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社長に退陣勧告 巨額損失でも責任取らない日本郵政の迷走

2017-05-21 | いろいろ

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社長に退陣勧告 巨額損失でも責任取らない日本郵政の迷走

「我々と似た分野を持ち、成長できる可能性のある企業なら聖域なく買収対象にしたい」

「前向きにやるべき案件があれば、減損の直後だが全く関係ない。4000億円の減損を生かして決断したい」

 発言の主は右肩上がりの成長企業のトップではない。2017年3月期に約4000億円の減損損失を出し、07年の民営化以来初めて赤字転落した日本郵政の長門正貢社長だ。15日の決算会見で、野村不動産ホールディングスの買収報道の真偽を問われると、否定するどころか、前のめりで応じたのである。4000億円もドブに捨てておきながら、恐るべき能天気だ。

 巨額減損の原因は先代の西室泰三前社長が子会社化した豪物流トール・ホールディングスの業績悪化とされているが、真相はヤブの中だ。日本郵政は15年5月に約6200億円でトールを電撃買収。英フィナンシャル・タイムズが「49%のプレミアムをのせた」と報じたほど高値掴みだったうえ、当初から大損のにおいがプンプンしていたというのである。

 経済アナリストの菊池英博氏はこう指摘する。

「買収費用6200億円の内訳は純資産4000億円と、トール社に要求されたのれん代2000億円とされています。

 ところが、M&Aを繰り返してきたトール社は純資産の中に過去に買収した企業ののれん代3000億円を紛れ込ませていた。つまり、日本郵政はのれん代に5000億円も支払っていたのです。子会社化したことから、20年でのれん代を償却しなければならず、毎年250億円もの計上に迫られていた。15年3月期の日本郵便の最終利益は150億円ほどですから、そもそもが身の丈に合わない過剰な買収劇だったのです。野村不動産HDの買収を実現するには、数千億円規模の資金が必要になる。これまた大き過ぎる買い物です。長門社長が積極姿勢を見せているのは、トール減損問題から世間の関心をそらす目くらましに利用する意図があるのではないでしょうか」

■「ウルトラC」で軍資金捻出

 トール社買収にまつわるメチャクチャなスキームはそれだけではなかった。軍資金を捻出するため、日本郵政は14年に保有していたゆうちょ銀行の株式をゆうちょ銀に買い上げさせたという。自社株買いで1兆3000億円ほどあったゆうちょ銀の内部留保を吸い上げる「ウルトラC」をやってのけ、それを流用したのである。

 長門氏がゆうちょ銀の社長に就任したのは15年5月、西室氏からのバトンタッチで日本郵政社長に昇格したのが16年4月だ。トール社が傾いていくのを知らないはずがないのだから、経営責任は免れない。引責辞任は当然だ。ところが、「トールは結果的に買収価格が高かったというレッスンになった」と他人事のようにサラッと総括。6カ月間の役員報酬20%カットを免罪符に、巨額減損問題に幕を引こうとしている。

元副会長らが長門氏に怒りの辞任勧告

 長門氏の厚顔無恥ぶりには関係者からも怒りの声が上がっている。長門氏に対し、菊池英博氏と連名で5月8日付で辞任勧告書を送ったのが元幹部の稲村公望氏だ。総務省政策統括官から日本郵政公社常務理事に転じ、日本郵便副会長などを歴任。超大物幹部である。稲村氏はトール社買収を強引に進めようとする西室氏に翻意を進言してきた。

「トール社の損失処理に使う原資は長年にわたって蓄積された国家の財産であり、国民の資産です。長門氏はトール社の業績を十分に知る立場にあったにもかかわらず、適切な経営指導をした事実はない。それで生じた損失を国民の財産で処理しようとは言語道断です。西室氏に責任をすべて押し付けて許されるはずがない。そもそも、減損に使った4000億円はどこにどう消えたのか。市況悪化でトール社が業績不振に陥ったというだけで、具体的な説明はありません。トール社をめぐる一連の動きはとにかく不可解そのものなのです」(稲村公望氏)

 日本郵政が我が物顔で右から左へ動かしているカネは、国民の金融資産だ。日本郵政とグループ2社は15年11月に株式公開。株式売却益を東日本大震災の復興費用に充てることを決めた安倍政権の期待に応えるため、「西室氏が成長シナリオを醸し出そうと無理筋のトール買収をまとめた」(金融関係者)と当初から市場では言われてきた。それが、いまやお荷物もお荷物。赤字転落が発覚後、日本郵政株は売り浴びせられ、売り出し価格を下回る低空飛行。政府はいまなお日本郵政株の80.5%を保有しているのだから、国民の財産はどんどん目減りしているのである。

■円高でアッという間に債務超過

 ゆうちょマネーの動きも不透明感を増している。ゆうちょ銀は経営方針を変更。従来の国債への投資を減らし、米国債を中心とする外債や株式といったリスク資産への投資にのめり込み始めているのだ。

 この動きは銀行法に違反しているとの指摘がある。第1章でうたう〈銀行の業務の公共性にかんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保するとともに金融の円滑を図るため、銀行業務の健全かつ適切な運営を期し、もつて国民経済の健全な発展に資することを目的とする〉に抵触する可能性が高いのだ。

「西室氏は政府の意を受けて株式や外債のリスク資産比率を高める方針を決め、長門社長は18年3月末までに60兆円まで拡大することを明言しています。株式投資は元本保証がありませんし、為替変動の影響を受ける外債も元本保証とは言い難い。それを無視して突っ込むのは重大な銀行法違反ですし、それに伴うリスクも大きい。17年3月期決算によると、16年末時点で米国債が中心とみられる〈その他証券〉に53兆円を充てています。米国債を1ドル=115円の為替レートで買い入れたとすると、1ドル=100円まで円高が進めば評価損だけで3兆円ほどの損失が出る。これに株の暴落が重なれば10兆円近い損失が発生するでしょう。ゆうちょ銀の自己資本は8.6兆円ほどですから、一挙に債務超過に陥る可能性がある。民営化でデタラメ経営が横行し、米国のもくろみ通りに日本の富が米国債という形で流出している。こうなると、あれだけ騒いだ郵政民営化によるメリットは何ひとつありません」(菊池英博氏=前出)

 つくづく、郵政民営化は大失敗だったんじゃないか。そのくせ日本郵便は6月にはがきの料金を10円値上げし、62円に引き上げる。消費増税以外では23年ぶりだが、値上げの前にトップの責任追及が先だろう。

 もっとも、この値上げにしても年間の利益改善効果は数百億円規模にしかならず、焼け石に水。だから、今度は野村不動産と組むのか。誰も責任を取らず付け焼き刃の場当たり経営を続けるのであれば、今後の見通しも真っ暗だ。郵政民営化大失敗という政治的責任も追及しなければならない。
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