古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

最果てのアーケード   小川洋子

2018-02-09 14:21:42 | 小川洋子
講談社  2011年


兔夫人……アーケード街の眼球の店、しばしば小川作品に登場する


それじゃあやっていけないだろう、という商売。小説のなかでは


繁盛している。


にくるラビトといううさぎをかっている夫人について描かれる。


ラビトがいるはずの乳母車にはラビトはいなかった。


その後、Rちゃんがしんだと同じころにラビトというあだ名の


少年が亡くなったと紳士おじさんから聞く。


人さらいの時計……動くところを見るとさらわれるとウワサのある


大時計。


私は知らない人を尾行する、その人が父の背中のような気がして


、そして、大学の助手のひとはセミナーでコミュニケーション


の講座でトンチンカンなコウモリの話しをし、私に最後にバイオリ


ンで、「愛のあいさつ」エルガーをひいてくれとたのんだ。


また、ある日は、チャリで転んだ野菜売りのおじいさんの後をつける。


小川女史の話はやっぱりどこかヘンである。そこが魅力かな。
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妊娠カレンダー     小川洋子

2018-02-09 11:34:03 | 小川洋子
文春文庫  平成2年


姉が妊娠したことによって揺らぐ日常の中で、


染色体を破壊するというグレープフルーツの


ジャムをつくり、それを姉はむさぼるように


食べる。つくる方もつくる方だが、くう方も


くう方だ。これを意地悪と言って片づけてし


まうわけにはいかないだろう。もっと根深い


病巣的なものがそこにはあるのか?


破戒されてしまうというテーマ、失われてし


まうというテーマの中では、我々は、ここに


肉のつながりのあるものにしかわからない憎


悪みたいなものがあるのかな、と思ったりする。


姉を不幸にしたいという無意識の欲求……ふふふ、


とうすら笑いを浮かべて奇形を望むその恐怖。


誰にでもある病巣をこのひとは熟知しているの


だ。


ほか、ドミトリイ、夕暮れの給食室と雨のプール


所収。
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