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「天然起源」主張する生命科学者を監視せよ

2021年10月10日 16時33分56秒 | 全般

以下は10月1日に発売された月刊誌「正論」に、「天然起源」主張する生命科学者を監視せよ、と題して掲載された、筑波大学システム情報系准教授・掛谷英紀の論文からである。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。
見出し以外の文中強調は私。  
八月二十七日、バイデン大統領が情報機関に命じた新型コロナウイルスの発生源に関する訓査報告書が公開された。
文書はニページも埋まらない分量で、その内容も驚くほど薄いものであった。
四つの情報機関は低い確信度で自然発生、一つの情報機関は中程度の確信度で研究所起源、残りの情報機関は中立、と意見が分かれたことを報告するのみで、各機関の判断の根拠は全く示されなかった。
八月二日、連邦議会下院外交委員会の共和党メンバーが公開した報告書は八十三ページに及ぶもので、研究所起源を示唆する新たな状況証拠も提示していたが、それとは対照的であった。 
ただし、共和党の報告書も、研究所流出の可能性が高いと述べているだけで、断定はしていない。状況証拠しかないからである。
決定的な証拠を得る最も確実な方法は、武漢でコウモリのコロナウイルスを研究していた全ての研究所に立ち入り調査して、研究履歴を調べ上げることである。
しかし、中国政府がこれを許すとは考えられない。
実際、今年一月から二月にかけての世界保健機関(WHO)の調査団も、研究所内部を調べることはできなかった。 
現地調査以外に、決定的な証拠を得る方法が全くないわけではない。
一つが、武漢ウイルス研究所が二〇一九年九月十二日まで公開していた二万二千以上にのぼるウイルスのデータベースを入手することである。
これが手に入れば、新型コロナウイルスが研究所を起源とする決定的証拠をつかめる可能性がある。 
八月五日、米CNNテレビは米国の情報機関がこのデータベースをハッキングにより入手したと報道した。
その記事には、データベースの解析には相当の時間を要するとも書かれていた。
米国情報機関の報告書が明確な結論を出すとすれば、情報機関がデータベースを入手したことが事実で、かつ解析が急ピッチで進んだ場合に限られていた。
よって、報告書が研究所起源を断定できないことは予想できた。
ただし、その内容の薄さは、事前の予想を大きく裏切るものであったことは間違いない。 
一方、起源が天然であった場合、それを結論づけるには感染経路の特定が必要である。
しかし、それが全く見つかっていない。
よって、今回の報告書が天然起源と断定する可能性は最初から無かった。
中国がひた隠す廃銅山
一部に、人間への感染を仲介した動物(中間宿主)の特定は難しいとの報道がある。
しかし、二〇〇二年のSARS(重症急性呼吸器症候群)は流行開始から四ヵ月、二〇一二年のMERS(中東呼吸器症候群)では九ヵ月のうちに中間宿主が見つかっている。
疫病発生から二十ヵ月以上が経過し、八万以上もの動物の検体を調べても感染源が見つかっていないことは、過去の例と比較すると異常である(ほかにも、新型コロナウイルスには不審な点が多数あるが、詳細は拙著『学者の暴走』の第一章を参照されたい)。 
それよりも異常なのは、天然起源を主張する生命科学者が非常に多いにもかかわらず、彼らのほぼ全員が感染経路の特定に全く関心が無いことである。
次のパンデミック防止には、感染源を明らかにすることは必要不可欠である。
にもかかわらず、多くの生命科学者は研究所流出を否定することだけに熱心で、肝心の感染経路を調べようという意志が見られないのである。 
前述のウイルスデータベースと同様に、中国が必死に隠しているものに、雲南省墨江にある廃銅山がある。
二〇一二年、ここに出入りしていた人から、SARSによく似た症状を持つ六人の患者が見つかり、そのうち三人は死亡している。
中国はこの症例を菌類からの感染としているが、新型コロナウイルスの起源を調べているネット調査集団「DRASTIC」のメンバーが、この六人の患者の治療履歴などの中国語資料をネット上から見つけ出し、これらが間違いなくSARSに類似するウイルス感染の症例であることを突き止めている。
国際保健規則では、SARSを含む新たな感染症例が出た場合にはWHOに報告することを義務づけている。
中国はこの規則に明確に違反したことになる。 
さらに、武漢ウイルス研究所は、その後この廃銅山に何度もウイルスの採取に出向いており、それを研究所内に持ち帰って研究していたことが明らかになっている。
新型コロナウイルスに最も遺伝子が近い「RaTG13」という名のコウモリのウイルスも、この廃銅山より採取されたものである。
よって、ここからウイルスのサンプルを多数採取して分析すれば、起源が天然であれ研究所であれ、感染経路について大きなヒントが得られる可能性がある。 
ところが、中国はこの廃銅山の公開を頑なに拒否しているのである。
天然起源を信じている生命科学者も、ここを調べれば自説の正しさを証明できるかもしれないのに、立ち入り調査を全く求めていないのである。
一度、米紙ウォールーストリート・ジャーナルの記者が、マウンテンバイクでこの廃銅山に近づこうとしたが、地元の警察に足止めされたという事件があった。
それと同じ気概をもつ学者は誰一人いない。
この稿続く。

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