車輪を再発見する人のブログ

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最適な政策の考え方

2009年04月12日 | 論理

トレードオフの話をさらに補足しておくと、どこにも悪影響を与えないようにしようとすると政策の選択しが極端に狭くなってしまう。例えば、最低賃金の値上げを考えたときに、いい面としては低所得者層の所得水準が上がるというのがある。しかし、もう一方では雇用が減ってしまうかもしれない。つまり、一方では貧困緩和に効果があるかも知れないが、もう一方では悪影響の部分があるかも知れない。ここで、悪影響がある可能性があるからだとだとしてしまうと貧困緩和に有力な政策の一つが取れなくなってしまう。

一方で、実は高所得な労働組合員の雇用と待遇の保護のように社会的に費用がかかり、他の労働者の賃金を低下させ、雇用も減少させる政策が普通に取られていたりする。つまり、最低賃金の値上げに対してのみあらゆる方面にわたって悪影響がないことを要求するのは論理的に辻褄が合わない。もし本当に最低賃金の値上げによって雇用が減ることを憂慮するのであれば、まず一部の労働者以外にとっては負担以外の何者でもないものを改善する必要があるだろう。

このような状況で政策を行っていく一つの方法として、複数の政策を組み合わせるというのがあると思う。最低賃金の値上げによって雇用が減る可能性があるのだとしたら、それと同時に職業訓練を増強しつつそれに部分的に賃金を払ったり、短時間の雇用と生活保護に類する支給を組み合わせる制度を導入したりすると良いかもしれない。コストが掛かるという声があるかも知れないが、他の高給な労働者の保護の方がより多くのコストを社会に対してもたらしていることを考えると、低所得者層に対するこのような支援は容易に肯定できるだろう。

つまり、高所得者の雇用を保護したために、雇用が減少し賃金も減少したから、低所得者の賃金を下げることによって雇用を増やそうというのは論理的に無茶苦茶な政策だということだ。他の政策と組み合わせることによってより好ましい政策にすることが出来るのだから、そしてその政策のための負担は既得権層を保護するのに比べたら低額ですむのだから、資金を出してちゃんと政策を行うことが必要だ。つまり、低所得者層の賃金と雇用が減ったのは他の部分で間違った政策を取ったせいなのだから、賃金を下げることによって雇用を増やすことはいい政策でも何でもない。ただ単に、無責任なだけだ。だから、そのような政策があたかも良いことであるかのように振舞わずに、ちゃんとした保護政策を取る必要があるんだ。

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