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労働分配率の真実

2009年04月02日 | 経済学

松本さんが同一労働同一賃金に関する意見対立を取り上げている。記事

八代氏が主張する同一労働同一賃金は比較的給与が高い正社員の給与を削減し、その原資を日正規雇用者に回すことによって同一労働同一賃金を成し遂げようとするものです。例をあげると、7人の正社員が700万円の給与で働いており、3人の非正社員が300万円の給与で働いています。すべての人が同じ業務を行っていますが、これだけの給与差がついています。同じ仕事を行っているなら、皆の給与を580万円(=700万円×7人+300万円×3人÷10人)と同一にすべきであるというのが、矢代氏の考え方です。

 一方の正社員労組等が考える同一労働同一賃金は非正社員を正社員化する、もしくは非正社員の給与を正社員並に引き上げることで、同一労働同一賃金を成し遂げようとするものです。同じ例を用いると、700万の正社員7人と300万円の非正社員3人がいたとします。同じ労働をしているなら、非正社員3人を正社員化して給与を700万円に上げるか、非正社員3人の給与を700万円にするべきだ、というのが正社員労組等が考える同一労働同一賃金の考え方です。

世の中にはいまだに労働分配率を上げて労働者の取り分を増やすことが可能だと考えている人もいるらしい。現在の労働分配率は70パーセント前後であるが、個人事業の収入が資本分配率に含まれており、それ以外にも金利支払いと国と地方への税金も含まれている。だから、最終的に株主に残るのは税引き後当期利益25兆円くらいだ。国内総生産は平成19年で名目515兆円で、民間部門が370兆円ほどだから、総生産比で5パーセント、民間部門の内で7か8パーセントほどということになる。

結局のところ最終的な株主の取り分となる割合はかなり少ない。さらに配当は当期利益の半分くらいである。このことから分かるように、資本家から取ろうにも、そもそも資本家の取り分はすでに少なすぎるし、資本家自体がもうほとんど存在しない。現在、企業の株式の多くを保有しているのは年金基金である。そして、銀行には高齢者の預金が眠っている。だから、金利収入や配当の多くは現在や将来の年金生活者のフトコロへと消えていくことになる。つまり、総生産の大部分は一般人の間で分け合われている。

だから、結局のところ金持ちに行くのは全体の2パーセントくらいだ。実際、日本において上位0.1パーセントの富裕層の所得が全体に占める割合は2パーセントである。(余談だが、アメリカの場合は現在6パーセントを越え、8パーセントに近づきつつある。原因の一つは、経営者の異常な高給である。つまり、専門的な労働者が資本家から富を奪っているのである。)残りの、98パーセントを99.9パーセントの者達でどのように分けるのかというのが大きな問題である。そして、現在大企業の中高年の雇用と待遇が保護されたために、非正規労働者の待遇が低下し賃金格差が広がっていると言うのが問題の本質である。こう考えると、現在の正社員の待遇を落とさずに同一賃金同一労働というものを実現しようとすることがいかに非現実的かが分かるだろう。

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