小さい声でもあげてみよう

ゲイでドクター。そんな僕の地味ぃな日常。

出会い。その四

2005-10-16 10:33:34 | むかしのこと。
僕は先生がゲイだということを知っていて、
先生は僕がゲイだということを知らない。
もちろん先生は職場ではカムアウトして居ない。

そんな、微妙な状況で実習は進んでいった。
先生は親切であれこれ僕のコトをかまってくれたし、
僕もいっぱしのプロとして働く先生の姿に尊敬と憧れを感じた。
多分、僕は先生に惹かれていた。

かといって、いきなり
「先生、ゲイなんですよね」
なんて言えるわけもなく、
「先生のブログみてますよ」
とさりげなく言ってみようかとも思ったけど、それは即ち、
「僕もゲイです」
というようなもので、どうしても言うことが出来なかった。

生まれて初めて、現実にゲイの人と接した僕は先生の挙動を観察しながら、
「あ~。それっぽい」
とか一人で勝手に納得したりするだけだった。

そんなある日、実習が終わる頃先生が
「しゅうや君、今日晩飯食べに行かない?」
と誘ってくれた。もちろん、即答で
「行きます!」
と答えた僕は、ものすごくドキドキしていた。
実習が終わった後病院の外で待ち合わせて先生の車に乗り込む。
「何食べたい?」と聞かれたけど僕は上の空で「な、なんでもいいです」と。
結局近くの定食屋で夕飯を食べ、病院へ戻る車の中。
世間話をしつつも頭の中で僕は先生にカムアウトしようかものすごく葛藤していた。
でも、やっぱり言い出せないまま、車は病院についてしまった。
「今度は飲みにでも行こうね」
と別れ際に先生は言ってくれたけど「今度」なんて来るのだろうか、僕は思っていた。

結局、最大のチャンスに何も行動を起こせなかった僕は、その後も淡々と実習をこなし、
先生の連絡先も聞く事も出来ないままに一か月の実習は終わってしまった。

せっかく機会はあったのに自分が勇気を出せないばっかりに
何も行動できなかった自分が心底嫌だった。

「今度」は来なかった。