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哲学者か道化師 -A philosopher / A clown-

映画、小説、芸術、その他いろいろ

フランソワ・トリュフォー『アメリカの夜』

2011-05-17 | 映画
アメリカの夜 特別版 [DVD]
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ワーナー・ホーム・ビデオ

 地下鉄の階段を一人の青年が登ってくる。彼は人通りを渡って、一人の壮年の男に向かい合い、その頬を叩く……。それは、今まさに撮影されている映画の一シーンだった。

 そんな冒頭から始まるフランソワ・トリュフォーの『アメリカの夜』は、映画を撮影する人々の姿を描いた映画だった。実に、上映時間3時間20分。監督自身が、映画の監督役として出演したり、特殊撮影の裏側を描いたりと、映画撮影の裏側を実に映画的に見せているという、いかにも映画愛にあふれた映画らしい映画である。というのは、描かれている映画製作者同士のドラマが影に表に彼らの制作する映画に影響し、それが作品の二面として緊張感を与えている。それは、映画の表と裏、光と影というものでなく、カメラの奥での映画製作者たちの人間性が映画の映画らしさの裏打ちとなっているという感じに。
 思うに、映画が好きな人ほどうれしくなる映画だと思う。素敵な映画だ。

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『コラテラル』

2011-05-08 | 映画
コラテラル スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]
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パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


 コラテラル"Collateral"とは、巻き添えのこと。タイトルの通り、善良なタクシーの運転手がロス・アンジェルスに降り立ったトム・クルーズ扮する殺し屋の仕事の手伝いをさせられるという話。ストーリーはこの設定が想像させる通りのもの。
 しいて王道で言えば、冷徹な殺し屋と善良なタクシードライバーが自分たちの生き方を交錯させて、共通の問題を昇華する、かお互いに倒れるまでぶつかり合う、と言ったところだが、この作品はそこまでもっていけていないというのだろうか。とにかく、盛り上がらない凡作という印象。サスペンス的な緻密さもないし、スリラーとしての緊張感もないし、アクションの派手さもない。結果、どうも締りのないエンディングを迎えてしまう。率直なところ、トム・クルーズはいろいろあるけど、それにしてもハンサムだなあという拾い上げ方しかできないような映画である。というか、時期からしてトム・クルーズに主役やらせておけば売れるだろうという見込みで作った映画でないことを願いたいのである。

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ロバート・ロドリゲス『デスペラード』

2011-05-07 | 映画
デスペラード コレクターズ・エディション [DVD]
クリエーター情報なし
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


 ロバート・ロドリゲス監督のマリアッチ3部作の2作目、『デスペラード』。しかし、私は1作目の『エル・マリアッチ』を観たことがない。

 エル・マリアッチという元ギター弾きを主人公とした復讐劇である。エル・マリアッチは、恋人を殺し、また自分の手を撃ち抜き音楽家としての生命を絶った、ブッチョという男に復讐を図り、とある街に流れつく。そこでブッチョの手がかりを掴むものの、同時に手下からハン反撃を受け、まきこまれたカロリーナという女性と助け助けられの仲となる。

 ストーリーは、ひねりもなにもないマカロニ風味の王道ウェスタン復讐劇。そして男臭い男と女臭い女のラブストーリー。端役として、クエンティン・タランティーノの出演しているが、いかにもタランティーノ監督が好きそうな映画である。見所は、マリアッチの友人の持ち出すバカ銃器である。マリアッチ自身も、ギターケースに拳銃や手榴弾など銃器をたくさん隠し持っているのだが、電話で呼ばれて出てきた友だち二人は、ギターケースそのものがマシンガンになっていたり、ロケットランチャーになっていたり、ノリは『トライガン』の牧師さんである。元ネタか。しかも、友だち二人は手下を倒すだけ倒したところでやられてしまい、マリアッチからはろくに供養をされた様子もないという、不遇っぷり。『トライガン』や『ジオブリーダーズ』(や『ブラック・ラグーン』?)など、バカ銃器が登場するバカガンアクション好きにもっぱらおすすめする映画だろうか。でなければ、よっぽど暇な人にしかお勧めはしない映画だ。

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『魔法少女リリカルなのは The Movie 1st』

2011-05-04 | アニメ
魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st<通常版> [Blu-ray]
クリエーター情報なし
キングレコード


 主にこの劇場版とTV版の比較になるが、率直に言えばTV版の方に軍配をあげたい。
 というのは一口に言えばTV版の方が過剰であったからだ。

 『リリカルなのは』シリーズと言えば、「魔法少女」ならぬ「魔砲少女」と呼ばれ、一つにはなのはたちの魔法バトルの派手なシリーズであった。そんなわけで、「魔法少女」ものを自称しながら、そのジャンルのパロディ的な作品だった(特に第一期は)。一見日曜朝9時のアニメのような絵柄や雰囲気でありながら、その実パンチラや裸の変身シーンがあったりというのも、如何にもパロディくさい。さすがに、『ぱにぽにだっしゅ』ほど過剰な演出はされていないが、今や名物となった新房監督の演出もその印象を強めている。その結果、TV版には、日曜朝9時の魔法少女もののノリを受け継ぎつつ、膨大な過剰さを抱えた不思議な作品となった。かと言って、作品がパロディに終始するわけではなく、女の子同士の友情という、いかにも魔法少女ものらしいモチーフを貫き通したストーリーを根底に据えている。
 ストーリーとしては、それなりに満足して暮らしていた女の子が、それでも日常に少しの物足りなさと寂しさを感じていたが、当面の敵ではあっても本当の友達になれそうな女の子と出会い、その子を救うために頑張るというものだ。しかし、このストーリーが主題歌や演出とうまく噛み合い、最終回の「名前を呼んで」というセリフに収束するのは、非常に作品として完成しつつ、それに一段上乗せしたような感動だった。正直かなりの傑作だと思う。これが、TV版についての僕の評価だ。自転車に例えれば、一生懸命回しているペダルに対してその感触以上に自転車が進んでいる、といった感じで過剰さがそれに上に作品を推進させているのである。
 翻って劇場版はと言えば、よくも悪くも過剰さが薄まり(尺の問題ももちろんあるだろう
、すっきりとしてアニメ映画としてはよく完成されている。これはこれで良い。けれど、TV版を推進させていた過剰さがなくなったことで、感動は物足りなくなっているなという印象。しいて言えば、『無印なのは』よりも『なのはA's』に作品の印象は近い。まあ、それはそれで傑作ではあるのだけれど。

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『ダイハード4.0』

2009-07-19 | 映画
ダイ・ハード4.0 [DVD]

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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 「ダイハード」シリーズと言えば90年代を代表するアクション映画だが、その2000年版あるいはサイバー版の『ダイハード4.0』を観た。今度は、都市の交通システムや軍事システム、金融システム、さらに原子力発電を含めたエネルギー・システムを掌握したテロリストとの戦い。相棒はテロリストにクラッキング・プログラムのパーツを知らぬ間に作らされていた少年であり、マクレーン刑事と少年がが西海岸を移動しながら暴れまわるという話である。
 マクレーン刑事と言えば、「世界で一番不幸な男」と呼ばれるタフガイ(というかおっさん)で、サイバーな世界とは無縁なようだが、そこは相棒の少年がカバーし、アナログ全開の頭脳戦で戦っている。
 アクションシーンはもちろんド派手で、話の展開も実にテンポよく進むが、特に気に入ったのは「英雄」についての主役二人のやり取り。「英雄」なんて他にやるやつがいないから、嫌でもおれがやらなくちゃいけないというマクレーン刑事に対し、少年はそれでもやるあんたこそ英雄だというようなことを返す。なるほど、一度大きな事件を解決しただけの英雄ならまだいいが、運命的に何度も「英雄」の役を演じなければいけないとすると、とんでもない話だなあと。というのは、命をかけた決死の戦いを何度もしなくちゃいけないというだけでも大変どころではないし、ある意味「英雄」なんてものは社会や共同体に暗に「死にに行け」と言われたような存在である。生きて帰ってきたら良いものの、そうでなければ体よくただ犠牲や人柱にされたようなもので気付かれもせず、失敗すれば非難も集中する。そんな「運命づけられた英雄」になった本人も大変なら、家族や周りの人も大変で、マクレーン刑事は妻と離婚し、娘にも嫌われ、警察の中でも孤独なようである。しかし、最近やっていたアニメでも、社会のどこかには貧乏クジを引く人間が多かれ少なかれ引く人間は必要なわけで、それを意識的に引いているマクレーン刑事は大した人物だと、少年にならって言えそうである。
 ま、ド派手なアクション映画を見てスカッとしたい人には大のお勧め。

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『真昼の決闘』

2009-07-19 | 映画
真昼の決闘 [DVD] FRT-031

ファーストトレーディング

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 クリント・イーストウッド繋がりで観た『真昼の決闘』。ついでに言うと、ハリウッドでかつて黄金時代を作っていた西部劇映画を見たくて借りた映画で、タイトルにもひかれたのだが、全く真昼の決闘ではなかった。原題は”Two Mules For Sister Sara”(シスター・サラの二匹のラバ)というもので、趣からしてだいぶ違う。話は、荒くれ者に襲われているシスターをイーストウッドが助け、メキシコにいるフランス軍を追い出すという目的で偶然に一致していた二人が、目的地まで旅をし、ゲリラとともにフランス軍をやっつけるという話だった。普通に面白かったけど、全く「真昼の決闘」ではない。だいたい夜襲だし。ということで、よほどのクリント・イーストウッド好きでなければ観る必要のないマイナー映画である。

