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アジア経済圏 震災の試練 相互依存問われる底力…4/28、日経新聞1面から。

2011年04月29日 20時02分28秒 | 日記

東日本大震災は国境を越えて形成されたアジア経済圏の相互依存を浮き彫りにした。
日本の部品が止まればアジアの生産機能が低下し、アジアの成長が陰れば日本の復興も遅れる。
サムスンが融通
「被害を受けた企業に無理な納期の要求をするな」。
韓国・サムスングループは震災の翌週、部品・素材や製造装置の購買にあたる日本サムスンに取引先の実態調査を指示した。
生産に支障が出ていた取引先の日本の電機メーカーには調達予定だった電子部品などの原材料を割り当てた。
工場に被害が出ていたソニーも部品の融通を受けた。 
サムスンは「日本企業の回復に向けどうやって手伝うかを考える」(幹部)という。
同社は日本で部材を調達する一方、液晶パネルなど中間財を日本企業に供給する。
相互依存関係にあるサプライチェーン(供給網)が寸断されれば自社工場の稼働に影響する。
かといって自社での代替生産には限界がある。
「一企業がすべての素材・部品を内製化すれば資本効率が低下する」(韓国LG幹部)。
サムスンは内製化できる部品・材料はすでに手を付けているが、それ以外は引き続き日本企業から調達した方が低コストで済む。
韓国企業が日本の素材・部品の生産復旧に手を貸すのは利益に直結するからだ。 
「中国企業は部品など裾野産業を広げ、代替需要に応えるべきだ」(中国政府系シンクタンクの国務院発展研究センター幹部)。
震災直後、アジアでは日本製品の代替を模索する動きが強まったが、簡単にはいかないこともわかってきた。
中国の電機・自動車大手のBYDは携帯電話の生産に使う日本製の半導体メモリーやコンデンサーの調達が難しくなった。
日本製以外の部品に代替し、記憶容量の低い普及品に切り替えたが、利益率は低下した。
同社営業幹部は「日本製部品に戻したい」と語る。
中国の自動車業界では日本製部品の代替すら困難な状態で工場の休止が相次ぐ。
アジアには市場を通じて築いた分業ネットワークが広がる。
日本が部品・素材、製造装置を担い、パネルなど中間財は韓国・台湾が手がけ、最後に中国や東南アジアが最終製品に組み立てている。
それぞれが得意分野に集中し、高い品質と効率を実現してきた。 
このアジアの分業体制が崩れれば企業の利益は減少し、経済成長率も低下する。
台湾の有力シンクタンクの中華経済研究院は、日本の震災が台湾の2011年の実質域内総生産(GDP)伸び率をO・31~O・64%押し下げ、3・96~4・29%になると予測する。
震災で傷ついたネットワークをアジアの知恵と資金を使って復興させようとの構想も浮上する。
「東北で都市づくりをしませんか」。
国際協力銀行(JBIC)の幹部はシンガポールの政府系投資会社、テマセクーホールディングスの幹部を回り、協力を要請した。
同社は豊富な資金を背景にアジアでインフラ整備を手掛ける。
中国広州では260億円を投資、住宅とハイテク産業が一体となった「知識都市」の建設を進める。
JBICは以前から温めてきた構想を実現させる好機ととらえ動き出した。
対印輸出45%増。
アジアの力強い消費も日本の復興には欠かせない。
「ダイナミックな市場で成長を達成できなければ我が社の有望な未来はない」。
12日、インド・ムンバイでパナソニックが開いたシヨールームの開設式。
大坪文雄社長は額に施す現地の装飾の「ヒンディー」を付けて現れた。
震災後の初の海外訪問に消費が膨らむインドを選んだ。
日本の3月の輸出は震災の影響で前年同月比2・3%減に終わったが、インド向けは45%増の978億円で好調だった。
サプライチェーンを研究する東京工業大学大学院の円川隆夫教授は「アジアには日本の部品供給力が欠かせず、日本はアジアの成長力を取り込まないと発展はない」と話す。
富を生み出すネットワークを復旧し、より堅固にしようとヒト、モノ、カネが動き出した。
(ソウルー尾島島雄)


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