哲学者か道化師 -A philosopher / A clown-

映画、小説、芸術、その他いろいろ

今週の『コードギアス 反逆のルルーシュ』

2007-07-31 | アニメ
 ネタバレ注意
『コードギアス 反逆のルルーシュ』Stage24&25「崩落のステージ」「ゼロ」
 長らく待たされた、『コードギアス』第一期の完結編。今回は、黒の騎士団がトウキョウ租界に攻め込むところからはじまるのだが、ゼロが事前にギアスで仕込みを入れていたこともあり、電撃的な侵攻がはじまる。一時は黒の騎士団の圧倒的な有利かと見えたが、修羅と化したスザクの猛攻、ヴィレッタの記憶の回復、オレンジこと改造ジェレミア卿の襲撃、そしてナナリーをV.V.に連れ去られたルルーシュ=ゼロの戦線離脱などで次第に劣勢に立たされていく。一方で、ルルーシュはコーネリアに母の死の真相を尋ねることができたが、結局母を殺した犯人を知ることはできなかった。そして、ナナリーの連れ去られた神根島についたルルーシュは、追いついたスザクとカレンにルルーシュ=ゼロであることを知られてしまい、ルルーシュとゼロが撃ち合うところで終わる。

 まあ、ゼロの非道さが際立つわけだが、一方でこれまでの主要人物の多分全員が様々な状況で戦うのを1時間に押し込めてテンションを維持した脚本がすごい。テンションの高いまま情報が圧縮されていて、ほどんど富野節のような響きだった。ジェレミア卿の言っていることは半分近く分からなかったが。

 今回謎なのは、おそらくはブリタニアと黒の騎士団の政治的な闘争とは別の理由で、V.V.がナナリーを拉致したことだが、ひょっとして、ナナリーは眼が見えず眼を閉じているため明らかになっていなかったが、ルルーシュと同じ、眼を使うギアス・ユーザーではないかと思いついた。マンガ版ではナナリーがギアス・ユーザーの話もあるようだし、ありうる線かもしれない。それと、C.C.はやはり不老不死の存在で、過去には魔女として扱われ、自身も自分が何ものなのか把握しているわけではない。今後話がどう転ぶにせよ、ブリタニアとゼロがC.C.の一族の残した能力の獲得競争に乗り出すことは確かそうだ。あと、話的にはギルフォードとかリヴァルとかロイドさんとか脇役なのにかっこいい人たちがいた。一番微妙なのは、今後のシャーリーの役割だろうか。一番、メインヒロインぽいイメージなのに、ルルーシュはC.C.とフラグが立ちまくり。あとは、ニーナが完成させた、核関係の技術は誰のものになり、どんな使われ方をするのか。

 今のところ、続編は媒体も時期も発表されていないが、1月から2クール・テレビシリーズで、というのがもっともありそうか。もし劇場版なら、最近流行の(笑)、2部や3部構成とか。OVAだとちょっと中途半端かなあ。
 一応、続編の始まりを予想すると、タイトルは『コードギアス 逆襲のスザク』(笑)。Stage25の終わりから数ヵ月後。ゼロ=ルルーシュとスザクは行方不明となり、黒の騎士団は玉城が仕切り、ブリタニア軍と小競り合いを続けている。そこに、C.C.が黒の騎士団に帰還し、玉城の独裁を退け、黒の騎士団をルルーシュを探すために使う。一方ロイドたちは、スザクを発見し、ブリタニア本国に帰還したスザクは高位の騎士として遇される。カレンさんは、えーと、ブリタニアの捕虜に。そしてスザクに諭され、いやいやながらもスザクの下で働くことに。そして、V.V.にギアスの力をもらう。一方のルルーシュは思考エレベーターに接触し、C.C.やV.V.の一族やその古代遺産のことを、そして世界の姿を知る。とか、こんな感じで。

 ところで、サンライズ的には『コードギアス』はポスト・ガンダムの企画の一つらしいが、そのポイントは明瞭。『ガンダムW』や『ガンダムSEED』シリーズで成功した、男の子にはメカ(と女の子)を、女の子には美少年キャラを配置し(だから、『コードギアス』はキャラクター原案が少女マンガ家のCLAMP。そして『ガンダム00』も同じ感じ)、職人芸的に『DEATH NOTE』(とおそらく『舞-HiME』)のエッセンスをふりかけ、谷口悟朗的娯楽エッセンスでしめる、と。まさに全方位に訴えかける無敵の布陣。ひょっとしたら『コードギアス』は、エヴァ以後のアニメの総決算になるかもしれない。だとしたらこのアニメの後には、アニメが作りにくくなるかもなあ。

