新井白石の『西洋紀聞』。タイトルは知っていたが、その現代語訳を図書館で借り初めて読んだ。鎖国下の鹿児島に潜入し、キリスト教を布教しようとしたイタリア人宣教師ヨハン・シドッチを自ら尋問、そのやりとりや世界情勢を紹介している。原本は入手が困難。中身を知るにはこれで十分である。教育社新書1980年出版(大岡勝義・飯盛宏 訳)。
原本は上・中・下の3部構成だが、全体で100ページにも満たないという。白石は第6代将軍・家宣の特命を受け宝永6年(1709年)11月以降4回、前年逮捕されたシドッチを江戸で取り調べた。まず概略を述べ、中巻では彼やオランダ人通訳らから得た世界の地理・情報を。下巻は詳しいシドッチとの質疑応答と自らのキリスト教批判を展開している。
白石は時の実力者。政治家であり、博学な学者だった。次々と鋭く矛盾点を突く記述は迫力がある。シドッチも知識豊富な宣教師で命をかけてやってきた。が、やはり来日した時期が悪かったということか。調べを受けてから15年後の1714年に獄中で「病死」した。白石は直後に筆を起こしたらしい。『西洋紀聞』の完成は翌1715年。一般に流布されたのは、さらに100年近く経てからになる。