賀茂川耕助氏の「耕助のブログ」より
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軍産複合体の危険性
来るアメリカの大統領選において、ヒラリー・クリントン氏が当選すれば第3次世界大戦が始まる可能性を危ぶむ声が出ている。
クリントン氏の自叙伝、「カオスの女王」の著者ダイアナ・ジョンストン氏は、“金権政治を支配する人々のためのトップセールスマン”とクリントン氏を表現し、国務長官だった頃からイラク侵攻、リビアでの戦争を支持し、常に「軍事力」を行使してきたこと、今はそれがシリアに向かっており、戦争屋にとって絶好の大統領候補だと指摘する。
独立系ジャーナリストのジョン・ピルジャー氏においては、世界大戦は既に始まっているとみている。核兵器のない世界をつくると言ってノーベル平和賞を受けたオバマ大統領は核兵器を造り続けたし、もっと手軽に核兵器を使えるよう、戦闘機に搭載できる最新の小型の核爆弾も造っているという。そして米中央情報局(CIA)がウクライナやキエフを実質的に支配し、ロシアの隣国であるエストニア、リトアニア、ラトビアには米軍を配備しているのである。
オバマ政権が挑発している核保有国はロシアだけではなく、中国が南沙諸島に飛行場を造っているとして、米軍の軍艦が中国の沿岸水域を巡回し始めている。オバマ政権はロシアや中国との戦争のお膳立てを周到に行い、あとはクリントン氏があらゆる理由を見つけて、またはイラクの大量破壊兵器のように理由を捏造して世界大戦が開戦されるのだ。控えめに言っても、現状はロシアや中国とアメリカはすでに冷戦状態にある。
去る5月、広島を訪問したオバマ大統領は平和記念公園でスピーチを行い、「アメリカのような核保有国は、勇気を持って恐怖の論理から逃れ、核兵器なき世界を追求しなければならない」と述べた。ノーベル平和賞の時と同じだ。しかし現実は、アメリカは包括的核実験禁止条約に批准してはいないし、そればかりか今後30年で1兆ドルを投じて新型ミサイルやステルス爆撃機の開発や配備を含む核兵器性能改善を行う計画だという。対外的には核なき世界を声高に叫びながら、自国は核軍拡競争を進めているのだ。オバマ政権、そしておそらくクリントン政権が引き継ぐであろう戦略はどう考えても狂っている。しかし、軍需産業の視点からするとそれは正しく、なぜなら紛争こそがビジネスの種であり、戦争に発展すれば大もうけなのだ。
この軍産複合体の危険性を最初に警告したのはアイゼンハワー大統領である。第2次大戦後、米国が軍事力を強化する過程で、軍部、官僚、軍需産業からなる軍産複合体が形成され、次第にその影響力を強めていた時代だった。2001年の同時多発テロでアメリカはテロとの戦争という、兵器製造に正当性を与える口実をつくった。そしてイラク戦争から始まり、シリア、ヨルダン、リビアのような国はほとんど無法地帯、無政府状態と化しているが、この状況をつくったのはアメリカだった。
クリントン氏が大統領になる公算は大きいが、アメリカのゴールは常に不要な戦争を行うことで軍事費を増大させることである。メディアはさまざまな解説をするだろうが、アメリカを統治しているのは大統領ではなく戦争屋である軍産複合体であるということだけは忘れてはならない。
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