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『TAXi NY』

2007-07-31 | 映画
TAXI NY (特別編)

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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 フランス映画『TAXi』のハリウッドリメイク版。リュック・ベッソン原案・プロデュースだけど、やっぱり舞台をニューヨークに移し変えただけあって、別物という印象が大きい。

 話はほとんど原作『TAXi』と同じだが、原作のタクシードライバー・ダニエルの役割が黒人女性タクシードライバーになっている。パートナー役はやはりダメ刑事だが、エミリアンの愛嬌のあるダメっぷり、ドジだけど実は頭はそれなりにキレる、と比べると、かなり救いようのないダメッぷり。
 ただ、物語として原作からかなり変えられているのが、エミリアンの役のウォッシュバーンが車を運転できない理由がトラウマによるもので、ダニエルの役のベルとの関わりの中でそのトラウマを克服するという、アメリカらしい成長物語が付け加えられているところ。

 今回の車はタクシーはフォードのクラウンヴィクトリアの改造車(実際には、マスタングを改造して作っているらしい)で敵役の女強盗団の車はBMWの改造車。BMWということで、高級車の代名詞であるメルセデス・ベンツより格下に感じる人もいるかもしれない。が、日本でこそそうであれ、実はメルセデスはトラックやタクシーなども作る大衆車メーカーの側面ももっている(最近、街でメルセデスのハッチバックをよく見かけるが、僕はアレは趣味が悪いと思っているが…)ので、世界的には高級車の代名詞はBMWに近いらしい。だから、フォード式と呼ばれる大量生産方式を生み出した大衆車の代名詞フォードと、高級車の代名詞BMWがイエローキャブの聖地NYで対決するのは、『TAXi』というタイトルからして、原作のプジョー対メルセデスという対決に比しても、全くもって正しいという言うほかない。しかし、プジョー406の洗練されたラインとフォードのちょっとずんぐりを比べると、色気はなくなっている。もっとも、セクシー美女たちが赤や紺のBMWで爆走するのは、良かったが。

 あと、舞台をNYに移しかえたせいか、全体的なテイストがシビアになっている。ウォッシュバーンなんかクビ扱いだし、ベルのタクシーも原作では突っ込んではいけないポイントだった、違法改造にチェックが入っている。しかも原作では損傷しなかった主人公のタクシーも、何度か損傷している。また、原作ではギャグ的なところもあった拳銃だが、本作ではウォッシュバーンが振り回したり、シャレにならない意味でのシビアな力になっている。この辺りは、さすがに引っかかった。カーチェイスシーンの迫力は、ある意味原作以上。結局、原作がエスプリ(というのか?)で味付けしたところを、ガチンコなシビアさに置き換えたせいで、ニュアンスが違うのだろう。

 悪い映画ではないと思うが、やはり原作を観てからでないと、わざわざ観ることもないかなあ。やっぱりプジョーが最高。

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庄司卓『トゥインクル☆スターシップ14 あなたはこれから何がしたいの?』

2007-07-31 | ライトノベル
トゥインクル☆スターシップ14 あなたはこれから何がしたいの? (ファミ通文庫 し 1-1-14)
庄司 卓,まりも
エンターブレイン

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 盛り上がった! クライマックス直前(次巻が最終という予定)ということで、謎の解決/解明がちらつかされ、前回に続きセーラが熱い! 面白かった。

 今回も(このシリーズには多い)、パーティやお祭りの話。ユズリハがいなくなり、トゥインクル☆号は雰囲気が沈んでいる。一方で、ユアンの命を受けたグロリオーサの社員が、セイジとユッカ、ソウとミズキ、ダスティとマリーを引っ付けようと画策するが、そこにショーンの承諾を得たハインドマーシュがユアンを制裁すべくセイジたちののった豪華客船に襲い掛かる。その中で、マリーやセーラは自分の将来やりたいことを見つけていく…。物語の終わり、青春の終わりに向けて美しい話である。

 しかしよく考えてみると、主人公セイジのラブコメ的フラグは、実はほとんど立っていない。このままだれと引っ付かないまま終わるのか。それと、謎の解明のちらつかされたままで、ビーストの正体がだいぶ分かったという以上のものでもないし。多分、これらを次巻で全部やろうとすれば、かなりあわただしくなるだろうから、じっくり1話上下巻で描いて欲しいところ。1、2巻も上下巻構成だったし。いずれにせよ、今まで読んできて良かったと思えるような最終回を期待したい。

