つぶつぶタンタン 臼村さおりの物語

身体の健康と無意識のパワーへ 癒しの旅~Have a Beautiful Day.~

読書日記:真保裕一著『連鎖』 社会問題と人間ドラマが絡み合う

2018-08-11 00:50:55 | 本の感想/読書日記

今日は新月です。旧暦で考えると下半期のスタートですね。いまこうやって下半期初、立秋後初の新月を待てることをしあわせにおもいます。どうもありがとうございます。

読書日記です。

真保裕一さんの小説『連鎖』(1991年)を読みました。

連鎖 (講談社文庫)
真保 裕一
講談社




先日、同じく真保裕一さんの小説『アマルフィ』を読んで、『アマルフィ』と同じ外交官シリーズを読むつもりでいたのですが、調べていたら第37回江戸川乱歩賞を受賞されているという情報が気になって、『連鎖』を読むことにしました。
※関連記事:読書日記:真保裕一著『アマルフィ 外交官シリーズ』 勝手に役割を割り当てられて


結果、面白かった!!! 個人的には『アマルフィ』より、『連鎖』のほうが断然好みです。

1986年にウクライナ(旧ソビエト連邦)のチェルノブイリ原子力発電所事故にインスパイアされて書かれた著作で、放射能に汚染されてしまった食品が日本に入ってきたという事件がきっかけに物語が始まります。主人公は検疫官で、厚生省の元食品衛生監視員の男性。Aで生産された作品がBで加工されてから、日本に入ってくるとB産とされてしまうという三角貿易の話です。

そこに農薬や除草剤の話、各国における基準値の違いなど、今読んでも古さを感じさないエピソードが複雑に絡み合う。読み応えあります。

うー、ただ日本人ととしては、2011年の福島第一原発の事故を思い出してしまって、このソビエト連邦を日本に置き換えて誰かに小説を書かれたらちょっと嫌だなとおもってもしまいました。フィクションだったらなんでもありなのかもしれませんが、今原発でこの書き方をすると、少なくともノーベル文学省の候補にはなれない気がいたします。なんというか、できれば嫌な思いをする人がいない小説がいいですよね。それは難しいのかもしれませんが、そうおもいます。


さて、真相はいかに。。。。小説なので書けません。。。。読んでください。読んで後悔しません。

最後のほうがギュッと解説が詰まりすぎで若干苦しくなったのですが、でも最後まで読んでよかったとおもいました。最後のほうがギュッと詰まっているのは、江戸川乱歩賞の作品には字数制限があるためのようです。


何回か、ひっくり返されて、ひとつずつわかってくるのですが、いい感じです。それまで張りめぐされてきた伏線がぎゅぎゅぎゅッて収束します。
根っこの部分は、人間のねたみや嫉みでした。けれども社会問題も上手に絡んでいるというか表裏一体で、小説好きもドキュメンタリー好きも堪能できそうです。

最後の終わり方が秀逸でした。人間の心に落とし込むのだけれど、押し付けがましくもなく、でも許しがあり、善悪を分けない。あたしの好みです。
現代ですら解決されていない問題を取り上げながら、これだけ読後感を明るくしてくれる物語ってすばらしい。人間の希望を感じる終わり方でした。


これを機会に、しばらく真保裕一さんの著作にはまりそうです。

ではまた~

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月2回、東京都豊島区池袋で、読書交換会をやっています。人にあげても差支えがない本を持ち寄り交換する読書会です。
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※今後の予定は9月7日(金)夜、22日(土)夜です。

臼村さおり twitter @saori_u
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