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文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

中国はそれで「はい、わかりました」と首を縦に振る甘い国ではありません。話し合いでの解決は望むべくもない。もう少し、したたかにやるべきだ

2020年08月10日 21時47分29秒 | 全般

以下は、尖閣で日米軍事演習を!と題して、発売中の月刊誌Hanadaセレクションに掲載された、長谷川幸洋×高橋洋一×河野克俊の対談特集からである。
尖閣はかなり危険な状況
長谷川 
尖閣諸島の周辺海域がいま、異常な事態に陥っています。 
7月14日、中国海警局の武装公船四隻が一度に尖閣諸島沖の領海に侵入し、約2時間にわたって航行。
領海内への侵入は今年で14回目です。
7月24日現在、尖閣周辺で102日連続、中国当局の船が確認され、2012年9月の尖閣諸島国有化以降、最長の連続日数を更新中です。さらに、中国政府は日本政府に対して尖閣諸島の領有権を主張し、周辺海域での日本漁船の操業は「領海侵入」だとして立ち入らせないよう外交ルートを通じて要求しています。
河野 
かなり危険な状況です。
中国はいま尖閣の施政権は自分にあることをアメリカに見せつけています。 
日米安保条約第5条では「日本国の施政の下にある領域」での武力攻撃について、日本と米国が「共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と明記されていますが、アメリカは「領有権」には介入しないという立場です。
つまり、日本と中国、どちらが尖閣において施政権を確保しているかで、アメリカは介入するかどうかを決めます。  
いまは日本が施政権を確保しているので第5条は適用されますが、もし中国がこのままゴリ押しを続けて、アメリカが「尖閣の施政権は中国にある」と判断すれば、理屈上、アメリカは手出ししません。 
中国はいま尖閣領海に入ったり、日本の漁船を追いかけ回したり、「法執行」をやっているのは、施政権があることをアピールするためなのです。
このまま日本が手をこまねいていると、中国は「尖閣に手を出してもアメリカは出てこない」と”誤解”する虞(おそ)れがあります。
そこから武力行使の可能性が出てくる。
最近の中国の行動を見ると、明らかにエスカレートしていますから、杞憂とも言い切れません。 
コロナ禍でアメリカがかなり疲弊していますから、余計に心配です。私は危機感を持っています。
長谷川 
中国はこのところ、急激に行動を先鋭化させています。
4月、南シナ海のホアンサ諸島の海域でベトナム漁船一隻が中国の巡視船から体当たりを受け沈没したほか、別の2隻が拿捕され、多くのベトナム人漁民が一時的に拘束されました。
6月にはヒマラヤ山脈の係争地帯で中国軍とインド軍が衝突、双方に死傷者まで出ています。 
実は来年、2021年は共産党100周年のメモリアルを迎えます。
中国は周年行事をすごく重視しますから、100周年に合わせてなにか大きな行動に出るつもりではないか、という気がしてなりません。
高橋 
なりふり構わず、中華思想をむき出しにしていますね。
香港国家安全維持法の日本語訳を読んでいたら、驚愕しましたよ。
38条にこうあります。 
「香港特別行政区の永住権を有しない者が、香港特別行政区外で、香港特別行政区に対して、本法が規定した犯罪を実施した場合、本法を適用する」 
香港特別行政区の永住権を有しない者、つまり、われわれが香港の外で国安法に違反したら逮捕するという話。
「世界のすべての人間は中国に従え」と言っているに等しい法律で、主権侵害の最たるものですよ。 
法律用語でいえば域外適用というやつで、こんな法律は世界のどこを見渡してもありません。 
月刊『Hanada』やこの鼎談自体、国安法違反になります(笑)。われわれは日本にいるから大丈夫ですが、中国と犯罪人引き渡し条約を結んでいる韓国だったら、危ないかもしれない。
香港と引き渡し条約を結んでいる国もたくさんありますから、注意したほうがいい。
早く執行停正しないと自国民が危ない、というレベルです。
長谷川 
実際にカナダやオーストラリア、最近ではイギリスも停止しました。日本は香港とは犯罪人引き渡し条約を結んでいないからいいですが、他の国を旅行するときは本当に危ないかもしれない。
香港、台湾、尖閣は連動
河野 
中国は香港国安法によって一国二制度を完全に反故にしましたが、もともと中国の海洋戦略である「第一列島線」確保のためには一国二制度は邪魔な存在でした。
第一列島線とは沖縄、台湾、南シナ海を含む中国の対米戦略ラインのことで、その第一列島線の内側を勢力圏内とし、そこに外国勢力を入れないようにする、という狙いがあります。 
中国はこの数年で驚くべき経済発展を遂げましたが、経済発展には海洋進出が伴います。
シーレーン(海上父通路)の確保などが必要になってくるからです。アメリカやイギリス、スペイン、オランダなどもそうでした。 
この第一列島線戦略の障害となっているのが香港、台湾、尖閣です。この三つの問題はすべて連動している、と見なければなりません。
中国は、香港の次は尖閣を獲りにいく可能性が高い、と見ています。