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『ル・ブレ』

2007-07-30 | 映画
ル・ブレ リミテッド・エディション

日活

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 『ル・ブレ』というフランス映画を観た。明らかに『TAXi』シリーズをパクッたジャケットが気に入っていたからだ。しかも、車は『TAXi』のプジョー406のセダンじゃなくて、当時「世界一美しいクーペ」と言われたプジョー406のクーペだ。そんなわけで、『TAXi』のパロディみたいな映画を期待していたのだが、どうもその期待は外れたよう。

 あるギャングのリーダーが警察に捕まり看守長と親しくなって7年。リーダーは看守長に宝くじを買うことを頼んだのだが、買った宝くじは1500万ユーロの大当たり。しかしその当選番号が放送された次の日看守長は仕事を休み、リーダーは看守長が宝くじを持ち逃げしたものと思い、かねがね計画していた脱獄を実行に移す。一方、看守長も宝くじの当選を知ったものの、宝くじは妻に預けており、しかもその妻はモロッコで行われるレースの救護班として旅に出たところだった。リーダーは看守長を捕まえるものの、事情を知り、以降、リーダーと看守長は相棒同士として、看守長の妻を捕まえる旅にでるのだった。しかし、そのリーダーにかつて裏切られたギャングがリーダーを追っていて。

 全体としては、コメディがかったB級アクションアニメといったところか。しかし、ところどころのギャグの間などには光るところあり。それに、前半の一場面だがプジョー406クーペのカーチェイスシーンなどは、『TAXi』のパロディをやりながらも、『TAXi』よりもカーチェイスらしいカーチェイスをやっていて、迫力があった。まあ、結局はバカ映画で、最後には心地よい(?)脱力感が。それにしても、リーダーかっこいいっす。

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今週の『さよなら絶望先生』と『アイドルマスターXenoglossia』と『ひぐらしのなく頃に解』

2007-07-29 | アニメ
『さよなら絶望先生』第4話
 OPから女の子の縛り…。なんか全編から下世話な雰囲気を感じる。どうも、同じスタッフの『ぱにぽにだっしゅ!』と比べると、重い印象があるんだよなあ。「絶望先生」なんだから当たり前か。案外突っ込みづらし。

『アイドルマスターXenoglossia』第17話「迷子の兎」
 やっぱり、というか今さらというか、雪歩は千早に心酔してるよう。雪歩はそろそろトゥリアビータに帰って千早に会えるということで喜んでいるのだが、一方で春香との友情を裏切りがたいものを感じる。けれど結局トゥリアビータに帰ることにし、モンデンキンドジャパンにはトラップの置き土産。やっぱ雪歩は黒い。この先、雪歩が量産型エピメテウスに乗って春香と戦う場面とかはありそうだ。
 それと、トゥリアビータはなんらかの計画のために、モンデンキンドジャパンを交渉の場に引きずりだそうとちょっかいを出していたらしいが、少なくともカラスはモンデンキンドを力で押さえつけることで、何かを得ようとしているらしい。「おかあさま」というトゥリアビータの創始者にして指導者のことも語られていたが、すでに死んでいるのではないか。しかも、その計画は人々を平等に救うというものらしいから、逆に言えばモンデンキンドは一部の選ばれた人々だけを救う計画を行っているのだろう。iDOLのコアでも使って地球脱出用の宇宙船でも作ろうというのかな。あるいは、現在はiDOL関係の力かなんかで支えられているオービタルリングが壊れて、地球に隕石が降り注ぐXデーが予言されているという話かもしれない。そろそろ佳境かなあ。

『ひぐらしのなく頃に解』第3話「厄醒まし編其の弐 無力」
 とりあえず「対象a」なんていうラカン派のニッチな専門用語をEDのタイトルにするセンスが素敵。
 羽入と話す梨花ちゃん(CV田村ゆかり)の厭世ボイスがすごい。これは田村ゆかり史上(どんなだ)に残る名演ではないか。そして、甲子園投手の弱みをつく圭一の話術。投手のあのフェチは嫌だなあ。
 実は原作ゲーム『ひぐらしのなく頃に』は最初の部分をちょっとやっただけなので、あまり語れない。そのうちPS2版の「祭」でやりたいとは思うのだが、長そうだなあ。アニメ版でエッセンスだけでも楽しめればよいのだが。

