文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

日本は原発を中心とした「賢い脱炭素」戦略を世界に訴えるべきである。

2022年01月02日 18時32分32秒 | 全般

以下は12月31日に届いた定期購読限定月刊誌テ―ミスからである。
原子力発電「再生」へ 環境過激派は現実を見ず
日本は原発再稼働で「賢い脱炭素」目指せ
「脱炭素狂奔」が世界的エネルギー危機を招いたため改めて原発必要論に注目が
石炭・原油・LNGも高騰して 
世界が「脱炭素」へ大きく舵を切る中、その方向性を巡って各国の主張が衝突している。
 
21年11月に開いた国連の「気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)」では、議長国・英国のジョンソン首相が冒頭から石炭火力発電の全面廃止を強く打ち出し、石炭火力が大きなテーマとなった。 
だが米国、中国、インドなど石炭火力への依存度が高い大国はこぞって石炭維持を主張した。
そのため「成果文書」では、草稿にあった「CCS(二酸化炭素の回収・貯蔵)など排出削減対策を講じていない石炭火力発電所の廃止、および化石燃料への非効率的な補助金の段階的廃止」という文言が消されてしまった。
しかし、「脱炭素狂奔」と呼べる状況は日本にも大きな影響を与えている。
石炭はCO2削減の槍玉に挙げられる中で中国国内の需要が拡大、高騰を続けている。
一方で原油やLNG(液化天然ガス)も世界的な価格上昇が問題になってきた。 
日本はCOP26前に策定・公表した第6次エネルギー基本計画で電源に占める石炭火力の比率を「30年に19パーセント」としていた。
廃止よりCCSや植林と組み合わせた「ゼロエミッション発電所」「スマート火力発電所」として有効活用する方針を打ち出す予定だったが、想定外だったのはCOP26の開催地に世界から“環境過激派”が押しかけ「石炭火力は絶対に悪だ」と抗議したことだ。
各国のメディアが彼らに集中したことで日本の提案はトーンダウンした。
環境過激派の主張は一見、正論のように聞こえるが現実を直視していない。
いま、COP26と並行して世界が直面しているのは急激な「脱炭素」の副反応といえる電力不足である。 
とくに21年9月頃に中国で始まった電力不足は製造業の中心である華東地区、広東省にも波及した。
日系など外資を含む工場も輪番停電や夜間のみの工場操業などを迫られた。
もともとは二酸化炭素排出削減や大気汚染改善を目指した石炭消費の抑制策だったが、いまなお電力の65パーセントを石炭火力発電に依存する中国では電力不足に直結したのだ。 発端は、習近平国家主席が「中国は2060年までにカーボンニュートラルを実現する」と国際公約したことで一気に「脱石炭」に走り出したことだった。
産炭地である陜西省、内蒙古自治区なども石炭生産を20~30パーセント削減し、インドネシアからの石炭輸入も減らした。
その結果、中国各地の電力会社は発電を天然ガス火力へ急激にシフトし、燃料である天然ガス確保に走ったのだ。

再生可能エネヘの過大な期待 

中国はトルクメニスタンとロシアからパイプラインによる天然ガスに頼り、沿海部ではカタール、豪州などからLNGを輸入している。
21年には日本を抜いて初めて世界最大のLNG輸入国になった。 
その結果、「中国が市場でスポット取引されるLNGを根こそぎ調達した」(日本の商社関係者)ことで、LNG需給が逼迫するとともに市況が暴騰した。
輸入国である日本、韓国、欧州はLNG火力の稼働低下やコス卜上昇に直面した。 
こうした課題が浮き彫りになるなかで、「賢い脱炭素」「悪い脱炭素」という言葉が関係者の間で飛び交うようになった。
世界の電力不足とエネルギー市場の混乱は、明らかに「悪い脱炭素」だ。
特定の化石燃料を槍玉に挙げて削減を要求すれば、歪みは他の化石燃料に及び、価格も不安定になる。
パニックに陥る電力会社や国が出れば、世界的なエネルギー危機が起きてもおかしくない。 では、「賢い脱炭素」には何か求められるのか―。
それは石炭火力のグローバルな削減計画を最初につくり、石炭を減らした分を天然ガスや再生可能エネルギーで確実にカバーし、電力やエネルギーの需給を安定させながら進めることだ。
脱炭素だけを声高に叫ぶ環境過激派は、石炭火力の即時廃止を求めてきた。
だが、彼らの主張がかえって脱炭素の道を困難にさせている。 
脱炭素の課題はまだある。
二酸化炭素の排出量が少なく環境に優しいといわれるLNGの開発には、莫大なコストと時間がかかる。
LNGはガス田近くに液化プラントを建設し、運搬には専用船が使われる。
受け入れ側にもLNG貯蔵タンクと気化設備が必要だ。 
再生可能エネルギーヘの過度な依存にも不安がある。
実際、21年秋にスペインが電力危機に陥った理由は風力発電の想定外の低稼働たった。
自然現象に頼るゆえの不安定性からは逃れられない。
再エネの発電量が増えるにつれ、スペインと同じリスクは世界各地に内在されていく。 
再エネの拡大には緊急時のバックアップとなる安定的な電源が必要だ。
その役割を果たす手段として、原子力発電が注目されている。
原発は、運転段階では二酸化炭素をほとんど排出しない「ナチュラル・カーボンニュートラル」の電源だ。

日立の小型原発受注が未来を 

原発は地球温暖化対策の決め手の一つであり、再エネとの相互補完関係もある。
原発は自然現象には全く影響を受けず、夜間も安定した発電を続けられる。
日本では東京電力柏崎刈羽原発、中部電力浜岡原発、東北電力女川原発などが再稼働へ向け準備を進めているが、日本の原発は敷地面積が大きく、広域送電網とつながっている。将来的には再エネを安定させる蓄電池の設置場所として活用する案も出ている。 
原発では新たな動きもある。
それは日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の原子力合弁会社が12月、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーションから発電出力30万キロワットの小型モジュール炉(SMR)である「BWRX‐300」を4基受注したことだ。
28年に初号機を納入する予定で、注目すべきは1基750億円程度の建設費で済むことだ。 建設コストが安く従来の大型炉より安全面でも優れているとされ、今後はSMRを中心に原子力ルネッサンスが沸き起こる可能性がある。
30万キロワットの小型炉であれば稼働する原子炉の数を調整することで、実質的な出力調整も可能になる。
これまでの100万キロワット超の原子炉に比べ、利用の柔軟性は高まる。 
性急で、戦略性も行程表もない「悪い脱炭素」戦略を正し、安定的で確実「賢い脱炭素」を進めるには原発は欠かせない。
日本はまず安全性が確認された原発から順次、再稼働させ、石炭火力発電を段階的に低下させて行く。
ただし、石炭火力も「超超臨界圧(USC)」など進化を続けている。
石炭ガス化複合発電(IGCC)を含め、LNGに近い効率性を持つ可能性がある。 
これにCCSを組み合わせたゼロエミッション石炭火力を実現すれば、日本は原発とともに強力な地球温暖化対策を達成できる。
日本は原発を中心とした「賢い脱炭素」戦略を世界に訴えるべきである。

 

 

 


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