高橋 
その三つにプラス、南シナ海も連動していますね。
南シナ海で起こったことは東シナ海、尖閣でも必ず起こります。
先ほど話に出た、南シナ海で中国がベトナムなどにやったのと同じことが、東シナ海でも確実に起きますよ。
長谷川 
私はむしろ、香港の次は台湾に来るのではないか、と見ていたのですが。
河野 
台湾と尖閣、どちらがやりやすいか、を中国は見ているんです。
台湾は今回のコロナ対応で国際的に注目されましたし、アメリカから武器も購入し、関係を強化しています。
なにより、そこに台湾人が住んでいますから、手を出しにくい。 
一方、尖閣はといえば、日本政府がなんの手も打っていませんから、中国としては尖閣のほうがやりやすい、と考えているのではないでしょうか。
高橋 
私も尖閣を狙う可能性が高いと思う。
最近、英『エコノミスト』誌に掲載された風刺漫画で、ドラゴンに見立てられた中国(エコノミスト誌は中国を茶化すときによくドラゴンを用いる)が、右手でインド、右足で南シナ海諸国、左足で台湾、
尻尾は香港の自由を奪っている様子が描かれています。 
その風刺画では、いまのところ左手は地面を膕んでいますが、私には、その左手で日本の尖閣を窺っているように見える。
長谷川 
いま尖閣は国の所有となっていますが、かつては民間の所有者から借りていました。
賃借の目的について、政府は「平穏かつ安定的な維持及び管理のため」と答えています。
所有となれば、その責任はますます重くなるはずです。
政府職員を常駐させるくらいのことはしてもらいたい。 
安倍総理はそんなこと、百も承知だと思いますが、政府はどう対応するつもりなのでしょうか。
河野 
安倍総理は習近平に直接「尖闇での威嚇行動はやめてくれ」とアプローチするつもりではないでしょうか。
しかし、中国はそれで「はい、わかりました」と首を縦に振る甘い国ではありません。
話し合いでの解決は望むべくもない。
もう少し、したたかにやるべきだと思います。
長谷川 
このままいけば、中国にどんどん既成事実を積み上げられてしまう。そんな悠長なことを言っている場合ではありませんよ。
高橋 
安倍さんは総裁に返り咲く2012年の自民党総裁選で、公務員常駐の検討を訴えていました。
同年の衆院選、翌年の参院選の政策集にも明記していた。
しかし最近、すっかりそのことを囗にしなくなったので、私はかなり不満なのです。
実効支配アピールの方法
長谷川 
アメリカは、中国の本質、脅威に気が付き始めています。
ポンペオ国務長官は中国の尖閣諸島周辺海域への領海侵入や南シナ海への進出を挙げ、「中国は領土紛争を煽っている。世界はこのいじめを許すべきではない」「世界はこの動きに対応するために結集しなければならない」と批判しました。
相当、警戒感を高めています。 
アメリカが中国との対決姿勢をハッキリさせているなかで、日本の態度は煮え切らないですね。
このまま何もしないで様子見、なんてことはありえない状況だと思います。
河野 
最近ではアメリカだけでなく、中国に甘かったオーストラリア、ヨーロッパも中国の脅威に気づき始めました。
しかし、日本は明確にアメリカ側につくと表明していません。
そこを宙ぶらりんにしたままで「アメリカさん、尖閣の防衛はお願いしますね」というのは、あまりにも都合がよすぎるというものです。いまのこの状況を踏まえて、態度をハッキリさせなくちゃいけませんよ。 
そういう煮え切らない態度の背景には、経済界からのプレッシャーがあると思います。
中国市場の恩恵を受けている会社がたくさんありますから、「中国と仲違いしてもらっちや困る」と。
なかには「別に尖閣くらい、いいじゃないか」と言う人もいるでしょうから。
高橋 
2012年に香港の活動家たちが尖閣に不法上陸したことがありましたが、あの時が人を常駐させる最大のチャンスだったんです。
まあ当時は民主党政権でしたから、無理な話だったかもしれませんが。
河野 
いまは海上保安庁と自衛隊が頑張って押し返していますが、これだと限界があります。
尖閣諸島になんの施設もない、常駐する人もいない、この状況を改める段階が来ているのではないでしょうか。 
私が尖閣に関して警鐘を鳴らし続けていたのは、南シナ海の例があったからです。
南シナ海も最初は岩礁のようなところに漁民を上陸させ、着々と人工島を建設。
2015年、習近平は訪米した際、当時のオバマ大統領に「軍事化の意図はない」と説明していましたが、その後、急ピッチで軍事基地化していきました。 
フィリピンが常設仲裁裁判所に訴えて全面的に勝利しても、中国は仲裁判断を「紙くず」とみなし、まったく受け入れようとしません。
あの時、アメリカは囗では非難したものの実力行使しなかったために、いまの状況がある。
同じことが尖閣でも起きる可能性があります。 
竹島に対しては、日本がなにもしない間に、韓国は着々と実効支配していきました。
その二の舞になりかねません。
高橋 
実効支配をアピールするやり方はいくつかあります。
海洋生物の研究という形にして国際的な研究者を集め、尖閣海域の調査をやるのも手でしょう。
入国する研究者たちに”日本政府”がビザを発行する。
インターナショナルな研究という建前でありながら、はっきりと施政権を示すことができるわけです。 
もう一つは、射爆撃場の活用です。
尖閣諸島に属する久場島と大正島は、以前から「在日米軍の射爆撃場」に設定されています。
ここを米軍に使ってもらう。
そうすれば、中国に対して、かなりの牽制になります。
河野 
ただ、領有権の問題には介入しない、というのがアメリカ政府の立場ですからね。
もし、尖閣諸島の射爆撃場を使うとなれば、かなり大さな政治判断がいるかもしれません。
この稿続く。


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