★iPS細胞を使った再生医療に国や企業は支援強化を!
山中さんが強調するのは「アメリカの怖さ」だ。
iPS細胞を使った臨床研究では、日本が世界をリードしてきた。世界で初めてiPS細胞を使った臨床研究が実施されたのは14年。当時、理化学研究所にいた高橋政代さん(58)らのチームが目の難病「加齢黄斑変性」の患者からiPS細胞をつくって、網膜の細胞に変化させて移植した。
その後も同じく高橋さんらによる加齢黄斑変性、CiRAの高橋淳教授(58)らによるパーキンソン病、大阪大学の西田幸二教授(57)らによる角膜の病気を対象に、それぞれ移植が実施されている。
山中さんも「iPS細胞を使った再生医療は日本が先行していた」としながら、「一番脅威に感じている」と挙げるのが、米バイオベンチャー企業ブルーロック・セラピューティクスだ。
同社は、iPS細胞から作った神経細胞をパーキンソン病患者に移植する臨床試験を、早ければ年内にも始める。iPS細胞から作った心筋細胞で心不全、腸の神経細胞で重い腸の病気といった治療の研究開発も進める。
山中さんは「私たちがやってることと完全に競合する。超大国アメリカがiPSにどんどん乗りだし、本気になってきた」と話す。同社は16年に設立した時点で約250億円を調達。独製薬大手バイエルは今年8月、完全子会社化を発表。
CiRAがこれまで国から受け取ってきた研究資金の総額を優に超えた。
ほかにも、米バイオ医薬品企業フェイト・セラピューティクスは、がんを攻撃する免疫細胞をiPS細胞から作り、患者に移植。今年4月には、最初に投与を受けた患者では、28日間の観察期間で大きな副作用がなかったことを発表している。
山中さんは危機感を募らせる。
「米国は日本の様子を見ていたんだと思う。(基礎研究や初期の臨床研究など)大変なところは日本がやってきた。 米国はいけそうだと分かると、いっきに取りにかかってくる。 米国で開発が進み、逆輸入する状況になりかねない」
そのためにも、CiRAがiPS細胞をつくって大量に増やし、神経や心臓といった細胞に分化させたり、品質検査したりすることで再生医療の実現に取り組む企業を支え、競争力を上げる必要性を強調した。
「将来的に雇用や税収という形で国にも返ってくる。 患者さんにもより早く新しい医療が届く。先々の投資という意味で、国の支援をいただきたい」(山中さん)
iPS細胞のバンクも米国で複数立ち上がり、すでに細胞の提供が始まった。韓国やオーストラリアでも近年、設置された。「ここが今、本当に踏ん張りどころだ」と山中さんは語る。(朝日新聞社・合田禄)
バイオ産業はAI・ロボット産業と共に次世代のメイン産業(世界を豊かにし、稼げる)になるだろうが、自民党の政治家や官僚たちは米国企業や中国企業やドイツ企業に対する競争心や警戒心・危機感が無さ過ぎる。
それが日本の将来性の芽を潰しかねず、衰退化を招きかねない。
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