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その地位を支えているのは、憲法解釈の精緻さではなく、イデオロギーで結びつく社会集団のネットワークです。

2022年12月08日 23時54分51秒 | 全般

宮澤俊義、長谷部恭男、石川健治、木村草太…なぜ、かくも東大法学部系教授は特殊なイデオロギーに染まるのか イデオロギーに酔う憲法学者
2019年10月13日に発信した章である。
検索妨害に遭っていた。
再発信する。
以下は、ガラパゴス憲法に侵された憲法学者たち、と題して月刊誌WiLLに掲載された篠田英朗、国際政治学者の論文である。
この論文を読んだだけで、読者の中で朝日新聞や毎日新聞、東京新聞、中日新聞等や共同通信から配信された記事を掲載しているだけの地方新聞を購読している人達は、それらの新聞の購読を即刻止めて、916円を払って月刊誌Will等を購読しなければならないと痛感するだろう。

宮澤俊義、長谷部恭男、石川健治、木村草太…なぜ、かくも東大法学部系教授は特殊なイデオロギーに染まるのか
イデオロギーに酔う憲法学者

日本はアメリカから“有志連合”への参加を呼び掛けられています。戦後七十年以上が過ぎているのに、篠田先生が『憲法学の病』(新潮新書)で指摘されている「ガラパゴス憲法論」で良しとする憲法学者たちが一定度存在しています。
篠田 
ホルムズ海峡への自衛隊派遣は一つの政策論ですから、そこで議論すべきでしょう。
法改正は必要に応じて行えばいいだけですが、その時期、あるいは有志連合の枠組みとの距雛のとり方などについては、様々な政策論的オプションがあり、政策的議論が必要です。 
ですが、あってはならないのは、憲法論に持ち込んで、派遣の是非を論じることです。

そもそも憲法が自衛隊のホルムズ海峡派遣を禁じているなどとは言えません。 
特定の社会勢力による憲法の曲解によって、政策論を強引に捻じ曲げることだけは、何としてでも防がなければなりません。
私は日本だけで通用する論理構成で、独特のイデオロギー的方向性に従った憲法解釈を主張する特定の社会集団の文化を「ガラパゴス憲法論」と呼んでいます。 
この「ガラパゴス憲法論」を支えているのは、精緻な憲法解釈ではなく、「軍国主義の復活を防ぐ」「権力を制限するのが立憲主義」「アベ政権はいつか来た道を走っている」といったようなフワッとした抽象論か、イデオロギー色丸出しの“政治漫談”にすぎません。 
その地位を支えているのは、憲法解釈の精緻さではなく、イデオロギーで結びつく社会集団のネットワークです。

ガラパゴス憲法論の歪み 

ちなみに私は、1993年にPKO法に基づいて選挙支援要員としてカンボジアでの国連PKOに参加したことがあります。 
当時、日本のマスコミが「自衛隊は違憲だとは思わないのか」といった問題関心しか持っていないことに辟易としていました。
 
その背景に、奇妙な日本の憲法学のイデオロギー的傾向があることは、当時から強く意識せざるを得なかったのです。 
研究者になってからも、平和構築という政策分野を専門にしていたため、国際平和への貢献を憲法の問題としてしかとらえられない日本国内の雰囲気には大きな不満を持ち続けていたのです。
ただし若い時には、日本のことなど論じずに、専門である国際的な平和活動に関する研究の実績を積んでいました。 
ところが、2014年頃からの安保法制の喧騒を見ているうちに、古い記憶がよみがえってくるのを感じました。 
同時に、すでに自分も40代半ばになり、少し踏み込んだ言説をしてもいいだろうと思ったのです。

そこであえて本格的に「ガラパゴス憲法論」の歪みを徹底的に批判する仕事をしてやろうという気持ちになり、『集団的自衛権の思想史』(風行社/2016年)や『ほんとうの憲法』(ちくま新書/2017年)、そして今年、『憲法学の病』を刊行しました。

東大法学部系教授の病

「ガラパゴス憲法学」の歪みを体現する憲法学者として、宮澤俊義、長谷部恭男、石川健治、木村草太……など、東大法学部系教授を取り上げられていますね。
篠田 
これらの憲法学者に共通して見られる特徴は、「反米主義」を自らの議論の正しさの基盤としている点です。
憲法学を認めないと、日本はアメリカの属国になる、といった考え方を持つ人たちにアピールし、反米主義が価値判断の基準となっている人々の間で人気を維持しています。 

では、四人の特徴を個別に見ていきましょう。
宮澤俊義―宮澤教授は、太平洋戦争中には英米主導の国際秩序に挑戦すべきと主張し、太平洋戦争を称賛していました。
終戦後は、大日本帝国憲法のままで何も問題がないと主張していたのです。
新憲法がGHQによって起草されたことを知ったときには、あえてポツダム宣言受諾時に日本国民が主権を握る革命を起こしていたとする「八月革命」説を唱えて、憲法におけるアメリカの影を消しました。
これによって起草者が意図しなかった憲法解釈を学界通説とするイデオロギー的基盤をつくったのです。


長谷部恭男-長谷部教授は、冷戦終焉後の世界において、自衛隊を違憲とし続ける憲法学通説は持ちこたえられないと考え、「良識」によって自衛隊は合憲となる、とする思い切った主張を展開しました。
ただし本人としては、これは憲法学を守るための微調整に過ぎなかったのです。
安保法制や現在の改憲論の議論においては、憲法学者を代表して、反アべ・反米主義を大々的に掲げた言説を展開しています。


石川健治―石川教授は、安保法制の際に、「これはクーデターだ」「集団的自衛権は異物」といった政治スローガン的な言説で「反アべ・反米主義」を前面に押し出した言説を広範に行いました。
師匠の樋口陽一への忠誠心を表現したかったなどと噂されましたが、学者としての問題関心は哲学的な方面に偏っており、政治的言説の学術的な裏付けは、研究業績から解析することはできません。

木村草太-木村教授は、マスメディアやSNSを通じた憲法学者の広告塔の役目を果たしている人物ですが、自意識過剰で「自分が論争に勝利した」という宣言を出すことにのみ過剰な関心を持つ傾向があり、論理的な精緻さを度外視する傾向があります。
安保法制の際に集団的自衛権を違憲とする主張を声高に行ったため、現在でもその収拾に苦慮しているところが見られます。 
たとえば日本国憲法には「軍事権」の規定がないから、日本は「軍事権」を行使できない(他国の憲法にも「軍事権」なるものの規定はないのだが)といった意味不明な主張を根拠にして、次々と論理的に飛躍している結論を導き出したりする態度などが象徴的です。
法哲学者の井上達夫教授らが木村教授を強く批判していますが、他の憲法学者も距離を置き始めているようです。

この稿続く。

 

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