百醜千拙草

何とかやっています

意味のない意味のある偶然

2014-06-20 | Weblog
どうでもよい話ですが。

数日前、メルボルンの研究者の人が、旅の途中に講座に寄ってくれたので、話をする機会がありました。十数年前に一度、学会であって一度だけ一緒に晩飯を食べたことがあるというだけの関係です。そのころはまだ若くて美人の方だったと思いますが、今や、すっかりオバさん研究者としての貫禄がついています。
 たまたま、その日、今書いている小さな論文に関して、数年前にマウスを世話してくれた人(ニューヨークの人)に数年ぶりにメールを書いたら、そのマウスを作った当時のポスドクだった人は、いまはメルボルンに居て、しかも今日あったオバさん研究者の人と同じ施設にいることが分かりました(分野は違いますが)。メールするついでに、彼のウェッブサイトに行ってみると、なんと彼は私と同じ遺伝子を研究している(細胞が違いますが)ことが判明しましました。その遺伝子はそれほどメジャーな遺伝子ではありません。Pubmedの検索でも300余りのヒットです。(因みにもっとメジャーな遺伝子、例えばp53とかMycでは3万件弱ヒットします)その後のメールのやりとりで、彼の方もオバさん研究者をよく知っている由。世の中は狭いです。

彼と私が研究しているその遺伝子は、最近ヒトで機能喪失型と(恐らく)機能獲得型、両方の変異が見つかり、私の今回出そうとしているグラントはこれをネタにして書いています。重複変異は、これまで二家系で報告され、その内のアメリカの一例は報告者に連絡をとって共同研究することになりました。カナダの研究者が発表したもう一家系の方は、連絡をとってみたところ既に共同研究者がオーストラリアにいるという話だったので、しばらく前に、そのオーストラリアの共同研究者の人ととりあえず簡単に連絡をとるだけとったのですが、具体的な話は進展しないままになっていました。

それで、オバさん研究者の人と雑談していて、この別のオースオラリア人研究者のことをふと思い出したので、ひょっとして知っているかどうか聞いてみると、なんと別件で共同研究しているとの話。つまり、私が興味をもっているこの比較的マイナーな遺伝子を研究している人間が二人メルボルンに居て、一人は別の機関ながらオバさん研究者と共同研究をしており、もう一人はオバさん研究者と同じ施設であったということが、その日に判明したのでした。

どうもメルボルンの方では、この遺伝子に関しての研究は余り進んでいない様子で、その理由は資金的問題ではないかとのこと。オーストラリアでは政府のグラントの申請は年に一回に限られ、その成功率も15%ほどとのことですから、アメリカよりもひょっとしたら厳しいかも知れません。今はそのグラントの結果待ちなのだという話。6/6号のScienceのNewsのセクションでは、理研の例の論文の取り下げに著者が同意したというニュースの隣りに、オーストラリアのComonwealth Scientific and Industrial Research Organisation (CRISO)が、来年度の政府予算の発表に伴い、研究資金の不足により8つの研究施設を閉鎖することにしたというニュースが出ていました。オーストラリアの経済は結構、好調なのに、メディアは深刻な経済問題があるかのように報道し、結果、緊縮経済傾向ぎみにあるために研究資金も増えないということでした。メインストリーム メディアのオーナーは与党の保守政党を支持しており、保守政党が望むような世論をつくるために偏向報道しているのだ、というオバさん研究者の読み。どこの国でもある話ですな。

というわけで、縁薄いオーストラリアに関連した出来ごとが今週にたまたま重なりました。
意味的な繋がりのある事象が共時的に重なっておこるシンクロニシティという現象はよく知られておりますが、私はシンクロニシティそのものに意味があると感じたことがありません。大抵は、興味深い偶然がたまたま重なったというだけのことです。こういうことが起きたからと言って、共同研究が進むとか、オーストラリアに深い縁ができるとか、私の場合、そういうことは普通起こりません。退屈しのぎの話のネタ以外にシンクロニシティに何の意味があるのか、いまのところ私にはわかりません。
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