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『リーサル・ウェポン』

2009-07-06 | 映画
リーサル・ウェポン [DVD]

ワーナー・ホーム・ビデオ

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 ベトナム戦争で得た麻薬利権で荒稼ぎする組織を、妻が死んで自殺志願のあるベトナム戦争の英雄(しかしハリウッドには、どれだけのベトナム戦争の英雄がいるのだろうか?)と黒人の50歳の部長の警官コンビが追うという話。
 正直つまらなかった。まあ、妻を失って人生を絶望した男が、パートナーを得て立ち直るというだけのドラマしかない。まあ、一時期のハリウッド・アクション映画らしい映画である。

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『コマンドー』

2009-07-06 | 映画
コマンドー [DVD]

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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 退役し引退した英雄的軍人が、かつて見放した仲間からの復讐と、共産主義体制の追放された独裁者が復権のために、娘を誘拐され、かつて解放した国へ向かい、その国の指導者を殺してくることを命じられる。しかし、英雄はあっさり飛行機を脱出し、独裁者たちの追跡をはじめ、(ほぼ)単身彼らが潜む島に忍び込み、ぶっとばすのだった。

 この映画の何が凄いかというと主演のアーノルド・シュワルツネッガーの筋肉である。登場シーンからして、いきなり胸筋のアップがうつされ、肉体各部の筋肉、そしてカメラが引いて、片手にチェーンソー片手に丸太をかついだシュワルツネッガーが山を降りてくるというものだ。知りあいの女性、この冒頭を観ただけで観るのをやめたらしい。さもありなん。そりゃそうだ。というわけで、この映画の見どころは、(見たければ)シュワルツネッガーの筋肉である。ちょっとロマンスぽいこともあっただろうか。なかったかもしれない。笑いながら突っ込んでみるべき映画である。そう言う意味では、TV放映されたときの訳がぶっとんでいたらしいが、それが正しかったのかもしれない。

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『氷の微笑』

2009-07-06 | 映画
氷の微笑 [DVD]

パイオニアLDC

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 元ロックスターがセックス中にアイスピックで殺される事件が起こる。ニックはその殺害手段と小説としてすでに描いていた作家のキャサリンを疑い、捜査を行うが、その妖しい魅力に侵されて行く。やがて、キャサリンとの関係から元恋人との関係を揺さぶられ、さらに何度も捜査中に通行人を射殺してしまった過去を探られ、ニックも狂い、捜査は二転三転していく。

 シャロン・ストーンの妖しい魅力、迫力は定評通りで、なんと言ってもエロい! 痴女かもしれないが。
 が、シャロン・ストーンのエロさばかりが有名な映画だが、サスペンスとしてもかなりよく作られてくいる。ちょっとオチは分かりにくいのだが、要は衝動殺人に魅入られた作家が、他人の衝動殺人を取材して小説を書き、自らの衝動殺人を最高の快楽として身をゆだねようとしている、という話なのだろうか。キャサリンは非常に頭の良い人物として描かれているが、その彼女が具体的な意図をもって行動しているのではなく、その自分自身すら超越するような衝動に興味をもち、身を委ねているというのが、物語の最大のポイントなのだろう。その頽廃がなおさら、この映画をエロティックに見せるのだろう。ま、こんな小難しい理屈よりも、観客はシャロン・ストーンはたいへんエロかったという記憶を残してこの映画を見終えるのだが。けしからん。

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『モダン・タイムス』

2009-07-06 | 映画
モダン・タイムス [DVD]

パイオニアLDC

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 チャップリンの代表作を観た。正直、面白くなかった…。これは、私の観る目がないせいかもしれないが。

 話は単純で資本主義的労働が人間性を阻害するという話。工場で酷使されたチャップリンが狂気に陥り、事件を起こして収監されるが、貧しい女性と出会い、幸せな生活を作ろうとするが、世の中は非常に厳しくてうまくいかないという話。

 たぶん、だが、チャップリンの芸風は陰に日向にコピーされ過ぎて、コメディとして陳腐になり過ぎてしまっているような気がする。そんなわけで、非常にベタベタなコントを声なしで延々と見せられているような気が。正直、笑えない…。

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