哲学者か道化師 -A philosopher / A clown-

映画、小説、芸術、その他いろいろ

押井守『Avalon』

2006-04-17 | 映画
 押井守の実写SF映画『Avalon』を観た。といっても、押井監督の考えでは、編集を加えられた(特にCG)映像はみんなアニメらしいので、一応アニメ映画になるのか。
 まあ、ネットゲーの話である。『.hack』シリーズの伊藤和典が脚本を担当しているせいか、ネットから帰還できない人(真ネトゲー廃人)というネタがかぶっている。超リアルなネットゲーム「Avalon」をクリアするために、主人公・アッシュは幻のSAクラスのミッションへの扉を開き、そのSAクラスに挑む…。
 まあ、いつもの押井守節というか、結構説教くさい。作品の重要な主張として、ネトゲー廃人が「世界とは思い込みだ」というようなことを言っているが、そのとおり。ネットゲームの世界だって、ちょっと変わってはいるが本当のことには違いない。だが、「世界が思い込み」だとして、なんでも思いこめばいいというわけではない。デリダやポール・ド=マンなど、少なからぬポストモダニストが言っているが、現実とは、葛藤や失敗、抵抗のようなネガティヴなものなのだ。この場合で言えば、思い込みの裏切られることが「現実」なのである。とは言え、この作品内の情報は錯綜していて、実は何がどうなっているのか確実にわかるわけではないのだが(ゲームから覚めたと思ったら、そこはまだゲームの中…)。
 ちなみに、映像としてはすごいが、おもしろいかというと…微妙。うーむ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クリシュトフ・キェシロフスト『殺人に関する短いフィルム』

2006-04-17 | 映画
 クリシュトフ・キェロフストはポーランドの映画監督。故人。筆者はかれこれ、4年くらい前からときどき思い出すようにこの監督の映画を借りて見ているが、未だに名前を暗記できない。カルト性の強い監督で、「映画監督のための映画監督」と呼ばれてもいるらしい。端的には、芸術的な映画を撮る監督。
 さて、この監督は、偶然をモチーフにした映画を撮ることが多いが、本作もそのひとつ。目的意識失った青年とイヤミなタクシードライバー、正義感ある若手弁護士の三人が、青年がタクシードライバーを理由無く殺してしまったために、つながりをもってしまう。作品全体に影が強調されて、いやーな感じ。入念な殺人描写や、悪意の混じる人々のやりとり。暴力をテーマとしているというが、本当にぐえっとくる。
 ところで、物語には必然が必要だが、だからこそ物語のはじまりには偶然が必要である。なぜなら、必然には論理的な繋がりが必要だが、物語の始まりには、その前がなく、したがって物語「以前」には繋がりようがないからだ(この繋がりをあえて求めると、『マクロス・ゼロ』など、『~ゼロ』のような、続編ならぬ前編が新たに製作されるわけだ)。したがって、偶然がなければ物語は始まりえない。より正確には、物語の始まりは常に偶然である。だから、物語の始まりに設定された「偶然」が、その物語の固有の値として最後まで機能するのだ。結論から言えば、物語のはじめにはどんな偶然をもってきてもいい。その代わりに、以後の展開においては論理的な繋がりが必要となる。だから、物語の途中において、なんらかの状態を達成したいなら、物語を逆算してその始まりとなる「偶然」を見出せばいい。もっと言えば、魅力的な偶然が始めにない物語は、後にも魅力的足り得ないだろう(たとえば、アニメ『かみちゅ!』では、第一話の始めで、何の根拠やエピソードもなく(つまり偶然に)、主人公・ゆかりが神様になったことが明かされる。その後には、誰もゆかりがどうして神様になったのか追求しないが、それは視聴者からしてもことさら追求することではないのだ)。
 しかし、すごい映画だ。カラーだがトーンがモノクロに近くて、フィルムの質感が荒かったりするせいか、今の映画には見られない、フィルムの厚みのようなものを感じる。また、純粋に映画をやっているという感じ。物語でも動画でも音楽でもなく、それらを足したものでもなく、ただ映画なのだ。まとめて観るには体力の要る映画監督なので、これからも思い出しつつ観たいと思う。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ARIA The NATURAL』他

2006-04-17 | アニメ
 今回の『ARIA』は結構良かった。というか、初めて藍華に魅力を感じた気がする。まさか、あんなツンデレキャラだったとは…(筆者は特にツンデレ好きというわけではないが)。私的には、『ARIA』は灯里が突っ張らない話のほうが好みかな。まあ、渡辺アルには甲斐性があるのかないのかわからないが。いつものほのぼのした話とはちょっとテイストが違う、ベタなドキドキ話だけれど、こういうのもありかと(どんなのだ)。

 『Fate』は、「stay/night」編(セイバー編)でいくことが確定してしまって、特に見所がなくなってしまった…。一番燃える「アンリミテッド・ブレイドワークス」もアーチャーが使ったのはともかく、このまま原作を忠実になぞるなら士郎がこれを使う機会はない。士郎とアーチャーの対決もありえないし。ちと残念(まあ、あれでギルガメッシュに勝てる道理がよくわからないのだが)。原作でのセックス・シーンもうまく回避し(笑。というか、もともとの量の少ない士郎の魔力をセイバーに流して回復するのか疑問だが)、このまま一直線か。新OPで、士郎とアーチャーが戦っているシーンがあるが、あれに意味はあるのだろうか。というか、いっそひいきの声優の多い『スクールランブル・二学期』に移ってしまおうか。

 『いぬかみっ!』は、ファンには悪いが、第二話を見た限り、これ以上ないくらいダメだった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする