ちゃんの年齢になって、感無量だ。いまのところ、おばあちゃんの様な症状はないつもりだが、此処が分からないところがボケの難しいところだ。(T)
ピンクの梅