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インド流「デタラメ」原発の悪夢…4/20号、ニューズ・ウィーク日本版から。

2011年04月26日 12時40分27秒 | 日記

インド政府は世界最大の原発に意欲を燃やすが、管理体制も規制機関も問題だらけ
インド西部マハラシュトラ州シャイダフールの沿岸部に、世界最大の原子力発電所が建設されるーその話題になると、ビジャイニフウトは声を荒らげ、当局とインド原子力発電公社(NPCIL)は地元の反対を無視していると興奮気味に語る。
3月、ラウトら反対運動家19人は「暴動」を起こしたとして地元警察に拘束された。
「これが民主主義か? 当局者たちは住民に詳しい説明もせずに調査を始めた。06年と07年に、彼らいわく『土地接収の交渉』に来たときも、私たちが一致団結して発言することを許さなかった。各農家を呼び寄せて、農地を接収すると宣告しただけだ」
住民が反発するのには、それなりの訳がある。
そして事態に不安を感じるべきなのは、地元の農家や漁師だけではない。
08年、インドとアメリカは民生用原子力協定に調印し、世界に論議を巻き起こした。
当時アメリカ側か最も懸念していたのは、インドが核拡散防止条約(NPT)の批准を拒否しているにもかかわらず協定を結んだことで、ほかの国も核兵器開発に意欲を燃やすのではないかということだった。
…中略
「(日本と)対照的に、管理や備えに問題があるインドは深刻度が低い緊急事態にも対応できない」と、インドの原子力規制委員会(AERB)のコパラクリシュナン元議長は指摘する。
インドは深刻化する電力不足に悩まされている。
電力不足率は10%前後に上り、全世帯の半数近くが電気のない生活を送る。
その一方で、工業化と収入増加によって、電力需要は年平均10%以上の伸びを見せている。 
だが原子力発電は、果たして真の解決策なのか。
NPCILは昨年、シャイダフールに建設予定の欧州加圧水型炉(EPR)6基のうち最初の2基の建設契約を、フランスの原子力大手アレバと結んだ。
1基当たりの出力は165万キロワット。
すべて完成すれば、世界最大の原子刀発電所が誕生する。 
これは壮大な計画の手始めにすぎない。
…中略。
事故の前例と怪しい技術
この拡大スピードには、恐ろしさを感じる。
インドの原発で何度か「ニアミス」が起きている事実を考えれば、なおさらだ。
国立シンガポール大学の助教で、エネルギー技術などに詳しいベンジヤミン・ソバクールの報告によれば、「タラプール原発は79年に部分的なメルトダウンを起こし、ナローラ原発1号炉は93年に火災で全電源を喪失した。95年には、ラジヤスタン原発が2ヵ月にわたって湖に放射能汚染水を放出していたと判明した。06年12月には、ジヤドゥゴダのウラン鉱山のパイプラインが破裂し、有毒廃棄物が100キロ先まで広かった」。
福島第一原発の危機以来、インド当局は懸念を打ち消そうと躍起になっている。
AERBのシュリ・サティンダー・シン・バジヤジ議長は「インドの原発では、公有地への放射能放出につながる事故は起きていない」と電子メールで回答した。
とはいえインドの場合、懸念すべきは安全性だけではない。
批判派に言わせれば、米印の原子力協定をフランスが支持する見返りとして、アレバは競合相手不在のまま建設契約を手に入れた。
おかげで、建設コストが跳ね上がる可能性がある。 
インドでは、原子力業界と原子力規制機関の関係も曖昧なため、第三者的な視点でのリスク評価が難しい。利害対立がジャイタプール原発をめぐる放射線 影響評価を左右しているとの批判があるなか、インドのシャイラム・ラメシュ環境・森林相は4月上旬、「原子力庁から独立した規制機関を設置すべき時期ではないか」と語った。 
福島第一原発事故の前から、シャイダフールの計画は国内の反核団体の疑問の声にさらされてきた。
核軍備縮小・平和連合(CNDP)は「実地に試されていない」技術だとして、アレバが開発した加圧水型炉そのものに疑いの目を向けている。
問題の原子炉はイギリスやアメリカの原子力規制機関から、事故防止システムに問題があると指摘されている。
アレバがフィンランドやフランスで手掛ける同様の原子炉建設計画は延期が続く。
原因は基本的な建設ミスにあるようだ。
「アレバが(90年代末にフランスで建設した)旧世代型原子炉には設計上の欠陥があったが、それが判明したのは完成後だった」と、英グリニッジ大学のスティーブン・トーマス教授(エネルギー政策)は言う。
「アレバの建設実績や運用実績が確実になるまで待てばいいのに、なぜインドはリスクを冒すのか」アレバ側か電子メールで寄せた回答によれば、設計上の問題について各国の当局者は「EPR自体の総合的な安全性に疑問を差し挟む」ものではないと明言したという。
フィンランドやフランスでの建設計画の遅れに関してはっきりとした答えはなかったが、同じ問題がインドで起こる可能性は少ないと主張する。
中国でのEPR2基の建設は「予定の工期とコストの範囲内」で進んでおり、「この事実はEPRシリーズにおける驚くべき学習能力の向上を物語る。インドの工事も順調に進むはずだ」。
独立性のない規制委員会
パリ在住のエネルギーコンサルタントで、原子力利用に反対するマイクル・シュナイデルは 「世界最大の原子力複合企業が…これほど初歩的な問題を論じていることに驚く」と語る。「原子力は成熟した技術と言われている。それなのに40年の原発運営経験と建設経験をもってしてしても、いまだに初歩的問題を乗り越えられないのか?」
シャイダフールの住民にしてみれば、なぜ自分たちの土地がアレバの原子炉の「試験場」にされるのか、納得がいかない。
原発建設予定地にある町や村は経済的に潤っている。
地元の土壌は建材として国内各地へ送り出され、ブランド品のマンゴーの栽培も盛んだ。
自然な経済発展を遂げている地域だからこそ、地元農家2000軒強のうち112軒しか、資産接収に対する政府の補償金を受け取っていないと、地元の原発建設反対運動家のミリンド・デサイは言う。
 NPCILは、シャイダフール原発が環境に深刻な打撃を与えることはないとしている。
建設地の地理的条件や技術革新のおかげで、旧世代型の原子炉を持つ福島第一原発より自然災害に強いと、アレバも主張する。 
だが強硬に原発建設を推し進める当局やNPCILのやり方を見る限り、計画に当たってコストや地元住民の権利、環境の影響や原子炉の安全性を考慮したとは思えない。
AERBには、独立機関としての機能が欠如していると見る向きは少なくない。
シャイダフール原発建設に反対する地元のNGOによれば、ある会議の際に当局者が「AERBはフランス政府から圧力をかけられている」と発言した。
環境保護団体のグリーンピース・インディアは先頃、情報公開法を通じて入手した文書から、シャイダフール原発の建設予定地での地震の起きやすさを、インド地質調査所が「レベル4」と判断していたことが分かったと発表した。
当局者が「レベル3」だと言っていたにもかかわらず、だ。
お抱えの顧問に都合のいいデータをでっち上げさせるのが地震工学に関する(NPCILの)戦略だ。第三者による検証は事実上存在しない」と、AERBのゴパラクリシュナン元議長は言う。「(原子力庁への)報告を義務付けられ自由を奪われているAERBが、インドの原子力安全管理体制を無意味にしている
そんなインドが今後40年間で原子力発電を100倍に増やすのは……悪夢でしかない。ジェイソン・オーバードーフ(グローバルポスト・ニュデリー特派員)


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