文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

これら政府がつくった数字は、やはり現実を隠し切れなくて、どこかで尻尾が出てしまうものなのだと思う

2021年03月09日 15時17分17秒 | 全般
以下は、天国と地獄に向かう世界、習近平のおかげで日本は安泰か、と題した高橋洋一と石平の対談本からである。  
中泰証券研究所が発表した衝撃の失業率20.5%
高橋 
中国の失業率について、2020年4月末、世の中を揺るがす経済レポートが発表された。
発表したのは、中泰証券証券研究所であった。
同研究所は中泰証券証券のジンクタンクで、著名な証券アナリストとして知られる李訊雷氏が所長を務めていた。
この中泰証券研究所の李所長が、すでに中国国内の失業者は7000万人を超え、実際の失業率は20.5%にのぼると警鐘を鳴らした。 
おそらくレポートに書かれた数字は正しかった。
それで中国当局の逆鱗を買って、即刻クビになってしまった。 
李所長が普通に試算を重ねていき、推計した結果、失業者7000万人、失業率20.5%という数字が弾き出されたのだろう。
だが、中国のエコノミストは現実を把握していても、「失業率は5%程度」と平気で嘘をつく。
現実を発表すれば、自分のクビが飛んでしまうからだ。
中国の統計自体が先刻もふれたとおり、ごく一部の都市部の推計のみで、都合よくこしらえている。
私は、李所長が失職覚悟のうえで、この現実の数字を中国社会に知らしめたと捉えている。 
それにしても、失業率20%超は恐ろしい数字といえる。
露店経済の推奨などでは、とても太刀打ちできない猛烈なレベルだ。
それはおそらく、いまも続いている。
失業はそう筒単に回復できないものだからだ。 
だからこそ、きちんとした網羅的な失業統計を出しておかねばならない。
正確な統計データを持っていなければ、国の進路を誤らない政策を”打ち出せない”からである。
先刻石平さんは設備投資の6.5%減を懸念していたが、実は失業とは、人への投資であって、物への投資が設備投資に出てくるわけである。
だから人への投資と物への投資は、両方一緒に出る。
なぜなら、人にだけ投資して、物に投資しないというわけにはいかないからだ。 
物だけに投資して、人に投資しないのは、ロボットへの投資に関してはときどきあるけれど、一般的にはオペレートする人も必要だから、物への投資と人への投資は、通常は一緒に動く。
したがって、失業率がこのように上昇しているときに、投資が下がるのは、至極当たり前なことなのである。 
そうすると、先刻石平さんが挙げた1月から9月までの経済成長率0.7%をはじめとする数字は、現実よりもちょっと甘い数字が出ているのかなと思わざるを得ない。 
実際の失業率が20%であれば、投資は猛烈に減って当然で、さらに下がるはずだ。
当たり前な話で、人だけ切って物だけ残しておくことは、普通はしない。
一緒に処理していくからだ。
だから、これら政府がつくった数字は、やはり現実を隠し切れなくて、どこかで尻尾が出てしまうものなのだと思う。
中国では本当のことを言うと死刑になる
石平 
たとえば、企業が今年は設備投資しないということは、来年になるとさらに雇用が落ちることを意味するのか?
高橋 
おそらく、両方一緒になって起こる。
だから、なかなかこれからの中国経済は大変だなと思う。
それにしても、中泰証券研究所の李訊雷所長は、即刻レポートを撤回させられて、クビになって、本当に気の毒である。
中国では、まともなことを主張すると、こうなってしまう(笑)。
石平 
同時に、消費に関しても中国政府の発表でさえ、1月から9月までで7.2減と散々だ。
中国政府はコロナが収まってから、消費拡大をあの手この手を使って奨励してきたものの、一向に盛り上がらない。
そして、中国でいちばん伸びたのは不動産投資であった。これは額面どおりに受け取っていいのだろうか?
高橋 
ちょっとあり得ない。不動産投資とは、一般的には物的資産の拡大のために投資をするのだが、中国の場合、数字を無理矢理につくっている感じが否めない。
不動産投資については、奥まで掘り下げて調べてみないと、それが本物か架空のものかは、なかなかわからない。
もともと中国は土地の取引は、基本的には認められていない。所有権について権利の売買という意味では、けっこう、怪しげな話が多いように思う。
石平 
たとえば2019年でさえ不動産をつくりすぎで、びっくりするような数字が出た。
公式に確認された統計数字で、2019年度の全国の不動産投資総額は13.2兆元だった。   
中国の19年のGDPは約100兆元だったから、不動産投資がGDPの13%以上を占めたことになる。
13.2兆元は日本円では206兆円だ。日本のGDPの約4割だ。そんなことはあり得るのか?(笑)。
高橋 
先にも述べたけれど、そもそも中国経済をテーマに議論するとき、統計数字に誤魔化しがあるのがわかっているので、なかなかまともな議論にならない。   
たとえば、中国の不良債権処理に対する手法は、完全に日本を真似ている。
通常は、金利が入ってこなくなれば不良債権認定をする。けれども、追い貸しすると、金利が入ってくる形になるから、不良債権がないことになる。
そういう話を国際会議でしていたら、中国の代表は、きちんとした統計を持っていないのが明白なので、何も言い訳ができなかった。
それで彼は最後にこう説明した。「中国では、嘘の統計をつくると死刑になります(笑)。だから、みんな嘘をつかない」
石平 
その説明自体が無残そのものだ(笑)。
真逆ではないのか。中国では、本当のことを言ったら死刑になる。
高橋 
だから、議論にならなかった。
OECD主催の中国での国際会議だったけれど、とてもではないが、まともな議論ができなかった。
正直な話である。
 




 

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