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スタンリー・キューブリック『ロリータ』

2007-07-29 | 映画
ロリータ

ワーナー・ホーム・ビデオ

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「ロリータ。ドロレスの愛称。悲しみとバラの味」

 「才能あるクソッたれ」こと、スタンリー・キューブリック(クーブリック)の『ロリータ』を観た。「ロリコン」の語源になったアレ、同名のナボコフの小説の映画版だが、世相が関係してか、いくつか変更がある。たとえば小説版は、ロリータが12歳だが、映画はハイスクールのティーンエイジャー。ロリどころか、むしろ「胸が揺れ」と形容されるほど発育している。常套句で言う、健康なお色気というのに近いかもしれない。エチいシーンもないし。
 どうでもいいが、アフィリエイト投稿のだめに「DVD」→「ロリータ」と検索したら、アダルトビデオばかりうん百本も出てきた。そりゃそうか。

 あらすじ。
 中年のフランスの文学者のハンバートは、クィンティという男を探しある城を訪れるが、何らかの事情とクインティの乱心した態度に激昂し射殺してしまう。そして、彼が思い出すのは四年前の出来事だった。
 四年前、ハンバートは講師として招かれたアメリカの大学がはじまるまでの間、保養地で暮らそうと思い、下宿(というのか?)先を探していたところ、ある母子家庭の家でロリータという美しい少女を見つけ、そこに下宿することを決める。しかし、むしろその母親のほうにハンバートは気に入られ、彼はロリータと暮らすために、ロリータの母と結婚するが、彼女は新婚生活にロリータを疎ましがり、彼女を全寮制の学校に入れると言い出す。そのことにハンバートが反対したことにより、ロリータの母がハンバートの日記を読み、彼の目的がロリータであり、ロリータの母のことはバカにしていることが知られてしまい、彼女は激昂した挙句、自殺してしまう。そして、ハンバートとロリータの逃亡生活のような生活が始まる…。

 エロチシズムとかはほとんどないので、原作とはニュアンスが違うのだろうが(僕は原作小説は未読)展開が二転三転するストーリーテリングのうまさで、かなり面白い。ただし、登場人物がみんなバカだったりダメだったりするので、見ていてむかつくシーン多し。ハンバートなんか大人気ないなあと感じることが多いのである。ロリータの魅力もわからなくはないのだけれど、あれほどまでみんなコロリといってしまうのはいまいち納得できないものが。ハンバートはロリータの魅力をニンフェット(ニンフ)の二面性に例えている。つまり一方では天使のように純真で、一方では悪魔のように傲慢な。言いたいことはわかるが、まあどんな女性が気に入られるかなんて、時代によって大分かわるから、世代的な問題なのかもしれない。

 キューブリックには珍しいドラマトゥルギーに溢れた「読ませる」映画だが、登場人物たちの性格により、むかつくこと多し。白黒で2時間半強という長さもあり、人によってはつらいかもしれない。

「私を狂気に追いやるのは、ニンフェットの二重の性格だ。
 夢みるあどけなさと、一種異様な俗悪さが同居する」

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今週の『魔法少女リリカル☆なのはStrikerS』

2007-07-28 | アニメ
『魔法少女リリカル☆なのはStrikerS』第17話「その日、機動六課(後編)」

 とりあえず、もうちょっとマシなサブタイトルをつけられなかったのか、と突っ込みたいのだが、話としては色々と動いた回だった。結局、スカルエッティ一味の目的としては、なんとかという会議ではなくて、六課とヴィヴィオとギンガ・ナカジマだったよう。というわけで、ヴィヴィオとギンガが連れ去られ、六課の基地は全壊し、敗北者とけが人多数と。さらに、スバルとギンガがナンバーズのような(?)サイボーグであることが判明。スバルはSEEDよろしく、スーパーモードになると。終盤に向けての布石としてはありがちだけど、良いエピソードだったとは思う。まあ、敵方も殺せる状況で殺さなかったので、止めをさせない状況というのをフォローに作っておいたほうが良かったと思うが。

 しかし、設定が多すぎて、第一期、第二期を見ていない僕には分かりづらい。Wikipediaとか専用Wikiサイトとかで設定をちょっと勉強して、ようやくわかる程度。これだけ壮大な設定を作っているのだから、ギャルゲー的雰囲気(変身シーンなど)や頻繁にかもし出されるセンチメンタリズムやホイップクリームのような甘さがなければ(あと作画の向上)、魔砲大戦モノとして僕はかなり評価したかもしれない。でも、それがなければ「魔法少女」とは言わないか。

 ところで明日は参院選。正直、民主党が、しかも参議院で勝っても日本の政治がそう変わるとは思わないが、赤城農水大臣のような国賊(宮台的表現)が出なくなる程度には、政治に緊張感を持ち込めるかもしれない。投票に行かれたし(無論、投票相手は任意でであるが)。

