一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『坂道のアポロン』……佐世保とジャズと青春、そして佐世保弁の小松菜奈……

2018年03月13日 | 映画


映画『坂道のアポロン』の存在を知ったのは、
昨年(2017年)の5月であった。
佐世保の海で、海上タクシーの事故があったのだ。
その事故を起こした船には、
映画撮影をしているキャスト・スタッフ11名が乗っていて、
一部メディアでは、乗客が打撲したと報道していた。
(その後、病院で精密検査をして、キャストには身体に異常がないことが確認された)
その乗客の中に、私の好きな女優・小松菜奈の名があったので、
ビックリした私は、
それが、何の映画の撮影だったのかを調べたのだ。

こうして、映画『坂道のアポロン』の存在を知ったのだが、
「なぜ、佐世保で撮影していたのか?」
が知りたくなった。
そこで、原作である漫画を調べてみた。
私は、普段、漫画はほとんど読まないので、漫画に関しては全然詳しくない。
漫画『坂道のアポロン』は、
作者は小玉ユキで、
ジャズに魅了された高校生たちの青春を描き、
2012年にはテレビアニメ化もされているという。
しかも、『坂道のアポロン』の舞台は長崎県佐世保市で、
作者の小玉ユキも佐世保市出身とのこと。

漫画『坂道のアポロン』
『月刊フラワーズ』(小学館)にて、
2007年11月号から2012年3月号まで連載。
2012年5月号から9月号まで番外編「BONUS TRACK」が掲載された。
単行本は全9巻、
番外編1巻、
『坂道のアポロン』Official Fan Book (フラワーコミックススペシャル)1巻の、
全11巻が刊行されており、
『このマンガがすごい! 2009』オンナ編で1位を獲得し、
第57回小学館漫画賞一般向け部門を受賞している。


私事ながら、
私も佐世保市で生まれ育った。
だから、高校時代までの思い出は、すべて佐世保にある。
現在は佐賀県で生活しているが、
佐世保は近いし、
私の兄や姉や従兄弟たちも佐世保に住んでいるということもあって、
今でも度々訪れている。
佐世保で生活しているときにはあまり感じなかったが、
離れて生活していると、
佐世保で暮らした日々が懐かしく思い出され、
他にはない街の雰囲気があったことが、今になって解る。
佐世保には特別な愛着があるので、
佐世保を舞台にした小説や映画には、
これまた、特別な“想い”がある。
漫画であろうと、同じことである。
佐世保を舞台にした漫画なら、ぜひ読んでみたいと思い、
全11巻を“大人買い”して、一気読みした。


そして、感動した。
佐世保、ジャズ、高校時代、青春……
佐世保出身者だけが解る小ネタもあり、
『坂道のアポロン』は私にとって、特別な漫画になった。
漫画を読んでから、映画公開までが長かった。
そして、公開初日(3月10日)に、
会社の帰りに、映画館に駆けつけたのだった。



医師として病院に勤める西見薫(知念侑李)。


忙しい毎日を送る薫のデスクには1枚の写真が飾られていた。
笑顔で写る三人の高校生。
10年前の夏、二度と戻らない、特別なあの頃……


1966年、
高校生の西見薫は、
父親が亡くなったことによる諸事情により、
横須賀から長崎県の佐世保市にある佐世保東高校に転校した。
転校先のその高校で、薫は、
誰もが恐れる不良、川渕千太郎(中川大志)と運命的な出会いを果たす。


ジャズのドラムを叩く千太郎と、
幼いころからピアノを弾いていた薫は、
音楽でつながり、
荒っぽい千太郎に、不思議と薫は惹かれていく。


千太郎の幼なじみの迎律子(小松菜奈)の家は、レコード店で、




地下には、ジャズ好きの父・勉(中村梅雀)が造った練習用の防音室があり、




薫と千太郎はいつもそこでセッションし、


律子と三人で幸福な日々を過ごす。


やがて薫は律子に恋心を抱くが、


律子の思い人は千太郎だと知ってしまう。
律子は千太郎に、


千太郎は大学生の深堀百合香(真野恵里菜)に、


百合香は桂木淳一(ディーン・フジオカ)に思いを寄せていて、




誰もが一方通行の恋に悩んでいた。


それでも、薫と千太郎と律子は、
切ない三角関係ながら、
ジャズを奏でる時はいつも最高だった。
しかし、そんな幸せな青春は長くは続かず、
ある日、千太郎が薫と律子の前から突然姿を消してしまう……




