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加計学園と安倍首相の深い関係を示す、一枚の写真を公開しよう
ジャーナリスト 伊藤 博敏氏
「40年来の仲」で「腹心の友」
国会を揺るがす森友学園騒動を読み解くキーワードは、安倍晋三首相の「右派人脈」と家庭内野党である「昭恵夫人」である。
ともに強烈な個性、強固な思想性、国を憂うる信念は感じられない。日本会議がそうであるように、安倍首相を支えるのは統一性のない曖昧模糊とした集団であり、保守としての一貫性が感じられない。
従って、日本会議大阪の創設時からのメンバーであり、教育勅語を園児にそらんじさせる戦前回帰の籠池泰典・森友学園理事長が、安倍政権から裏切られと感じた時、民進党や共産党など野党を巻き込んで身の保全を図ろうとしても、違和感を覚えない。
同時に、籠池夫人のメールに「祈ります」を連発する精神性重視の昭恵夫人は、森友学園園児の愛国教育に涙を流すかと思えば、反原発、反防潮堤で反体制派と“共闘”、本人は一貫性がないとは思わない。これも「さもありなん」である。
籠池氏の「愛国の情」が偽物だとはいわないが、資産がなく小学校設立の要件を満たさないことを自覚した籠池氏は、安倍首相夫妻の曖昧な保守性を利用することで夢を実現しようとした。
曖昧でも「安倍一強時代」が続けば、役人は権力者の意向を忖度する。それが8億円値引きの国有地払い下げの病理であり、安倍政権にとっての最大の危機は、「右派人脈」に易々と絡め取られる政権の軽さと、無定見な昭恵夫人の活動を「私人」として許す安倍首相の弱さをさらけ出したことだった。
森友学園騒動は、やがて補助金適正化法違反などを大阪府が告発、大阪地検や大阪府警が国策捜査に着手して、籠池氏の個人犯罪で終わる可能性が高い。
しかし問題の根は、「右派人脈」や「昭恵人脈」を駆使して“侵入”する安倍首相の友人知人がいること。会ったこともないという籠池氏は、その性格と合わせてトリッキーな存在だが、もっと深奥に入り込んだ“お友達”がいて、その最右翼が加計学園(岡山市)の加計孝太郎理事長である。
不穏な動き
「第二の森友」として国会などで追及されているが、安倍首相自ら「40年来の仲で腹心の友」と公言する加計氏が、国家戦略特区を利用して愛媛県今治市に獣医学部を新設するものだけに、その経緯を探ろうという動きが出るのも当然だろう。
注目を集めているのは、加計学園「岡山理科大学」の獣医学部新設が、「獣医師は十分に足りている」という獣医学界の反対もあって52年ぶりだったこと。そして、今治市が学園に対し36億7500万円の土地を無償譲渡。さらに、校舎建設費の補助金として、今後8年間で64億円を支払うなど厚遇をもって迎えることだった。
政府による今治市の国家戦略特区認定は、07年以降、今治市が構造改革特区として15回にわたって申請していたものの、獣医師界の反対などで跳ね付けられていた。だが、自民党が民主党から政権を奪い返し、安倍氏が首相に返り咲くと事態は一変する。
15年6月に閣議決定された日本再興戦略で獣医師養成系大学・学部の新設に対する検討事項が明記され、同年12月の国家戦略特区諮問会議で今治市を10番目の特区とすることが決まり、16年11月の同諮問会議では「新たに取り組む分野での需要に、具体的に対応するための獣医学部を、一校に限り特例的に設置認可の対象とする」との文言が盛り込まれた。
これを受けて、特区担当の内閣府と文科省は、今年1月4日から11日まで公募。手を上げたのは岡山理科大だけだった。市議会の決定も早く、3月3日には、土地の無償譲渡と補助金負担が決まり、既に工事は始まっており、来年4月には開校する。
安倍政権になってギアチェンジ、一気に加速した印象で、安倍首相は社民党の福島瑞穂議員が、3月13日の国会質疑で、「特区会議の議長だった首相は、加計氏とゴルフも会食もする仲。政策が歪められていないか」と追及。安倍首相は色を成して反論した。
「土地の無償譲渡はここ20年のうち25件ある。タダで貸与した例はもっとある。人口減少に困った自治体が土地を提供して学校法人に来てもらうことが地域の活性化になる」
それは、その通りである。既得権益を打ち破るために特区はあり、今治市は獣医学界のカベを突破した。ただ、人口減少の地に赴き、自治体に土地と補助金の面倒をみてもらうことがビジネスモデルとなっている加計学園の場合、安倍氏との近さが自治体や官界の配慮と忖度を生んだのではないか。
「腹心の友」
加計学園は大学から幼稚園までの関連30施設を持つ一大学校法人グループで、安倍夫妻と加計氏が、度々、会食とゴルフを楽しむ仲であるのにとどまらず、昭恵夫人が神戸市の御影インターナショナルこども園の名誉園長を務めるなど経営にも関与する。
安倍首相が学園のイベントでスピーチすることも多く、14年5月、千葉県銚子市の「千葉科学大学開校10周年」という、特別だとは思えない式典に、忙しい公務の合間を縫い、岸田文雄外相を引き連れて参加、加計氏との関係の深さを見せつけた。前述の「腹心の友」発言は、このときのものだ。その時の写真が、次の二枚だ。
この千葉科学大学は、銚子市に約15ヘクタールを無償譲渡されたうえ、校舎建設費として93億円の補助を受けた。宮崎県延岡市では、九州保健福祉大学の新設と学部増設に際し、110億円弱の補助金を受けている。
また、兵庫県淡路島の南あわじ市では、吉備国際大学が県立高校の廃校後の校舎を居抜きで譲渡を受けた。リフォーム費と合わせた補助金額は約23億円にのぼる。
加計氏は、家族ぐるみのつきあいの友人であるとともに、日本会議の別働隊といわれる育鵬社の教科書発行の支援団体「教科書改善の会」の賛同者に名を連ねており、そういう意味では安倍首相の「右派人脈」であり「昭恵人脈」でもある。
加計氏は、籠池氏と同列に並べるのが失礼な印象を与えるほど、深く安倍首相夫妻と交際、ゆるやかな保守性で連帯する。籠池氏との関係を質されて「妻か私が関与していたら議員を辞める」と、啖呵を切った安倍首相は、加計氏とのことを聞いた福島氏に、「働きかけたことはないし、もししていれば責任を取る」と、明言した。
「一強安倍内閣」を支える役人たちが、忖度するに至る彼らの意識と行動については、まだ思いが至ってない。騒動を大きくしたこの想像力のなさも、欠落の一つに加えるべきだろう。
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