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『カポーティ』

2007-07-27 | 映画
カポーティ コレクターズ・エディション

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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「君の日記を貸してほしい。読みたんだ。僕が君を理解できなければ、世の中は君をいつまでも怪物と見なすだろう。僕はそれを望まない」

 最近は読まなくなったのでそうともいえなくなったのだが、学部時代はアメリカのロストジェネレーションの特に短編をよく書く作家が好きだった。たとえば、フィッツジェラルドやO・ヘンリ、サリンジャー、ちょっと時代は下るがオースターなんかもだ。そして、もちろんカポーティはもっとも好きな小説家の一人でだった(ただし、『冷血』は怖くてながらく積読中)。そんなカポーティが『冷血』を書き上げる過程と葛藤を描いた映画が『カポーティ』なので見てみた。

 物語のはじまり、カポーティは『ティファニーで朝食を』(一応断っておくが、オードリー・ヘップバーン主演の映画とはまったく話が別もの)などの成功で、当時売れっ子の作家であり、得意の話術で社交界の人気者であった。そんな彼がある日新聞の小さな記事に興味を引かれる。それは、ある片田舎で起こった一家の惨殺事件だった。カポーティはすぐさまその田舎に飛び、関係者に話を聞き、さらに二人組みの犯人とコンタクトをとった。カポーティは犯人の話を聞くにつれ、共感を深め、彼をもう一人の自分だというまでになる。取材を重ね、小説は次第に書きあがり、発売前の朗読会でも評判を得る。しかし、犯人からは事件当時の犯行の様子を聞き出すことができず、また死刑を宣告されていた彼らは再審請求出し、死刑の執行が何度も延期される。彼らが死刑に処されない限り、カポーティは小説の結末を書くことができないのだ。犯人への共感と自身の小説を書き上げたいという欲望に葛藤するカポーティ。また、犯人自身はカポーティの小説が、自分たちの死刑を取り消させる有力な材料になると期待を抱く。それゆえに、カポーティは自分の小説を『冷血』と名づけたことも言えない…。

 カポーティのフルネームは、「トルーマン」・カポーティであり、冒頭で彼は自分は嘘を付かないと述べるのだが、犯人に小説の題名を聞かれるくだりなどに幾度も嘘を重ねている。この嘘が、カポーティの葛藤をよく表している。小説の完成のために友人でもある犯人の死刑を願ってしまうというカポーティ自身が『冷血』に重なる。さらに、小説のうまくいかなさに、友人の小説の成功などがかさなり、カポーティの交友関係も破綻をきたしていく。そして、犯人の死刑執行に立会い、小説を書き上げるが、それ以降小説を書き上げることが出来ず、アル中で死ぬという、鬱るんです、な話。『冷血』はノンフィクションノベルというジャンルを開いたが、『カポーティ』という映画自体、カポーティの伝記的な物語なので、『冷血』と『カポーティ』という作品が内容レベルでも形式レベルでも重ねあわされていて面白い。映画自体を長く感じたり、ちょっと映画としての迫力に欠けるきらいはあるものの。

 それに僕にとっては、犯人に共感するカポーティに共感するという体験が印象的だった。なかなかこういう葛藤に感情移入させるのは難しいのだが、この映画はある程度までこれを成功させていると思う。それに不幸な幼少時代や、周りにヘンに見られた体験などを語られると、うんうんとますます共感してしまう。ちょっと実存に響くものがある。

 まあ、カポーティの人物や作品を知らないととっつきにくい映画ではあるが、それでもロストジェネレーションという時代の空気を感じさせる良い映画だと思う。やはりカポーティを知らないことにはどうにもならんが、カポーティの作品を読んだことがある人は是非見て欲しい。僕も『冷血』を読みたいと思うが、この映画を観た後だと、ますます重いなぁ。

