一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』 ……井口奈己監督の演出が光る秀作……

2014年02月13日 | 映画
突然ですが、
あなたはモテるだろうか?

「ええ、20kgくらいは……」
って、冗談を言って誤魔化す程度にしか、
ほとんどの人はモテないのではないだろうか?

かく言う私も、まったくモテない。
イヤになるくらいモテない。
人生には、モテキ(モテ期)と言って、
突然、異性にモテる時期があるそうなのだが、
どれほど記憶をたどっても……思い出せない。
だれでも人生に一度はあるというモテキが、
私にはまだ一度も訪れていないのだ。
まったく人生は不公平だ。

映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』を見に行った。
主人公・ニシノユキヒコ(竹野内豊)は、
モテキなど関係なく……
ていうか、
一生がモテキと言えるほど、
モテて、モテて、
死ぬほどモテる、
超モテ男なのである。


10年前に人妻・夏美(麻生久美子)と関係をもち、
会社の上司・マナミ(尾野真千子)と職場恋愛に至り、
元恋人のカノコ(本田翼)から誘われればホイホイ応じ、
マンションの隣室の昴(成海璃子)やタマ(木村文乃)ともイイ仲になってしまい、
料理教室で出会った主婦・サユリ(阿川佐和子)も虜にしてしまう。






このように紹介すると、
映画『モテキ』のような、
コミカルでテンポの良い作品を想像しがちだが、
映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』は、まったく違う。
映画『モテキ』のような面白さを求めて映画館へ行ったならば、
肩すかしを食らう。
それほど、ユルい。
テンポが遅く、
セリフもゆったりしていて、
作品中に出てくるバンド演奏にさえイライラしてしまう。
このユルさが、一部の人からは不評で、
普段、ハリウッド映画などのスピーディな作品を見慣れている人たちにとっては、
なんとも眠気を誘うような映画なのである。

こう書くと、悪口のように聞こえるかもしれないが、
そうではない。
一般論を述べたまでで、
私自身は、眠気を誘われもしなかったし、
最後まで面白く見ることができた。
最初は私も、
「このユルさについていけるかな……」
と心配したが、(笑)
そのユルさにどっぷり浸かってしまうと、
むしろ心地よく、
「こういう慌ただしい世の中だからこそ、この作品を見る価値はある」
などと思ってしまった。
原作は、川上弘美。(大好き)
映画を見ている間は、
川上弘美の作品を読んでいるような心地よさであった。


映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』を見に行ったのは、
超モテ男に関心があったワケではなく、(笑)
原作者が私の好きな川上弘美だったことと、
私の好きな女優が複数出演していたからだ。

『ばしゃ馬さんとビッグマウス』(2013)が記憶に新しい麻生久美子、


『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』(2013)、『そして父になる』(2013)などで昨年は大活躍だった尾野真千子、


今年になって見た邦画『すべては君に逢えたから』『小さいおうち』のいずれにも出演していた木村文乃、


女優ではないけれど、阿川佐和子。


「よくこれほど私の好きな人をキャスティングしてくれました~」
と、井口奈己監督にお礼を言いたいくらいであった。
私が、最初から最後まで楽しく見ることができた一番の要因は、
この好キャスティングのお蔭だったかもしれない。

井口奈己監督は、
予定調和なものを嫌い、
その場のリアルさを表現したいと考える人で、
長回しが多く、台本の部分が終わってもカットがかからない。
尾野真千子演じる上司のマナミと、竹野内豊演じるニシノユキヒコが、
じゃれ合ってキスをするシーンがあり、
とても自然でドキドキさせられるのだが、
あの場面は、
「とにかく黙ってイチャイチャしてみて下さい」
と監督から指示が出て、
台本にはキスシーンはなかったのに、
自然のなりゆきでキスをしてしまったとか。(と、竹野内豊が番宣で語っていた)
そんな風な、リアルでドキドキさせられるシーンが多かった。


マンションの隣人・タマ(木村文乃)とのキスシーンも、
途中からは音だけにして、
傍にいる猫の動きで、イチャつく二人を想像させるというテクニックを使い、
秀逸であった。


実は、この映画は、普通の映画とは、ちょっと違う。
いろんな媒体や映画評ですでにストーリーが紹介してあるので、
御存じの方も多いと思うが、
私はあえて書かずにここまできた。
この映画には、もうひとり、
夏美(麻生久美子)の娘・みなみ役で、
中村ゆりかという女の子が出てくる。
プロフィールを見てみると、
1997年3月4日生まれというから、まだ16歳。
出演作も少ないので、
まだこれから……といった感じなのであるが、
素直な演技で、好感が持てた。
これからの活躍に大いに期待したい。


この映画の主人公・ニシノユキヒコは、
死ぬほどモテる男で、
彼女たちの欲望を満たすべくひたすら尽くすのだが、
最終的には、皆、彼から離れていってしまう……
モテ男の末路は哀しい。(コラコラ)

考えてみるに、
なにも多くの女性にモテる必要はなく、
自分が好きになった人に、自分のことを好きになってもらえばイイのである。
人生で、本当に好きになる人は、3~4人だろうか?
その3~4人にモテさえすれば、人生大成功ではないか。
そう思うのは、モテない男のヒガミであろうか?

【御礼】
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2014.02.02 ~ 2014.02.08 の「一日の王」のアクセス数が7002で、
ついに、一日平均の訪問者数が1000人を超えた。
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極私的な山行記録と映画レビューが主であるのに、
多くの人に訪問して頂き、感謝、感謝である。
これからも、よろしくお願い致します。

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