一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『ミステリと言う勿れ』 …女優・原菜乃華の成長が手に取るようにわかった…

2023年09月29日 | 映画


田村由美の人気漫画を、


菅田将暉主演で実写化した連続TVドラマ「ミステリと言う勿れ」は、
2022年1月10日から3月28日までフジテレビ系「月9」枠で放送されたのだが、
第1話を観て、すっかり魅了されてしまった。


冬のある日、
大学生の久能整(菅田将暉)は、


アパートを訪ねてきた大隣警察署の刑事たちに、


大学の同回生で高校の同窓である寒河江が殺害された一件で警察署に同行され、
任意で取り調べを受ける。


寒河江は昨晩10時ごろ、久能に似た人物と口論していたのが目撃されたという。
久能は犯行をきっぱり否定し、
疑う藪警部補(遠藤憲一)たちのもとへ毎日聴取に通うことになる。
先輩らの圧力を原因に伸び悩む風呂光巡査(伊藤沙莉)、
妊娠中の妻の態度に苛立つ池本巡査(尾上松也)、
かつて起こった冤罪事件に囚われている青砥巡査部長(筒井道隆)は、
久能の独特の思想や語り口に次第に興味を惹かれていく……




取り調べをする薮鑑造(遠藤憲一)とのやりとりが抜群に面白く、
謎が解かれていく過程にゾクゾクした。


この第1話は録画保存していて、思い出しては今でも時折観ている。
なので、(第1話には劣るものの)第2話以降も当然観ているし、
大いに楽しませてもらった。


このTVドラマ「ミステリと言う勿れ」は、結果的に、

第111回ザテレビジョンドラマアカデミー賞
・主演男優賞(菅田将暉)
・監督賞(松山博昭、品田俊介、相沢秀幸)
日本民間放送連盟賞2022年度
・ドラマ部門・優秀賞
MIPCOM BUYERS’ AWARD for Japanese Drama 2022
・奨励賞
東京ドラマアウォード2022
・主演男優賞(菅田将暉)
・長編ドラマ部門・優秀賞
TVerアワード2022 特別賞

など、多くの賞を受賞し、作品的にも大きく評価された。


そのTVドラマ「ミステリと言う勿れ」が、
今度は劇場版として帰ってきた。
原作で人気のエピソード「広島編」をもとに、
広島の名家・狩集家をめぐる遺産相続事件の顛末を描いているとか。
久能整役の菅田将暉の他、
原菜乃華、柴咲コウ、鈴木保奈美、松坂慶子、松嶋菜々子の女優陣、
松下洸平、町田啓太、萩原利久、滝藤賢一、でんでんなどの男優陣に加え、


TVドラマ版の主要キャスト・伊藤沙莉、尾上松也、筒井道隆、永山瑛太も出演している。


もう楽しみしかなく、公開直後に映画館(イオンシネマ佐賀大和)に駆けつけたのだった。



美術展のために広島に来た大学生・久能整(菅田将暉)は、


犬堂我路(永山瑛太)の知人だという女子高生・狩集汐路(原菜乃華)と出会い、


ある相談を持ちかけられる。
それは彼女の家系・狩集一族の遺産相続を巡るものだった。


当主の孫にあたる汐路をはじめ、
狩集理紀之助(町田啓太)、


波々壁新音(萩原利久)、


赤峰ゆら(柴咲コウ)


の4人の相続候補者たちと、
狩集家の顧問弁護士の孫・車坂朝晴(松下洸平)は、


遺言書に書かれた、
「それぞれの蔵においてあるべきものをあるべき所へ過不足なくせよ」
というお題に従い、


遺産を手にすべく、謎を解いていく。
ただし、先祖代々続く、この遺産相続はいわくつきで、その度に死人が出ている。
汐路の父親・弥(滝藤賢一)も、8年前に、他の候補者たちと自動車事故で他界していたのだった。


次第に紐解かれていく遺産相続に隠された真実。


そこには世代を超えて受け継がれる一族の闇と秘密があった……




現代版『犬神家の一族』とも言える作品で、
私が期待する「久能整(菅田将暉)が一人で推理し謎を解いていく」というものではなく、
どちらかというと、狩集汐路(原菜乃華)、狩集理紀之助(町田啓太)、波々壁新音(萩原利久)、赤峰ゆら(柴咲コウ)の4人とのチームプレーのような物語であった。
「期待するものではなかった……」ということで、「つまらなかったか……」というと、
そうではなく、大いに楽しませてもらった。
汐路、理紀之助、新音、ゆらは、お互いを疑いつつも、時に協力し合い、
久能整と共に、狩集家の遺産相続に隠された真実を暴いていく。
広島という舞台の土着性(土地の魅力)もあって、
TVドラマ版とは一味違った展開にワクワクさせられた。