「たとえて言えば、彼と僕は一緒に育ったが、ある日彼は家の裏口から出て行き、僕は表玄関から出た」

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『TAXi3』

2007-07-26 | 映画
TAXi3 DTSスペシャルエディション

ジェネオン エンタテインメント

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 毎回プジョー406がかわいそうになる『TAXi』も三作目。今回は主人公の暴走タクシードライバー、ダニエルとドジ刑事エミリアンの恋人たちが同時に妊娠し、二人はその対応に大わらわになる。一方で、マルセイユではサンタの格好をした強盗団が7ヶ月も連続で犯罪を犯しており、問題となっている。今作はこの二つの騒動が軸に話が進む。
 が、である。ダニエルとエミリアンの恋人の話に尺の多くを取られており、サンタ強盗団との対決を描くのに十分な尺を取られていない気もする。そのため、『TAXi2』で頂点を迎えたドタバタのアクションコメディは今回は不完全燃焼気味。最もよかったのが、冒頭でダニエルがシルベスタ・スタローンを客に乗せて暴走し、TGV(フランス版新幹線)を追い抜いたりするシーンだった。そのほかは、ほとんど爆走シーンらしいシーンがないのである。特に今回は強盗団とのカーチェイスがなかったのが痛い。ダニエルとエミリアンの成長は描けたものの、それがこの映画に期待されているものかどうか…。

 今回のダニエルのプジョー406の改造は、嘘かホントか酒を入れてガソリン(フランスだから軽油か)を強化し、それをターボが何かで燃焼させるというもの。この改造で、300キロ強のスピードを出し、警察の追跡車をあっさりと突き放し、TGVまで置いてみせる。また、今回は季節は冬、最後の舞台は雪山で、キャタピラを履いた406が雪上車よろしく雪山をかけ上っていく。果たして、どんなシチュエーションを想像したら、あれだけの装備をつけることになるのか。まあ、突っ込んではいけない。

 というわけで、恋人関係のギャグもちょっと空回り気味だし、『TAXi3』は不完全燃焼。『1』のメルセデスや『2』の三菱のような、犯人グループとのカーチェイスもないし、観客の少なからずは肩透かしを食らわせられたのではないか。ちょい残念。

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『TAXi2』

2007-07-25 | 映画
TAXi 2(期間限定特別価格版)

パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン

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 昨日に引き続き『TAXi2』。今回もベタベタなネタが満載。日本から防衛長官がフランスを訪れるのだが、長官を超国粋主義の日本のヤクザが拉致・洗脳し仏首相を殺させることで、日本とフランスの国際関係を悪くしようとするので、長官を奪還するという話である。そして、マルセイユの警察署長が考えた長官の護衛作戦の名前が「ニンジャ」で、全編ニンジャの連呼が続き、ヤクザの尖兵もニンジャである。色々と製作スタッフの日本理解を疑うような描写多し。大体中国と見分けついてないみたいだし。
 今回のダニエルのタクシーは406が後期型に変わり(もっとも前期型とはほとんど見分けはつかない)、ボタン一つで滑空用の翼が現れる。それでジャンプをすること数回、しかもタクシーでパラシュート降下するシーンもあり、空飛ぶタクシーとなっている。もう、ダニエルがスピード凶とかいう問題ではない。それに、あの変形ギミックとか絶対重量重くなるし、壊れるだろうという突っ込みをしたいのだが、突っ込んではいけないポイントなのかもしれない。
 それに対し今回の敵方の車は三菱のランサーレボリューションⅣ。てっきりトヨタが出てきて大衆車対決をするのかと思ったが、三菱の方がWRC(世界ラリー選手権)で活躍している分、フランス人の覚えがよいのかもしれない。プジョーも206がWRCで活躍しているし、そういう対決の構図を移し変えたのだろうか。ただし、ランレボⅣは日本から持ってきたという設定なのに左ハンドルなのが地味に残念。
 今回も、狙ってB級映画っぽいドタバタをやっているが、前作と比べてもテンポがよく1時間半という短い映画にしても、だれることがなかった。楽しい。深く考えてみるような映画では断じて、ない。

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今週の『School Days』

2007-07-25 | アニメ
第4話「無垢」
 というか今週の世界様。
 サブタイトルが無垢…。これは、誰の何のことを言っているのだろうか。世界様じゃないとしたら、男性恐怖症気味の言葉様か。今時白馬の王子様がぱっかぱっかやってくるという想像力も大したものだ。無垢とは、ちょっとニュアンスが違う気もするが。
 さて、いよいよ伊藤誠が本性を表し始めたわけだが、それにのっかってしまう世界様もどうかと。もともと好きだった男の子の恋愛の手伝いをするものの、恋愛の特訓と称して恋人ごっこをするものの、そのまま流されていく安さというのは…。まあ、来週あたり二股化しそうなので、それからの修羅場っぷりがこの話の本領か。

