逝きし世の面影

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「日本の食品は安全」主張撤回 外務省の無条件降伏?

2011年08月08日 | 軍事、外交

「食品は安全」強調自粛 外務省、汚染牛問題受け

松本剛明外相が、東京電力福島第一原発事故をめぐる日本食品の海外向け風評被害対策に関し、これまで『日本で流通している食品は安全』と強調してきた主張を自粛するよう外務省内に指示したことが七日、分かった。
放射性セシウムで汚染された牛肉が全国に流通したため。
当面は再発防止策と『食の安全』に関する情報公開の徹底に力点を置く考えだ。
日本産食品については当面、牛肉であるか否かを問わず安易に『安全』という表現は使わないようにする。
汚染牛問題で『日本で流通している食品は安全』との主張に疑問が投げかけられた以上、明確な根拠を示さずに安全性を強調すれば『相手国に不誠実な印象を与える』(外務省幹部)と判断した。
汚染牛肉問題で、外務省が作成した見解は『暫定規制値を超える牛肉が流通した事実については、関係省庁が再発防止に向けて対応している』と説明。
その上で『迅速で正確な情報提供に全力を挙げる』としている。
大使館など在外公館に対し現地の関係当局、輸入関連業界、報道機関を対象に再発防止と情報公開に取り組む日本政府の姿勢を積極的に説明するよう求めた。
汚染牛肉問題に絡み、日本にとって最大の輸出相手国である中国が、輸入規制緩和方針を保留する考えを日本に伝達。
外務省筋は『汚染をめぐる懸念は牛肉からコメへと広がっている。各国が不安に思うのも無理ない。』と認める。
風評被害対策に関し、松本氏は七月八日の記者会見で『日本国内で流通している産品は安全だと説明し、理解を求めたい』と述べた。
その後、肉牛から暫定規制値を超えるセシウムが検出される事例が相次ぎ、複数国が日本側に事実関係を問い合わせてきた。
(2011年8月8日東京新聞)

『ポツダム宣言受諾』日本の無条件降伏

66年前に1945年8月8日に日ソ中立条約を破棄し対日宣戦布告(対日参戦)、9日未明に160万のソ連軍が国境を越え侵攻する。6日朝8時15分アメリカ軍は広島市に対して原子爆弾で攻撃、9日には長崎市へも原子爆弾での都市破壊が行われ両市は壊滅する。
これらに衝撃を受けた日本は急遽8月9日御前会議を開催して即座にポツダム宣言受諾を決定。翌8月10日に連合国に通告した。
世界大戦終結時の1945年に米国は日本の国家予算程度の莫大な費用をかけて完成させていた原子爆弾3発だけだった。
最初の1つがネバダ砂漠のアラモゴル核実験で使ったトリニティー。
残りの2つが広島のリトルボーイと長崎のファットマンで、うちリトルボーイだけがウラン原爆であとはプルトニウムで作られていた。
しかし、このアメリカによる対日原爆攻撃と日本の無条件降服との因果関係は薄いと思われます。
日本が降服を決意した最大要因は矢張りソ連軍の対日参戦であり、敗戦必至の日本としてはぐずぐずしていて(アメリカ軍には良いが)ソ連軍に降服する事態だけは如何しても避けたかったのでしょう。
日本側としては、国体の護持(具体的には天皇制の維持、継続)を最大課題としていたが、1918年のソ連赤軍によるロマノフ朝の滅亡(全員処刑)の恐怖は今でこそ歴史上の『逸話の一つ』に過ぎないが、当時は27年前の忘れる筈が無い『現実の最大懸念』であった。
アメリカ大統領のルーズベルトが(大義に悖る不正義な戦後処理でる)日本の固有領土である千島列島を餌にしてソ連軍参戦に拘った理由とは果たして何か。
アメリカ軍は、硫黄島や沖縄戦の様な辺境の土地での戦闘経験から日本本土での日本軍との決戦のアメリカ軍の損害の大きさを実感していた。
連合国軍(米軍)としては本土上陸作戦(Xデー)は、日本が無条件降伏しなければ必然であるが、ルーズベルトは出来うれば何とかして避けたかった。
硫黄島戦での米兵の死者数は日本兵の3分の1だが、米兵の損害を全死傷者数で見れば逆に2万9千人で米軍の損害数が全滅した日本軍(2万1千人)を上回る。沖縄戦の死傷者は8万5千人で最大の損害を出している。
グアムやサイパンなど外地のバンザイ突撃でのあっけない全滅とは大違いである。
例え辺境とは言え硫黄島や沖縄など自国内での日本兵の抵抗は凄まじい。
本土決戦を挑む日本軍に、米軍は記録的な大損害を出していた。
サイパン陥落で最後の防衛ラインを突破された日本が完敗の無意味な戦争を継続した理由が国体の護持であったように、連合国軍の本主上陸の前にあっさりと無条件降服した理由も矢張り同じで、国体の護持だったのです。
ソ連軍参戦を聞けば直ぐにポツダム宣言受諾、無条件降服する日本の事情(最大の弱み)をアメリカは誰よりも良く知っていた。

