以下は今日の産経新聞9ページ、オピニオン欄からである。
無視できぬ軍拡に直面
次期米大統領に選出されることが確実となった民主党のバイデン前副大統領が政権発足後に直面する外交・安全保障分野での最大の懸案は、軍事力を急速に増強させた中国がインド太平洋地域の軍事バランスを大幅に変化させたという現実に、どう対処していくかだ。
米紙ワシントン・ポストの外交専門記者ジョシュ・ロギン氏は昨年12月4日の同紙(電子版)コラムで「中国の軍事的発展と拡張は、もはや無視できないほど目立つ存在となった」と指摘し、バイデン氏が知るオバマ前政権下の2016年までの中国軍と、21年の就任後に対処する中国軍は「全く異なる」と警告した。
ロギン氏によると、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官は昨年11月の同氏との会見で、中国軍が同年夏以降、「空母キラー」と呼ばれる対艦弾道ミサイルを航行中の艦船に命中させる実験に成功したことを司令官として初めて確認し、中国による先進兵器や弾道ミサイルの拡充が地域の軍事バランスに「重大な不均衡」を引き起こしていると指摘した。
デービッドソン氏は、中国のミサイル戦力は、「第一列島線」上とその周辺に位置する日本や台湾、東南アジア諸国への脅威であるとし、米軍基地がある米領グアムと域内の各地に、統合的な防空態勢とミサイル防衛システムを構築すべきだと強調した。
ロギン氏は、トランプ政権による中国の軍拡への対処は「時に一貫性がなく一方的だった」と指摘する一方で、「中国軍の拡張路線には米国内の大学や資本主義市場も含め、あらゆる湯所で対抗していくべきだとする、基本的な理屈は正しかった」とし、バイデン政権の高官らも、その点は認めることが賢明だ」と促した。
オバマ前政権下でアフガニスタン駐留米軍司令官を務めたスタンリー・マクリスタル氏もネットメディア「アクシオス」(12月4日)とのインタビューで、中国が台湾侵攻に踏み切るのを抑止するため、バイデン次期政権は台湾への軍事的支援を強化していくべきだと指摘した。
同氏は「ある朝起きたら、中国が(台湾占領という)既成事実を作り上げたところだった、という事態が起きるのを懸念する」と訴えた。
次期政権の国防長官には口イド・オースティン元中央軍司令官が指名されることが決まった。
ただ、オースティン氏は過去の軍歴でインド太平洋に関わった経験が乏しい。このことから、次期政権が軍事分野で中国と真剣に対抗する気があるのか不安視する声が早くも出始めている。
(ワシントン 黒瀬悦成)