 …どうも最近突っ込みにキレがないな。。。

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『TAXi』

2007-07-24 | 映画
TAXi

ポニーキャニオン

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 今度『TAXi4』が公開されるということで、『TAXi』のシリーズを予習することにした。もともとこの映画には興味なかった(リュック・ベッソンをあまり好きでない)のだが、僕の好きなプジョーのしかも406が映画の一方の主人公ということで、車萌えで見てみた。いずれ就職したら、プジョー406Sportという超マイナーな名車(左ハンドル5MTという、日本なめんなよな仕様)を買ってやろうと思っているのだ。ちなみに『TAXi』のシリーズは1~3まではこの406セダンが主人公だが、4になって去年発売された406の後継車である407にバトンタッチされている。比較的端正でオーソドックスなかたちだった406から、ワイルドなラインの407に乗り換えて、よりダイナミックなカーチェイスが期待できるかもしれない。

 で『TAXi』だが、ダメ刑事のエミリアンとダメ刑事にスピード違反でパクられたタクシードライバーのダニエルが、反抗予告を出し赤いベンツで逃走を行う銀行強盗をプジョー406で捕まえるという単純な話。ただ、リュック・ベッソンの脚本は、ヤカンの火を消し忘れて、家が焼け落ちるなどと、ベタベタのギャグが多くて僕はやはりちょっと苦手か。フランス映画というとちょっとおしゃれなイメージがあるが、実際は日本のアニメ並みにベタベタである。
 しかし、ちょっと補足しておかなければならないことがある。というのは、日本ではベンツもプジョーも「外車」で一くくりにされかねないが、プジョーは「フランスのトヨタ」と言われることもあるほどの、普通の大衆車である。プジョー406などは、一応アッパーミドルクラスとされているが、日本で言えばカローラかタクシーの運ちゃんが乗っている黒塗りクラウンみたいなものだ。そのふつーの車の406にベタベタと改造を施し、190キロも出せるようにして、ドイツの高級車の代表であるメルセデス・ベンツを翻弄するというところに、この映画の「しゃれ」があるのだ。これを見逃すと、この映画の面白さは半減してしまう。小男のエミリアンがドイツ大女に想いを寄せたりと、フランスのドイツに対する憧れ半分やっかみ半分がこの映画の動因になっているというわけだ。

 しかし、青がイメージカラーのプジョーの、端正なラインの406を真っ白に塗りたくり、かつウイングやフルエアロなどのがちがちの装備をつけるのは、私的にはツライなあという印象が。もったいない…。

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今週の『瀬戸の花嫁』と『もえたん』と『らき☆すた』

2007-07-24 | アニメ
『瀬戸の花嫁』第16話「マイノリティ・レポート」
 久々の新キャラ登場。剣士タイプですか。悪くない感じではあるけれど、出番は少ないながらルナや廻の方がよい味を出していた。特にルナの罵詈雑言は。明らかに『らき☆すた』の小神あきらとキャラがかぶっているわけだが、口の悪さであきらがルナに勝つことはないだろう。まあ、いつもどおりテンションが高くおもしろかったという他に特に書くことがあるでもなく。

『もえたん』第4話「恐怖大作戦」
 このアニメでは変身シーン以外は魔法少女が機能してないわけだが。あと、当たり前のことではあるが、英語の勉強にはならん。そもそもちょっと訳の怪しい文とかあるし…。しかし、高校生たちの中でヒロインたちだけが、小学生並みの背格好なのがちょっとシュール。パロディ多めのばかアニメということでいいのだろう。

『らき☆すた』第16話「リング」
 どの辺が「リング」だったのだろうか?
 まあ、それはいいとして、上の二つや『さよなら絶望先生』を含め、世は空前のパロディ・ギャグアニメブーム。これは、いいのだろうか? こういうメタ的なネタは、普通小ネタとして軽く散らばしたり、奥の手として取っておかれる(今や陳腐になってしまったが夢オチは典型)ものだが、あまりやりすぎるとネタの陳腐さを笑うパロディ・ネタ自体が陳腐になってしまう。ひょっとしたら、パロディ・ネタを続けることで、ギャグアニメ自体のリソースが枯渇してしまうのではないかと思うのだが、それでもやはり空前のパロディ・ギャグアニメブームなのである。どうしたものか。
 で、『らき☆すた』自体は僕は、たとえば『瀬戸の花嫁』ほど面白くはないと思うのだが、大学院の友達とかにどう思うか聞いてみると、結構好評なのである。パロディ小ネタの散らばし方とか、あまり洗練されてないと思うのだがなあ。それでも、オタク・カルチャーでの(宮台真司の言葉で言えば)それって「あるある」的な小話を振っている(今回の話で言えば、作品の通称しかしらないために、マンガが見つからなかったという話)あたりに、まだ掬いようがあるのかもしれない。
 ところで、前回、次回の「らっきーちゃんねる」は小神あきらのライブだと予告していたので、あきらと白石稔の歌うラジオ版「らっきーちゃんねる」のテーマソングが流れるのかと期待していたが、カラオケで演歌かYO! EDで着物を着た今野宏美が再び「三十路岬」を歌っていたが(明らかに口パクだが)、確かにうまいしこぶしも利き、売れない演歌歌手みたいな格好が似合っている…。つーか、畑亜紀は演歌も作詞できるのか…。期待は外されたが、声優やスタッフの芸達者なところが見られたのは、おもしろかった。才能の無駄遣いでなければよいのだが。