『日本の安全・安心神話の崩壊』外務省の無条件降服

日清戦争の勝利(1895年)から30年間の日本軍無敗神話が、事実ではなくて66年前の8月9日に『やっぱり神話』であったことを日本軍無条件降伏(ポツダム宣言受諾)で明らかに成った。
今回の日本外務省の8月7日の『日本食品の安全』の主張の自粛とは、日本国の半世紀にわたって営々と築いていた『安全・安心神話』の崩壊であり、歴史的な転換点にもなりうる重大な出来事(安全安神話の敗北宣言)である。
外務省通達の『安全の主張を自粛する』とは何とも官僚的な表現だが、ようは判りやすい日本語表現なら『危険性を認める。』であろう。
当たり前である。
日本政府の決めたセシウム汚染最大許容値は牛肉1キロ当たり500ベクレル。
ドイツなど欧州国家(成人8ベクレル、子ども4ベクレル)に比べてなんと62-125倍も高い。
これは、どう考えても危険で安心出来ない。
牛肉は欧米のように沢山食べないから良いのだと判断なら、日本人の主食の米の放射能汚染暫定基準が同じ数値である事実は、日本政府は日本国民に対して言い訳出来るはずが無いのである。
ところが開き直って、厚顔無恥にも『安全・安心』との3・11以前と同じ念仏を繰り返す日本政府の無責任ぶりには呆れ果てる。
これではナチスドイツが無条件降伏した5月8日以降、世界中を敵に回してありもしない皇軍無敗神話を宣伝していた大本営とどれだけの違いがあるのか。
何処にも無い『安全・安心』を主張するなどの全く同じ無反省・無責任ぶりは旧日本軍と瓜二つである。

『高すぎる米の基準値』

今現在の汚染されていない日本国内米(3・11以前の前年の収穫)の現状は1kgあたり0.1ベクレル程度以下であった。
ところが福島第一原発事故後に政府が決定した国内米の基準値は、牛肉と同じ1キロあたり500ベクレルの暫定基準値は、去年収穫の古米に比べて5000倍以上の異常すぎる狂気の数値である。
米は幼児でも妊婦でも毎日毎日必ず食べるのです。
ところが日本政府は日本の国民に対してはいたって高姿勢で、『長期間ずっと食べない限り健康に影響はない』という言葉ばかり繰り返しているが、本来なら『土下座して国民に謝罪しても気がすまないほどのことだ。』との韓国紙の言葉を噛み締めて欲しい。
日本国民に対して強気一点張りの日本政府だが、外務省が外国市民に対しては全面的に今までの自分の主張の間違いを認めて撤回した意味は大きい。
今回の外務省幹部の判断である、
『安全との主張に疑問が投げかけられた以上、明確な根拠を示さずに安全性を強調すれば不誠実な印象を与える』との言葉を、それ以外の政府の官庁も大きく書いて額に入れて頭の上に飾っておくべきである。
本来なら、今の経済産業省幹部は、『原発安全神話が完璧に崩れているにも拘らず、明確な根拠を示さず安全であると強調すればするほど不誠実さを印象付けている』と、するべきであるが、正反対の不誠実の極み。
経産省は自分自身の言動で自らの信頼感を日夜破壊し続けている事実に、外務省のように何時になったら気が付くのだろうか。
不思議でならない。
グローバルスタンダード(世界基準)で判断して、日本の安全神話の崩壊(敗北)を認めた日本外務省の判断は常識的である。
対して通産省の判断は、旧日本軍とそっくり同じ現実無視の空論であろう。
日本国内限定でしか通用しない無茶苦茶な論理であり、日本以外から見れば破廉恥で非常識と見られる亡国的無責任の極み。
日本国の信用を害する愚かすぎる国辱的行為である。
3・11以前なら常識だったかも知れないが時代遅れの世界の物笑いの原発安全神話に蝕まれて正常な判断力を失くした通商産業省の思考停止状態の堕落、腐敗は限度を超えている。
海外の判断を気にする外務省と、全く無視するそれ以外の省庁の傲慢な態度の違い(断絶)は大きい。今の日本の政府内の判断格差が大きすぎる現状は異常である。