久能整を演じる菅田将暉が、
TVドラマ版から引き継ぐ演技の上手さ、面白さ、そして抜群の安定感で、
劇場版でも見る者に安心感を与え、物語をより魅力あるものにしている。
やはり菅田将暉は凄い役者だと思わされた。



意外に(と言っては失礼だが)良かったのが、狩集汐路を演じた原菜乃華。


子役時代から活躍している女優であるが、知名度の点ではいまひとつの感があったが、
2022年11月公開のアニメーション映画『すずめの戸締まり』(新海誠監督)のオーディションで、1700人を超える中から主人公・岩戸鈴芽役に選ばれたことが話題になり注目されるようになった。


それでも本作のヒロイン役としては弱いかな……と(極私的に)思っていたし、
序盤は物足りなさを感じつつ見ていた。
ところが、中盤から終盤にかけて、原菜乃華という女優の演技力、表現力がどんどんアップしていくのが見て取れ、驚くと同時に感心させられた。
2003年8月26日生まれなので、まだ20歳になったばかりであるが、(2023年9月現在)
大きな作品の中で、大きな役を得て、女優として大きく成長するのが、
本作の中で手に取るようにわかった。


特にラスト近くの表情は素晴らしいものであった。
それを感じたのであろう、本作の監督(松山博昭)も彼女の顔をかなりアップで撮っている。
そうしたくなるほどの表情であったし、
『時をかける少女』(1983年)のラストシーンの原田知世の顔のアップと同様に、
本作『ミステリと言う勿れ』での原菜乃華の顔のアップ(その表情)は、伝説になるかもしれない。
そんな彼女の明るい未来が感じられる作品であった。
劇場版『ミステリと言う勿れ』は菅田将暉の単独主演作であるが、
(私にとっては)原菜乃華とのW主演作であったような気がしている。



主役といえば、本作には主役級の女優が何人も出演していて、
赤峰ゆらを演じた柴咲コウ、


汐路(原菜乃華)の母・狩集ななえを演じた鈴木保奈美、


汐路たちの亡くなった祖父・幸長(石橋蓮司・写真のみの出演)のいとこの鯉沼鞠子を演じた松坂慶子、


そして、唯一、役名が明かされていなかった松嶋菜々子など、


これら女優たちにも逢えるのを楽しみにしていたのだが、
それぞれ出演シーンもそれほど多くなく、ちょっともったいないような気がし、
それだけが残念であった。



TVドラマ版の主要キャスト・伊藤沙莉、尾上松也、筒井道隆の名が、
劇場版の方でも記されていたのに本編中には出てこなかったので、
〈もしや……〉
と思っていたら、
エンドロール後にワンシーン付け加えられていて、そこで初めて登場。
なので、エンドロールが始まっても席を立たないようにね。(席を立つ人が多いんだよね)
本音を言えば、上記3人と整(菅田将暉)のからみをたくさん見たかった。
広島が舞台なのでそれは無理だとは解っていたが、
次作(があればの話だが)では大隣警察署の刑事たちにもっと活躍してもらいたい。



TVドラマ版の主題歌「カメレオン」を初めて聴いたとき、
宇多田ヒカルの声だと思ったが、
King Gnuの楽曲だと知り、ビックリした。
以前、
最近、驚いたこと⑨ ……TVドラマ「35歳の少女」の主題歌「三文小説」……
とのタイトルでKing Gnuの井口理の声を絶賛したことがあったが、
TVドラマ「カメレオン」の主題歌でも、井口理の声にまたまた驚かされてしまった。


映画版の主題歌もKing Gnuも担当しており、
エンドロールに流れる「硝子窓」にもシビれてしまった。(この曲は本当に素晴らしい)
常田大希と井口理は本当に天才だね。


(原作漫画が読んでいないが)私はTVドラマ「ミステリと言う勿れ」のファンなので、
(映画『ミステリと言う勿れ』には)思い入れがあったし、
TVドラマ未視聴の人よりも楽しめたと思う。
劇場版『ミステリと言う勿れ』の第2弾にも期待したいし、
それがTVドラマの第1話を越える傑作であることを切に願う。

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