白川勝彦氏の「永田町徒然草」より
*****
空虚なドタバタ騒ぎは終わった。さぁ、これから真剣勝負が始まるぞ。
16年05月28日
No.1830
No.1830
最近、テレビの情報ワイド番組を見ていると、社会・芸能ネタと同じくらいの割合で、政治ネタが流されている。しかし、政治ネタといっても、ほとんど芸能ニュースと同じノリの政治情報番組ばかりである。ひとつの理由は、取り扱うマスコミの意図的な視点と、これに迎合するコメンテータなどの的外れの発言が、芸能ネタと同類にしてしまうからだ。もうひとつの理由は、政治・政治家そのものが劣化してしまったからである。
私のような政治人間にとって、政治は厳粛なものであり、命懸けの営為である。私も、国会議員の時、いろいろな情報番組等に、けっこう出た方である。テレビに出ることは、自分たちの考えを広く国民に知って貰う絶好なチャンスなのであるが、党内外への影響・反応は大きく、それなりの覚悟を持たなければ、出演する訳にはいかなかった。大袈裟にいえば、テレビでの発言そのものが、命懸けの政治行動だった。
いろいろな情報でごった返す情報ワイド番組の中で、私の心を痛めたのは、沖縄の強姦殺人事件(婦女暴行殺人事件 ― どの社も、死体遺棄事件と報道している)と、シンガーソングライターの女子大学生に対する殺人未遂事件。そして、熊本地震に関する情報だった。これらは単なる社会ネタではなく、政治的にもいろいろな問題を提起している。多くの情報は、流されるが掘り下げが足りず、問題の本質を国民に伝えていない。最近のニュース報道は、万事においてこうである。
マスコミが、官邸の意向を受けていちばん報道したかったのは、伊勢志摩サミットとオバマ大統領の広島訪問であった。しかし、サミットについていえば、度外れの警備に関する報道ばかりに終始してしまった。警備ばかり報道したって絵にはならない。わが国の警備態勢は、いつもはこうではなかった。もう少し頭を使った、スマートな警備だった。それが、中国じゃあるまいし、今回は人海戦術ばかりだった。
サミットについて報道すべきことは、本来山ほどあった筈である。それを報道してこそ、安倍首相が張り切る意味が分かる。ところが、そこを全く掘り下げた報道はなかった。最後になると、サミットに関する報道は、オバマ米大統領の広島訪問に完全に喰われてしまった。安倍首相や外務省は、オバマ米大統領の広島訪問実現にかなり努力したのであろうが、サミットは完全にこれに食われてしまった。他のサミット参加国の首脳は、気分を損なったと思う。
やはり、今回はサミットそのものを成功させることであった。安倍首相には、サミットでやらなければならないことなど、そもそも最初からなかったのかもしれない。そして突然、世界の経済情勢について「リーマンショック直前の危機にある」と御託宣を宣ったのである。ノーベル経済学賞を貰った経済学者と数回勉強しただけで、世界経済全体について御託宣を宣うなんて、少し知性のある者ならば、恥ずかしくてできるものじゃない。本当に、恥ずかしい総理大臣だ。
サミット終了後の記者発表で、安倍首相は志摩湾をバックに、訳の分からないことを喋っていた。サミットの議長としての話などどこにもなく、まさに、いつもの得意の嘘八百の記者会見だった。これを厳しく追及する記者団からの質問は、例によって全くなかった。そして各社一斉に、「安倍首相は消費税増税を延期する」ことを事実上表明したと報じた。まさに、世界に向かって恥を晒すものであった。
この頃、注目のオバマ米大統領は、中部空港から大統領専用機で岩国空港に向かっていた。多くの国民は、オバマ米大統領にできる長く、広島に滞在して頂きたかった。安倍首相が広島に着かない限り、オバマ大統領は広島に入れない。実際に、その惧れは現実となった。安倍首相が広島に着かないから、オバマ米大統領は、岩国空港で時間を過ごさざるを得なかった。そのため、オバマ米大統領の原爆資料館滞在は、10分だけとなってしまった。オバマ米大統領も多分残念に思ったと、私は推察する。
オバマ米大統領の所感は、17分だった。サプライズだったという。私は、それなりによく考えた所感だったと思う。しかし、その後の安倍首相の話はいけなかった。安倍首相が演説などする必要はなかったと思うし、オバマ米大統領も望んでいなかったと思う。しかし、目立ちたがり屋の安倍首相は、我慢できなかったのであろう。オバマ米大統領の話に比べると、まさに月とスッポンだった。株を落とすとは、こういうことをいう。
安倍首相と官邸が狙った、サミットとオバマ米大統領の広島訪問というバカ騒ぎは終わった。かなりの視聴率は稼いだが、その効果が高かったとは思えない。官邸もマスコミも、国民を舐めきっているからだ。国民だって、バカばかりじゃない。近い内に安倍首相は、消費税増税の延期を表明するのであろうが、そのインパクトは、もうなかろう。そして、6月1日に国会は閉幕する。大きな政治的話題は、参議院選挙しかない。
衆参ダブル選挙だのトリプル選挙だのと騒ぐ者はいるが、今日はこれには触れない。仮に衆参ダブル選挙になったとしても、焦点は、32ある参議院一人区の選挙への専念である。ここに傾注する限り、政局の主導権は、野党共闘 ー 即ち、国民が握り得るのだ。政治にとって大事なのは、重要な点に集中すること。そして、その集中を続けることである。さぁ、真剣勝負だ。
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。
*****