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4 コメント

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軍部と財閥の解体 (紫煙)
2011-08-08 23:42:23
で、どうにも逃げ場を失った小役人どもは最後に通産と東電を解体したように見せかけてチョンなんでしょうかしら。
「病に苦しみもだえながら死んでいく・・・・」そんな子供が出ないようにと神にでも祈りますよ。
頭髪偽装ハゲ隠蔽不安院の審議官は死ぬまで左団扇悠々自適でお幸せなことです。
返信する
外務省通達を無視する朝日読売など4大紙 (宗純)
2011-08-09 11:41:07
紫煙さん、コメント有難うございます。

この外務省の『安全宣伝の自粛、撤回』との驚きの大ニュースですが、何と読売、朝日、毎日、産経の4大紙は完璧無視する方針らしいのですよ。
掲載しているのは共同通信とか東京など地方紙。ラジオのFM局のニュースでは流れていたが、日本では一番影響力が大きいテレビなど映像メディアでは流さないようです。
電力会社ですが東京電力一社だけでも年間2百数十億円の宣伝広告費を使っていてテレビコマーシャルを流していたのですが、3・11以降では当たり前ですが中止している。
ところがですね。宣伝コマーシャルの中止しているにも拘らず現在でも相変わらず電力会社からのコマーシャル料金の振込みは続いているのですよ。
この不思議過ぎる電力会社のテレビ局に対する大判振る舞いですが、買収目的以外の何かの合理的な理由は考えられないのですね。
腹立たしいですね。
これでは日本の大手マスコミが遠慮して必ず、不都合なニュースは揉み消されるはずですよ。
毎日新聞の8月6日付けの、ハワイ在住で長年CNNで活躍していたフリージャーナリスト並木法子氏の寄稿の題名が、
『米国でも過剰表現、不安をあおっ多面も』なるコラムの内容が、題名の様な内容は書いていないのですね。
記事を書いたのは並木氏だが、この一番目立つ表題(見出し)を書いたのは間違いなく毎日新聞編集部。
何とかして『海外は異常で煽っている。日本国内は冷静で正常である』との印象操作を行っているのですよ。
並木氏の主張を正しく見出しにするなら、小見出しの、
『日本政府に頼らない、頼れない』なのですよ。
これと、毎日新聞の『米国でも過剰表現』『不安をあおった面も』では、意味が180度正反対であり、不真面目すぎる
新聞社としての見識が問われるでしょう。
返信する
「日本安全」スマイル 外務省の宣戦布告? (現田石)
2011-09-19 18:55:07
昭和20年代の日本国の新聞がはたしてどういうものであったか時間があれば追い求めてみたい現田石です。
本論ですが、毎日新聞 2011年9月19日 2面に
「日本安全」つぶやいて
という記事が出ていました。
インターネット版の題名はすこし違いますが本文は同一です。
外務省:「日本安全」つぶやいて ツイッター発信者招待へ
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110919k0000e010026000c.html
内容は、次のようなもの。
外務省は、東京電力福島第1原発事故による日本の農産物や観光などへの風評被害対策として、フェイスブックやツイッターなどソーシャルメディアの発信者を海外から招く準備に入った。(中略)
風評対策事業ではこのほか、日本産品の安全性を伝える著名人のテレビコマーシャルを海外で流し、各国の在外公館で被災地産品の物産展や試食会の開催も計画している。(引用終り)
どうやら、今回の日本国外務省の活動のほうが、本来の外務省らしい活動と思います。8月8日東京新聞の記事内容は、どこかに吹き飛んでしまったのでしょう。
返信する
脳内妄想集団、松下政経塾の玄葉外務大臣 (宗純)
2011-09-20 12:38:29
現田石さん、コメント有難うございます。

1ヶ月前の松本剛明外相の大臣通達が180度正反対に完璧に覆されたのですが、今の外務大臣は極右の前原元代表と同じ松下政経塾の玄葉 光一郎ですよ。
それなら何の不思議も無くて逆に『なるほど』となります。
何と、15億円も使うそうですよ。
呆れる話ですね。
それは自分の『希望』とは正反対で、行えば逆効果にしかならないのだとの厳しい現実がまったく見えないのでしょう。
米議会で従軍慰安婦の非難決議が可決されそうだとして、日本会議とか『作る会』などのお馬鹿な歴史修正主義者たちが連合して首都のワシントンポストに全面広告を出したのですが、この広告のお蔭で対日非難決議に反対していた親日派の議員達が全員沈黙してしまう。
可決阻止の目的が、正反対になったのですが、この連中とは何故一手先しか読めないのでしょうか。
不思議で不思議でなりません。
自分に有利になるようにとの発想なのですが、相手があることを失念しているのですよ。
最低限の、3手先の読みが出来ていないのですから、情け無いですね。
大人としての最低限の常識が病的に欠落していて、これでは幼稚園児程度の判断ですよ。
あるいは痴呆状態の社会性を失った高齢者には良く見られる症状ですよ。
子供でも小学生高学年なら決して行わない程度の間違いですね。
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