一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

第6回 「一日の王」映画賞・日本映画(2019年公開作品)ベストテン

2020年01月07日 | 「一日の王」映画賞
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2015年(2014年公開作品を対象)に創設した「一日の王」映画賞も、
第6回となった。
ブログ「一日の王」管理人・タクが、
たった一人で選出する日本でいちばん小さな映画賞で、
何のしがらみもなく極私的に選び、
勝手に表彰する。(笑)

作品賞は、1位から10位まで、ベストテンとして10作を選出。
監督賞、主演女優賞、主演男優賞、助演女優賞、助演男優賞は、
5名(~10名)ずつを選出し、
最優秀を、各部門1名ずつを決める。(赤字が最優秀)
この他、
新人賞(1名)と、外国映画の作品賞(1作)を選出する。

普段、レビューを書くときには点数はつけないし、
あまり映画や俳優に順位はつけたくはないのだが、
まあ、一年に一度のお祭りということで、
気軽に楽しんでもらえたら嬉しい。


【作品賞】(タイトルをクリックするとレビューが読めます)
『岬の兄妹』


『火口のふたり』


『愛がなんだ』


『宮本から君へ』


『アンダー・ユア・ベッド』


『洗骨』


『デイナンドナイト』


『チワワちゃん』


『よこがお』

  
『新聞記者』


上記ベスト10以外にも、
『長いお別れ』
『町田くんの世界‏』
『半世界』
『キングダム』 
『ホット・ギミック』
『いちごの唄』
『轢き逃げ』
『惡の華』
『僕はイエス様が嫌い』
『月極オトコトモダチ』 
『“隠れビッチ”やってました。』 
なども強く印象に残っており、
2019年も傑作、秀作の多い、私にとっては嬉しい一年であった。
順位をつけてはいるものの、選出した作品にそれほどの差はなく、
『岬の兄妹』のみが、頭一つ抜けていたような気がした。
題材的に賛否のある作品であるが、
私は、
……『万引き家族』がメルヘンに思えてくるほどの傑作……
とのサブタイトルをつけて絶賛した。(レビューはコチラから)
私にとっては、2019年は、
『岬の兄妹』を目撃した年として記憶されることだろう。


【監督賞】
片山慎三『岬の兄妹』
荒井晴彦『火口のふたり』
安里麻里『アンダー・ユア・ベッド』
二宮健『チワワちゃん』 
蜷川実花『Diner ダイナー』『人間失格 太宰治と3人の女たち』
真利子哲也『宮本から君へ‏』
照屋年之『洗骨』

監督賞も、誰が獲ってもおかしくないほどの激戦であったが、
やはり、『岬の兄妹』の監督に最優秀監督賞を贈りたいと思う。
これほどの衝撃作には、人生においてもそれほど多くは出合えないだろうし、
人間の根幹をゆさぶる作品であったし、映像も美しかった。
稀有な体験をさせてもらったという意味で、片山慎三監督には感謝したい。



【主演女優賞】
和田光沙『岬の兄妹』
西川可奈子『アンダー・ユア・ベッド』
瀧内公美『火口のふたり』
蒼井優『宮本から君へ』『長いお別れ』
岸井ゆき『愛がなんだ』
筒井真理子『よこがお』
吉田志織『チワワちゃん』

最優秀主演女優賞も激戦であった。
最終的に残ったのは、
『岬の兄妹』の和田光沙と、
『アンダー・ユア・ベッド』の西川可奈子と、
『火口のふたり』の瀧内公美。
三人とも、自身のすべてをさらけ出し、体当たりの演技をしている。
どの作品も優れているし、
三人ともに素晴らしい演技をしている。
和田光沙を最優秀主演女優賞に決めたのは、


『岬の兄妹』のラストの、
和田光沙が演じる真理子が振り返った表情が特に優れていたからである。
あのシーンは日本映画史に残る名シーンだと思う。



【主演男優賞】
池松壮亮『宮本から君へ』
松浦祐也『岬の兄妹』
成田凌『カツベン!』
奥田暎二『洗骨』
山﨑努『長いお別れ』
岡田准一『ザ・ファブル』

ここに選出した6人の演技は、
体を使った演技(岡田准一)、
ベテランらしい巧い演技(山﨑努)、
力を抜いた演技(奥田暎二)、
努力に努力を重ねたであろう演技(成田凌)、
何ものにも媚びない演技(松浦祐也)、
最初から最後までフルスロットルの熱演(池松壮亮)など、
それぞれに個性あふれる演技で、私を楽しませてくれた。
なかでも、池松壮亮の演技は、
すべてをかなぐり捨てた激演であった。


あの静かでクールな池松壮亮が、
あれほどの激演をするとは思ってもみなかった。



【助演女優賞】
大島蓉子『洗骨』
清原果那『愛唄 -約束のナクヒト-』『デイアンドナイト』『いちごの唄』
檀ふみ『轢き逃げ』
池脇千鶴『半世界』
水崎綾女『洗骨』
韓英恵『ひとよ』
松原智恵子『長いお別れ』
深川麻衣『愛がなんだ』
片岡礼子『楽園』『閉鎖病棟 それぞれの朝』
桜井ユキ『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』『マチネの終わりに』

