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ことごとく裏目に出た安倍官邸シナリオライターのなぜ  (抄)  Plus

2017-04-30 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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ことごとく裏目に出た安倍官邸シナリオライターのなぜ

 森友問題で安倍官邸の打つ手はことごとく裏目に出て、安倍昭恵夫人が「瑞穂の國記念小学院」建設に深く関与していたことや、何かにつけ「神に祈る人」であることを世間に知らしめる結果になった。

 まことに拙劣な政治技術で、これまで安倍官邸の筆頭秘書官として安倍政権を操縦してきた今井尚哉氏が書いたシナリオとは到底思えない。辣腕を誇る今井秘書官はどこに行ってしまったのか。

 それとも今井秘書官がこのシナリオを書いていたのだとすれば、安倍政権の落日は思っていたより早まる。安倍政権を「一強」に育て上げたシナリオライターにシナリオを書く能力が失われたとしか思えないからである。

 権力とは政治のシナリオを書く能力である。国内外に渦巻く様々な力のベクトルを読み解き、それを下地に自分が目標に到達するまでの進路を描く。そしてそれを可能にすべく、政治家、官僚、メディアを要所要所で利用しながら国民世論を形成する。

 あるところには飴を配り、あるところには厳しく締め上げる「太陽と北風」を駆使しながら、最後は一気呵成に目標に到達する。その過程を誰にも気づかれずにやるのが最も巧みな政治で、対立を煽り力づくで成し遂げるのは最も愚かな政治だと言われている。

 フーテンが政治取材の前線にいた時期は田中角栄氏が日本政治のシナリオライターだった。角栄氏はロッキード事件で有罪判決を受け刑事被告人であったが、中曽根総理は角栄氏のシナリオ通りに動かざるを得ず、米国もキッシンジャー元国務長官が何度も目白の田中邸を訪れるなど、日本政治は「闇将軍」角栄氏の思うままに展開していた。

 そのシナリオを狂わせたのが金丸信、竹下登、小沢一郎氏らによる創政会結成で、それがきっかけで角栄氏は病に倒れ、角栄不在の政治状況となった。その時、角栄氏の秘書早坂茂三氏はフーテンに「田中に代わってシナリオを書けるのは中曽根しかいない」と言ったが、現実には中曽根シナリオと金丸シナリオが激しくぶつかりあい、フーテンは権力闘争のダイナミズムを知ることになった。

 「政治のシナリオを書く」という権力行為は誰にでもできることではない。国内外の力のベクトルを読み解く能力、目標を目指す進路を描く能力、そしてそれを可能にするため政治家、官僚、メディアを動員する能力がなければならない。第二次安倍政権でシナリオを書くことになったのは安倍総理ではなく政務秘書官に就任した経産省出身の今井尚哉氏である。

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別Webより  Plus

 今井氏は第一次安倍政権で事務の秘書官となるが、1年余で安倍総理はぶざまな退陣劇を演じ、彼は短期で役所に戻ることになった。

 その後、資源エネルギー庁次長となった今井氏は福島原発事故によって脱原発に傾く民主党政権に原発再稼働を働きかけ、原発再稼働路線を敷くことに成功する。

 そして第二次安倍政権発足と共に安倍総理に乞われ政務の秘書官に就任すると、第一次政権の失敗を繰り返さないシナリオ作りに取り掛かる。

 第一次政権では「お友達内閣」と揶揄されるなどメディアに批判的に見られたことからメディア対策を徹底した。まずNHKを篭絡するのが第一と籾井会長体制を誕生させ、理事の粛清人事を行って反対派を一掃し、今井氏はその後も籾井氏の延命に尽力した。

 護送船団の日本の放送界とその系列関係にある新聞社が右に倣えをするのは当然の帰結である。

 次に今井敬元経団連会長を叔父に持つ今井氏は財界をバックにつけるため、武器の輸出入を認める「防衛装備品移転三原則」を制定して財界に飴を与え、自民党への政治献金を復活させた。安倍政権がTPPに力を入れたのもその流れである。

 また第一次安倍政権が米国のブッシュ・ジュニア政権から必ずしも友好的に見られていなかった反省から、今井秘書官は露骨なまでの米国すり寄りを演出する。

 米連邦議会演説や「70年談話」には直接筆を加えたと言われ、右派的思想の強い安倍総理の「調教」にも加担した。

 そして米国から言われるままに行った安保法制で国民からの批判が高まると、その批判をかわすため「一億総活躍社会構想」をひねり出し、また「伊勢志摩サミット」を利用して、増税先送りのための資料を各国首脳に配るなどして問題となった。

 フーテンは安倍総理がかつての米国レーガン大統領と同じ腹話術の人形だと思っている。つまり役者であってシナリオライターは別にいる。

 第一次政権では安倍本人の考えを出してみたが、その失敗に懲りて第二次政権では今井秘書官のシナリオ通りに動いているように見えている。

 森友問題によって我々は昭恵夫人に5人も秘書が配置されていることを知らされたが、そのうちの3人は経産省出身で、その一人が森友学園のための口利きと分かるFAXを送信していた。この経産省出身の秘書の事実上の上司は今井政務秘書官と考えられる。つまり昭恵夫人と森友学園の関係について今井秘書官は何から何まで知っていたはずである。

 各役所も昭恵夫人の秘書からの問い合わせは、昭恵夫人が関与していると同時に安倍総理人形の腹話術師である今井秘書官が関与していることを知っている。だから問題の発覚に官邸は衝撃を受け、必要以上の否定を繰り返し、繰り返すごとに不利な状況を作り出した。

 今井シナリオライターは政権の状況を俯瞰できる立場に居れば、冷静な対応を取れていたかもしえないが、自らの部下が関り、下手をすると自らの責任に及ぶ可能性を知って、強い「全否定路線」を貫くことにした。

 「自分も妻も関りはない。関りがあれば総理大臣も国会議員も辞める」と安倍総理に言わせたシナリオが今回の致命的な失敗の始まりである。

 今井秘書官の消費税先送り方針は財務省との間に深刻な対立を招いた。また日ロ外交を今井氏が主導して経済協力を前面に出した北方領土交渉も外務省との間に対立を生んだ。

 そしてTPPは米国にトランプ政権が誕生したことで絶望的となり、委縮していたメディアも森友問題では安倍政権の対応に疑問を呈するようになった。今井シナリオには次々に綻びが見え始めた。

 レーガン大統領と同じ腹話術の人形に過ぎない安倍総理は、腹話術師のシナリオがなくなれば人形を演ずることもできなくなる。そういえばレーガン大統領夫人のナンシーは、安倍昭恵夫人と同様に「スピリチュアル」な信仰にのめり込み、「星占い」で夫の行動を決めるようになった。それが原因でリーガン主席補佐官が辞任する。

 リーガン氏は「レーガノミクス」を主導する財務長官を務めたこともあり、レーガン大統領の腹話術師と見られた人物である。大きな発言力を有していたが、ファーストレディの「スピリチュアル」な信仰に反発して辞任した。

 フーテンには他国の無関係な話とは思えない。

 安倍官邸の未熟すぎるシナリオについていけないと考える与党議員が増えていくように思う。4月解散とか7月都議選とのダブル選挙とか、「錯乱」としか思えない話が出てくるのはその裏返しである。やはり「ポスト安倍」を巡る動きが忙しくなるとフーテンには思えるのだ。
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