映画の冒頭、
セピア色の昔の佐世保の写真が映し出される。


もうそれだけで、私は胸がキュンとなってしまった。
そして、次々に登場する佐世保の風景。
坂道、


校舎、


教会、


眼鏡岩、


九十九島、


黒島、


外人バー街、


そしてジャズ。


すべてが懐かしく、
すべてが愛おしかった。
極め付きは、小松菜奈の佐世保弁。
佐世保弁を喋る小松菜奈を見ているだけで、
聴いているだけで、(予告編でもちょっと聴けます)
私はもう死んでしまいそうであった。(爆)


監督は、青春映画に定評のある三木孝浩。


ここ数年の監督作を挙げてみても、

『陽だまりの彼女』(2013年)
『ホットロード』(2014年)
『アオハライド』(2014年)
『くちびるに歌を』(2015年)
『青空エール』(2016年)
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016年)
『先生!、、、好きになってもいいですか?』(2017年)

と、私はすべて見ているし、すべてレビューも書いている。
こういった原作モノは、
コアなファンから批判を浴びるのが通例であるのだが、
不思議と三木孝浩監督作品は好評で、
ある水準以上の作品に仕上げてくるという安心感がある。
だから、青春モノ、原作モノで、監督は三木孝浩と聞けば、
不安を抱かずに見に行くことができる。
今回の『坂道のアポロン』も安心して見ることができたし、
もう2~3回は見に行くつもりでいる。(笑)

この作品に特別な愛着を感じるのは、
私が佐世保出身ということもあるが、
作品の設定年が1966年(昭和41年)ということもある。
1966年は、私はまだ小学生であったので、
この映画の登場人物たちよりは、少し下の世代であるのだが、
風俗やファッションが懐かしく、
ことに、現代ファッションのカリスマのような小松菜奈が、


昭和のファッションに身を包んでいるだけで、もう胸キュンなのである。




1960年代のことは、
若い人よりもむしろ我々の世代の方が親近感があるし、
知念侑李や中川大志や小松菜奈などの若いファンだけでなく、
1940年代、1950年代生まれの中高年世代にも、ぜひ見てもらいたいのである。


そして、ジャズ。
佐世保には、1973年(昭和48年)より続いている「いーぜる」というジャズバーがあり、
私は帰省する度に立ち寄っていたのだが、
(昨年マスターが亡くなられたが、後継者が引き継いで営業されている模様)
この「いーぜる」のマスターが中心となって、
過去、佐世保で、九州最大のジャズフェスティバル“SUNSET JAZZ FESTIVAL”が20年間に渡り開催されていた。
駐留軍がいた佐世保は、ジャズとは深い縁があり、
佐世保が舞台の『坂道のアポロン』にジャズが登場するのは、
ごく自然なことなのである。


この『坂道のアポロン』では、
文化祭(学園祭)でのピアノとドラムのセッションのシーンが有名なのであるが、
あることで仲違いしていた薫と千太郎が、
このセッションで再び仲良くなる。
この演奏シーンが素晴らしい。
まずはアニメ版で。(再生できないときはコチラから)


このアニメでは、松永貴志が演奏しているので、上手いのは当然なのだが、
実写版では、
ピアノを知念侑李が、ドラムを中川大志が、実際に演奏している。
当人が演奏しているので、それほど上手くはないが、
素人の高校生が演奏しているという設定なので、
こちらの方が、よりリアリティーがある。


本編を見れば、
なぜその曲なのか、
なぜ律子(小松菜奈)が涙を浮かべているのかが解る。


エンドロールの時に流れる小田和正による書き下ろし曲「坂道を上って」も秀逸。
(予告編でも一部流れる)


書きたいことはたくさんあるのだが、
私自身の思い入れが強過ぎて、
これ以上、何を言っても、信じてもらえないような気がする。(笑)
まあ、私の言うことは話半分、いや、話八分ということで……(コラコラ)

出勤前なので、この辺で終わろうと思うが、
もし、以下の条件にあてはまる方がいらしたら、
ぜひ、映画館へ足を運んでもらいたい。

①佐世保出身の方。
②(短い期間でも)佐世保に住んだことのある方。
③佐世保に旅行で行ったことのある方。
④佐世保出身の配偶者、若しくは彼氏(彼女)がいる方。
⑤いつかは佐世保に行きたいと思っている方。
⑥1940年代、1950年代に生まれた方。
⑦ジャズが好きな方。
⑧ディーン・フジオカのファンの方。(歌も披露していて、とにかくカッコイイ)
⑨知念侑李と中川大志のファンの方。(とにかく演奏を頑張っている)
⑩小松菜奈のファンの方。(とにかくキュン死しないように気を付けて)

ぜひぜひ。


※当ブログの映画『坂道のアポロン』関連記事
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