「最優秀助演女優賞」の候補者が、過去最高の10人となった。
激戦の第6回 「一日の王」映画賞であるが、
その中でも「最優秀助演女優賞」は、激戦中の激戦である。
それぞれに「最優秀助演女優賞」を差し上げたいほどであるが、
そうもいかないので、
『洗骨』の大島蓉子を「最優秀助演女優賞」に選出した。


『洗骨』に登場する男たちは、
それぞれ、どこかしら「情けない」部分を持っており、
家を取り仕切り、励ますのは、高安信子(大島蓉子)の役目であった。
『洗骨』のレビューで、私は、

この高安信子を大島蓉子は実に巧く演じていた。
あらゆる作品の端々に登場しており、
よく見かける女優であったが、代表作といえるような作品はなかったような気がする。
本作『洗骨』の舞台挨拶で、
「初めての舞台挨拶なので緊張していますが 2 度 3 度と足を運んでいただいて、この映画を知らない方にも教えてあげてください」
と語っていたが、


舞台挨拶にも登場するような重要な役を得て、
しかも実力も発揮することができて、
これ以上ない歓びであったのではないだろうか。
今年(2019年)公開の映画を対象とする第6回 「一日の王」映画賞では、
最優秀助演女優賞の有力候補になることは間違いない。

と書いたが、
めでたく「最優秀助演女優賞」の選出となった。
大いに褒め称えたい。



【助演男優賞】
音尾琢真『凪待ち』『ひとよ』『カツベン!』
田中哲司『新聞記者』
渋川清彦『半世界』『閉鎖病棟 それぞれの朝』
村上虹郎『チワワちゃん』『楽園』『"隠れビッチ"やってました。』
成田凌『チワワちゃん』『愛がなんだ』『さよならくちびる』

【助演女優賞】に比して、【助演男優賞】の方は不作であった。
候補者がすぐに思い浮かばず苦労した。(コラコラ)
単に、私が男優に興味がないだけかもしれない。(爆)
ひとつの作品で強烈な印象を残したのは、『新聞記者』の田中哲司くらいで、
他は、数作の「合わせ技」による「イッポン!」であった。
その中でも、音尾琢真は、
映画のみならず、TVドラマ(NHK朝ドラ『なつぞら』等)にも多く出演し、
それぞれに強烈な印象を残した。



「合わせ技イッポン!」ではあるが、その活躍度、貢献度を評価し、
彼に「最優秀助演男優賞」を贈りたいと思う。



【新人賞】
モトーラ世理奈『out of fashion』『ブラック校則』

もはや新人とは言えないかもしれないが、
彼女の将来に対する可能性は計り知れないものがある。


今年(2020年)の活躍に胸がふくらむ。
「私をこれ以上好きにさせないでくれ!」(笑)



【作品賞・海外】
『希望の灯り』


2019年は、
『グリーンブック』
『ROMA/ローマ』
『運び屋』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
『ジョーカー』
『ホテル・ムンバイ』
『ガルヴェストン』  
など、傑作揃いで、大いに悩んだのであるが、
私が選出したのは、『希望の灯り』。 
原作は、クレメンス・マイヤーの短編集『夜と灯りと』の中の一編『通路にて』。
監督は、原作者クレメンス・マイヤーと同じ旧東ドイツ出身のトーマス・ステューバー。
映画の主人公は、夜勤のフォークリフト運転士。


特に優れていたのは、映像と音楽。
閉店後の客のいなくなった巨大スーパーの通路を、
清掃車とフォークリフトが流れるように走行していき、
そこにクラシック音楽が重なり、
「美しき青きドナウ」でワルツを踊り、
「G線上のアリア」で静かにたゆたう。
巨大スーパーの変哲もない空間が、
優雅な舞踏会の会場となり、
『2001年宇宙の旅』のような神秘的な宇宙空間となるのだ。
主要キャストは、
クリスティアンを演じたフランツ・ロゴフスキ、
飲料担当のブルーノを演じたペーター・クルト、
菓子担当のマリオンを演じたザンドラ・ヒュラーの3人。
クリスティアンが小さなケーキに蝋燭を灯し、
マリオンの誕生日を祝うシーンが秀逸。


過去の様々な出来事、喪失の悲しみを静かに受けとめ、
いま目の前にある小さな幸せに喜びを見出す。
日々の生活にそっと灯りをともす。


そんな彼らの生きる姿勢が、
見る者に深い共感と感動を呼びおこす。
ハリウッド映画の対極にあるような地味で目立たない小品だが、
いつもまでも心に残る傑作である。



2019年は、振り返ってみると、
(先ほども述べたが)傑作、秀作の多い、素晴らしい一年であった。
大いに楽しませてもらったし、感動を頂いた。
私一人の人生は、ごく限られた範囲の、小さな体験でしかない。
映画は、私一人の人生では知り得ない、様々な経験をさせてくれる。
様々な感動を受け取ることができる。
映画鑑賞が趣味で本当に良かったと思う。
2020年もスタートした。
今年はどんな映画に出逢えるだろうかと、
いまからワクワクしている。
楽しみで仕方がない。

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