以下は前章の続きである。
ファネル大佐の証言
同報告書は米側専門家の「中国は尖閣諸島に対して少なくとも三種類の方法での『短期の鋭利な戦争』をも含む作戦による奪取を考えている」という言葉を紹介していた。
この専門家はアメリカ海軍太平洋艦隊の諜報情報作戦部長を務めたジェームズ・ファネル大佐だった。
ファネル氏は同調査委員会に対して、中国軍の尖閣奪取作戦の内容を具体的に証言したのだ。
ファネル大佐の証言は以下のような骨子だった。
同報告書は、その内容を単に一専門家の見解としてではなく、同調査委員会としての見解として位置づけていた。
・中国軍の尖閣への攻撃と占拠のための第一の作戦は「海洋法規執行シナリオ」と呼べる。
中国側は人民解放軍の海軍部隊を近くに配備しながらも実際に尖閣海域には中国海警など沿岸警備部隊を侵入させ、その侵入度や島への接近度を高めている。
日本側の海上保安庁の艦艇の阻止活動を疲弊させ、中国艦 艇はやがて自国の海洋法規の執行という形で自国の領海をパトロールし、自国の領土に上陸するという宣言をして、そのとおりに実行していく。
・このシナリオでは、中国側の海警のすぐ背後に中国海軍艦艇がいつでも出動できる態勢で待機し、近くの上空には空軍機が飛来して、日本側への圧力を高めていく。
中国海警はやがて尖閣諸島に人員を上陸させ、中国側としての公共建造物などを建て始める。
中国のこの作戦は2012年に南シナ海のスカーボロ礁をフィリピン側から奪取した方法と似ている。
・中国側としては、このプロセスでは日本の自衛隊の本格出動や米軍の介入はあくまで防ぎたいという構えを保つが、本格戦闘に備える態勢をも誇示する。
中国の要員が実際に尖閣に上陸した場合、日本側はその時点で尖閣諸島の統治や施政の権利を放棄して、中国側の支配を許すか、あるいは軍事的な抵抗をするか、という選択に直面 する。
軍事的な抵抗を選んだ場合、米軍の出動を求める水準までの戦闘をするか否かが重大課題となる。
以上がアメリカ海軍太平洋艦隊の幹部だったファネル大佐の証言による、中国側の尖閣攻略作戦の第一案というわけである。
この稿続く。