文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

輝かしい大帝国がここまで落ちぶれてしまったのは、ラス・カサスの報告書を利用した宣伝戦に敗れたからだ。

2020年08月05日 14時43分57秒 | 全般

ラス・カサス本による宣伝戦略

大高 黒を白と、白を黒と言い換えて宣伝戦を繰り広げていく。

髙山 スペインは新大陸に来ると男は奴隷として酷使して最終的に殺した。妊娠している女性と赤ん坊も殺し、処女は慰み者にした。たとえば、今のメキシコでは人口の1割が白人で、六割がその処女に産ませた混血児で、残りが森に逃げたマヤ族ら原住民になっている。

大高 その混血が「メスティーソ」と言われる人たちですね。まさに中国がウイグルに対して同様のことをしてきました。

髙山 そう。いわば民族淘汰だ。ユダヤ人もカナンの地に入ったとき、ミディアンびとに対し同じことをしている。男をすべて殺し、女は神ヤハウェから兵士に下された贈り物だ、好きにしていいとモーゼが言っている。

大高 スペイン人もそのやり方に倣った。

髙山 ラス・カサスはこのスペイン人の民族淘汰を誇大・誇張して報告した。手足を縛った人間を藁にくくりつけて、火をつけ燃やした、とか。インディオの女が抱いていた赤ん坊を取り上げ、手足をナイフで切って腹をすかせた猟犬に投げ与えたとか。似たような話が肥前島原藩2代藩主、松倉勝家(まつくらかついえ)が年貢を納めなかった百姓の蓑に火をつけた話として伝わる。

大高 松倉は圧政のカドにより斬首されています。

髙山 悪政に間違いないだろうけど、こういう残虐さはラス・カサス本でオランダに伝わっていた。キリスト教を追い出した日本の悪口話に、ラス・カサスの話を混ぜ込んだのだと思う。むしろ極東にまでラス・カサスの話が伝わっていた事実の方がすごい。それはレコンキスタでイベリア半島を取り返したスペイン人が、イスラムと協力して金持ちになっていたユダヤ人に目を付けたことから始まった。スペイン人は金持ちユダヤ人を片端から異端審問にかけて火あぶりにし、その財産を奪った。ドミニコ修道会の審問官トルケマーダは8000人を火あぶりにしている。
 で、多くのユダヤ人が、オランダ・アムステルダムに逃げてきた。当時のアムステルダムは活版印刷のメッカ。彼らはそこでラス・カサスの本を各国語に翻訳し、ベストセラーになった。「スペイン人は唾棄すべき残忍な国民だ」と世界中から詰(なじ)られた。

大高 ヨーロッパ諸国のプロパガンダ戦略だったわけですね。

髙山 残酷な処刑方法を描いた銅版画までつくって、挿し絵にしている。

大高 それを真似たのが、『ザ・レイプ・オブ・南京』(アイリス・チャン)だ(笑)。

髙山 その通り。自国民の悪辣非道ぶりを喧伝されたら、落ち込むのが当たり前だ。欧米はこういった大々的なプロパガンダ戦略を300年、400年と続けて、スペインを衰退させた。だから、今でも無気力で、かつての栄光なんて見る影もない。目下もコロナウイルスで疲弊し、行けばスリしかいないと言われる国に堕してしまった。

大高 コロナウイルスで、マリア・テレサ王女まで亡くなってしまいました。

髙山 輝かしい大帝国がここまで落ちぶれてしまったのは、ラス・カサスの報告書を利用した宣伝戦に敗れたからだ。

大高 アメリカだってネイティブアメリカンを虐殺しているのに。

髙山 ホントだ。当時、約1300万人いたが、結局、30万人しか残らなかった。ヒトラー以上の大虐殺だよ。でも、原住民に対する残虐行為と言えば、「スペイン」「コルテス」「ピサロ」となるくらい印象づけられている。

大高 その大元がラス・カサス!

髙山 アメリカでも19世紀末に英訳、色刷りされ、銅版画まで挿入されたものが売れた。スペインはひどい国だとなって、キューバでも同様のことをしていると新聞が書き立て米西戦争の宣戦布告につながった。政治、ジャーナリズム、出版界がスクラムを組んで、スペインをやっつけて結果的にキューバ、プエルトリコ、グアム、フィリピンをアメリカは領有することになった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。