プラトーン (アルティメット・エディション)20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパンこのアイテムの詳細を見る |
「俺自身が現実だ」
『プラトーン』を観た。戦争映画である。タイトルにもなっている、プラトーンとは、軍隊用語で小隊の意だそうであるが、その名の通り小隊の中での「政治」が描かれる映画。なんでも、監督自身の体験を基とし、ベトナム戦争をはじめてリアルに映画化した映画だそうだが、一方で、本国アメリカではかなり好き嫌いの分かれる映画でもあるそうだ。ベトナム戦争を題材とした映画なら、『フルメタル・ジャケット』や『地獄の黙示録』も観たけど、作品のテーマはあそこまで狂気の方向には振られていない。その代わりにあるのは、良識と冷酷の対立である。
本来ならエリートとしてベトナム戦争に行く必要もなかったクリス・テイラーだが、親や世間の俗物主義に嫌気がさし、志願して社会の底辺の若者たちとともにベトナムに出兵する。だが、そこでの過酷な現実にすぐに後悔してしまう。ある日の行軍中、ベトコンとの関与が疑われる村で、冷酷非道なボブ・バーンズ軍曹は、尋問に非協力的な村民を射殺する。正義感の強いエライアン・グロージョン軍曹はその行為に激怒して、バーンズを問い詰める。このことをきっかけに、小隊はバーンズ派とエライアン派の二派に分裂してしまう。そして、ある戦闘のさなか、敵の回りこみを阻止するためにエライアンが一人で奮戦するが、戦闘区域に爆撃の指令が出、バーンズがエライアンを連れ戻しに行くという。しかし、バーンズは現われたエライアンを目撃者がいないままに射殺する。クリスは、エライアンを殺したのはバーンズだと主張するが…。
この映画ですごいのは、なんといってもエライアン! 仲間の暴虐に異を唱え、孤軍奮戦するものの、反感を買った当の仲間に裏切られて撃たれてしまう。しかし、実際にはまだ生きており、十数人以上の敵に追われ、撃たれながら逃げ、壮絶な最期を遂げている。その断末魔の空を仰いだ姿がDVDのジャケットにもなっているが、これまで観た戦争映画の中でも屈指の名シーンだった。とりあえず、戦争映画が観られる人ならぜひ観てほしい。一応、残酷度は、戦争映画の中では低い方だ。
それに、終盤の戦闘では、主人公が妙に活躍したりと、エンターテインメント性にも長けている。そして最後には、ベトナム戦争を経験したアメリカは、冷酷なバーンズと正義感のエライアンの子であると、ただ、エライアンを称賛するのではなく、省察をもって終わっている。この映画自体、かなり正義感の強い映画であり、僕自身かなり好きだ。良い映画だと思う。