哲学者か道化師 -A philosopher / A clown-

映画、小説、芸術、その他いろいろ

スタンリー・キューブリック『アイズ・ワイド・シャット』

2006-04-23 | 映画
 『アイズ・ワイド・シャット』は、わが敬愛するスタンリー・キューブリックの遺作。同氏は、この作品の公開を待たず亡くなりになった(合掌)。
 同作のあらすじを簡単にまとめるなら、結婚生活にだれてきた夫妻があるパーティでの出来事をきっかけにいさかいを起こしてしまう。それ以来奇妙な事件に巻き込まれるが、そのことで夫婦仲は回復する。「行きて帰りし」という物語の形式。
 全編がセクシャルなものに彩られていて、そもそも夫婦のいさかいもお互いに浮気心があるか無いかという議論に端を発していて、事件の最中も夫は女の裸ばかり目にする。そして、作品最後になる妻の言葉も「ファッ○しましょう」という言葉だったりする。まあ、夫婦の媒介項にセックスがあり、重要だと言う話である。事件の全貌じたいは最後まではっきりしなくて、そんな中で重要なのは「ファッ○」なのである。それでいて、作中の中では、女の体は端的なモノのように撮られ独特のエロティシズムを放っている。例えば、死んだ女の裸を動かすと、全身の脂肪が弾力のあるゆれ方をしたりとか。スタンリー・キューブリックの映画全般に言えることだが、全体的に異質な質感のあるフィルム。なんとも言いいがたい。というのは、キューブリックの映画はその質感こそ特徴的で、それというのは語りがたいものだからだ。ある意味、イカれている。
 ただ一つ、言わねばならないのは、キューブリック以外の誰が、女の裸をこんな風に撮ったか、ということだ。ある意味、これがこの映画の全てである。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« PS2版『スーパーロボット... | トップ | 青山真治『ユリイカ』(映画... »
最新の画像もっと見る

映画」カテゴリの最新記事