4月3日の産経抄
選択的夫婦別姓をめぐり自民党は2日、その在り方を検討する作業チーム初会合を開いた。党内は推進派と慎重派がせめぎ合っており、この日も賛否双方の意見が拮抗したという。諸政策を議論するのは大いに結構だが、優先して認識を共有すべき課題はほかにあるのではないか
▼ただでさえコロナ禍で、日本社会は閉塞感に包まれている。国際情勢を見れば、中国の少数民族弾圧やミャンマーの国軍クーデターなど、民主主義が露骨な挑戦を受けている。衆院選を間近に控えたタイミングで、なぜ悠長に党が割れる議論を始めるのかも不可解である
▼「多様性を包摂する社会にしたい」。推進派の岩屋毅元防衛相は語る。とはいえ実際はどうか。国会では、かつて夫婦別姓に反対する文書に署名したとして、丸川珠代五輪相が野党議員らにつるし上げをくらっている。異なる意見を認めないその光景は、多様性の尊重からはほど遠い
▼「子供が18歳になったら”家族解散式”というのをやろう」。国会で執拗に丸川氏を追及した一人、社民党の福島瑞穂氏の著書にはこんな記述がある。「名実ともに個人単位で暮らしていきたい」ともあるが、この発想は男女平等と女性解放を名目に、家族制度廃止を試みたスターリン時代のソ連に通じる
▼福島氏といえば、かねて「リベラル勢力結集」を訴えてきた。そして共産、社民、立憲民主各党など左派政党はみな夫婦別姓の推進派である。本来、リベラルは「自由・寛容なさま」を意味するが、彼らにそんな姿勢は見当たらない
▼自民党は表面的な世論に動揺し、すぐにリベラルぶりたがる。だが、野党に歩調を合わせてどうするのか。政権与党には、現実の危機に真正面から向き合う責任がある。