文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

平成バブル崩壊後、30年にも及ぶ日本経済の空白が続く中、新型コロナウイルス禍を受けて、

2021年06月05日 22時06分33秒 | 全般

産経新聞には「経済正解」と題した田村秀男の定期連載コラムがある。
田村秀男は財務省の受け売りの経済評論家と称する人間達が大半の日本で数少ない本物の経済評論家である。
本論文に関して私に去来した所感については後日に書く。
「義」は日本を再興させられるのか 
今月1日、経団連会長に就任した住友化学会長の十倉雅和さんは孔子の言、「義をみてせざるは勇無きなり」を肝に銘じて財界総理を引き受けた。 
平成バブル崩壊後、30年にも及ぶ日本経済の空白が続く中、新型コロナウイルス禍を受けて、ようやく日本型資本主義の原点である「義」の精神に目覚めたのか、と言うと、若い読者の多くは「古くさい」と思うかもしれない。      
そこで問う。
「義」は日本を再び豊かにできるのか。
グラフを見よう。
2012年末に比べた日銀資金、日本の対外債権と中国の対外負債のドルベース推移である。
12年末は「アベノミクス」が始まり、1990年代後半からの慢性デフレからの脱却をめざし、日銀が円資金を大量発行し、金融市場に流し込んできた。
その成果は実体経済面よりも、海外向けの投融資、すなわち対外債権の急増となって表れた。
それに沿うように中国の対外負債が膨らんでいる。
コロナ禍の昨年は3つのトレンドすべてが加速した。 
名目国内総生産(GDP)で代表される実体経済は、日本が2012年度499兆円、4.8兆㌦、20年度536兆円、4.9兆㌦で中国(暦年ベース)はそれぞれ8.5兆㌦、15.5兆㌦である。
中国経済は新型コロナ・パンデミック(世界的大流行)の20年もプラス成長を遂げた。 
統計学でいう相関係数(最大値は1)は同期間、日銀資金と対外債権が0.95、対外債権と中国の対外負債が0.88と、いずれも完全相関に近い。
日本はいわば、カネを国内用にはとんど回さず、海外に輸出した。 
中国は日米欧などから投資を呼び込む、つまりカネを輸入して、経済力を高めるのみならず、海外ハイテク企業や資源の買収や発展途上国のインフラ投資を存分に進めてきた。 
無論、日本からあふれ出るすべてのカネが直接、中国に流入するわけではない。
グローバル化の極みである国際金融市場はニューヨーク・ウォール街、ロンドン・シティーを問わず、日本の余剰資金を吸い込み、仲介役の大手の金融資本を通じて「成長市場」中国に再配分されるのだ。 
カネはより高い収益が見込める国へと向かうのが市場原理で本来は世界経済を調和させる。
しかし、まるで宇宙のブラックホールのような中国は余剰資金を吸引しては巨大な脅威となって周辺国を脅かし、覇権国米国をたじろがす。 

人権や民主主義という戦後世界の普遍的ルールを踏みにじってやむことがない。
武漢発でパンデミックを引き起こしたのにもかかわらず、国際社会が求めるコロナ発生源の解明には協力を拒み、揚げ句の果てにはコロナ制圧で成果を挙げた台湾の世界保健機関(WHO)総会へのオブザーバー参加すら拒絶した。 
武漢発コロナ感染に苦しみ、中国からのワクチン提供やインフラ投資に頼る途上国の多くはそんな中国を支持するという倒錯ぶりである。
人質にされた者が犯人に同調してしまう「ストックホルム症候群」の中国版だと、本欄の5月29日付で論じた通りである。 
しかも、「対中国際包囲」を唱えているバイデン政権の米国自体、中国製品や原材料の輸入に依存するばかりか、銀行や投資ファンドが対中金融ビジネスで高収益を追い求めている。
対中強硬論を議会で証言したイエレン財務長官も最近、習近平国家主席の片腕である劉鶴副首相とのテレビ会議で協力の重要性を力説する始末だ。 
かくまでも中国を増長させる元凶は国際金融市場である。
世界で動き回るカネに色はなく、ゼロ金利の円の余剰資金は容易に基軸通貨ドルに替わり、今や習政権が政治面でも完全掌握した国際金融センター香港経由で中国に超低金利で投融資される。
日本の四半世紀にも及ぶ慢性デフレが引き起こすカネ余りに終止符を打つことこそが、中国の横暴を抑えるうえで欠かせないはずだ。 
十倉経団連会長は経済安全保障を重視し、政府と緊密に連携すると述べている。
さらに、「株主第一主義」も見直すようである。
現経団連の前身は経済団体連合会(旧経団連)と日本経営者団体連盟(日経連)である。
旧経団連の土光敏夫氏は「国士」でならした。
ミスター日経連と呼ばれた桜田武氏は企業の時価発行増資について「べらぼうめ、そんなものでもうけるんじゃない」と一喝した。 
今なすべき義とは、企業や金融機関が脱中国に向け、国内投融資を最優先し、日本経済の再興を牽引することではないか。

 

      


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