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『2010年』

2007-07-23 | 映画
2010年

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 『2010年』というそっけないタイトルだが、この映画はアーサー・C・クラークの『2010年宇宙の旅』として知られる「オデッセイ」シリーズの二作目の映画化である。そして、監督こそ交代しているものの、SF映画の金字塔にして、スタンリー・キューブリック監督の代表作『2001年宇宙の旅』の完結編と言ってもよい内容の映画である。「ツァラストゥス書く語りき」にあわせてプロローグに『2001年』のあらすじが示されるし。
 ちなみに、小説版の「オデッセイ」シリーズのことについては以前書いたので、気になる人はblog内検索をして参照してください。

 映画版『2010年』の小説版との違いは、ツェン号関係の話が全くなくなるなど変更点はあるものの、基本的な骨子は同じ。ただし、2010年の時代にソ連とアメリカが未だに冷戦をやっていて、本国の情勢の変化に合わせて宇宙船内部の人間関係の雰囲気が変わるという、ちょっと政治サスペンス的な味付けがなされているところが、最大の違いだろうか。ただ、色々なことが起こる話を二時間強の尺でまとめたために、エウロパの生命の話や、ボーマンの地球帰還の話など、小説版を読んでいないと、唐突で分かりにくいところはある。それに、映像面は木星の映像など目を見張るものはあるものの『2001年』に比べるとちょっと安っぽいイメージの映像もある。撮影技術は『2001年』のときより進んでいるはずだが、まあ『2001年』は執念と奇蹟の映像だから仕方ないのかもしれない。それでも、『スターウォーズ』の新三部作とかと比べれば、木星など天体の描き方には存在感を感じる。

 まとめれば、小説版を読まないと話がつかみづらいが、それでも超名作『2001年宇宙の旅』の完結編と言えるだけの出来になっていると思う。『2001年』だけ見て、唖然とさせられた人でも、『2010年』を見れば、いくらか(本当にいくらかだが)納得できるのではないかと思う。あーでも、何で木星が太陽化した理由や経緯とかは、ちょっと説明不足かもしれない。やっぱりこれも名作の小説版を読んでから見るのが正しい見方かもしれない。

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今週の『アイドルマスターXenoglossia』

2007-07-22 | アニメ
『アイドルマスターXenoglossia』第16話「アイドルとアイドル」
 OPが変わりましたな。うーん、いや『微熱S.O.S!!』の方が好きだった。どうやら終盤に向けてiDOLたちは武装が追加され、エピメテウス・シリーズは量産され、インベルはサンライズアニメらしく(まあ二号ロボではないが)パワーアップする模様。

 前回は春香がインベルの元カレを見つけてショックを受ける話だったけど、今回は春香が真アイドル・デビューして、インベルに構ってあげる時間が取れなくなり、インベルの側から疎外感を感じるという話だった。まあ、終盤まで春香とインベルの奇妙な関係のすったもんだが繰り返されるのだろう。しかし、今さらアイドル・デビューしなくたって「アイドルマスター」なんだから、『サクラ大戦』みたいに最初からアイドルとアイドルマスターを兼ねる設定でいけばよかったのではないかとも思う。話が複雑になるのと、後半に春香とインベルの距離が遠ざかる状況を描くためにとって置いたのか。あるいは、春香はアイドルとして売れず、すぐに引退してしまうというだけの話か。

 ところで、今回地球をめぐる三本のオービタルリング(多分、月の欠片がリング状にまとまったもの)を支えているのがiDOLらしいという話があったが、惑星規模の天体現象を数メートルほどのコアが支えているというのは。現在四体のiDOLがモンデンキンドジャパンかトゥリアビータで使用されているから、行方不明のテンペスターズが関わっているか、ありえないはずの6体目のiDOLがいるとかいう話になるのだろうか。

 あと地味に、真のトゥリアビータ定着と雪歩の黒化が確定。

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